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木村カエラ『みんなとシンクロしたい!“カエラ観”が詰まった7thアルバムを語る☆』

 7枚目のアルバムは、“みんなとシンクロしたい!”という想いを込めた『Sync』(シンク)。ティム・バートン監督の最新映画『フランケンウィニー』のインスパイアソング「WONDER Volt」も収録。どの曲もハートのリズムとシンクロしますよ!

“心のリズム”をテーマにした新作

――CDジャケットがカラフルでおもしろいですね。初回限定盤は絵本みたいにめくると髪型が変わっていくという。
木村カエラ今回のアルバムのタイトルがシンクロ(同調)という意味の『Sync』(シンク)なので、赤い私も黄色い私も青い私も、全部私であるということをジャケットに重ねて1枚にして、シンクロを表現しました。

――赤、黄色、青という色にはどんな意味があるんですか?
カエラもともとすごく好きな色なんですよ。でも、あとあと思えば信号と同じで、止まっている時、注意深くなっている時、進んでいる時っていうのが人間の生活のリズムにすごく合っていて、私にももちろん“そういう時”があるなって思ったんですよ。

――アルバム、すごく心地よかったです。穏やかな気持ちにもなるし、前に進もう!という気持ちにもなるし切なくもなる……っていうのが、今のジャケットのお話を聞いてなるほどな!って思いました。それと全体的に、今までのアルバムよりもリズムを意識した作品になっているのかな?と。
カエラそうなんです。作り始めた時からリズムを意識したアルバムを作りたいと思って全曲作っていきました。歌詞の世界も、音に合わせて日常的なものとか普段感じる喜びだとか切なさ、寂しさ、悲しさとか、もっと楽しいこと、安らぎ、いろんな感情を入れようと思ったんです。でも、きっと私が意図して書いている歌詞も10人が聞けば10人まったく違って聞こえるだろうなと思ったので、どこかに統一感を出したいなと思いました。

――なるほど。
カエラ人の中で共通しているモノってなんだろう?って考えた時に、それは心臓が動いているっていうことじゃないかな?って。心臓がリズムを刻んでいるっていうことは誰にとっても共通していることだから、誰もが持っている心のリズムをテーマにしたんです。

――そう考えるとアルバムの核心になる曲は「Synchronicity」なのかな?っていま思いました。これはカエラちゃんのライブ観であり、ライブってお客さんとひとつになれる場所でもあるなぁって。
カエラライブって自分にとって一番大好きなシンクロの場所だなと思ったので、ライブの曲が1曲欲しいなと思ったんですよ。ライブ会場に来てもらった時こそ、そのとき抱えているイヤなものや不安なものにケリをつけたり、ツマミだしたりして、それを忘れるわけではなく、その場をロックして自分を解放してほしいという想いで歌っていたり、みんなが明日から元気に過ごせるようにとライブをしています。そのシンクロを求めて私はステージに立っているんだよっていう、自分にとってのシンクロという一番大切なところを歌いたいなと思って書いた歌なんです。

――カエラちゃんって自分のスタイルを持っていてすごく孤高な感じがするんですね。このアルバムには、孤高であるがゆえの孤独感があるなぁと。強さと寂しさ、やさしさと弱さ……のようなものが滲み出ているような気がしています。
カエラあ〜……。うんうん。やさしいっていうのはまだちょっとわからないけど、きっと私の性格が出てるんだと思います。私は小さい頃から自分の世界観とか、自分が好きだと思うものが本当にハッキリと決まっていて。だからそこがなくなると自分を見失ってしまうんですね。でもやっぱり奇抜なものが好きだったり、歌詞だったらおもしろいものが好きだから、表現方法によっては人に伝わらなかったりするのかな?って気にしちゃうという、極端なところがあるんですよ。だからこそ自分と向き合った時に出てくる孤独感が、もしかしたら出ちゃったのかな?って思います(笑)。

ティム・バートン監督に褒められた時は倒れるかと思った(笑)

――朝の清々しさと穏やかさのなかにも、今お話された孤独感も感じさせる「coffee」の歌詞には、<今こそ底力をみせて…>というエリザベス・テイラーの引用がありますね。
カエラ本当に自分の日常のことを歌った歌詞で、ちょうどこの歌詞を書いていた頃、毎朝11時から米ドラマ『SEX and the CITY』の再放送がやっていて。それを私は毎日すごく楽しみにしていて、登場人物のシャーロットが流産してしまって部屋にこもっていた時に、エリザベス・テイラーのドキュメント番組を観て、励まされて外に出かけていく時の言葉で、私、その言葉が大好きなんです。この歌は女性が感じることをテーマに歌いたかったし、みんなきっと『SEX and the CITY』好きだし(笑)。

――私も大好きです(笑)。
カエラふふっ。シンクロできて前向きになれる言葉だから使ってみようかな?って思ったんです。

――「so i」は、「Sun shower」と同じくクラムボンのミトさんがプロデュースした曲なんですね。浮遊感がやさしくて気持ちいいです。
カエラ同じ方が作っているとは思えないほどの振り幅ですよね。すごく広がっていく音で、どこか丸みがあって包まれている感じがあるなぁと思ったので、私が思う相思相愛の形を書こうと思いました。

――続く「Merry Go Round」では、過去のいろんなことを考えちゃって眠れないけど、過去を飛び越える!って歌ってるのに、ラストの1行で<おやすみ また明日>って歌ってますよね。え、また眠れない夜を繰り返すの?みたいな(笑)。
カエラそう、これはもう私のことですね(笑)。寝てる時ふとフラッシュバックされた楽しいこともイヤなことも、今につなげて考え始めると止まらなくなる、そういうことってありません?

――あります。どんどん深みにハマって眠れなくなります(笑)。
カエラそうそう。特に切ないことを思い出しちゃうと深みにハマってしまって、早く連れ戻して!って思っちゃうんですよね。でもそうやって思い出すことって自分にとってすごく大事なことなんですよね。それがないと今の自分がないから、過去をブラッシュアップして今を生きられるようにしてるんだなぁって思うんです。

――「Cherry Blossom」は旅立ちを歌っているので、これがアルバムのラストソングで、次の「WONDER Volt」(映画『フランケンウィニー』インスパイアソング)がボーナストラックのような感じでした。
カエラ(アルバムの)終わりが見える終わり方よりは、また1から出直せる終わり方のほうがいいなと思ったんです。「Cherry Blossom」を聴くと、“あ、終わった”って気持ちになるけど、<禁断の実験だ>で終わられても!みたいな?それでまた<Hey,let’s go〜>って1曲目の「マミレル」に戻ったら、すごく何度も聴けるなと思って。

――そういう仕掛けがあったのか……(笑)。そういえばカエラちゃん、ティム・バートン監督にお会いしたんですよね?しかも「WONDER Volt」について“大好きな曲”とおっしゃっていましたね。
カエラそう、お会いしてすぐに「すっごく好きなんだ。素晴らしい曲を作ってくれたね」っておっしゃってくれて。会場で曲が流れると「本当にいいね!」って言って口ずさんでくれたりしたんですよ。もう倒れるかと思いました(笑)。

――カエラちゃんのミュージックビデオも映画と同じく白黒で、不気味で奇妙な世界ですね。
カエラマッドサイエンティストになって犬か何かわからないものを生き返らせました(笑)。白黒だからこそ生まれるイマジネーションと世界観を楽しんでいただけると思います。
(文:三沢千晶/撮り下ろし写真:草刈雅之)

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