「第48回 日本アカデミー賞」授賞式が14日、東京・グランドプリンスホテル新高輪にて開催され、2024年の日本映画界を代表する最優秀作品賞を『侍タイムスリッパー』が受賞した。 『侍タイムスリッパー』は、米づくりと兼業の安田淳一監督が、私財を投げ打って製作した、自主映画の長編3本目。脚本・撮影・照明・編集・整音・VFX・車両など10役以上を務めて作り上げた。幕末を生きる会津藩士が、雷を打たれ現代の京都太秦の撮影所にタイムスリップし、時代劇の斬られ役の仕事にのめり込んでいくストーリー。自主映画で時代劇を撮るというチャレンジングな企画ながら、東映京都撮影所が特別協力したことも話題となった。当初は1館のみでの公開が、評判を呼び、全国300館以上に拡大されるなど、一大旋風を巻き起こした。今回の日本アカデミー賞では最優秀作品賞と最優秀編集賞、7部門で優秀賞を受賞した。 日本アカデミー賞協会の島谷能成会長が「最優秀作品賞は『侍タイムスリッパー』」と発表した瞬間、立ち上がって優秀主演男優賞を受賞した山口馬木也と抱き合い、男泣きした安田監督。スピーチでは「最後まで物事をあきらめずにやることを教えてくれた、一昨年死んだ父と、頑張っていれば誰かがどこかで見ていてくれていると、いつもおっしゃっていた福本清三さん(※50年以上にわたり斬られ役・殺され役を演じてきた俳優、故人)に見せてあげたいです」と語った。 山口は「心臓が飛び出るかと思いました。この作品は、インディーズ映画としてほんの小さな劇場の一角から上映が始まりました。最初は小さな小さな光でした。それを多くの方が大きくしてくださり、お客様のおかげでこんなにもキラキラした場所に立つことができています。この経験が、今後の私にとって大切な“帰る場所”になると思っています。そのきっかけを与えてくださった安田監督、本当にありがとうございます。そして、応援してくださった皆さんにも、心から感謝しています」と語り、感無量な様子だった。 今回、『侍タイムスリッパー』のほかに、『キングダム 大将軍の帰還』(佐藤信介監督)、『正体』(藤井道人監督)、『夜明けのすべて』(三宅唱監督)、『ラストマイル』(塚原あゆ子監督)が優秀作品賞を受賞した。
2025/03/14