現在公開中の『映画 ギヴン 海へ』は、今年1月に公開されたシリーズ続編映画2部作の前編『映画 ギヴン 柊mix』に続く2部作の後編かつ、アニメ『ギヴン』シリーズの完結編だ。公開後から多くの反響を集めている本作、封切り後のメインキャストにインタビューを実施。佐藤真冬役の矢野奨吾、上ノ山立夏役の内田雄馬、中山春樹役の中澤まさとも、梶 秋彦役の江口拓也、鹿島 柊役の今井文也、八木玄純役の坂 泰斗、村田雨月役の浅沼晋太郎に、シリーズ完結まで演じた心境や本作の核のひとつでもある音楽、ラストシーンについて、『ギヴン』シリーズへの想いを聞いた。
■約6年続いたシリーズの完結に「寂しさと、ほっとしている気持ちと」
『ギヴン』は、ロックバンド「ギヴン」のメンバーを中心に、彼らの恋愛や成長していく姿を繊細に描いたキヅナツキ氏のBLコミックが原作。フジテレビ“ノイタミナ”初のBLコミックのアニメ化作品として、2019年にTVアニメが放送、2020年には『映画 ギヴン』が公開された。そして今年1月に続編映画2部作の前編『映画 ギヴン 柊mix』が公開され、9月20日より2部作の後編かつシリーズ完結となる『映画 ギヴン 海へ』が公開中だ。
――今回の映画をもってアニメ『ギヴン』シリーズは一区切りとなりました。作品が公開されての心境や、これまでの思い出などを聞かせてください。
矢野:アニメに携わらせていただき約6年、あっという間でした。完結まで描いていただけたことは奇跡のようで、ひとえに応援してくださるみなさまあってのことなので、嬉しさでいっぱいです。あとホッとしている気持ちもありますね。
浅沼:僕は『映画 ギヴン 柊mix』の本編には出ていなかったので、物語の本筋に関わるのは『映画 ギヴン』以来だったのですが、あれから4年が経っているようには全然感じていなくて。それだけこの作品に気持ちの面でも深く関わり続けていたんだなと実感していますね。
内田:ありがたいことに1年に1回ないし2年に1回くらいは何か『ギヴン』で収録する機会がありましたし、各々にスポットが当たるエピソードが続いていたこともあって、どこかでずっと動いているんだなという感覚がありました。これだけ長く続けてこれたのはすごいことですし、『ギヴン』という作品の大きさを改めて感じます。
浅沼:(矢野に向けて)寂しくはない?
矢野:とても寂しいです。ずっと関わってきましたし、(真冬は)僕にとっての初めての主役なので。TVアニメ第1話の時から緊張しまくっていて、見せないように意識していたのですが、多分みなさんにはバレていたでしょうね(笑)。
■ハッピーエンドだけど、キレイなだけじゃないラストシーン
――『ギヴン』では音楽も大切な要素のひとつとなっていますよね。
矢野:歌が天才的に上手い役もそうですが、楽曲が物語の軸になっている作品は初めてでした。センチミリメンタルの温詞(あつし)くんのディレクションのおかげでなんとかなりましたが、最初は「自分の歌ってこんなに下手なんだ」と思い知らされて、ゼロベースから作り直しました。自分の癖を抜くなどして、 “真冬の楽曲”というものを歌い方から含めて作り上げました。
浅沼:でき上がったものを聴いているので、最初から上手かったんだと思ってた。そういう苦労があるとは知らなかったなぁ。俺だったら歌が天才的に上手い役をやるだなんて絶対無理って思っちゃうから、本当にすごい。
矢野:始めてレコーディングの前にレコーデイングスタジオで実際にマイク前で歌って練習する機会を数回設けていただきました。
中澤:今井くんと坂くんは、「syh」のライブシーンがあると聞いた時はどうだった?
今井:ハードル、ガン上がりですよね(笑)。TVアニメや『映画 ギヴン』ではまだそんなに柊たちにスポットが当たっていなかったけど、原作を読み進めていけばいくほど“華がある”、“歌が上手い”とずいぶんハードルが上がっていくので…(笑)。
坂:TVアニメの時は、柊が歌うことは聞いてたの?
今井:聞いてなかったです。だから収録の時はドキドキでした。最初はバンドマンの歌い方とかもわからなかったですし、学生の勢いを出すためには?とか、真冬との対比をどうするか?とか、温詞くんにたくさん相談しながら進めました。
矢野:温詞くんから、「(今井くんは)すぐ録り終わった」って聞きましたよ。
浅沼:あれっ?謙遜されていらっしゃったのかしら(笑)。
江口:そう感じちゃいますよねぇ(笑)。
今井:そんなことないです!その見え方は良くないです!先輩方…!(笑)
一同:(笑)。
今井:アフレコの時もそうでしたが、やっぱりプレッシャーは感じていましたね。
坂:そうだよね。僕たちのキャラクターはTVアニメの時はまだどんな人物像なのかが分からない状態だったので、こんなに深い人物像だったのかと体感できたのは、長い期間携わらせていただけたからこそだなと実感しましたね。
中澤:雄馬くんは今回コーラスで参加していたけど、収録は早く終わったんでしょ?(笑)
内田:いやいや(笑)。コーラスだけを録るってあんまりないじゃないですか。
中澤:それはそうだね。
内田:しかも立夏にとって音楽は言葉のようなものですから、コーラスでどう歌えばいいんだろうみたいな緊張感が凄まじくて。いろんなことを考えて録ったのを覚えていますね。
中澤:そして歌と全然関係ない我々ですね。
浅沼:俺なんてバンドメンバーにもいないんだから。
江口:孤高の存在ですからね。
中澤:でも、音楽的な指摘をするシーンはありましたよね。
浅沼:俺自身はひとつも楽器できないんだけどね(笑)。でも雨月は真冬と通ずるような感じがあって。ベクトルは違えど、不思議な天才同士っていう。『海へ』で、お互いにシンパシーを感じ合う関係性を再び作れたのはうれしかったですね。
中澤:雨月じゃないと言えなかったと思いますし。
江口:(雨月じゃないと真冬の)背中を押せなかったですよね。
浅沼:近くにいないからこそ響く言葉もあると思っていて。たとえば僕が悩んでいたとして、(隣にいる)江口くんに頼るのは気が引けてしまうけど、久々に連絡した地元の友だちにはなぜか言えてしまうような。それに近いものがあるのかなって。
――ラストシーンも印象的でしたが、率直な感想は?
江口:僕はラストシーンが一番好きです。『ギヴン』は“今”というものを大切にしていて。その時にどういう感情で生きていくかが大切だと思うので、あのセリフは「血が通ってるな」と感じられて非常にグッときます。
浅沼:ドキッとする終わり方だよね。
矢野:ハッピーエンドだとは思うけど、キレイなだけじゃないハッピーエンドというか。真冬は今幸せな空間にいるけど、その幸せな空間もいつかは過去になって、記憶として忘れ去られていく…だからこそ今の幸せをどうにかして記憶に焼き付けたいと思っています。ハッピーエンドなんだけどノスタルジックな終わり方は、まさに『ギヴン』らしい。あの終わり方が僕は大好きです。
内田:行動で残していくことで自分が安心できたり、そこに想いを残していける。次に進むために、一個ピンを打っていく感じが真冬はすごい。だから(立夏は)隣にいないといけないなって思ったのだろうな、と。
■好きという気持ちがあるから、生活や自身を支えてもらえている
――みなさんにとって『ギヴン』や演じられたキャラクターはどんな存在になりましたか?
浅沼:ここまで丁寧に、心の中や夢、そして音楽を、人間らしく描いた作品ってそれほど多くないんじゃないかと思ってます。自分にとっても非常に特別な作品になりました。
坂:この作品に限らず、いつでも自分のできる範囲でのMAXで役に挑んでいますが、役者として経験したものを持ってまた玄純を演じることができたのは貴重な経験でした。作品が長い期間続いたからこそだなと感じています。登場人物全員の物語は一区切りですが、まだまだ道半ばというか続いていく途中である気がしていて、終わった感覚は全然ないです。そのくらい大切な作品になっています。
今井:この作品は人物がしゃべっていなかったり映っていなかったりする風景描写でキャラクターたちの心情を描くのが丁寧で、時間をかけて汲み取って演じた作品という印象が強いです。個人的にもほぼデビュー作みたいなものでもあるので、作品やキャラクターたちと一緒に自身が変化し、成長していったと思える作品です。
江口:ネガティブな発想が生まれがちな自分にも、『ギヴン』は寄り添ってくれます。みんながそれぞれ悩みを抱え、それを一緒に背負ってくれたり、共に歩んでくれたりという強いエネルギーを持った人たちが支え合っている部分が、良い作品だなと思います。どのキャラクターも一生懸命生きて自分なりに正解、答えを出していく姿に勇気をもらいました。
中澤:僕も、(クレジットで)上から数えた方が早いメインキャラクターをやるのはこの作品が初めてでした。(共演者は)裏側の努力は見せずカッコいい人たちばかりの中、『映画 ギヴン』でのセリフ「俺って必要なくない!?」は、その時に自分が思っていたことをそのままぶつけていたんです。秋彦に「お前必要だって」「上向かないと」と言われたとき、僕が感じていたものや思っていたことを全部ひっくり返してもらえた気がします。『ギヴン』は仕事をしていく上で心の支えになっていますし、自分を大事にしていけると思える作品になりました。
内田:『ギヴン』は登場人物の匂いを感じます。人が生きた、生きている証が詰め込まれている印象があります。人間は生まれた時が一番ツルツルな状態で、その後は1秒ごとにちょっとずつシワが入ったり傷がついたり、誰しもどこかに“傷”や“跡”を持っていると思います。それが辛いものなのか、自分にとって大切なものなのかの見え方はさまざまですが、その自分自身をどう見つめていくのかを、誰かとのつながりなどをきっかけに感じさせてもらえることが描かれていると思っています。傷だらけの自分でも今のままでいい。むしろ今の自分から先に進んでいこうとか、今の自分を受け止めていけるという、その優しさがある作品ですね。
矢野:真冬は自分の考えを言語化して相手に伝えるのが得意ではなくて、僕も似たようなところがあって。ただ唯一、芝居だけは自分の気持ちをアウトプットできる瞬間だと思っています。真冬も自分が抱えてきた想いを、音楽を通してアウトプットしていく過程で前向きな考えになっていき、いつしか音楽が自分の人生の中で切り離せないくらい大切な好きなものへと変わっていっていて。
僕も好きでお芝居の道を選んだのに、思うようにいかず逃げ出したいと思うことがあったけど、真冬を見ていると好きになる気持ちはとても大事だなって。真冬を通して「やっぱり芝居が好き」「ここでしか輝けない」「好きという気持ちをこれからもずっと大切にしていきたい」と改めて気づかされました。
“好き”という気持ちの裏には、嫌いとか悲しいとか逃げたいとかいろいろな感情もあるけど、“好き”という気持ちがあるから支えてもらえていると思える瞬間がたくさんあります。『ギヴン』という作品からは、“好き”という気持ちを大切に生きていくことを学びました。
取材・文:遠藤政樹
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■約6年続いたシリーズの完結に「寂しさと、ほっとしている気持ちと」
『ギヴン』は、ロックバンド「ギヴン」のメンバーを中心に、彼らの恋愛や成長していく姿を繊細に描いたキヅナツキ氏のBLコミックが原作。フジテレビ“ノイタミナ”初のBLコミックのアニメ化作品として、2019年にTVアニメが放送、2020年には『映画 ギヴン』が公開された。そして今年1月に続編映画2部作の前編『映画 ギヴン 柊mix』が公開され、9月20日より2部作の後編かつシリーズ完結となる『映画 ギヴン 海へ』が公開中だ。
――今回の映画をもってアニメ『ギヴン』シリーズは一区切りとなりました。作品が公開されての心境や、これまでの思い出などを聞かせてください。
矢野:アニメに携わらせていただき約6年、あっという間でした。完結まで描いていただけたことは奇跡のようで、ひとえに応援してくださるみなさまあってのことなので、嬉しさでいっぱいです。あとホッとしている気持ちもありますね。
浅沼:僕は『映画 ギヴン 柊mix』の本編には出ていなかったので、物語の本筋に関わるのは『映画 ギヴン』以来だったのですが、あれから4年が経っているようには全然感じていなくて。それだけこの作品に気持ちの面でも深く関わり続けていたんだなと実感していますね。
内田:ありがたいことに1年に1回ないし2年に1回くらいは何か『ギヴン』で収録する機会がありましたし、各々にスポットが当たるエピソードが続いていたこともあって、どこかでずっと動いているんだなという感覚がありました。これだけ長く続けてこれたのはすごいことですし、『ギヴン』という作品の大きさを改めて感じます。
浅沼:(矢野に向けて)寂しくはない?
矢野:とても寂しいです。ずっと関わってきましたし、(真冬は)僕にとっての初めての主役なので。TVアニメ第1話の時から緊張しまくっていて、見せないように意識していたのですが、多分みなさんにはバレていたでしょうね(笑)。
■ハッピーエンドだけど、キレイなだけじゃないラストシーン
――『ギヴン』では音楽も大切な要素のひとつとなっていますよね。
矢野:歌が天才的に上手い役もそうですが、楽曲が物語の軸になっている作品は初めてでした。センチミリメンタルの温詞(あつし)くんのディレクションのおかげでなんとかなりましたが、最初は「自分の歌ってこんなに下手なんだ」と思い知らされて、ゼロベースから作り直しました。自分の癖を抜くなどして、 “真冬の楽曲”というものを歌い方から含めて作り上げました。
浅沼:でき上がったものを聴いているので、最初から上手かったんだと思ってた。そういう苦労があるとは知らなかったなぁ。俺だったら歌が天才的に上手い役をやるだなんて絶対無理って思っちゃうから、本当にすごい。
矢野:始めてレコーディングの前にレコーデイングスタジオで実際にマイク前で歌って練習する機会を数回設けていただきました。
中澤:今井くんと坂くんは、「syh」のライブシーンがあると聞いた時はどうだった?
今井:ハードル、ガン上がりですよね(笑)。TVアニメや『映画 ギヴン』ではまだそんなに柊たちにスポットが当たっていなかったけど、原作を読み進めていけばいくほど“華がある”、“歌が上手い”とずいぶんハードルが上がっていくので…(笑)。
坂:TVアニメの時は、柊が歌うことは聞いてたの?
今井:聞いてなかったです。だから収録の時はドキドキでした。最初はバンドマンの歌い方とかもわからなかったですし、学生の勢いを出すためには?とか、真冬との対比をどうするか?とか、温詞くんにたくさん相談しながら進めました。
矢野:温詞くんから、「(今井くんは)すぐ録り終わった」って聞きましたよ。
浅沼:あれっ?謙遜されていらっしゃったのかしら(笑)。
江口:そう感じちゃいますよねぇ(笑)。
今井:そんなことないです!その見え方は良くないです!先輩方…!(笑)
一同:(笑)。
今井:アフレコの時もそうでしたが、やっぱりプレッシャーは感じていましたね。
坂:そうだよね。僕たちのキャラクターはTVアニメの時はまだどんな人物像なのかが分からない状態だったので、こんなに深い人物像だったのかと体感できたのは、長い期間携わらせていただけたからこそだなと実感しましたね。
中澤:雄馬くんは今回コーラスで参加していたけど、収録は早く終わったんでしょ?(笑)
内田:いやいや(笑)。コーラスだけを録るってあんまりないじゃないですか。
中澤:それはそうだね。
内田:しかも立夏にとって音楽は言葉のようなものですから、コーラスでどう歌えばいいんだろうみたいな緊張感が凄まじくて。いろんなことを考えて録ったのを覚えていますね。
中澤:そして歌と全然関係ない我々ですね。
浅沼:俺なんてバンドメンバーにもいないんだから。
江口:孤高の存在ですからね。
中澤:でも、音楽的な指摘をするシーンはありましたよね。
浅沼:俺自身はひとつも楽器できないんだけどね(笑)。でも雨月は真冬と通ずるような感じがあって。ベクトルは違えど、不思議な天才同士っていう。『海へ』で、お互いにシンパシーを感じ合う関係性を再び作れたのはうれしかったですね。
中澤:雨月じゃないと言えなかったと思いますし。
江口:(雨月じゃないと真冬の)背中を押せなかったですよね。
浅沼:近くにいないからこそ響く言葉もあると思っていて。たとえば僕が悩んでいたとして、(隣にいる)江口くんに頼るのは気が引けてしまうけど、久々に連絡した地元の友だちにはなぜか言えてしまうような。それに近いものがあるのかなって。
――ラストシーンも印象的でしたが、率直な感想は?
江口:僕はラストシーンが一番好きです。『ギヴン』は“今”というものを大切にしていて。その時にどういう感情で生きていくかが大切だと思うので、あのセリフは「血が通ってるな」と感じられて非常にグッときます。
浅沼:ドキッとする終わり方だよね。
矢野:ハッピーエンドだとは思うけど、キレイなだけじゃないハッピーエンドというか。真冬は今幸せな空間にいるけど、その幸せな空間もいつかは過去になって、記憶として忘れ去られていく…だからこそ今の幸せをどうにかして記憶に焼き付けたいと思っています。ハッピーエンドなんだけどノスタルジックな終わり方は、まさに『ギヴン』らしい。あの終わり方が僕は大好きです。
内田:行動で残していくことで自分が安心できたり、そこに想いを残していける。次に進むために、一個ピンを打っていく感じが真冬はすごい。だから(立夏は)隣にいないといけないなって思ったのだろうな、と。
■好きという気持ちがあるから、生活や自身を支えてもらえている
――みなさんにとって『ギヴン』や演じられたキャラクターはどんな存在になりましたか?
浅沼:ここまで丁寧に、心の中や夢、そして音楽を、人間らしく描いた作品ってそれほど多くないんじゃないかと思ってます。自分にとっても非常に特別な作品になりました。
坂:この作品に限らず、いつでも自分のできる範囲でのMAXで役に挑んでいますが、役者として経験したものを持ってまた玄純を演じることができたのは貴重な経験でした。作品が長い期間続いたからこそだなと感じています。登場人物全員の物語は一区切りですが、まだまだ道半ばというか続いていく途中である気がしていて、終わった感覚は全然ないです。そのくらい大切な作品になっています。
今井:この作品は人物がしゃべっていなかったり映っていなかったりする風景描写でキャラクターたちの心情を描くのが丁寧で、時間をかけて汲み取って演じた作品という印象が強いです。個人的にもほぼデビュー作みたいなものでもあるので、作品やキャラクターたちと一緒に自身が変化し、成長していったと思える作品です。
江口:ネガティブな発想が生まれがちな自分にも、『ギヴン』は寄り添ってくれます。みんながそれぞれ悩みを抱え、それを一緒に背負ってくれたり、共に歩んでくれたりという強いエネルギーを持った人たちが支え合っている部分が、良い作品だなと思います。どのキャラクターも一生懸命生きて自分なりに正解、答えを出していく姿に勇気をもらいました。
中澤:僕も、(クレジットで)上から数えた方が早いメインキャラクターをやるのはこの作品が初めてでした。(共演者は)裏側の努力は見せずカッコいい人たちばかりの中、『映画 ギヴン』でのセリフ「俺って必要なくない!?」は、その時に自分が思っていたことをそのままぶつけていたんです。秋彦に「お前必要だって」「上向かないと」と言われたとき、僕が感じていたものや思っていたことを全部ひっくり返してもらえた気がします。『ギヴン』は仕事をしていく上で心の支えになっていますし、自分を大事にしていけると思える作品になりました。
内田:『ギヴン』は登場人物の匂いを感じます。人が生きた、生きている証が詰め込まれている印象があります。人間は生まれた時が一番ツルツルな状態で、その後は1秒ごとにちょっとずつシワが入ったり傷がついたり、誰しもどこかに“傷”や“跡”を持っていると思います。それが辛いものなのか、自分にとって大切なものなのかの見え方はさまざまですが、その自分自身をどう見つめていくのかを、誰かとのつながりなどをきっかけに感じさせてもらえることが描かれていると思っています。傷だらけの自分でも今のままでいい。むしろ今の自分から先に進んでいこうとか、今の自分を受け止めていけるという、その優しさがある作品ですね。
矢野:真冬は自分の考えを言語化して相手に伝えるのが得意ではなくて、僕も似たようなところがあって。ただ唯一、芝居だけは自分の気持ちをアウトプットできる瞬間だと思っています。真冬も自分が抱えてきた想いを、音楽を通してアウトプットしていく過程で前向きな考えになっていき、いつしか音楽が自分の人生の中で切り離せないくらい大切な好きなものへと変わっていっていて。
僕も好きでお芝居の道を選んだのに、思うようにいかず逃げ出したいと思うことがあったけど、真冬を見ていると好きになる気持ちはとても大事だなって。真冬を通して「やっぱり芝居が好き」「ここでしか輝けない」「好きという気持ちをこれからもずっと大切にしていきたい」と改めて気づかされました。
“好き”という気持ちの裏には、嫌いとか悲しいとか逃げたいとかいろいろな感情もあるけど、“好き”という気持ちがあるから支えてもらえていると思える瞬間がたくさんあります。『ギヴン』という作品からは、“好き”という気持ちを大切に生きていくことを学びました。
取材・文:遠藤政樹
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
2024/10/26