現在放送中のフジテレビ系“月9ドラマ”『海のはじまり』(毎週月曜 後9:00)。23日に最終回の放送を控える中、同作プロデューサーの村瀬健氏が取材会に参加した。今作は主演に9人組グループ・Snow Man目黒蓮を迎え、脚本・生方美久氏×演出・風間太樹氏×プロデュース・村瀬健氏という、社会現象となった大ヒットドラマ『silent』(2022年10月期/フジテレビ系)チームが再集結して贈る、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品。初回からSNSを中心に大きな反響を呼んでいる同作に込めた想いや制作秘話、キャスト陣の印象について語ってもらった。
今作は、主人公・月岡夏(目黒)が、大学生だった時に付き合っていた交際相手であり、別れて以来、7年もの間会うことがなかった南雲水季(古川琴音)の死をきっかけに、自分と血のつながった娘・海(泉谷星奈)の存在を知ったことで人生が変化していく物語。
■作品を彩る監督の世界観 名シーン振り返り「それぞれに特徴がある」
村瀬氏はこれまでの反響について「『silent』のようにゆっくり、じっくり描いていくのが夏ドラマとしてどうだろう思っていたんですけど、予想以上の反響を頂き、すごくいい手応えを感じています」と語り、「でも、『暗くて重い』って言われて、皆さんの捉え方が、やっぱり思ったより重い、暗いって捉えられてしまうんだなっていう驚きはありました」と率直な思いを明かした。「ただ時間をかけてこの世界観を見てもらっていけば、これが『温かい涙』なんだというところまでたどり着けると思っています。その意味では、6話で全登場人物の物語が一つに繋がっていくっていうのはあったので、そこまで見てきた人には『おお』って思ってもらえたんじゃないでしょうか」と期待する。
8月12日放送の第7話では水季が生前、勤めていた図書館の同僚・津野(池松壮亮)との過去が描かれた。特に、ほぼセリフのないシーンの中、津野が水季の訃報を聞いた瞬間、そして、どれだけ津野が水季を想っていたかを表現する芝居や、電話を軸にした演出が大きな話題を呼んだ。今作の演出について村瀬氏は「今回は、風間太樹監督、高野舞監督、ジョン・ウンヒ監督、山岸一行監督っていう、4人の監督に撮ってきてもらっているんですけど、いい意味でそれぞれ特徴があるんですよね」と語る。
その上で「それぞれの監督の持ち味を生かせるようにということを、実は脚本を作っている段階から考えていたりもします。それぞれに特徴があるから、各監督でやっぱり名場面が違っていて、風間監督はなんと言っても1話の最初のお葬式会場で大竹しのぶさん演じる朱音に『想像はしてください』って言われるあそこのお芝居の良さと、その直後の、海が『夏くん!』って言って、水季の映像が流れ、あの一瞬の静寂になって音楽が流れる部分なんかは「silent」に通ずるものがありますよね。風間監督の新骨調、芝居をしっかり見せる力と映像の美しさで見せる力の両方が合わさった風間監督らしさが出た1話だったと思う。
高野監督の真骨頂は3話のラストシーン。back numberの主題歌に乗せて、夏と海が浜辺で初めて2人だけで語るシーンです。まるで2人がただそこにいて、ただ話しているところを切り取ったかのような自然な表情を二人ともしています。高野監督らしい優しさが本当にあふれていましたよね。
ジョン監督はなんと言っても7話の津野君(池松)の描き方。電話のシーン、あれはもう圧倒的で、実はあのシーンって台本では『はい』で終わっているんですよ。特にあの状態で、もう水季に残された時間は少ないってわかっている中で、津野は電話がブルブルってなった時にもう何かを感じていて。で、朱音(大竹)さんだってわかった時に、もう確信を持った。僕、ジョン監督から撮影前に『はい、で終わっていいですか』と聞かれて『うん、そこまででいいよ』って答えたんです。、『はい』までの表情だけあればいいと思ってたから。それが、蓋を開けてみたら池松さんにその先まで芝居をしてもらっていて、それがあまりにも良かったんで、まるまる全部残しました(笑)。
山岸監督は、スピンオフの「兄とのはじまり」と「恋のおしまい」を撮ってもらったんですけど、それがどちらも素晴らしかったので本編の10話もお願いしました。キャストの皆さんが揃って「山岸さんは細かい!」と笑って話すくらいに細かいです。それくらい細部にこだわって感情を描き出してくれるので、『恋のおしまい』がたくさんの人に響いたんだと思います。」と4人の監督の魅力について制作秘話を交えて話した。
またこだわりの演出に電話のシーンを挙げる。村瀬氏は「生方さんの脚本の特徴なんですけど、電話のシーンで、電話の向こうの相手の姿を見せるか見せないか、既に脚本に書いてあるんです。うちは、生方さんが書いた本をプロデューサーの僕や監督たちとで読み、思ったこと、感じたことをみんなで話し合いながら作り上げていくので、電話の時に相手を見せるか見せないかもその都度話し合って決めています。生方さんは、良い意見は取り入れてくれる方なので、そこで見せ方が変わることもありますが、電話の相手を見せるか見せないかは、どの監督も深く考えながらその都度描き分けています」と明かしてくれた。
■俳優・目黒蓮の魅力は「落差」 名優との共演で得たものとは。
主人公の夏を演じる目黒にとってフジテレビ系ドラマへの出演は『silent』以来、およそ2年ぶり。同作ではその繊細で丁寧な演技力が話題を呼び、『東京ドラマアウォード2023』で助演男優賞を受賞したほか、『第31回 橋田賞』や2024年の『エランドール賞』で新人賞を獲得するなど、俳優としての評価を高める大きなきっかけとなる作品でもあった。そうした目黒の魅力について「本当はめちゃくちゃ格好いいのに…夏を演じる時のオーラの消し方、その人物を演じるっていうことができる落差」と断言する。
「夏はどこにでもいる普通の人。そういう普通の人を演じてもらっているんですけど、イラっときたり不安になったり、皆さんがやっぱり夏に対して頼りないと思うことが多々あると思うんですよ。そういうキャラクターとして作っているので。それを本当に見事に演じている。今、日本で1番キラキラした男のはずの目黒蓮がそれを演じているっていうのが、そもそもものすごいことだと思います」と話す。加えて「しかも、今回の共演者の方々、技術だけじゃなく心で演じる名優の方々と対峙していく中で、話数を重ねるごとに(演技)が良くなっている。ブルース・リーが1階ずつ相手と戦いながら塔を上っていくあの感じ。名優と一人ずつ向き合う度に、新しい表情が出てきている気がします」と俳優としての成長ぶりに驚きの表情を浮かべた。
■人間の生死、親子の形…描くことの難しさ「胸に手を当てて考えながら作っています」
同作では“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品でありながら、人間の生や死、中絶といった問題にも焦点を当てながら描く。こうしたナイーブな題材を扱うことについて「やはりこういうテーマを扱うと、当然いろんな意見がある。社会問題って一つの面からだけでは描けないし、皆さん意見が違う。それぞれ違う考え方を持っているので、厳しい意見もいただいています。だけど生方さんには、もちろん僕や監督たちも含めて『伝えたいこと』があって。子宮頸がんという病気にした設定にも意味はあって、作中でも『検診に行きなよ』という話をしているんですけど、そういうことをみんなで考えていこうよって思いはあります」と語る。
中絶に関しては、僕らは中絶が悪いもので産むことが正しいなんてことは全く思っていないです。これに関しても本当に人それぞれ色々な考え方、捉え方がある。それぞれに抱えているものがあってのことなので、そこには正解はないし、どちらがいい悪いっていうことを言うつもりは全くなくて。『中絶が悪いって言われているようで辛いです』というご意見をいただいたりすることもあるんですけど、でもちゃんと全編を通して見ていただいたら、そうではないメッセージを伝えているとわかってもらえるのではないかと思って作っています。当たり前ですけど、命って大切なものだし、重要なものだから、その命ってものに向き合うっていうことで、すごくナイーブなことを題材にして描いているっていう意識は常に持っているので、いろんな人の意見に耳を傾けながら、胸に手を当てて考えながら作っています」と描き方の難しさにも言及した。
9話は、夏と弥生の別れが描かれ、全話の中でも最も大きな反響を呼んだ。村瀬氏はこの回について「生方さんと3作品やってきた中で、もしかしたら一番好きな回かも」と言う。「夏(目黒)が海(泉谷)と一緒に生きていこうと決めるにあたって、大きな決断をする回でした。「三人でいたい」と思う夏と、「二人でいたかった」と思っていた弥生(有村架純)、二人の気持ちを生方さんが丁寧に描いてきたからこそ、駅での別れのシーンが素晴らしいものになったと思っています」。
同ドラマは、最近では異例の全12話という長さになっている。「しかも途中で『特別編』を放送したので、まさかの13週もかけて描かせて頂いています。このドラマがずっと提示してきている『人は、いつどのように“父”になり、いつどのように“母”になるのか』というキャッチフレーズ。これも生方さんが書いてくれた言葉なのですが、この言葉も含めて、登場人物たちの物語がどういうゴールに向かっていくのか、最後の最後まで見届けてほしいと思っています」と語った。
今作は、主人公・月岡夏(目黒)が、大学生だった時に付き合っていた交際相手であり、別れて以来、7年もの間会うことがなかった南雲水季(古川琴音)の死をきっかけに、自分と血のつながった娘・海(泉谷星奈)の存在を知ったことで人生が変化していく物語。
■作品を彩る監督の世界観 名シーン振り返り「それぞれに特徴がある」
村瀬氏はこれまでの反響について「『silent』のようにゆっくり、じっくり描いていくのが夏ドラマとしてどうだろう思っていたんですけど、予想以上の反響を頂き、すごくいい手応えを感じています」と語り、「でも、『暗くて重い』って言われて、皆さんの捉え方が、やっぱり思ったより重い、暗いって捉えられてしまうんだなっていう驚きはありました」と率直な思いを明かした。「ただ時間をかけてこの世界観を見てもらっていけば、これが『温かい涙』なんだというところまでたどり着けると思っています。その意味では、6話で全登場人物の物語が一つに繋がっていくっていうのはあったので、そこまで見てきた人には『おお』って思ってもらえたんじゃないでしょうか」と期待する。
8月12日放送の第7話では水季が生前、勤めていた図書館の同僚・津野(池松壮亮)との過去が描かれた。特に、ほぼセリフのないシーンの中、津野が水季の訃報を聞いた瞬間、そして、どれだけ津野が水季を想っていたかを表現する芝居や、電話を軸にした演出が大きな話題を呼んだ。今作の演出について村瀬氏は「今回は、風間太樹監督、高野舞監督、ジョン・ウンヒ監督、山岸一行監督っていう、4人の監督に撮ってきてもらっているんですけど、いい意味でそれぞれ特徴があるんですよね」と語る。
その上で「それぞれの監督の持ち味を生かせるようにということを、実は脚本を作っている段階から考えていたりもします。それぞれに特徴があるから、各監督でやっぱり名場面が違っていて、風間監督はなんと言っても1話の最初のお葬式会場で大竹しのぶさん演じる朱音に『想像はしてください』って言われるあそこのお芝居の良さと、その直後の、海が『夏くん!』って言って、水季の映像が流れ、あの一瞬の静寂になって音楽が流れる部分なんかは「silent」に通ずるものがありますよね。風間監督の新骨調、芝居をしっかり見せる力と映像の美しさで見せる力の両方が合わさった風間監督らしさが出た1話だったと思う。
高野監督の真骨頂は3話のラストシーン。back numberの主題歌に乗せて、夏と海が浜辺で初めて2人だけで語るシーンです。まるで2人がただそこにいて、ただ話しているところを切り取ったかのような自然な表情を二人ともしています。高野監督らしい優しさが本当にあふれていましたよね。
ジョン監督はなんと言っても7話の津野君(池松)の描き方。電話のシーン、あれはもう圧倒的で、実はあのシーンって台本では『はい』で終わっているんですよ。特にあの状態で、もう水季に残された時間は少ないってわかっている中で、津野は電話がブルブルってなった時にもう何かを感じていて。で、朱音(大竹)さんだってわかった時に、もう確信を持った。僕、ジョン監督から撮影前に『はい、で終わっていいですか』と聞かれて『うん、そこまででいいよ』って答えたんです。、『はい』までの表情だけあればいいと思ってたから。それが、蓋を開けてみたら池松さんにその先まで芝居をしてもらっていて、それがあまりにも良かったんで、まるまる全部残しました(笑)。
山岸監督は、スピンオフの「兄とのはじまり」と「恋のおしまい」を撮ってもらったんですけど、それがどちらも素晴らしかったので本編の10話もお願いしました。キャストの皆さんが揃って「山岸さんは細かい!」と笑って話すくらいに細かいです。それくらい細部にこだわって感情を描き出してくれるので、『恋のおしまい』がたくさんの人に響いたんだと思います。」と4人の監督の魅力について制作秘話を交えて話した。
またこだわりの演出に電話のシーンを挙げる。村瀬氏は「生方さんの脚本の特徴なんですけど、電話のシーンで、電話の向こうの相手の姿を見せるか見せないか、既に脚本に書いてあるんです。うちは、生方さんが書いた本をプロデューサーの僕や監督たちとで読み、思ったこと、感じたことをみんなで話し合いながら作り上げていくので、電話の時に相手を見せるか見せないかもその都度話し合って決めています。生方さんは、良い意見は取り入れてくれる方なので、そこで見せ方が変わることもありますが、電話の相手を見せるか見せないかは、どの監督も深く考えながらその都度描き分けています」と明かしてくれた。
■俳優・目黒蓮の魅力は「落差」 名優との共演で得たものとは。
主人公の夏を演じる目黒にとってフジテレビ系ドラマへの出演は『silent』以来、およそ2年ぶり。同作ではその繊細で丁寧な演技力が話題を呼び、『東京ドラマアウォード2023』で助演男優賞を受賞したほか、『第31回 橋田賞』や2024年の『エランドール賞』で新人賞を獲得するなど、俳優としての評価を高める大きなきっかけとなる作品でもあった。そうした目黒の魅力について「本当はめちゃくちゃ格好いいのに…夏を演じる時のオーラの消し方、その人物を演じるっていうことができる落差」と断言する。
「夏はどこにでもいる普通の人。そういう普通の人を演じてもらっているんですけど、イラっときたり不安になったり、皆さんがやっぱり夏に対して頼りないと思うことが多々あると思うんですよ。そういうキャラクターとして作っているので。それを本当に見事に演じている。今、日本で1番キラキラした男のはずの目黒蓮がそれを演じているっていうのが、そもそもものすごいことだと思います」と話す。加えて「しかも、今回の共演者の方々、技術だけじゃなく心で演じる名優の方々と対峙していく中で、話数を重ねるごとに(演技)が良くなっている。ブルース・リーが1階ずつ相手と戦いながら塔を上っていくあの感じ。名優と一人ずつ向き合う度に、新しい表情が出てきている気がします」と俳優としての成長ぶりに驚きの表情を浮かべた。
■人間の生死、親子の形…描くことの難しさ「胸に手を当てて考えながら作っています」
同作では“親子の愛”をテーマにした完全オリジナル作品でありながら、人間の生や死、中絶といった問題にも焦点を当てながら描く。こうしたナイーブな題材を扱うことについて「やはりこういうテーマを扱うと、当然いろんな意見がある。社会問題って一つの面からだけでは描けないし、皆さん意見が違う。それぞれ違う考え方を持っているので、厳しい意見もいただいています。だけど生方さんには、もちろん僕や監督たちも含めて『伝えたいこと』があって。子宮頸がんという病気にした設定にも意味はあって、作中でも『検診に行きなよ』という話をしているんですけど、そういうことをみんなで考えていこうよって思いはあります」と語る。
中絶に関しては、僕らは中絶が悪いもので産むことが正しいなんてことは全く思っていないです。これに関しても本当に人それぞれ色々な考え方、捉え方がある。それぞれに抱えているものがあってのことなので、そこには正解はないし、どちらがいい悪いっていうことを言うつもりは全くなくて。『中絶が悪いって言われているようで辛いです』というご意見をいただいたりすることもあるんですけど、でもちゃんと全編を通して見ていただいたら、そうではないメッセージを伝えているとわかってもらえるのではないかと思って作っています。当たり前ですけど、命って大切なものだし、重要なものだから、その命ってものに向き合うっていうことで、すごくナイーブなことを題材にして描いているっていう意識は常に持っているので、いろんな人の意見に耳を傾けながら、胸に手を当てて考えながら作っています」と描き方の難しさにも言及した。
9話は、夏と弥生の別れが描かれ、全話の中でも最も大きな反響を呼んだ。村瀬氏はこの回について「生方さんと3作品やってきた中で、もしかしたら一番好きな回かも」と言う。「夏(目黒)が海(泉谷)と一緒に生きていこうと決めるにあたって、大きな決断をする回でした。「三人でいたい」と思う夏と、「二人でいたかった」と思っていた弥生(有村架純)、二人の気持ちを生方さんが丁寧に描いてきたからこそ、駅での別れのシーンが素晴らしいものになったと思っています」。
同ドラマは、最近では異例の全12話という長さになっている。「しかも途中で『特別編』を放送したので、まさかの13週もかけて描かせて頂いています。このドラマがずっと提示してきている『人は、いつどのように“父”になり、いつどのように“母”になるのか』というキャッチフレーズ。これも生方さんが書いてくれた言葉なのですが、この言葉も含めて、登場人物たちの物語がどういうゴールに向かっていくのか、最後の最後まで見届けてほしいと思っています」と語った。
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2024/09/19