俳優・長塚京三の12年ぶり主演映画『敵』が、来年(2025年)1月17日より全国公開されることが決定した。瀧内公美、河合優実、黒沢あすか、ほかが共演している。
作家でありながら、さまざまな顔を持ち、文壇・メディアとの戦いを経て、生き抜いてきた筒井康隆氏の同名小説が原作。映画『桐島、部活やめるってよ』、『騙し絵の牙』の吉田大八が監督を務めた。
1974年にフランスで俳優デビューしてから50年、日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長塚。2013年公開の『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜』以来、12年ぶりの主演映画は「僕の最後の、いや最後から二番目あたりの映画として受けさせていただきます」とコメントを寄せている。
主人公は、渡辺儀助、77歳。元大学教授で今はリタイアし、妻に先立たれている彼は、朝起きる時間、食事、衣類、使う文房具一つに至るまでを丹念に扱い、預貯金の残高と生活費があと何年持つかを計算し、自分の寿命を知る。
一見自己管理を徹底した生活を送っているように見えるが、時には晩酌を楽しみ、昔の教え子・鷹司靖子に淡い恋愛感情を抱くような、格好の悪い人間らしさもある。だが、そんな穏やかな老後を過ごす儀助の元にある日「敵」が現れる。
清楚にして妖艶な魅力をもつ大学の教え子・鷹司靖子役を瀧内、亡くなってなお儀助の心を支配する妻・信子役を黒沢、バーで出会い儀助を翻ろうする謎めいた大学生を河合が演じる。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩らが脇を固める。
長塚は、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現。前半の穏やかな世界観を一変させてしまう物語の転換は、映像ならではの表現で我々に没入感を約束する。原作の筒井氏は「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と本作を絶賛。全編モノクロームの作品に仕上げた吉田監督は「自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました」と自身の新境地を見せる。
■監督・脚本:吉田大八のコメント
何十年も前に小説を読み終えた時から「敵って何?」という問いが頭を離れず、とうとう映画までつくることになりました。筒井先生の作品を血肉として育った自分にとってそれはかつてないほど楽しく苦しい作業の連続でしたが、旅の途中で長塚京三さんをはじめとする素晴らしい俳優たち、頼もしいスタッフたちと出会えてようやく観客の皆さんが待つ目的地が見えてきた気がします。自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました。僕は幸せです。
■原作:筒井康隆のコメント
すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた。登場人物の鷹司靖子、菅井歩美、妻・信子の女性3人がよく描き分けられている。よくぞモノクロでやってくれた。
■主演:長塚京三/渡辺儀助役
タイトルは、原作である筒井康隆先生の小説の表題をいただくと聞きました。吉田監督のシナリオは、概ね原作に準じるものだとも。両者とも大変興味深く読ませていただいて、なんだろうこの主人公は、ほぼ監督そのままじゃないか、と思えてなりませんでした。ご自分でおやりになればいいのに、とさえ。難はただ一つ、「ちょっとばかり歳が足りないか!」。まだやり直しのきく年齢での「絶望」は、全き絶望とはいえませんからね。
冗談はさて置き、老耄(おいぼれ)に押しまくられて記憶が混濁し、授けを求めようにも、人も、物たちさえも、いつの間にか掌(てのひら)を反したように敵側に回っていて、恐らくは粗略でもあり、傲慢(ごうまん)でもあったろう主人公のかつてのあしらいに、幾星霜(いくせいそう)かを経て、なお復讐するかのようだ。
「この逆境、老残(ろうざん)零落(れいらく)のシラノ(ド・ベルジュラック)だったらどうするだろう?」などと考えてみたら面白そうである。僕の最後の、いや最後から二番目あたりの映画として受けさせていただきます。かなりの強行軍は承知ですが、共演者、スタッフの皆さんが、最後まで味方でいてくれることを信じて。「てき」、いいタイトルです。
■瀧内公美(鷹司靖子役)のコメント
いつかご一緒させてもらいたいと願っていた吉田大八組。大八さんの現場はとても不思議な空気感で、どの表現が良いのだろうかと試行錯誤しながら撮影を進めていましたが、なんだかほっこりしていてとても居心地が良い現場でした。
そして、長塚京三さんとの共演は言葉では言い尽くせないほど京三さんに魅了され、クランクアップの前日、明日でしばらくはお会いできないのかと思うとお風呂の中で涙が出たほどです。
とても不思議な面白い作品に仕上がっていると思います。わたしも今から「吉田大八ワールド」が楽しみです。
■黒沢あすか(渡辺信子役)のコメント
台本を手にしたとき、長塚さん演じる儀助との浴室シーンに、年齢を重ねてきたからこそ醸し出せる味わい深さを大切にしたいと思いました。大八監督が長年温めてきた、筒井康隆さん原作の「敵」。その映画化にあたり監督が手掛けた台本は、世間擦れしていない儀助の品性とノスタルジックな雰囲気が絶妙に融合し、夢か幻か、あるいはSFかと思わせる独特の世界観を感じました。出演者としてその一端を担えたことを光栄に思います。
■河合優実(菅井歩美役)のコメント
菅井歩美を演じました、河合優実です。
初めてご一緒させていただいた吉田大八監督の、この『敵』という作品への思い入れにまず刺激を受けたことを思い出します。このような作り手の熱がたしかにこもった映画に力を添えられるのはとてもうれしいことです。
短い時間ではありましたが、おそらくどの時代に読んでもどうにも魅惑的なこの物語のもと、未知なるものに顔を合わせ、考えてみる機会をもらいました。ぜひ劇場で出会ってほしいです。
作家でありながら、さまざまな顔を持ち、文壇・メディアとの戦いを経て、生き抜いてきた筒井康隆氏の同名小説が原作。映画『桐島、部活やめるってよ』、『騙し絵の牙』の吉田大八が監督を務めた。
1974年にフランスで俳優デビューしてから50年、日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長塚。2013年公開の『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜』以来、12年ぶりの主演映画は「僕の最後の、いや最後から二番目あたりの映画として受けさせていただきます」とコメントを寄せている。
主人公は、渡辺儀助、77歳。元大学教授で今はリタイアし、妻に先立たれている彼は、朝起きる時間、食事、衣類、使う文房具一つに至るまでを丹念に扱い、預貯金の残高と生活費があと何年持つかを計算し、自分の寿命を知る。
一見自己管理を徹底した生活を送っているように見えるが、時には晩酌を楽しみ、昔の教え子・鷹司靖子に淡い恋愛感情を抱くような、格好の悪い人間らしさもある。だが、そんな穏やかな老後を過ごす儀助の元にある日「敵」が現れる。
清楚にして妖艶な魅力をもつ大学の教え子・鷹司靖子役を瀧内、亡くなってなお儀助の心を支配する妻・信子役を黒沢、バーで出会い儀助を翻ろうする謎めいた大学生を河合が演じる。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩らが脇を固める。
長塚は、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現。前半の穏やかな世界観を一変させてしまう物語の転換は、映像ならではの表現で我々に没入感を約束する。原作の筒井氏は「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と本作を絶賛。全編モノクロームの作品に仕上げた吉田監督は「自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました」と自身の新境地を見せる。
■監督・脚本:吉田大八のコメント
何十年も前に小説を読み終えた時から「敵って何?」という問いが頭を離れず、とうとう映画までつくることになりました。筒井先生の作品を血肉として育った自分にとってそれはかつてないほど楽しく苦しい作業の連続でしたが、旅の途中で長塚京三さんをはじめとする素晴らしい俳優たち、頼もしいスタッフたちと出会えてようやく観客の皆さんが待つ目的地が見えてきた気がします。自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました。僕は幸せです。
■原作:筒井康隆のコメント
すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた。登場人物の鷹司靖子、菅井歩美、妻・信子の女性3人がよく描き分けられている。よくぞモノクロでやってくれた。
■主演:長塚京三/渡辺儀助役
タイトルは、原作である筒井康隆先生の小説の表題をいただくと聞きました。吉田監督のシナリオは、概ね原作に準じるものだとも。両者とも大変興味深く読ませていただいて、なんだろうこの主人公は、ほぼ監督そのままじゃないか、と思えてなりませんでした。ご自分でおやりになればいいのに、とさえ。難はただ一つ、「ちょっとばかり歳が足りないか!」。まだやり直しのきく年齢での「絶望」は、全き絶望とはいえませんからね。
冗談はさて置き、老耄(おいぼれ)に押しまくられて記憶が混濁し、授けを求めようにも、人も、物たちさえも、いつの間にか掌(てのひら)を反したように敵側に回っていて、恐らくは粗略でもあり、傲慢(ごうまん)でもあったろう主人公のかつてのあしらいに、幾星霜(いくせいそう)かを経て、なお復讐するかのようだ。
「この逆境、老残(ろうざん)零落(れいらく)のシラノ(ド・ベルジュラック)だったらどうするだろう?」などと考えてみたら面白そうである。僕の最後の、いや最後から二番目あたりの映画として受けさせていただきます。かなりの強行軍は承知ですが、共演者、スタッフの皆さんが、最後まで味方でいてくれることを信じて。「てき」、いいタイトルです。
■瀧内公美(鷹司靖子役)のコメント
いつかご一緒させてもらいたいと願っていた吉田大八組。大八さんの現場はとても不思議な空気感で、どの表現が良いのだろうかと試行錯誤しながら撮影を進めていましたが、なんだかほっこりしていてとても居心地が良い現場でした。
そして、長塚京三さんとの共演は言葉では言い尽くせないほど京三さんに魅了され、クランクアップの前日、明日でしばらくはお会いできないのかと思うとお風呂の中で涙が出たほどです。
とても不思議な面白い作品に仕上がっていると思います。わたしも今から「吉田大八ワールド」が楽しみです。
■黒沢あすか(渡辺信子役)のコメント
台本を手にしたとき、長塚さん演じる儀助との浴室シーンに、年齢を重ねてきたからこそ醸し出せる味わい深さを大切にしたいと思いました。大八監督が長年温めてきた、筒井康隆さん原作の「敵」。その映画化にあたり監督が手掛けた台本は、世間擦れしていない儀助の品性とノスタルジックな雰囲気が絶妙に融合し、夢か幻か、あるいはSFかと思わせる独特の世界観を感じました。出演者としてその一端を担えたことを光栄に思います。
■河合優実(菅井歩美役)のコメント
菅井歩美を演じました、河合優実です。
初めてご一緒させていただいた吉田大八監督の、この『敵』という作品への思い入れにまず刺激を受けたことを思い出します。このような作り手の熱がたしかにこもった映画に力を添えられるのはとてもうれしいことです。
短い時間ではありましたが、おそらくどの時代に読んでもどうにも魅惑的なこの物語のもと、未知なるものに顔を合わせ、考えてみる機会をもらいました。ぜひ劇場で出会ってほしいです。
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2024/09/14