兵庫在住の6歳になる息子の樹くんと父親の崇さん親子は、「ふるさと兵庫100山」を始め、長野県・北アルプスの燕岳（つばくろだけ）など、これまで250座以上登頂した。自然が好きだという崇さんは、「息子にも楽しみながら自然に触れて欲しい」という想いで2歳半から始めた親子登山。子育てや登山を通した学びについて、崇さんに聞いた。

【写真】その他の写真を見る

◆父親へ気遣いの言葉をかけることも…苦しい場面にぶつかっても、弱音を吐かない息子さん

――先日、「ふるさと兵庫100山」を完登されました。SNSでも、「小さい身体で良く頑張りましたね」「全国探してもこんな勇敢なお子様はいらっしゃらない」と話題になりました。

「もちろん喜びもありますが、それ以上に感謝の気持ちに溢れています。一緒に歩んだ息子、近くで支えてくれた妻、たくさんの励ましや支えてくれた方々、2人を成長させてくれた自然に感謝しきれません。そして、これまで本当に大きなトラブルもなく、親子登山を楽しめ、2人の成長に繋がる出来事がたくさんあり、感慨深いです」

――小さな身体で登頂するのは、決して容易なことではないと思います。苦しい場面にぶつかった時、息子さんにはどのような言葉をかけていますか？

「息子は、小さな体なのに弱音を吐きません。それどころか、僕に対して気遣いの言葉をかけてくれることもあります。そんな時、『本当は息子自身がしんどいのに弱音を吐かずにがんばっているのでは？』と手を繋いだり、抱き締めたりします。もちろん激励の言葉をかけますが、お互いが触れ合うことで力が湧きます」

――登山を通して息子さんは、どのようなことを学んでいるのでしょうか？

「登山の知識だけでなく、自然の素晴らしさや怖さ、がんばった後の達成感など、しっかりと感じてとってくれています。キレイな景色を見たら、大きな声でその感動を伝えてくれるのも嬉しいです」

――登山を通して息子さんにどのようなことを学んでほしいですか？

「努力が成功に繋がった時の喜びを、これからの人生に役立ててほしいです。そして親としては、過保護になりすぎず、やりたいことをやらせてあげたいし、どんどんチャレンジしてほしいと思っています。息子は、日々さまざまな姿を見せてくれますが、父親として最高に幸せです」

◆2人の立場が逆転し、僕の体が動かなくなるまで一緒に登山できたら幸せ

――息子さんの性格について、教えてください。

「芯が強く明るく活発、優しく人が大好きです。また、頑張り屋で我慢強く負けず嫌い、真面目で曲がったことが嫌いです」

――印象に残っている息子さんの出来事はありますか？

「僕の天候の読みが甘く、風も強く、大寒波の中、岩の影に2人で寒さに震えながら風がおさまるのを待っていました。すると息子が、『父ちゃんにプレゼントがあるねん！』とポケットから自分のカイロを僕に差し出してくれました。自分自身も寒い中、他人を気遣う息子の姿に、感動と尊敬の念を覚えました」

――息子さんとの日々を通してお父様自身が学んだことはありますか？

「『子どもだから無理』『子どもだからまだ早い』という声を耳にしますが、子どもの可能性は本当に凄いと思っています。やりたいことに対して全力でぶつかり、やり遂げ、失敗したとしても必ず何かを得ています。そんな息子の姿から、『何事も決めつけずやりたいことはできるだけやらせてあげよう』『手助けをしすぎずに、最低限の協力をしよう』と思いました。

　僕自身も、『まだ早い！』『もう遅い！』という気持ちを捨て、探求心やチャレンジ精神を持ち、いろいろなことに挑戦し、成長できるように頑張ろう。息子の姿を見て前向きな気持ちで人生を歩んでいくことを学びました」

――親子登山は何歳まで続けたいですか？

「一生続けていきたいです。いまは僕が、登山計画を立て息子をリードしていますが、成長した息子が僕を引っ張って行ってくれるようになったら最高ですね。毎回山頂では、息子を肩車して記念撮影をしているのですが、いつかその逆の姿で記念撮影をすることが夢です。2人の立場が逆転し、僕の体が動かなくなるまで一緒に登山できたら幸せです」

――子育てをする中、幸せを感じる瞬間は？

「息子からは日々多くの感動や驚き、喜びをもらっています。『父ちゃん！』と僕を呼んでくれるだけで、本当に幸せです」