10年間で容姿が激変した女性に注目が集まっている。自身の“垢抜けビフォーアフター写真”を公開したのは、“ボーイッシュ女子”を自称するべいたさん(@i_am__beta__)だ。生まれ持った性別に違和感はなく、今も体の男性化は望んでいない。一方で、幼少期からメンズライクなものを好み、長い髪やスカートが苦手だったと話す。女性らしく装えず垢抜けなかった少女。そんな女の子が自分らしく生きることを選択したことで、周囲も振り返るほどのハンサムに激変した人生とは。
■幼少期からあった「女性らしさ」への違和感 髪を切り見つけた“なりたかった自分”
――『スカート嫌いな高校生の10年後』の投稿に大きな反響があり、「国宝級イケメン!!」「かっこよすぎる…」「好きなものを貫ける人尊敬できる」などのコメントが相次いでいます。整形もホルモン治療などもないとのことで、ご自身でも“垢抜け”という表現をされていましたが、本当にまるで別人のような激変ぶりです。
「あのアフター写真は一番髪が短い頃でイケイケの時です(笑)。恥ずかしいですけど、よく“かっこいい”と声をかけていただけることが多かったですね」
――“ボーイッシュ女子”を自称されていますが、幼少期からいわゆる“女性らしいもの”に違和感のようなものはあったのでしょうか。
「物心がついた時から、スカートを履くのが嫌でした。髪の毛もずっと短くしたかったんですけど、母親に『似合わないからやめなさい』って言われて、あきらめていました。男兄弟が2人いて、体を動かすのが好きだったこともあって、小学校時代はずっとジャージでした。一度、運動会の日に上下ピンクのジャージを着なければならないことがあって、すごく嫌だったことは今でも覚えています」
――周りの女の子と自分の違いにモヤモヤすることは…
「小学校時代はなかったですね。サッカーを習っていたので男の子と遊ぶことも多かったし、女の子で髪の短いボーイッシュな子もいたので。友達と遊具で遊んだり鬼ごっこをしたりと活発に遊んでいて、自分に疑問を持つことはそんなになかったです」
――中学生になると、女子の制服はスカートになりますよね。
「そうです。でも女子生徒の中にひとりだけ、スラックスを履いている子がいて、“選ぶことができるのかも!”と期待し、母親に言ったんですけど、『何言ってるの?』と言い合いになってしまって。結局3年間スカートでした。嫌でしたけど、コスプレ感覚でスカートを履いていた感じです」
――ボーイッシュにイメチェンを始めたのは、いつ頃ですか。
「高校2年生の時に雑誌で『この人の髪型にしたい!』って思うモデルさんを見つけて、ひとりで美容室に行ってカットをお願いしました。それまでは母親から『短いのは似合わない』と言われ、それなら仕方ないと諦めていたんですけど、高校生になって髪なんて勝手に切ればいいのでは、と気づいてしまって。今ほど短くはなくてショートボブみたいな感じだったんですけど、切った後、鏡の中の自分の姿を見て『これが自分だ!』って強く感じたのを覚えています」
――反対していたお母さんの反応は…
「最初はそこまで短くなかったので、『短くしたんだね』ぐらい。でもその後どんどん短くなっていったので、『なんでそんなに切ってくるの!?』って、毎回言われていました(笑)」
■“ボーイッシュ女子”への無理解と偏見、好奇の目「すれ違いざまに馬鹿にされたことも」
――髪の毛を切ったことをきっかけに、どんどんボーイッシュになっていたのでしょうか?
「そうですね。高校3年生の頃にはマッシュみたいな髪型でヘアセットもしていて、見た目は本当に男の子っぽかったです。服装も、私服はメンズ。母親が買ってくる女の子っぽい服は、『絶対に着ない!』って断固拒否していました。しゃべり方や態度も、女の子らしさは1ミリもなかったと思います」
――周りの反応はいかがでしたか?
「野球部の男の子たちに馬鹿にされたり、すれ違いざまにフルネームを呼ばれてからかわれたりしました。でも、髪の毛を切った時に『この姿が自分のなりたい姿だ』と思ったし、絶対にこれからは短いままでいたかったので、何と言われようと気にしないようにして過ごしてました。髪を切ったあたりに、LGBTQやFTMという言葉も知って、“自分はこれに当てはまるんだ”と思えたことも、大きかったと思います」
――知識を得て、それまでのモヤモヤが晴れた感じでしょうか。
「こういう人もいるんだと知って調べたら、しっくりくることだらけで。今まで自分がなんなのか分からないままだったけど、言葉と意味を知れたことで、別に自分だけが変わってるわけじゃないんだって思えたんですよね。性別が女性であることに違和感はないんです。男性になりたいわけじゃない。ただメンズライクなものが好きで同性が好き、ということ」
――高校を卒業した後は、変化はありましたか?
「スポーツ系の大学だったのでボーイッシュな子もたくさんいて、嫌な思いをしたことはなく楽しく過ごせました。ただ、やっぱり偏見はありました」
――たとえば…
「部活で他大学との交流が多かったんですけど、他大学では女の子同士で付き合っている人がいて。『女の子同士で付き合うのはないよねー。想像できないし、私だったら嫌かも』と噂話する人も多くて、もし仮に自分が付き合ったとしても、絶対に言えないなと思いました」
■「身体の男性化は望んでいない。ただ自分らしくいたい」 激変前後で変わった人生観
――身体の男性化を望んでいるわけではないと伺いました。
「そうですね。手術や男性ホルモンの注射したいとか、戸籍の性別変えたいとは思っていないです。自分は男になりたいわけでもないし、女の子扱いしてよってこともない。正直、自分が何者なのかは今も分かっていないんです。でも、自分のセクシャリティーが何に当てはまろうが、自分に変わりはないよなと思っていて。だから、自分は自分でいたい。そう思えてからは、いろいろ調べるのも一切やめて、好きなように生きています」
――同じような悩みを抱えた方からの相談も多いのでは?
「インスタのDMにもたくさん相談をいただきます。自分と同じような方だけでなく、“ボーイッシュな格好だけど男の子が好き”だったり、いろいろです」
――どのようにアドバイスや回答されていますか。
「性自認と恋愛は全くの別物で、本当に様々なんですよね。ボーイッシュな見た目の人が、女性らしい見た目の人を好きかって言ったらそういうわけでもないし、ボーイッシュ同士で付き合ってるカップルさんもいるし。周りからは固定概念や偏見があるかもしれないけど、性格が人それぞれ違うように、いろいろなタイプがあると思います」
――無理に枠に当てはめて悩まなくてもいいんですね。
「自分らしくいて欲しいです。周りの目に関しては、その人の性格にもよるから一概には言えないんですけど。自分はポジティブなので、本当のことを言ったことで離れていく人がいるのは仕方ない、それでもいてくれる人を大事にしようって思えたんですよね。だからどうしたらいいか相談された時は、『もしなりたい自分がいるのなら、迷わずなったほうが今よりも楽しいよ』って、伝えるようにしています」
――べいたさん自身は、なりたい自分に激変したことで、人生観は変わりましたか。
「髪を切って本来の自分に気づけたことは、自信につながったと思います。それまでは無意識のうちに外見を気にしていたけど、自分らしくなってからは、“周りに何をいわれようとこれが自分なんだ”って、メンタルが強くなりました。だから働くかたわら、SNSの活動やサロンモデルに挑戦できたし、同性愛のイベントで自分の体験談を語れるようにもなって。自分が変われたからこそ、みんなも変われるよって思いを、これからも伝えていけたらと思っています」
(取材・文/辻内史佳)
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2024/08/27