世界71の国と地域ですでに公開され、全米で2週連続1位を獲得、設立12年でアカデミー賞常連となった気鋭のスタジオ「A24」史上最高のオープニング記録を樹立した映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(10月4日公開)。きのう25日に都内の映画館でジャパンプレミアが実施され、来日中のアレックス・ガーランド監督と映画評論家の町山智浩氏が舞台あいさつを行った。
映画の舞台は、連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている――」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていない大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていく。
本作の脚本も手がけたアレックス・ガーランド監督。これまでに、人間を凶暴化させる新種のウィルスの蔓延から28日後のロンドンを描いたサバイバルホラー『28日後...』(2002年)や『わたしを離さないで』(10年)で脚本を担当し、長編デビュー作『エクス・マキナ』(15年)で 第88回アカデミー賞視覚効果賞を受賞する快挙を果たした。
本編上映後、観客の前でガーランド監督は「私と日本の出会いは1980年代で『AKIRA』がそのきっかけです。『AKIRA』は自分が見たことのある世界を描いていながらも、同時に自分の知らない世界も描いており、既視感がありながらちょっと違う奇妙さもあって、そこにひかれました。そして1996年に初来日して日本を直に目にして、なるほど『AKIRA』はこういう世界を描いていたのかと納得しました」と親日ぶりをアピール。
町山氏から「本作のアイデアはどこから?」と尋ねられると、「この物語は私の空想から飛び出した突飛なストーリーではなく、過激派の台頭や分断など今の世界で繰り広げられている事実をそのまま反映したつもりです。本作で描かれている事が本当か否かを問うのではなく、この出来事はいつどこで止まるのか?それを問うべきです。この映画はフィクションではあるけれど、50%は実際に起きていることだと思っています」と、現在進行形の世界情勢のリアルを反映していると返答した。
本作では、リベラルなカリフォルニアと保守的なテキサスが同盟を組むという、一見想像し難い設定になっている。この設定についてガーランド監督は「映画を観た観客への思考実験だ」と言い、「政治的に相反する考えを持つ2つの州を組ませる設定を通して、私は皆さんにこう問いかけたい。このような状況下においてテキサスとカリフォルニアが結託するのは想像しがたいことですか?と。法治国家であるアメリカを崩壊させ、市民を虐げている独裁政権というファシズムに対して彼らは手を組んで抗おうとする。その姿は理にかなっていると思います。右対左の結託という構造がファシズムに抗う事よりも重要なことだとも言うのでしょうか?右か左かの話ではありません。これはファシズム対デモクラシーの戦いなのです」と話した。
またキルステン・ダンスト演じる主人公のほか、主要な登場人物たちをジャーナリストにした理由を問われたガーランド監督は「現代の特徴としてジャーナリストは敵視されがちで、それは腐敗した政治家連中がジャーナリストを矮(わい)小化しようとしているからです。私の母国イギリスでもジャーナリストたちがデモを取材したりすると、デモ参加者たちから唾を吐かれたり、暴力を振るわれたりします。これは狂気の沙汰です。ジャーナリズムとは国を守るため、我々の自由な生活を守るために必要なのにバカな政治家たちが彼らを悪者に仕立て上げています。なので本作ではジャーナリストたちをヒーローとして描きたかったのです」と狙いを明かした。
劇中では、戦っている相手が兵士なのかゲリラなのかわからない混乱した状況が巧みに描かれるシーンがある。町山氏からの指摘にガーランド監督は「ご指摘の通り、意識的に曖昧(あいまい)にしました。かつてアメリカで勃発した南北戦争は奴隷制度反対派VS賛成派というシンプルな戦争でした。しかし現在における戦争はそのようなシンプルさが崩壊し、答えを出すのも複雑でモラルの線引きも非常に曖昧です。そんな確信を持てないカオスな状況を描いたつもりです」と述べた。
町山氏は、予告でも印象的に切り取られた白人の兵士による台詞「What kind of American are you?(お前はどの種類のアメリカ人か?)」を名台詞だとピックアップ。これにガーランド監督は「その台詞は、単純明快な質問であると同時に、非常にバカげた差別的な問いかけです。ここで描きたかったのは人種差別。誰を射殺し、誰を助けるのか。その選択をあの男は人種で決めている。本作は社会の分断を扱っています。それを描く以上、レイシズム描写は必須でした」と台詞に込めた意味を解説した。
クライマックスにはワシントンD.Cが戦場と化す、衝撃的バトルシーンがある。町山氏は「兵士役の動きが俳優とは思えないくらいリアル」と絶賛すると、ガーランド監督は「それは彼らが実際に従軍したリアル米兵だからです。武器の構え方、体の動き、会話はすべて本物。最も撮影しやすかった場面でもあります。私の演出は『いつも通りにやって』だけでしたから。まさにドキュメンタリーを撮る様に撮影しました」と明かした。
戦闘シーンのリアルを追求するべく、普段以上の火薬を使用したと言い、「銃撃シーンはあまりにも爆音過ぎて、警察が駆けつける騒ぎにもなりました。でもリアルにすることで俳優はリアルに驚き、リアルに反応します。だから必要以上に火薬量を増やしたのです」と淡々と述べるガーランド監督に、町山氏が「ユア・クレイジー!」とジョーク交じりに最敬礼する一幕も。
ガーランド監督が「あのシーンを撮影した体験が次回作の着想点にもなりました。(本作と比較して)低予算ではありますが、次回作は大戦争映画です」と報告すると、会場
最後に町山氏から、本作を通して世界へのメッセージを求められたガーランド監督は、今年11月に行われるアメリカ大統領選挙を視野に「伝えたいことはただ一つ。ドナルド・トランプに票を入れてはいけないという事です!」と訴えていた。
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
映画の舞台は、連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている――」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていない大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていく。
本作の脚本も手がけたアレックス・ガーランド監督。これまでに、人間を凶暴化させる新種のウィルスの蔓延から28日後のロンドンを描いたサバイバルホラー『28日後...』(2002年)や『わたしを離さないで』(10年)で脚本を担当し、長編デビュー作『エクス・マキナ』(15年)で 第88回アカデミー賞視覚効果賞を受賞する快挙を果たした。
本編上映後、観客の前でガーランド監督は「私と日本の出会いは1980年代で『AKIRA』がそのきっかけです。『AKIRA』は自分が見たことのある世界を描いていながらも、同時に自分の知らない世界も描いており、既視感がありながらちょっと違う奇妙さもあって、そこにひかれました。そして1996年に初来日して日本を直に目にして、なるほど『AKIRA』はこういう世界を描いていたのかと納得しました」と親日ぶりをアピール。
町山氏から「本作のアイデアはどこから?」と尋ねられると、「この物語は私の空想から飛び出した突飛なストーリーではなく、過激派の台頭や分断など今の世界で繰り広げられている事実をそのまま反映したつもりです。本作で描かれている事が本当か否かを問うのではなく、この出来事はいつどこで止まるのか?それを問うべきです。この映画はフィクションではあるけれど、50%は実際に起きていることだと思っています」と、現在進行形の世界情勢のリアルを反映していると返答した。
本作では、リベラルなカリフォルニアと保守的なテキサスが同盟を組むという、一見想像し難い設定になっている。この設定についてガーランド監督は「映画を観た観客への思考実験だ」と言い、「政治的に相反する考えを持つ2つの州を組ませる設定を通して、私は皆さんにこう問いかけたい。このような状況下においてテキサスとカリフォルニアが結託するのは想像しがたいことですか?と。法治国家であるアメリカを崩壊させ、市民を虐げている独裁政権というファシズムに対して彼らは手を組んで抗おうとする。その姿は理にかなっていると思います。右対左の結託という構造がファシズムに抗う事よりも重要なことだとも言うのでしょうか?右か左かの話ではありません。これはファシズム対デモクラシーの戦いなのです」と話した。
またキルステン・ダンスト演じる主人公のほか、主要な登場人物たちをジャーナリストにした理由を問われたガーランド監督は「現代の特徴としてジャーナリストは敵視されがちで、それは腐敗した政治家連中がジャーナリストを矮(わい)小化しようとしているからです。私の母国イギリスでもジャーナリストたちがデモを取材したりすると、デモ参加者たちから唾を吐かれたり、暴力を振るわれたりします。これは狂気の沙汰です。ジャーナリズムとは国を守るため、我々の自由な生活を守るために必要なのにバカな政治家たちが彼らを悪者に仕立て上げています。なので本作ではジャーナリストたちをヒーローとして描きたかったのです」と狙いを明かした。
劇中では、戦っている相手が兵士なのかゲリラなのかわからない混乱した状況が巧みに描かれるシーンがある。町山氏からの指摘にガーランド監督は「ご指摘の通り、意識的に曖昧(あいまい)にしました。かつてアメリカで勃発した南北戦争は奴隷制度反対派VS賛成派というシンプルな戦争でした。しかし現在における戦争はそのようなシンプルさが崩壊し、答えを出すのも複雑でモラルの線引きも非常に曖昧です。そんな確信を持てないカオスな状況を描いたつもりです」と述べた。
町山氏は、予告でも印象的に切り取られた白人の兵士による台詞「What kind of American are you?(お前はどの種類のアメリカ人か?)」を名台詞だとピックアップ。これにガーランド監督は「その台詞は、単純明快な質問であると同時に、非常にバカげた差別的な問いかけです。ここで描きたかったのは人種差別。誰を射殺し、誰を助けるのか。その選択をあの男は人種で決めている。本作は社会の分断を扱っています。それを描く以上、レイシズム描写は必須でした」と台詞に込めた意味を解説した。
クライマックスにはワシントンD.Cが戦場と化す、衝撃的バトルシーンがある。町山氏は「兵士役の動きが俳優とは思えないくらいリアル」と絶賛すると、ガーランド監督は「それは彼らが実際に従軍したリアル米兵だからです。武器の構え方、体の動き、会話はすべて本物。最も撮影しやすかった場面でもあります。私の演出は『いつも通りにやって』だけでしたから。まさにドキュメンタリーを撮る様に撮影しました」と明かした。
戦闘シーンのリアルを追求するべく、普段以上の火薬を使用したと言い、「銃撃シーンはあまりにも爆音過ぎて、警察が駆けつける騒ぎにもなりました。でもリアルにすることで俳優はリアルに驚き、リアルに反応します。だから必要以上に火薬量を増やしたのです」と淡々と述べるガーランド監督に、町山氏が「ユア・クレイジー!」とジョーク交じりに最敬礼する一幕も。
ガーランド監督が「あのシーンを撮影した体験が次回作の着想点にもなりました。(本作と比較して)低予算ではありますが、次回作は大戦争映画です」と報告すると、会場
最後に町山氏から、本作を通して世界へのメッセージを求められたガーランド監督は、今年11月に行われるアメリカ大統領選挙を視野に「伝えたいことはただ一つ。ドナルド・トランプに票を入れてはいけないという事です!」と訴えていた。
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2024/08/26