俳優の仲村トオル(57)と舘ひろし(73)が刑事ドラマに帰ってくる――。さらに派手なカーアクションやガンアクションもふんだんに散りばめられているとなれば、伝説の刑事ドラマ『あぶない刑事』を思い出す人も多いのではないだろうか。2人が出演するドラマのタイトルは「Lemino」オリジナルドラマ『さらば、銃よ 警視庁特別銃装班』。総監督を務めるのが、『踊る大捜査線』を手掛けた本広克行氏という夢のような組み合わせだ。
■僕は、舘ひろしさんと柴田恭兵さんの愛の結晶(仲村)
本作は、作家・冲方丁氏の原案を本広氏が総監督を務めドラマ化したもの。銃が蔓(まん)延し、治安が著しく低下した日本を舞台に、超法規的措置として銃火器及び爆薬の使用が許可された警視庁特別銃装班(通称SGU)が、凶悪犯に立ち向かう姿が描かれる。仲村はSGU班長・真木宗一、舘はSGU創設者・花田礼治を演じる。
――仲村さん、舘さんは本作の企画を聞いたとき、どんな思いでしたか?
仲村:企画書に『あぶない刑事』や『西部警察』という文字があったのを見て…自意識過剰かもしれませんが、「これは自分がやるべき役かな」と思いましたね。僕は、舘ひろしさんと柴田恭兵さんの愛の結晶だという自負があるので(笑)。遺伝子的には自分だろうなと。
舘:受け継げるもんなら受け継いでみろという感じですが(笑)。でもトオルと一緒で、この内容で本広監督の作品となれば、断る理由は見当たらないなと思いました。
――本広総監督は、仲村さん舘さんとご一緒するというのはどんな思いだったのでしょうか?
本広:企画を練っているときから、舘さんトオルさんでやりたいねというのはその場にいた方々の総意でした。お2人が受けてくれなかったら、この企画は成り立たなかったと思います。僕は『あぶない刑事』も『西部警察』も大好きだったので、実現したらこんなに楽しいことはないと思っていました。
――劇中、舘さん演じる花田と、仲村さん演じる真木が30年来の同僚だったり、『あぶない刑事』を想像させるシーンが出てきますが、お2人の意識のなかにも『あぶない刑事』という作品はあったのでしょうか?
仲村:もちろん。僕はそこで育ちましたから。ネクタイの結び方を覚えたのも『あぶない刑事』の現場だったんです。あまりうぬぼれた表現はしたくないですが、舘さんが演じられた花田と、僕が演じた真木の関係性は、僕と舘さんでしかできないと思うんです。それは『あぶない刑事』という作品があったからこそ。そう思います。
舘:トオルと作品をやるということは、そりゃ意識しますよ。僕は、芝居をやる上で役者同士の関係性もすごく大事だなと思うタイプなんです。トオルとは、2人で費やした時間もありますし、やっていて気持ちがいいというか。安心感がありましたね。
■『あぶない刑事』から37年、2人の関係性は……
――『あぶない刑事』から37年。当時は仲村さんが新人で、舘さんはすでにスターでしたが、いまは仲村さんも若い俳優さんから憧れの存在ですよね。お2人の関係に変化はあるのでしょうか?
舘:『あぶない刑事』のときは、恭さま(柴田恭兵)がいて、中条静夫さんがいて、ベンガルさんがいて…でも、トオルは動じないんですよ。アドリブもしっかり対応していけますし。だから出会ったときから天才だと思っていましたし、いまでもやっぱり尊敬していますよ。
仲村:やめてください!(笑)『あぶない刑事』のときは僕が20歳で舘さんが30代半ばだったんです。本当に最初のころは、自分から話しかけるみたいなことは全然できない存在だったので、そこは変わったなとは思いますが、いつまでも憧れの存在です。
舘:いや、もう追い越しています(笑)。会って1週間ぐらいで、すでに追い越したって感じていたと思いますよ(笑)。
仲村:いや、半年はかかりましたよ…って、冗談ですけど(笑)、『さらば、銃よ』の第6話で、「真木にとって花田さんはどんな人ですか?」と銃装班の若手から聞かれたときに、真木が答えるセリフ。それは、僕が舘さんに感じていることを、雑談レベルで制作プロデユーサーの方にお話したら、そのまま台詞になったので、オンエアでチェックしてほしいです。
舘:「乗り越えたぞ」なんてセリフ言ってたっけ?(笑)
仲村:そうそう、「意外と短い時間で乗り越えたな」って……そんなこと言ってないですよ!(笑)。舘さんは常に僕の前を歩いてくださって、どっちに行けばいいかも、言葉ではなく背中で教えてくれる存在なんです。だから追いついたり、肩を並べたりしたら背中が見えなくなるので困るんです。これからも100年、150年ぐらい前を歩いていただきたいです。
――お2人のトークを聞いていると、本当にフランクでいい関係なんだなと感じます。
仲村:「お疲れ」と舘さんが先に現場を終えられたときに、「さっさと帰ってください。これから伸び伸びできますから」なんて言える先輩、舘さんしかいないです。そんな軽口を許してくださる懐の大きさが舘さんにはあるんです。
舘:いや決して許してないよ(笑)。でも反論できないんだよ。確かにそうだなって(笑)。
本広:本当にいつもこんな感じなんです。お2人がこんなだから、現場もやりやすいです。スタッフも若いキャストたちもみんな伸び伸びとできますよね。
■“刑事ものといえばドンパチ”を覆した『踊る大捜査線』
――刑事ドラマと言えば“ドンパチ”という先入観を覆した『踊る大捜査線』ですが、本広監督があえて今、王道刑事ドラマをやる意義とは?
本広:僕はどちらかというと、深く構えるものよりもスカっとはじけるような作品が好きなんですよね。ワクワクするじゃないですか。でも最近はいろんな制約もあるし、そういう作品が減っているなと。男のダンディズムみたいな世界観って、男性は憧れるし、女性も萌えると思うんです。
――なるほど。
本広:たしかに『踊る大捜査線』はドンパチ刑事ドラマのカウンター作品と言われていますが、実は後半は結構ドンパチやっているんです。実際、そういう派手なことをやると数字って上がるんですよね(笑)。元々は舘さんたちが作られたものを僕らは教科書にして、違うアプローチで作っていったものなんですよね。
――『さらば、銃よ』の予告編に「逮捕は諦めよう、退治するんだよ」というセリフが出てきます。このセリフは、『あぶない刑事』で舘さん演じる鷹山が、柴田恭兵さん扮する勇次に言ったセリフなんですよね。
本広:ファンが見たら気付くシーンがいっぱいあると思います。セリフだけではなく、映像的な部分でも、オマージュしているところはたくさんあるので、ぜひ探してみてください。
――舘さんは仲村さんがあのセリフを言ったとき、やっぱり舘さんの遺伝子を受け継いでいるなと感じましたか?
舘:それが…僕はあのセリフ完全に忘れていました(笑)。
本広:本当ですか? 僕ら視聴者は、舘さんたちの言動ひとつひとつにしびれまくっていたのに(笑)。でもそれがいいんですかね。気を張らずにサラッというからこそ、格好いいのかもしれませんね。
仲村:僕は人生にはおもしろいことがあるんだなってしみじみ思いました。当時21歳だった若造の僕が、長い歳月を経てこのセリフを言う日がくるとは、と感慨深かったです。
■仲村トオル、舘ひろしはなぜ変わらず格好いいのか?
――今回改めて仲村さんと舘さんの格好良さが際立つような作品でしたが、どうしてもいつまでも格好いいのでしょうか?
仲村:ある雑誌の編集長が、なぜ舘さんが格好いいのか、という記事を書かれていたんですが、それは「格好悪いことをしないからだ」という内容だったんです。自分の欲望に流されたり、自分の得になるためにズルいことをしたりしない。簡単に弱音を吐かないし、不安や恐怖も勇気で乗り越える。僕は37年間ずっと、どうしたら舘さんのように格好良くなれるんだろうと考えているのですが、いまだに答えが出ません。でもそういった目標になる方がいてくれるということが、“自分をしっかり保つ”というモチベーションになっているのかもしれません。
舘:その編集長は大きな間違いを犯しているね。僕は格好悪いことばっかりしていますからね(笑)。昔も、今も、ただ“モテたい”という思いだけで頑張っているんじゃないですかね。それだけです(笑)。
取材・文/磯部正和
写真/MitsuruYamazaki
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
■僕は、舘ひろしさんと柴田恭兵さんの愛の結晶(仲村)
本作は、作家・冲方丁氏の原案を本広氏が総監督を務めドラマ化したもの。銃が蔓(まん)延し、治安が著しく低下した日本を舞台に、超法規的措置として銃火器及び爆薬の使用が許可された警視庁特別銃装班(通称SGU)が、凶悪犯に立ち向かう姿が描かれる。仲村はSGU班長・真木宗一、舘はSGU創設者・花田礼治を演じる。
――仲村さん、舘さんは本作の企画を聞いたとき、どんな思いでしたか?
仲村:企画書に『あぶない刑事』や『西部警察』という文字があったのを見て…自意識過剰かもしれませんが、「これは自分がやるべき役かな」と思いましたね。僕は、舘ひろしさんと柴田恭兵さんの愛の結晶だという自負があるので(笑)。遺伝子的には自分だろうなと。
舘:受け継げるもんなら受け継いでみろという感じですが(笑)。でもトオルと一緒で、この内容で本広監督の作品となれば、断る理由は見当たらないなと思いました。
――本広総監督は、仲村さん舘さんとご一緒するというのはどんな思いだったのでしょうか?
本広:企画を練っているときから、舘さんトオルさんでやりたいねというのはその場にいた方々の総意でした。お2人が受けてくれなかったら、この企画は成り立たなかったと思います。僕は『あぶない刑事』も『西部警察』も大好きだったので、実現したらこんなに楽しいことはないと思っていました。
――劇中、舘さん演じる花田と、仲村さん演じる真木が30年来の同僚だったり、『あぶない刑事』を想像させるシーンが出てきますが、お2人の意識のなかにも『あぶない刑事』という作品はあったのでしょうか?
仲村:もちろん。僕はそこで育ちましたから。ネクタイの結び方を覚えたのも『あぶない刑事』の現場だったんです。あまりうぬぼれた表現はしたくないですが、舘さんが演じられた花田と、僕が演じた真木の関係性は、僕と舘さんでしかできないと思うんです。それは『あぶない刑事』という作品があったからこそ。そう思います。
舘:トオルと作品をやるということは、そりゃ意識しますよ。僕は、芝居をやる上で役者同士の関係性もすごく大事だなと思うタイプなんです。トオルとは、2人で費やした時間もありますし、やっていて気持ちがいいというか。安心感がありましたね。
■『あぶない刑事』から37年、2人の関係性は……
――『あぶない刑事』から37年。当時は仲村さんが新人で、舘さんはすでにスターでしたが、いまは仲村さんも若い俳優さんから憧れの存在ですよね。お2人の関係に変化はあるのでしょうか?
舘:『あぶない刑事』のときは、恭さま(柴田恭兵)がいて、中条静夫さんがいて、ベンガルさんがいて…でも、トオルは動じないんですよ。アドリブもしっかり対応していけますし。だから出会ったときから天才だと思っていましたし、いまでもやっぱり尊敬していますよ。
仲村:やめてください!(笑)『あぶない刑事』のときは僕が20歳で舘さんが30代半ばだったんです。本当に最初のころは、自分から話しかけるみたいなことは全然できない存在だったので、そこは変わったなとは思いますが、いつまでも憧れの存在です。
舘:いや、もう追い越しています(笑)。会って1週間ぐらいで、すでに追い越したって感じていたと思いますよ(笑)。
仲村:いや、半年はかかりましたよ…って、冗談ですけど(笑)、『さらば、銃よ』の第6話で、「真木にとって花田さんはどんな人ですか?」と銃装班の若手から聞かれたときに、真木が答えるセリフ。それは、僕が舘さんに感じていることを、雑談レベルで制作プロデユーサーの方にお話したら、そのまま台詞になったので、オンエアでチェックしてほしいです。
舘:「乗り越えたぞ」なんてセリフ言ってたっけ?(笑)
仲村:そうそう、「意外と短い時間で乗り越えたな」って……そんなこと言ってないですよ!(笑)。舘さんは常に僕の前を歩いてくださって、どっちに行けばいいかも、言葉ではなく背中で教えてくれる存在なんです。だから追いついたり、肩を並べたりしたら背中が見えなくなるので困るんです。これからも100年、150年ぐらい前を歩いていただきたいです。
――お2人のトークを聞いていると、本当にフランクでいい関係なんだなと感じます。
仲村:「お疲れ」と舘さんが先に現場を終えられたときに、「さっさと帰ってください。これから伸び伸びできますから」なんて言える先輩、舘さんしかいないです。そんな軽口を許してくださる懐の大きさが舘さんにはあるんです。
舘:いや決して許してないよ(笑)。でも反論できないんだよ。確かにそうだなって(笑)。
本広:本当にいつもこんな感じなんです。お2人がこんなだから、現場もやりやすいです。スタッフも若いキャストたちもみんな伸び伸びとできますよね。
■“刑事ものといえばドンパチ”を覆した『踊る大捜査線』
――刑事ドラマと言えば“ドンパチ”という先入観を覆した『踊る大捜査線』ですが、本広監督があえて今、王道刑事ドラマをやる意義とは?
本広:僕はどちらかというと、深く構えるものよりもスカっとはじけるような作品が好きなんですよね。ワクワクするじゃないですか。でも最近はいろんな制約もあるし、そういう作品が減っているなと。男のダンディズムみたいな世界観って、男性は憧れるし、女性も萌えると思うんです。
――なるほど。
本広:たしかに『踊る大捜査線』はドンパチ刑事ドラマのカウンター作品と言われていますが、実は後半は結構ドンパチやっているんです。実際、そういう派手なことをやると数字って上がるんですよね(笑)。元々は舘さんたちが作られたものを僕らは教科書にして、違うアプローチで作っていったものなんですよね。
――『さらば、銃よ』の予告編に「逮捕は諦めよう、退治するんだよ」というセリフが出てきます。このセリフは、『あぶない刑事』で舘さん演じる鷹山が、柴田恭兵さん扮する勇次に言ったセリフなんですよね。
本広:ファンが見たら気付くシーンがいっぱいあると思います。セリフだけではなく、映像的な部分でも、オマージュしているところはたくさんあるので、ぜひ探してみてください。
――舘さんは仲村さんがあのセリフを言ったとき、やっぱり舘さんの遺伝子を受け継いでいるなと感じましたか?
舘:それが…僕はあのセリフ完全に忘れていました(笑)。
本広:本当ですか? 僕ら視聴者は、舘さんたちの言動ひとつひとつにしびれまくっていたのに(笑)。でもそれがいいんですかね。気を張らずにサラッというからこそ、格好いいのかもしれませんね。
仲村:僕は人生にはおもしろいことがあるんだなってしみじみ思いました。当時21歳だった若造の僕が、長い歳月を経てこのセリフを言う日がくるとは、と感慨深かったです。
■仲村トオル、舘ひろしはなぜ変わらず格好いいのか?
――今回改めて仲村さんと舘さんの格好良さが際立つような作品でしたが、どうしてもいつまでも格好いいのでしょうか?
仲村:ある雑誌の編集長が、なぜ舘さんが格好いいのか、という記事を書かれていたんですが、それは「格好悪いことをしないからだ」という内容だったんです。自分の欲望に流されたり、自分の得になるためにズルいことをしたりしない。簡単に弱音を吐かないし、不安や恐怖も勇気で乗り越える。僕は37年間ずっと、どうしたら舘さんのように格好良くなれるんだろうと考えているのですが、いまだに答えが出ません。でもそういった目標になる方がいてくれるということが、“自分をしっかり保つ”というモチベーションになっているのかもしれません。
舘:その編集長は大きな間違いを犯しているね。僕は格好悪いことばっかりしていますからね(笑)。昔も、今も、ただ“モテたい”という思いだけで頑張っているんじゃないですかね。それだけです(笑)。
取材・文/磯部正和
写真/MitsuruYamazaki
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2023/04/13