フランス映画史上に燦然と輝くスター、ジェラール・フィリップの生誕100周年を記念した映画祭「ジェラール・フィリップ生誕100年映画祭」が、あす25日からヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開される。
同映画祭の目玉として、生誕100周年を記念して製作され、今年の5月に開催された「第75回カンヌ国際映画祭」クラシック部門でプレミア上映された最新ドキュメンタリー映画『ジェラール・フィリップ 最後の冬』の全編吹替ナレーションを務めた俳優の本木雅弘が、ジェラール・フィリップを語る、3つの動画が解禁となった。
1922年にフランス・カンヌで生まれ、1959年に36歳でこの世を去った、フランス映画史上最も愛された夭折の名優、ジェラール・フィリップ。『肉体の悪魔』(47年)などに出演し、25歳で瞬く間にスターに。フランス国立民衆劇場の舞台俳優としても看板的存在でもあったが、映画『花咲ける騎士道』(52年)で世界中にその名を知らしめ、一躍スターダムを駆け上がった。正統派美男スターとして、スタンダール原作の文芸大作『赤と黒』(54年)や、画家モディリアーニを演じた『モンパルナスの灯』(58年)など数多くの名作に出演。
クロード・オータン=ララ、ルネ・ クレマン、ルネ・クレール、イヴ・アレグレ、マルセル・カルネ、ルイス・ブニュエル、ロジェ・ヴァディムら数々の名監督に愛され、幅広い役柄に挑戦。陰鬱とした繊細な役から、陽気なプレイボーイやドンファンを演じ、ジャン・コクトーが「汚れなき喜劇、悲劇俳優の手本」と、アニエス・ヴァルダが「彼は心を持っていた。勇敢だった」と、そして故淀川長治氏は「映画史上最高のアイドル」と称えるなど、世界中で愛されてきた。
今回上映されるドキュメンタリー映画『ジェラール・フィリップ 最後の冬』は、2020年にフランスの文学賞、ドゥ・マゴ賞を受賞した「ジェラール・フィリップ 最後の冬」(中央公論新社/著:ジェローム・ガルサン/訳:深田孝太朗)を元に、ジェラール・フィリップの生い立ちから、駆け抜けた人生の軌跡を描いた内容だ。
ジェラール・フィリップがいかにしてスター俳優になったのか、俳優としてのキャリアを描く一方で、ハリウッドからの高額なオファーを断り、お金に困っていた旧友の演劇に出演していたこと。1944年8月のパリ解放の時にはパリ市庁舎の奪回にも協力するなど、対ナチ・レジスタンス運動へ参加していたこと。戦後には、コミュニストとして熱心に活動するなど、妻のアンヌにも背中を押され、自分の名声を正義と平和と理想のために捧げたこと。1959年の夏、病に倒れてからも、復帰に向けて野心的に舞台の企画を立てていたこと…出演映画のメイキングや貴重な舞台の映像、家族とのプライヴェートフィルムなど、最新技術でレストアされた未公開の秘蔵映像を使いながら、これまであまり明かされることのなかった「人間」ジェラール・フィリップの知られざる真実を映し出す。
■本木雅弘が語るジェラール・フィリップ
★出会いについて
フランスの詩人ジャン・コクトーのファンで、20代の頃に彼の書籍「映画について」を読み、若くして36歳で亡くなった美しい俳優さんがいることを知りました。
『肉体の悪魔』の著者でもある、自身が愛していたレーモン・ラディゲのことと並べてジャン・コクトーが、語っていたんです。悪い妖精がジェラールに「お前の栄光は短い」といたずらで言ってしまった。そして他の妖精たちが、そのつじつま合わせをするために、長く命が続いた時と見合うくらいの、強く短い栄光を与えた。
ラディゲは、短い期間に才能を惜しげもなくさらす人生になった。ジェラール・フィリップもまた、役者として精神の富を大盤振る舞いして、太く短く生きた。それはなんと並外れた贅沢なことか、と称賛したんです。
★好きな作品について
『肉体の悪魔』です。年上女性とのロマンスの物語で、17歳の青年の役を25歳のジェラール・フィリップが演じましたが、演技が完成されていました。役者の仕事は、初々しさを保つとか、何か忘れてはいけないことを胸に持ちながらそれをコントロールして演技することって難しいんです。慣れが出てきてしまったり、虚勢を張りたくなってしまったり…。ただ『肉体の悪魔』のときのジェラール・フィリップは、本当に無防備で、素直に心の形を変化させている。ただ若かったからだけじゃなくて、生まれ持っていた資質なんじゃないかなと思いました。
またジェラール・フィリップの目がどうしてあんな風に美しく見えるか。その眼差しは自意識に向いていないんです。役になりきり、物語で届けたいものがある。さらにドキュメンタリー映画『ジェラール・フィリップ 最後の冬』を観るとわかるように、情に熱い人間的な部分もあり、眼差しが他者に向かっているんです。だからそこに尊さがあって、より美しく見えるんだと思います。
あととても好きなのは『美しく小さな浜辺』です。悲しい戦争孤児の社会派ドラマですが、本当にジェラールさんは素晴らしかったですね。全編通して陰鬱な空気が漂っているんだけれど、時々小さな救いが一瞬出てくる。あれだけ美しい人が、閉塞的な世界の中で苦しい役どころをすると、そのコントラストでテーマが本当に美しく見えてくる。
人間の業や哀しみが、より深く感じられて、とても素晴らしかったです。同じイヴ・アレグレ監督の『狂熱の孤独』を観てみたいです。
★ドキュメンタリー映画『ジェラール・フィリップ 最後の冬』を観て
ジェラールさんは全身全霊、託された想いに答えた人なんじゃないかなと思うんです。時代に選ばれた人だと思います。
戦争が終わった直後で、世の中がどうなってゆくかわからず、もがきながら未来を模索している人が、若者も大人も多くいたと思います。彼らにとって、希望を託すのにふさわしい人だったと思います。妻・アンヌさんからの影響を受けながら、皆の希望に応えて生きたジェラールさんの使命感や情の厚さに拍手をしたくなりました。
ドキュメンタリー映画で、ある人の輝いていた時間、その裏にある苦悩を覗かせていただくっていうのはとても幸せな出来事だと思います。ぜひ皆さんに映画館へ足を運んでもらい、観てもらいたいです。
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
同映画祭の目玉として、生誕100周年を記念して製作され、今年の5月に開催された「第75回カンヌ国際映画祭」クラシック部門でプレミア上映された最新ドキュメンタリー映画『ジェラール・フィリップ 最後の冬』の全編吹替ナレーションを務めた俳優の本木雅弘が、ジェラール・フィリップを語る、3つの動画が解禁となった。
1922年にフランス・カンヌで生まれ、1959年に36歳でこの世を去った、フランス映画史上最も愛された夭折の名優、ジェラール・フィリップ。『肉体の悪魔』(47年)などに出演し、25歳で瞬く間にスターに。フランス国立民衆劇場の舞台俳優としても看板的存在でもあったが、映画『花咲ける騎士道』(52年)で世界中にその名を知らしめ、一躍スターダムを駆け上がった。正統派美男スターとして、スタンダール原作の文芸大作『赤と黒』(54年)や、画家モディリアーニを演じた『モンパルナスの灯』(58年)など数多くの名作に出演。
クロード・オータン=ララ、ルネ・ クレマン、ルネ・クレール、イヴ・アレグレ、マルセル・カルネ、ルイス・ブニュエル、ロジェ・ヴァディムら数々の名監督に愛され、幅広い役柄に挑戦。陰鬱とした繊細な役から、陽気なプレイボーイやドンファンを演じ、ジャン・コクトーが「汚れなき喜劇、悲劇俳優の手本」と、アニエス・ヴァルダが「彼は心を持っていた。勇敢だった」と、そして故淀川長治氏は「映画史上最高のアイドル」と称えるなど、世界中で愛されてきた。
今回上映されるドキュメンタリー映画『ジェラール・フィリップ 最後の冬』は、2020年にフランスの文学賞、ドゥ・マゴ賞を受賞した「ジェラール・フィリップ 最後の冬」(中央公論新社/著:ジェローム・ガルサン/訳:深田孝太朗)を元に、ジェラール・フィリップの生い立ちから、駆け抜けた人生の軌跡を描いた内容だ。
ジェラール・フィリップがいかにしてスター俳優になったのか、俳優としてのキャリアを描く一方で、ハリウッドからの高額なオファーを断り、お金に困っていた旧友の演劇に出演していたこと。1944年8月のパリ解放の時にはパリ市庁舎の奪回にも協力するなど、対ナチ・レジスタンス運動へ参加していたこと。戦後には、コミュニストとして熱心に活動するなど、妻のアンヌにも背中を押され、自分の名声を正義と平和と理想のために捧げたこと。1959年の夏、病に倒れてからも、復帰に向けて野心的に舞台の企画を立てていたこと…出演映画のメイキングや貴重な舞台の映像、家族とのプライヴェートフィルムなど、最新技術でレストアされた未公開の秘蔵映像を使いながら、これまであまり明かされることのなかった「人間」ジェラール・フィリップの知られざる真実を映し出す。
■本木雅弘が語るジェラール・フィリップ
★出会いについて
フランスの詩人ジャン・コクトーのファンで、20代の頃に彼の書籍「映画について」を読み、若くして36歳で亡くなった美しい俳優さんがいることを知りました。
『肉体の悪魔』の著者でもある、自身が愛していたレーモン・ラディゲのことと並べてジャン・コクトーが、語っていたんです。悪い妖精がジェラールに「お前の栄光は短い」といたずらで言ってしまった。そして他の妖精たちが、そのつじつま合わせをするために、長く命が続いた時と見合うくらいの、強く短い栄光を与えた。
ラディゲは、短い期間に才能を惜しげもなくさらす人生になった。ジェラール・フィリップもまた、役者として精神の富を大盤振る舞いして、太く短く生きた。それはなんと並外れた贅沢なことか、と称賛したんです。
★好きな作品について
『肉体の悪魔』です。年上女性とのロマンスの物語で、17歳の青年の役を25歳のジェラール・フィリップが演じましたが、演技が完成されていました。役者の仕事は、初々しさを保つとか、何か忘れてはいけないことを胸に持ちながらそれをコントロールして演技することって難しいんです。慣れが出てきてしまったり、虚勢を張りたくなってしまったり…。ただ『肉体の悪魔』のときのジェラール・フィリップは、本当に無防備で、素直に心の形を変化させている。ただ若かったからだけじゃなくて、生まれ持っていた資質なんじゃないかなと思いました。
またジェラール・フィリップの目がどうしてあんな風に美しく見えるか。その眼差しは自意識に向いていないんです。役になりきり、物語で届けたいものがある。さらにドキュメンタリー映画『ジェラール・フィリップ 最後の冬』を観るとわかるように、情に熱い人間的な部分もあり、眼差しが他者に向かっているんです。だからそこに尊さがあって、より美しく見えるんだと思います。
あととても好きなのは『美しく小さな浜辺』です。悲しい戦争孤児の社会派ドラマですが、本当にジェラールさんは素晴らしかったですね。全編通して陰鬱な空気が漂っているんだけれど、時々小さな救いが一瞬出てくる。あれだけ美しい人が、閉塞的な世界の中で苦しい役どころをすると、そのコントラストでテーマが本当に美しく見えてくる。
人間の業や哀しみが、より深く感じられて、とても素晴らしかったです。同じイヴ・アレグレ監督の『狂熱の孤独』を観てみたいです。
★ドキュメンタリー映画『ジェラール・フィリップ 最後の冬』を観て
ジェラールさんは全身全霊、託された想いに答えた人なんじゃないかなと思うんです。時代に選ばれた人だと思います。
戦争が終わった直後で、世の中がどうなってゆくかわからず、もがきながら未来を模索している人が、若者も大人も多くいたと思います。彼らにとって、希望を託すのにふさわしい人だったと思います。妻・アンヌさんからの影響を受けながら、皆の希望に応えて生きたジェラールさんの使命感や情の厚さに拍手をしたくなりました。
ドキュメンタリー映画で、ある人の輝いていた時間、その裏にある苦悩を覗かせていただくっていうのはとても幸せな出来事だと思います。ぜひ皆さんに映画館へ足を運んでもらい、観てもらいたいです。
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
2022/11/24