人気グループ・嵐による初のライブフィルム『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』がいよいよ、全国公開を迎える。これまで彼らとは、初の主演映画『ピカ☆ンチ』をはじめ、さまざまな映像作品を撮影してきた堤幸彦監督ら嵐を知り尽くしたスタッフが送る今作。膨大な数のカメラに残された記録から一瞬一瞬を選び取り、あの時、あの場所の嵐を表現した堤監督にインタビューを実施。自分は「親戚のおじさん」としつつも、5人のプロフェッショナルな部分を長く間近で見てきた堤監督が今、改めて感じるそれぞれの、そして5人の魅力とは。
■125台のカメラが映し出したカットの数々「人間味が出る編集にしたかった」
2018年11月から2019年12月まで1年以上にわたり、計50公演、1ツアーとして、日本史上最大の累計237万5千人の動員を記録した、嵐20周年のツアー『ARASHI Anniversary Tour 5×20』。このツアー中、進行していたのは「映画を撮影するため」に1日限りで開催するという、過去に例を見ない『シューティング・ライブ』。舞台となるのは2019年12月23日、東京ドーム。コロナ禍となる前の満員の会場にはA・RA・SHIコールが鳴り響いていた。
今、振り返り「嵐の節目のコンサート作品ですから、そもそも、すでに20年のいろんなものがパッケージされている。曲と観客一人ひとりの歴史というものはリンクしているからこそ、それぞれが想いを呼び起こすライブなわけです。そこに加えて、コロナの前に一番いい時にこれだけの贅沢な布陣で撮らせていただき、時間が経って見直してみると、独特の切なさと、いかに時代が変わってしまったか。普通に楽しめていたことが普通でなくなってしまったのか、そんな独特な切なさを感じました」と率直な想いを語る。
「松本(潤)くんや相葉(雅紀)くんとは14、5歳の頃から仕事を始め、その後も『ピカンチ』や二宮(和也)くん、大野(智)くんも櫻井(翔)くんも、それぞれとの付き合いが長い。だから親戚のおじさん…もう、おじいさんになっちゃったけど(笑)、距離感の近いグループであり、押しも押されもせぬ国民的スター。オフィシャルなライブ映画でありながら、壮大なプライベートフィルムであるなと感じました」とその言葉からは彼らへの愛情ものぞく。
とにかくカット数が膨大で、普段のライブ映像では見たことのないようなアングルやあえて嵐からの目線、絶妙なタイミングでファンの姿もはさみこまれるなど随所までこだわり抜かれた今作ではどのように編集作業を進行していったのか。
「人間味が出る編集にしたかった」という軸を明かしながら「嵐5人の独特のグループ感、仲の良さ。ちょっとした目線の交わり、手が触れあう、肩を組む。そういったところに人間的な信頼も含めて彼らの蓄積があると見せたかった」という。「もちろん125台のカメラが映す範囲、役割は決まっているのだけど、その位置から嵐が離れてしまったり、裏に行ってしまったりした時には、フリーランスのカメラが追う。このメカニカルな作品のなかで、そういうところにふっと収まった瞬間が人間味を映し出し、非常にいい味を出しているカットがあった」と自負する。
「それを探し出すのは並大抵の苦労ではなかったけど、3人の理解あるディレクターが一人十何曲を担当し、編集したものをまず、ダイレクトに『こうじゃない、ああじゃない』と、スクラップアンドビルドしていく。それを1ヶ月以上繰り返した後に、もう一度、125台のカメラの映像がすべて入りブラッシュアップされた映像を僕がもう一度見返して『ここは、こちらにしよう』というのを2、3回やって、チョイスされたカットの数々です」。
そのなかで、気になったのが櫻井翔のピアノソロシーン。鍵盤に這わせた手の美しさにも注目したいところだが…「ピアノの画のポイントは実は足なんです。ペダルを踏む足。これは本人たってのリクエストでもある。彼はピアノに精通しているので『監督、余裕があれば足元をお願いします』と言ったところから始まりました。確かに響きを付けたりミュートするために、あの3つのペダルは本当に重要だな、と。ただ、撮ってみると、音に効果を得るために聞こえてくる音よりも少し先に踏む、という微妙な動きなので、編集には苦労しましたが、うまくハマって、立体感のある映像にはなりました」と細かな見どころも教えてくれた。
■堤幸彦監督だからこそ語れる嵐という“奇跡のバランス”
今作の編集作業では、コロナ禍と重なったことで、彼らの映像と向き合う時間が比較的多く取れたという堤監督。撮影時間や編集作業を経て「まず大野くんは、ものすごくリズム感というか、全身から動きが自然にほとばしる。音感、リズム感がめちゃくちゃいい人なのだと思います。茫洋(ぼうよう)とした日常のように見えるけれど、キレのいいダンサーであり、シンガー。改めて、あのステージを2年近く観ていくなかで感じました」と“発見”を語る。
「二宮くんはあれだけ感情を入れて、歌をしぼりあげるように歌う。こんな日本語があるかはわからないけど、シャウトするという意味で“シャウター”だな、と思います。彼も『Stand Up!!』だったりドラマでの付き合いはすごく長く、フックがある作品が多かった。ステージに立ってあんなにも、魂を投げつけるような歌い方ができるとは。ステージに立ってひょう変するとよく言うけど、まさにそんな感じではないでしょうか。
相葉くんは、あのなかで非常にまとまりがある。中心になっている。彼をフィーチャーした映像が流れる曲もあるのですが、相葉くんは長いジャニーズの歴史を背負ってきれいにまとめることができる人だと思います。それが他のメンバーの個性と相まって、彼のようなまとまりのある人間がいないと、このグループのバランスが成立しない。重要な中心点であると思います。
それから櫻井くんはなにより多彩。ラップからピアノ、激しいのから、静かなものまで。常人では考えられないような天才的なことをやっているし、並のアイドルではできないラップのレベルの高さやリリックを作る能力があるのに、ふとした瞬間に人間味が出る愛すべき人ですね。
松本くんはこの舞台のディレクターですから、他の4人がリハーサルしているときに、スマホにメモを残しながらマイクで、スタッフに指示を出し、それで灯りが変化したり…。この原則的でありながら最新鋭の舞台演出をムダなく、愛情を持って、なにより客目線を持って意識しながら作れる珍しい稀代のディレクターであり演出家。もともとジャニーさんがその目線を持った方だった。そのDNAを継いでいるなと感心しました」。
そんな自らが見て感じてきた、5人の魅力を、語るその言葉には、5人への深い敬意と愛情を感じられる。「ジャニーさんが彼らを20年前に集めたところが奇跡の始まりだった。国民的アイドルではあるけど甥っ子のような存在。それはまた、アンビバレントですね」と笑った。
ライブの間のMCを入れ込まなかったのには理由がある。「言葉で思いを伝えるより、今回は音楽の上で、動く彼らによって“嵐”というグループを表現したかった。他のドキュメンタリーでも想いを語っていたりするので、今回、この作品では音楽に浸ってもらう。そこに垣間見える人間性を観てもらうという作品となっています」。そんな“言葉より大切なもの”を存分に味わえる作品となっている。
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
■125台のカメラが映し出したカットの数々「人間味が出る編集にしたかった」
2018年11月から2019年12月まで1年以上にわたり、計50公演、1ツアーとして、日本史上最大の累計237万5千人の動員を記録した、嵐20周年のツアー『ARASHI Anniversary Tour 5×20』。このツアー中、進行していたのは「映画を撮影するため」に1日限りで開催するという、過去に例を見ない『シューティング・ライブ』。舞台となるのは2019年12月23日、東京ドーム。コロナ禍となる前の満員の会場にはA・RA・SHIコールが鳴り響いていた。
今、振り返り「嵐の節目のコンサート作品ですから、そもそも、すでに20年のいろんなものがパッケージされている。曲と観客一人ひとりの歴史というものはリンクしているからこそ、それぞれが想いを呼び起こすライブなわけです。そこに加えて、コロナの前に一番いい時にこれだけの贅沢な布陣で撮らせていただき、時間が経って見直してみると、独特の切なさと、いかに時代が変わってしまったか。普通に楽しめていたことが普通でなくなってしまったのか、そんな独特な切なさを感じました」と率直な想いを語る。
「松本(潤)くんや相葉(雅紀)くんとは14、5歳の頃から仕事を始め、その後も『ピカンチ』や二宮(和也)くん、大野(智)くんも櫻井(翔)くんも、それぞれとの付き合いが長い。だから親戚のおじさん…もう、おじいさんになっちゃったけど(笑)、距離感の近いグループであり、押しも押されもせぬ国民的スター。オフィシャルなライブ映画でありながら、壮大なプライベートフィルムであるなと感じました」とその言葉からは彼らへの愛情ものぞく。
とにかくカット数が膨大で、普段のライブ映像では見たことのないようなアングルやあえて嵐からの目線、絶妙なタイミングでファンの姿もはさみこまれるなど随所までこだわり抜かれた今作ではどのように編集作業を進行していったのか。
「人間味が出る編集にしたかった」という軸を明かしながら「嵐5人の独特のグループ感、仲の良さ。ちょっとした目線の交わり、手が触れあう、肩を組む。そういったところに人間的な信頼も含めて彼らの蓄積があると見せたかった」という。「もちろん125台のカメラが映す範囲、役割は決まっているのだけど、その位置から嵐が離れてしまったり、裏に行ってしまったりした時には、フリーランスのカメラが追う。このメカニカルな作品のなかで、そういうところにふっと収まった瞬間が人間味を映し出し、非常にいい味を出しているカットがあった」と自負する。
「それを探し出すのは並大抵の苦労ではなかったけど、3人の理解あるディレクターが一人十何曲を担当し、編集したものをまず、ダイレクトに『こうじゃない、ああじゃない』と、スクラップアンドビルドしていく。それを1ヶ月以上繰り返した後に、もう一度、125台のカメラの映像がすべて入りブラッシュアップされた映像を僕がもう一度見返して『ここは、こちらにしよう』というのを2、3回やって、チョイスされたカットの数々です」。
そのなかで、気になったのが櫻井翔のピアノソロシーン。鍵盤に這わせた手の美しさにも注目したいところだが…「ピアノの画のポイントは実は足なんです。ペダルを踏む足。これは本人たってのリクエストでもある。彼はピアノに精通しているので『監督、余裕があれば足元をお願いします』と言ったところから始まりました。確かに響きを付けたりミュートするために、あの3つのペダルは本当に重要だな、と。ただ、撮ってみると、音に効果を得るために聞こえてくる音よりも少し先に踏む、という微妙な動きなので、編集には苦労しましたが、うまくハマって、立体感のある映像にはなりました」と細かな見どころも教えてくれた。
■堤幸彦監督だからこそ語れる嵐という“奇跡のバランス”
今作の編集作業では、コロナ禍と重なったことで、彼らの映像と向き合う時間が比較的多く取れたという堤監督。撮影時間や編集作業を経て「まず大野くんは、ものすごくリズム感というか、全身から動きが自然にほとばしる。音感、リズム感がめちゃくちゃいい人なのだと思います。茫洋(ぼうよう)とした日常のように見えるけれど、キレのいいダンサーであり、シンガー。改めて、あのステージを2年近く観ていくなかで感じました」と“発見”を語る。
「二宮くんはあれだけ感情を入れて、歌をしぼりあげるように歌う。こんな日本語があるかはわからないけど、シャウトするという意味で“シャウター”だな、と思います。彼も『Stand Up!!』だったりドラマでの付き合いはすごく長く、フックがある作品が多かった。ステージに立ってあんなにも、魂を投げつけるような歌い方ができるとは。ステージに立ってひょう変するとよく言うけど、まさにそんな感じではないでしょうか。
相葉くんは、あのなかで非常にまとまりがある。中心になっている。彼をフィーチャーした映像が流れる曲もあるのですが、相葉くんは長いジャニーズの歴史を背負ってきれいにまとめることができる人だと思います。それが他のメンバーの個性と相まって、彼のようなまとまりのある人間がいないと、このグループのバランスが成立しない。重要な中心点であると思います。
それから櫻井くんはなにより多彩。ラップからピアノ、激しいのから、静かなものまで。常人では考えられないような天才的なことをやっているし、並のアイドルではできないラップのレベルの高さやリリックを作る能力があるのに、ふとした瞬間に人間味が出る愛すべき人ですね。
松本くんはこの舞台のディレクターですから、他の4人がリハーサルしているときに、スマホにメモを残しながらマイクで、スタッフに指示を出し、それで灯りが変化したり…。この原則的でありながら最新鋭の舞台演出をムダなく、愛情を持って、なにより客目線を持って意識しながら作れる珍しい稀代のディレクターであり演出家。もともとジャニーさんがその目線を持った方だった。そのDNAを継いでいるなと感心しました」。
そんな自らが見て感じてきた、5人の魅力を、語るその言葉には、5人への深い敬意と愛情を感じられる。「ジャニーさんが彼らを20年前に集めたところが奇跡の始まりだった。国民的アイドルではあるけど甥っ子のような存在。それはまた、アンビバレントですね」と笑った。
ライブの間のMCを入れ込まなかったのには理由がある。「言葉で思いを伝えるより、今回は音楽の上で、動く彼らによって“嵐”というグループを表現したかった。他のドキュメンタリーでも想いを語っていたりするので、今回、この作品では音楽に浸ってもらう。そこに垣間見える人間性を観てもらうという作品となっています」。そんな“言葉より大切なもの”を存分に味わえる作品となっている。
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
2021/11/26