人気アニメ『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』が、26日公開の劇場版『〜 Fine(フィーネ)』でフィナーレを迎える。タイトルの通り、ステルス性能高すぎで冴えなかったヒロイン・加藤恵は、第1期〜2期を経て見違えるほど“メインヒロイン”の可憐さ、頼もしさが備わり、視聴者からも絶賛の声が相次いだ。映画公開に先立ち、このほど恵役の声優・安野希世乃と、劇場版の主題歌「glory days」を担当する歌手・春奈るなにインタビューを実施。恵が「誰もがうらやむメインヒロイン」へと成長し続ける原動力など、5年間にわたるシリーズの軌跡を振り返ってもらった。
同シリーズは丸戸史明氏によるライトノベルが原作。筋金入りのオタク男子である高校生・安芸倫也は、桜舞う坂道で出会った同学年の少女・加藤恵をメインヒロインにした理想の同人ゲーム(ギャルゲー)を制作しようと決意。原画担当の澤村・スペンサー・英梨々や、シナリオ担当の霞ヶ丘詩羽らとともにゲーム完成に向け邁進してきた。第2期『〜 ♭』(フラット)では発表したタイトルが高い評価を受ける一方で、倫也と恵は衝突・和解を経て関係性が変化。恵は新作に挑む倫也を精神的にも力強く支えるようになり、彼を慕う心模様が言動の端々に見られるようになった。
■“空気を読む”恵の変化「女の子としての感情がたくさん見えた」
――安野さんはTVシリーズから劇場版に至る恵の変化を、演じる立場からどう感じていらっしゃいますか。
【安野】決定的なのは恵の中で倫也君の存在がどんどん大きくなってしまったところですよね。具体的には『♭』の第8話と言われていますけど…断絶状態から仲直りしてリスタートを切った時から、恵にとってはただのディレクターじゃないし、ただの友達じゃないんだと思って、キュンキュンして演じてます(笑)。
恵は言いたいことを言っているようでも、イコール本心ではなくて、裏腹だったり本当は違う意味で知ってほしい気持ちがあるんですよね。他の2人(英梨々と詩羽)と比べて、空気の和の中で自分の立ち振舞いを考えちゃう子なので、恵を演じる上でも和を大切にしたい彼女の気持ちというのは一貫して考えていたことなんです。ただ、今回の劇場版では倫也への気持ちがどんどん溢れてしまって、和だけじゃない女の子としての感情がたくさん見えたと思いました。
――そうした恵の変化を、感情を抑えがちなキャラ設定のなかで絶妙に演じられてますよね。
【安野】変化する恵の気持ちをどれほどの素直レベルで、どう伝えていくかも次第に変わるし、倫也の気持ちが育つにつれどんどん感情表現も豊かになっていくんです。あとは、言葉で言ってなくてもつい足がパタパタしてたり、仕草にも出ちゃってますしね(笑)。根本的にはもう両思いなんでしょうけど、環境がスッと行かせてくれず、しょっちゅう引き裂かれてる。そのたびに恵は持ち直してそばに居続けてきたんだけど、今回いよいよダメかもってなります(笑)。
――恵って自分の力で毎回メンタルリセットできてるのすごいですよね。
【安野】そうなんですよ! 恵はとにかく立ち直る力が強い。時間を置いて自分の中でもリセットできるし、怒ってるなりに倫也とのミーティングでは「これは、いつまで? じゃあもうちょっと考えさせて」みたいに冷静にやりとりしたり…。
――春奈さんはTVアニメから劇場版まですべての主題歌を手掛けてこられましたが、恵など具体的にキャラクターを反映させている部分はあるのでしょうか。
【春奈】(第1期の)「君色シグナル」は恵のフラットさを押し出して、シリーズの始まりを感じさせる詞にしました。(第2期の)「ステラブリーズ」では、(アニメのタイトルは)“フラット”だけど、恵って実は全然フラットではないんじゃない?というのを匂わせるような恵の心の変化を入れました。完成に2ヶ月もかかってしまって。1期でそれぞれのキャラクターが理解できたからこそ、「この表現を使いたいのに、メロディーラインに言葉が足りない、どうしよう」とか考えてるうちにどんどん時間がかかってしまい難産でした。ひたすら詞のことしか考えず、気がついたら年が明けてましたね(笑)。
今回の「glory days」は集大成ではあるけど、これを聴くことによって今までのストーリーを振り返りながら未来も感じてもらえるような歌詞にしたいなと思って。今後もOVAとかドラマCDとか、いろんな展開があってほしいな、という私の一方的な願望を入れたというのもあるんですけど(笑)。
【安野】春奈さんは曲作りで恵の気持ちをいっぱい考えて下さっただけじゃなく、クリエイターの目線からもこの作品を見ることができるんだなって思いました。
■「好きな気持ちを貫き通すのって、実は難しい」クリエイターの苦難
――このシリーズでは、今おっしゃったような“クリエイター目線”で創作のリアルな苦悩も描かれてますよね。お2人は表現者としてこの点で共感できる登場人物はいますか?
【安野】英梨々は天才すぎて共感とかいう境地じゃない…。
【春奈】私はむしろ英梨々の過去とシンクロする部分があって。周りからいじめられたことでアニメ好きを隠して倫也とギスギスしていたわけですけど、私も中学生の頃からアニオタをやっていたので、当時は常に周りから奇異の目で見られたんですよね。だから、それをひたむきに隠して、でも実はそれってとてもしんどい事で。なぜ好きなものを好きと言えないのかと葛藤していました。でも、そのつらさがあったから今が楽しいし、活動していく上でそういった英梨々の感情と似通っている部分はたくさんあると思います。
――思春期に感じたその“生きづらさ”が歌手・クリエイターとしての原動力になっているのでしょうか。
【春奈】なってますね。それが無ければ多分、今ここにはいないと思います。私の人生は全てアニメから派生しているので、ファッションもアニソンも、あの時の好きって気持ちを諦めてしまっていたら今に繋がっていない。好きな気持ちを貫き通すのって、実は難しいんだけど大事なこと。
――倫也たちは創作の厳しさに直面する一方で、ディレクター・クリエイターとして将来への岐路にも立たされていますよね。お2人は今の仕事を選ぶまでに葛藤などはありましたか。
【安野】私は小中(学校)で文集に「声優になりたい」って漠然と書き続けていて、大学2年か3年のタイミングで養成所に通ってたんですけど、この1年でダメだったら就活しようって心に決めていた時期がありました。その1年が終わる直前、12月25日くらいに初めてオーディションに受かって「これはもう目指していいってことだよね! 神様、サンタさん」となって(笑)、多少無理でもこの道で頑張ろうと思えました。この1年でだめだったらという覚悟で背中を押された感じがありますね。
【春奈】私は、葛藤などは一切なかったです。昔から歌手になりたいと思っていて、生きてきた中で自分が胸を張って好きだと思えるものがアニメと音楽だったので。それしか取り柄がないっていうのもあったし、だから何が何でもそれを自分の仕事にしたいし表現できる人になりたいと心に決めていたので、就活などもせずオーディションばかり受けてましたね。
■ヒロインを信じ続ける眼差し「その愛情できれいに咲く」
――最後にお聞きしたいのですが、なぜ恵はメインヒロインとして圧倒的に成長できたのでしょう。恵が“冴える”ために必要だった要素は何だとお考えですか。
【安野】それはですね、やはり倫也が見出したからなんですよ。恵が輝くのは、倫也が「君は俺のメインヒロインだ」という目線を揺らがず持ち続け、その眼差しでずっと隣にいたからだと思うんです。倫也の目線から見るとずっと“正妻”であるし、「俺のメインヒロイン」だし、世界でたった一人の女の子ってことになるんだろうなと私は解釈してます。
――恵の力だけではメインヒロインにはなれなかった?
【安野】そう思います。やっぱり恵をヒロインだと信じ、そう扱い続ける眼差しが必要だったと思うんです。恵にとっての主人公は安芸倫也であるし、倫也にとってのメインヒロインは加藤恵。
なんというか、「君は絶対にきれいに咲く、美しい」って言い聞かせて植物を育てるような感じですかね。どんな平凡なヒマワリやたんぽぽに言い聞かせても、その愛情できれいに咲くんだと私は思います。愛情に応えたいっていう気持ちが生まれますよね。自分のことを原石だって見出してくれた人とのセッション、あの日々無くして“正妻”恵にはならなかったし、自分を見つけてくれた人がいるっていう事実が大きかったのだと思っています。
恵は倫也と出会うまで、あんなに「君は特別な女の子」って言ってくれる人は絶対いなかったはず。倫也と出会い自分自身が一歩踏み出そうと思えたから、それをグループのみんなも受け取ってくれて交換しあえたんですよね。いつも根拠なく「お前はできる」って信じてくれる暑苦しい人=倫也がいてくれたから恵はあんなにきれいに咲けたんだと思います。
【春奈】恵が植物に例えられるのは、私も実はとても共感できるんです。「君色シグナル」にも「胸の奥で眠ってたつぼみに 春の日差しを届けてくれる」と、恵を植物のように表現しているところがあって。みんなにいっぱい育ててもらった恵という点で共感しました。
【安野】しかもみんなから愛情を受け取るだけじゃなくて、きれいに咲いて、そこからできることは何かって行動できる女の子になったと思います。冴えましたよね。冴えて、咲きました(笑)。
映画『冴えない彼女の育てかた Fine』は26日公開。また、春奈るなが歌う主題歌をコンパイルした〜『冴えない彼女の育てかた』シリーズコンプリートEP〜「glory days」が23日に発売されている。
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同シリーズは丸戸史明氏によるライトノベルが原作。筋金入りのオタク男子である高校生・安芸倫也は、桜舞う坂道で出会った同学年の少女・加藤恵をメインヒロインにした理想の同人ゲーム(ギャルゲー)を制作しようと決意。原画担当の澤村・スペンサー・英梨々や、シナリオ担当の霞ヶ丘詩羽らとともにゲーム完成に向け邁進してきた。第2期『〜 ♭』(フラット)では発表したタイトルが高い評価を受ける一方で、倫也と恵は衝突・和解を経て関係性が変化。恵は新作に挑む倫也を精神的にも力強く支えるようになり、彼を慕う心模様が言動の端々に見られるようになった。
■“空気を読む”恵の変化「女の子としての感情がたくさん見えた」
――安野さんはTVシリーズから劇場版に至る恵の変化を、演じる立場からどう感じていらっしゃいますか。
【安野】決定的なのは恵の中で倫也君の存在がどんどん大きくなってしまったところですよね。具体的には『♭』の第8話と言われていますけど…断絶状態から仲直りしてリスタートを切った時から、恵にとってはただのディレクターじゃないし、ただの友達じゃないんだと思って、キュンキュンして演じてます(笑)。
恵は言いたいことを言っているようでも、イコール本心ではなくて、裏腹だったり本当は違う意味で知ってほしい気持ちがあるんですよね。他の2人(英梨々と詩羽)と比べて、空気の和の中で自分の立ち振舞いを考えちゃう子なので、恵を演じる上でも和を大切にしたい彼女の気持ちというのは一貫して考えていたことなんです。ただ、今回の劇場版では倫也への気持ちがどんどん溢れてしまって、和だけじゃない女の子としての感情がたくさん見えたと思いました。
――そうした恵の変化を、感情を抑えがちなキャラ設定のなかで絶妙に演じられてますよね。
【安野】変化する恵の気持ちをどれほどの素直レベルで、どう伝えていくかも次第に変わるし、倫也の気持ちが育つにつれどんどん感情表現も豊かになっていくんです。あとは、言葉で言ってなくてもつい足がパタパタしてたり、仕草にも出ちゃってますしね(笑)。根本的にはもう両思いなんでしょうけど、環境がスッと行かせてくれず、しょっちゅう引き裂かれてる。そのたびに恵は持ち直してそばに居続けてきたんだけど、今回いよいよダメかもってなります(笑)。
――恵って自分の力で毎回メンタルリセットできてるのすごいですよね。
【安野】そうなんですよ! 恵はとにかく立ち直る力が強い。時間を置いて自分の中でもリセットできるし、怒ってるなりに倫也とのミーティングでは「これは、いつまで? じゃあもうちょっと考えさせて」みたいに冷静にやりとりしたり…。
――春奈さんはTVアニメから劇場版まですべての主題歌を手掛けてこられましたが、恵など具体的にキャラクターを反映させている部分はあるのでしょうか。
【春奈】(第1期の)「君色シグナル」は恵のフラットさを押し出して、シリーズの始まりを感じさせる詞にしました。(第2期の)「ステラブリーズ」では、(アニメのタイトルは)“フラット”だけど、恵って実は全然フラットではないんじゃない?というのを匂わせるような恵の心の変化を入れました。完成に2ヶ月もかかってしまって。1期でそれぞれのキャラクターが理解できたからこそ、「この表現を使いたいのに、メロディーラインに言葉が足りない、どうしよう」とか考えてるうちにどんどん時間がかかってしまい難産でした。ひたすら詞のことしか考えず、気がついたら年が明けてましたね(笑)。
今回の「glory days」は集大成ではあるけど、これを聴くことによって今までのストーリーを振り返りながら未来も感じてもらえるような歌詞にしたいなと思って。今後もOVAとかドラマCDとか、いろんな展開があってほしいな、という私の一方的な願望を入れたというのもあるんですけど(笑)。
【安野】春奈さんは曲作りで恵の気持ちをいっぱい考えて下さっただけじゃなく、クリエイターの目線からもこの作品を見ることができるんだなって思いました。
■「好きな気持ちを貫き通すのって、実は難しい」クリエイターの苦難
――このシリーズでは、今おっしゃったような“クリエイター目線”で創作のリアルな苦悩も描かれてますよね。お2人は表現者としてこの点で共感できる登場人物はいますか?
【安野】英梨々は天才すぎて共感とかいう境地じゃない…。
【春奈】私はむしろ英梨々の過去とシンクロする部分があって。周りからいじめられたことでアニメ好きを隠して倫也とギスギスしていたわけですけど、私も中学生の頃からアニオタをやっていたので、当時は常に周りから奇異の目で見られたんですよね。だから、それをひたむきに隠して、でも実はそれってとてもしんどい事で。なぜ好きなものを好きと言えないのかと葛藤していました。でも、そのつらさがあったから今が楽しいし、活動していく上でそういった英梨々の感情と似通っている部分はたくさんあると思います。
――思春期に感じたその“生きづらさ”が歌手・クリエイターとしての原動力になっているのでしょうか。
【春奈】なってますね。それが無ければ多分、今ここにはいないと思います。私の人生は全てアニメから派生しているので、ファッションもアニソンも、あの時の好きって気持ちを諦めてしまっていたら今に繋がっていない。好きな気持ちを貫き通すのって、実は難しいんだけど大事なこと。
――倫也たちは創作の厳しさに直面する一方で、ディレクター・クリエイターとして将来への岐路にも立たされていますよね。お2人は今の仕事を選ぶまでに葛藤などはありましたか。
【安野】私は小中(学校)で文集に「声優になりたい」って漠然と書き続けていて、大学2年か3年のタイミングで養成所に通ってたんですけど、この1年でダメだったら就活しようって心に決めていた時期がありました。その1年が終わる直前、12月25日くらいに初めてオーディションに受かって「これはもう目指していいってことだよね! 神様、サンタさん」となって(笑)、多少無理でもこの道で頑張ろうと思えました。この1年でだめだったらという覚悟で背中を押された感じがありますね。
【春奈】私は、葛藤などは一切なかったです。昔から歌手になりたいと思っていて、生きてきた中で自分が胸を張って好きだと思えるものがアニメと音楽だったので。それしか取り柄がないっていうのもあったし、だから何が何でもそれを自分の仕事にしたいし表現できる人になりたいと心に決めていたので、就活などもせずオーディションばかり受けてましたね。
■ヒロインを信じ続ける眼差し「その愛情できれいに咲く」
――最後にお聞きしたいのですが、なぜ恵はメインヒロインとして圧倒的に成長できたのでしょう。恵が“冴える”ために必要だった要素は何だとお考えですか。
【安野】それはですね、やはり倫也が見出したからなんですよ。恵が輝くのは、倫也が「君は俺のメインヒロインだ」という目線を揺らがず持ち続け、その眼差しでずっと隣にいたからだと思うんです。倫也の目線から見るとずっと“正妻”であるし、「俺のメインヒロイン」だし、世界でたった一人の女の子ってことになるんだろうなと私は解釈してます。
――恵の力だけではメインヒロインにはなれなかった?
【安野】そう思います。やっぱり恵をヒロインだと信じ、そう扱い続ける眼差しが必要だったと思うんです。恵にとっての主人公は安芸倫也であるし、倫也にとってのメインヒロインは加藤恵。
なんというか、「君は絶対にきれいに咲く、美しい」って言い聞かせて植物を育てるような感じですかね。どんな平凡なヒマワリやたんぽぽに言い聞かせても、その愛情できれいに咲くんだと私は思います。愛情に応えたいっていう気持ちが生まれますよね。自分のことを原石だって見出してくれた人とのセッション、あの日々無くして“正妻”恵にはならなかったし、自分を見つけてくれた人がいるっていう事実が大きかったのだと思っています。
恵は倫也と出会うまで、あんなに「君は特別な女の子」って言ってくれる人は絶対いなかったはず。倫也と出会い自分自身が一歩踏み出そうと思えたから、それをグループのみんなも受け取ってくれて交換しあえたんですよね。いつも根拠なく「お前はできる」って信じてくれる暑苦しい人=倫也がいてくれたから恵はあんなにきれいに咲けたんだと思います。
【春奈】恵が植物に例えられるのは、私も実はとても共感できるんです。「君色シグナル」にも「胸の奥で眠ってたつぼみに 春の日差しを届けてくれる」と、恵を植物のように表現しているところがあって。みんなにいっぱい育ててもらった恵という点で共感しました。
【安野】しかもみんなから愛情を受け取るだけじゃなくて、きれいに咲いて、そこからできることは何かって行動できる女の子になったと思います。冴えましたよね。冴えて、咲きました(笑)。
映画『冴えない彼女の育てかた Fine』は26日公開。また、春奈るなが歌う主題歌をコンパイルした〜『冴えない彼女の育てかた』シリーズコンプリートEP〜「glory days」が23日に発売されている。
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2019/10/24