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『バンドリ!』声優陣は1日10時間の楽器練習 木谷高明氏が語るヒット理由と未来

 声優によるリアルライブ、ゲーム、コミックなどさまざまなメディアミックスを展開している次世代ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream! (バンドリ!)』(以下、バンドリ!)。同作の初の劇場版『BanG Dream! FILM LIVE』(9月13日公開)は、作中のほとんどをライブシーンにするという、ファンが心から楽しめる内容になっている。公開を迎えるにあたり、製作総指揮を担い、ブシロードグループの創始者である木谷高明氏に製作の意図やバンドリ!の成功理由、描く未来像などに迫った。

『バンドリ!』の成功理由と未来について語った木谷高明氏 (C)ORICON NewS inc.

『バンドリ!』の成功理由と未来について語った木谷高明氏 (C)ORICON NewS inc.

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■王道だけど人気がある Poppin'Partyが積み上げてきた努力

 バンドリ!の企画構想が上がったのは、2014年の3月。そこから、15年1月にプロジェクト始動が発表され、主人公バンド・Poppin'Party(通称:ポピパ)の1stライブが15年4月に行われた。最初はギター&ボーカルを務める愛美(戸山香澄役)の単独ライブにてバンドプロジェクトの発表があり、そこからベースの西本りみ(牛込りみ役)とキーボードの伊藤彩沙(市ヶ谷有咲役)が加わり、さらにギターの大塚紗英(花園たえ役)、ドラムの大橋彩香(山吹沙綾役)の加入が発表になった。

17年1月に、アニメ第1期がスタートし、現在国内ユーザー数1000万人を突破しているスマートフォン向けゲームも展開。ポピパとしては17年8月に初の日本武道館ライブも開催し、今年は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』に参戦するなど、リアルとデジタルが連動しながら人気を広げている。

 ポピパに関しては、楽器が弾ける声優を探してキャスティングを行ったが「ドラムがいなくて大変だったんですよ。大橋さんがいてくれて助かりました」と大橋の参加に感謝する。「メンバーによっては、最盛期は1日に10時間くらい楽器の練習をしていたんじゃないですかね。表に出ないところの努力を重ねて、本当にうまくなりました」と懸命な練習に取り組んだキャストたちをねぎらう。

 「主人公ユニットってあまり人気が出ないことが多いじゃないですか。その中でポピパはすごく頑張っていると思います。アニメの中でもそうですが、どうしても王道に、オーソドックスにしなきゃいけないから、作中に登場する他バンドの引き立たせ役になることもある。でも、彼女たちはちゃんと人気が出ていていると思うんですよ」。

■バンドリ!成功の3つ理由とは?

 現在、ポピパのほかにもRoselia(ロゼリア)、RAISE A SUILEN(レイズアスイレン・通称RAS)と3組のリアルバンドが活動。Roselia・RASともに2月には初の日本武道館ライブ、この夏には単独ライブも成功させるなど、順調にファンを獲得している。リアルだけでなく、アニメも20年1月から3rd Seasonの放送が決まっているが、木谷氏はバンドリ!の成功の要因を「声優がバンドをやったこと」「音楽が良いこと」「スマートフォン向けゲームの『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下、『ガルパ』)」の3つを上げる。

 「声優さんがバンドをやるのは例がない。誰もが無理だと思っていたことをやってくれました。音楽に関してはElements Gardenが気合いを入れて作ってくれている。『ガルパ』はコンセプトが良かったですよね。ゲーム性もキャラのかわいさもですし、何よりもアクティブユーザー数が多い。ほかにもカバー曲を入れたことも良かったかなと」と成功理由を明かす。一方で「そうするとアニメが出てこないんだけど」と笑い「アニメの第1期はベタだから、アニメファンには突き刺さらなかったのかなと。普段はアニメを観ない人でも楽しめるような実写ドラマにあってもおかしくないようなストーリーなので」と話す。

■バンドリ!の未来 縦ではなく横に広げるコンテンツに

 うまく上昇気流に乗り続けているバンドリ!だが、これから先の未来をどう考えているのだろうか。

 「2つあると思っていて、年齢を経ていくリアルなキャストと世界観をどうしていくかということです。バンドリ!は(戸山)香澄たちが年齢を重ねることはないんじゃないかなと思います。高校生活を送る香澄たちがいる、横で新しいバンドが出てくるんじゃないかな。それが2015年なのか、20年なのか、30年なのかはわからないようにする」。

 「バンドリ!は永遠の女子高生バンドにしたほうが良いと思っているんです。縦ではなく、横に広がるように。リアルバンドに関しては可能な限り続けていただきたいです。でも、今はリアルのことを考える必要はないと思っていて。これだけは言えるということは、年数が経ってバンドリ!というコンテンツが成熟していけば、新しいキャラクターも出てくるし、新しいバンドも出てくるんじゃないかな。新しいメンバーが入って、ファンの層が広がっていけば今よりもっとスケールアップできると思う」とまだまだ可能性の幅があることを語り、「今はこんなふうに考えています」とあくまでも現段階での案であるとする。

■日本のアニメは「間違いなく減る」と断言 これからさらに伸びるのは舞台

 さまざまなメディアミックスで成功を見せているバンドリ!だが、アニメ業界全体を見渡すと木谷氏は「間違いなくアニメは減る」と断言する。「商売になっていないんです。制作費が上がっているのと、中国の企業がアニメを買わなくなってきている。バンドリ!に関してはすごくうまくいっていて、ライブグッズもキャラクターグッズも売れていて、そこはまだまだ伸びている分野です」とし、続けて「昔はアニメは宣伝のためにやっていたんですけど、今は観てもらうことが大変。アニメを観てもらうための宣伝が必要になっていて、本末転倒な状況なんですね」と話す。

 ブシロード全体のビジョンとしては「舞台、いわゆるライブエンターテイメントには力を入れていこうと思っています」との方向性を示す。「舞台はこれまで男性があまり観ていなかったんですけど、プロジェクションマッピングなどで、ひとつの舞台で20から30のシーンを作れるようになって、メイクや衣装もランクアップしている。視覚から入ると言われる男性も飽きずに、観ていて楽しいものになりつつあるんです」と業界全体の流れを分析する。

 「でも、本当に稼ぐのはアニメやゲームなどの展開、要するにデジタルで、どうデジタルに落とし込めるかが大事。今のお客さんはリアルイベントが好きなこともあって、相対的にデジタルの価値が落ちている。デジタルは掛け算、アナログは足し算なんです」。

 掛け算と足し算がうまく噛み合い、勢いそのままに劇場版の公開を控えたバンドリ!だが「リアルで大変なのは、スケジュールもあるんですけど会場なんです」と苦労も語る。その上で「劇場だったら、この時期に必ずやるということができる。夏は色々なフェスにリアルで出ていますから、夏の終わりにデジタルでまとめてドンっとやれるサイクルに持っていきたいです。リアルでできないことをデジタルで実現するという意味合いがすごくあると思うんですよね」と、今作の形が“バンドリ!オールスターライブ”となるように来年以降も続けていきたいと展望を語った。

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