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『凪のお暇』“深み与える”音楽の魅力 「お暇感」「三角関係」を巧みに演出

 黒木華主演の金曜ドラマ『凪のお暇』(TBS系/毎週金曜 後10:00)が、話数を重ねるたびに盛り上がりを見せている。本作は、場の空気を読みすぎてしまう主人公・凪(黒木)が、その性格から過呼吸で倒れてしまったことを機に一念発起し、仕事や恋人などすべてを捨て郊外のボロアパートで“人生リセット”をはかる物語。『コンフィデンス』誌による視聴者満足度調査「オリコン ドラマバリュー」では、第5話(8月16日放送)終了時点で100Pt満点中96.4Ptと、今期No.1の満足度を獲得している。視聴者から支持される要素としては、内容や愛すべき登場キャラクターについてはもちろん、作品の世界観を巧みに表す「音楽」を評価する声も多い。ポップカルチャー研究者の柿谷浩一氏(早稲田大学総合人文科学研究センター)が、『凪のお暇』の魅力を劇中音楽の視点から解説する。

金曜ドラマ『凪のお暇』(TBS系)は、世界観を表す“音楽”も視聴者から支持されている ※写真は、8月23日放送の第6話より (C)TBS

金曜ドラマ『凪のお暇』(TBS系)は、世界観を表す“音楽”も視聴者から支持されている ※写真は、8月23日放送の第6話より (C)TBS

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◆サウンドの肝は「気鳴楽器」 人生リセット図る主人公の心情を巧みに表現

『凪のお暇』の個性的な世界観を支えているのは、プロとアマチュアの垣根なく編成された音楽ユニット・パスカルズの温もりある“ホームメイド”な音楽だ。なかでも、サウンドの肝になっているのは「気鳴楽器」。リコーダーやアコーディオン、鍵盤ハーモニカなどの“息や風”が作る音色が、のどかで癒しの物語空間を作るかたわら、その質感が「空気を読む」という物語のモチーフを巧みに絡めている。

 彼らの音楽はパーカッションにアドリブを入れ込むなど、個々の楽器が自在に音を奏でるのが特色。均整のとれた合奏というより、ズレや遅れを含んだ“即興”めいたテイストは今作でも大事にされていて、その絶妙に調子の外れた感じが、人生をリセットするヒロイン・凪(黒木華)が感じる解放感をビビッドに伝えながら、徐々に募る「理想の生き方」をめぐる違和感やギャップも浮き彫りにして、ストーリーに深みを与えている。

 加えてメインテーマ曲に象徴されるように、マーチ風の「楽団」っぽい雰囲気が作品随所から漂っているのも特長。その独特のノスタルジー感が、都心から離れた田舎生活の非日常感を盛り立てつつ、そこでの波乱含みの日々に孤軍奮闘する凪を応援したい気持ちを高めながら物語が進んでいるのも魅力だ。

◆音楽によって効果的に映し出される、凪・ゴン・慎二の三角関係

 そして、ほのぼのした音楽が『三角関係』を効果的に映しているのもポイント。ファンタジーのような緩さが作品を覆い、その世界に浸っていたいと感じさせるぶん、音楽イメージとは違う隣人・ゴン(中村倫也)の危険な本性が、激しいEDM によって露わになる物語中盤でのインパクトは大きく、そこから凪の生活が崩れてゆく展開力は圧巻だった。

 他方、調律の狂った不協和音を奏でるスローな弦のピチカートが、元カレ・慎二(高橋一生)の嫉妬やプライドの混ざったもどかしい感情をコミカルに捉えて、本当は一途で優しい素顔を魅力的に透かしている。ワルツ調のアコーディオンや、トレモロの利いたギターを伴った短調のトイピアノなど、哀愁を強く帯びた曲が凪と慎二に集中して、危うい恋を前に「自分を見失う彼女」と、それを「救う元恋人」という構図を作り、夢見心地な非日常の暮らしから“現実”を取り戻すような流れと感覚を見せているのも見応えがある。

 “心地よい”世界観の中で、どこまで“刺激”的に恋愛劇も見せられるか。そのバランスが今作の注目どころ。恋愛ドラマ特有の歯がゆさや情動を、音楽で癒しながらの展開は難しくもあるが、「ほんわかしているが、エキサイティング」な新感覚のラブストーリーになりそうで、今後も目が離せない。

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  • 金曜ドラマ『凪のお暇』(TBS系)は、世界観を表す“音楽”も視聴者から支持されている ※写真は、8月23日放送の第6話より (C)TBS
  • 写真は8月23日放送の『凪のお暇』第6話より (C)TBS
  • 写真は8月23日放送の『凪のお暇』第6話より (C)TBS
  • 金曜ドラマ『凪のお暇』(TBS系)は、世界観を表す“音楽”も視聴者から支持されている ※写真は、8月23日放送の第6話より (C)TBS
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提供元:CONFIDENCE

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