昨年、創立55周年を迎えたタツノコプロが手がけた、1970年代を代表する作品『科学忍者隊ガッチャマン』『宇宙の騎士テッカマン』『破裏拳ポリマー』『新造人間キャシャーン』のヒーローを新たな装いで蘇らせた『Infini-T Force』が誕生。昨年10月期に日本テレビほかで放送されたテレビシリーズに続き、『劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』が、公開中だ。本作で、ガッチャマン/鷲尾健役の関智一(45)と、ガッチャマンの生みの親・南部博士役の船越英一郎(57)に、劇場版の見どころやタツノコ作品への思いを聞いた。
■『劇場版Infini-T Force』は勧善懲悪ではないところに魅力がある
――お二人は一回り違いの子年(ねずみ年)生まれとのことですが、これまでに面識はあったのでしょうか?
【船越】あるんですよ、これが。
【関】『映画ドラえもん』の新声優陣による1作目、『ドラえもん のび太の恐竜2006』(2006年公開、通算26作目)でご一緒しました。
【船越】その時も私は悪役でした(笑)。
【関】2回も共演できるなんて驚きましたが、前回のアフレコも素晴らしかったので、いつかまた声の仕事でご一緒することがあるんじゃないか、という予感はありました。
――すでに予告編などで明らかになっていますが、船越さんが演じた南部博士は、科学忍者隊の創設者でありながら、健たちヒーローに「どうやら君たちは私の敵らしい」と告げているのが衝撃的です。
【船越】それぞれが歩んでいく道のりの中で、信じる正義にちょっとしたズレが生じて、南部とガッチャマンたちが対峙する構造になっています。勧善懲悪ではないところにこの物語の魅力があると思いますね。
【関】南部博士はガッチャマンの生みの親、育ての親であり、父のような存在。親子関係もちょっとした心のズレから破綻したりするじゃないですか。特に男の子にとって、父親は人生を賭けて乗り越え、勝たなければならない最大のライバルともいえる存在だと思うので、そのことを意識しながらお芝居しました。
【船越】南部が健たちと格闘するシーンがあるのですが、このアクションシーンを観るだけでも映画館に足を運ぶ価値はあると思います。今、マーベルやDCコミックの実写映画が人気を博していますが、それらを凌駕して余りある、アニメーションだとは思えない迫力のあるアクションシーンをご覧いただけると思います。
【関】俳優さんによる生身のアクションをモーションキャプチャーして作り上げているので、ものすごくリアリティーがありますし、実写ではなかなかできない、アニメーションならではの様式美もあってすごく楽しい。劇場の大画面で見届けてほしいです。
――デザインもかっこいいですよね。
【関】でもコスチュームのデザイン自体はオリジナルとあまり変わっていないんですよ。だけど新しくてより格好良く見える。とてもすてきにリファインされたスタイルだと思います。しかも、アクションシーンでめっちゃくちゃ映えるんですよ。4人のヒーローを象徴するマークが胸のあたりについているんですが、異なる作品のヒーローなのに統一感もあって、闇夜に発光する胸のマークがまたかっこいいんです。
【船越】『Infini-T Force』は、コスチュームもキャラクターもアップデートされているけれど、オールドファンのノスタルジーに水を差すこともないんですよね。リメイクものってどうしてもオリジナルと比べたり、違いに戸惑ったりするじゃないですか、でも『Infini-T Force』はそういう抵抗を感じることなく素直に入っていける作品になっているんじゃないかな。僕もオリジナルの南部博士を意識しましたし、旧作ファンのイメージとかけ離れた南部博士にはしたくない、と心がけました。
■タツノコプロ作品への思い
――タツノコプロ作品への思いをお聞かせください。
【船越】私は57歳なので、タツノコと一緒に育って、タツノコアニメをシャワーのように浴びて大きくなりました。タツノコプロの記念すべき第1作、当時まだ白黒アニメだった『宇宙エース』から『マッハGoGoGo』『おらぁグズラだど』『紅三四郎』『ハクション大魔王』『昆虫物語みなしごハッチ』『いなかっぺ大将』と枚挙にいとまがありません。幼稚園児の時に『宇宙エース』でアニメの入学式をして、中学生の時に『ガッチャマン』を観て卒業式を迎えた、というのがタツノコプロと僕の歴史です。
『新造人間キャシャーン』はリアルタイムではなくだいぶ大人になってから、深夜に再放送していたのを偶然観て、ハマりました。そうだ、そうだ、僕はタツノコアニメで育ったんだ、“タツノコの落とし子”なんだと、懐かしくもあり。『キャシャーン』は切ないところがあって、深いドラマが描かれていたことに気づいて。大人になってもこんなに楽しめるのか、と再確認した覚えがありますね。
【関】僕は、船越さんの卒業と入れ替わるように入学した感じです。『ガッチャマン』以降のタツノコ作品をよく観ていました。『ガッチャマン』といえば、頭に血がのぼってバードミサイルのスイッチを押そうとするジョーを、「待て、ジョー」と健が止めるくだりがちょいちょい出てきたんですが、その掛け合いをよく友達と真似して遊んでいましたね。科学忍法火の鳥もよく真似したなぁ。
――『劇場版Infini-T Force』には、話題のコンドルのジョー(CV:鈴木一真)が満を持して登場します。
【船越】『ガッチャマン』は小さい子も見ていたと思うけど、僕ら中高生が夢中になって観ていた印象がありますね。コンドルのジョーの女子人気がすごかった。今じゃ珍しいことでもなんでもないけど、主人公以外のサブキャラクターが人気になった先駆けはコンドルのジョーだったんじゃないかな。その後、『科学忍者隊ガッチャマンII』が放送されましたが、後半はジョーが主人公と言ってもいいくらい、彼の物語ばかり追いかけていたんですよ。
――昨年は日本でアニメが誕生してから100周年の節目でもありました。その歴史の中で、1970年代のアニメーション作品が、3DCGによって新たな息吹を吹き込まれ、新たな世代に伝える事ができるのは、素晴らしいことだと思います。今後に期待することは?
【関】日本でアニメが作り始められた頃から、たくさんのクリエイターの方たちがさまざまな創造力でたくさんの作品を作ってきたと思うんですが、当時の技術ではできなかったこともたくさんあったと思うんです。それが映像技術などの進歩により、アイデアを実現することができるようになってきた。人間の発想力・創造力は限界が無いと言われますが、それを表現するための技術もどんどんグレードアップしていくと思う。そこに何か人間のぬくもりみたいなものを声優として吹き込んでいけたらいいなと思っています。
【船越】アニメーションは、日本が世界に誇れる文化の一つ。手塚治虫さんや吉田竜夫さん(タツノコプロの創業者)らパイオニアたちの思い、作品に込められたヒューマニズムが連綿と受け継がれ、日本のアニメーションの特徴、魅力になっていると思うんです。日本のアニメーション作品が、海外のクリエイターにインスピレーションを与えているのは事実だし、個人的な印象として、既視感のあるハリウッド映画がけっこうあるんですよ。子どもの頃に観たアニメぽいな、って思うことが。それで、勝手に誇らしい気持ちになってね(笑)。今後も日本のアニメーションが世界をリードしていくことを期待しています。
■公式サイト
http://www.infini-tforce.com
■『劇場版Infini-T Force』は勧善懲悪ではないところに魅力がある
――お二人は一回り違いの子年(ねずみ年)生まれとのことですが、これまでに面識はあったのでしょうか?
【船越】あるんですよ、これが。
【関】『映画ドラえもん』の新声優陣による1作目、『ドラえもん のび太の恐竜2006』(2006年公開、通算26作目)でご一緒しました。
【船越】その時も私は悪役でした(笑)。
【関】2回も共演できるなんて驚きましたが、前回のアフレコも素晴らしかったので、いつかまた声の仕事でご一緒することがあるんじゃないか、という予感はありました。
――すでに予告編などで明らかになっていますが、船越さんが演じた南部博士は、科学忍者隊の創設者でありながら、健たちヒーローに「どうやら君たちは私の敵らしい」と告げているのが衝撃的です。
【船越】それぞれが歩んでいく道のりの中で、信じる正義にちょっとしたズレが生じて、南部とガッチャマンたちが対峙する構造になっています。勧善懲悪ではないところにこの物語の魅力があると思いますね。
【関】南部博士はガッチャマンの生みの親、育ての親であり、父のような存在。親子関係もちょっとした心のズレから破綻したりするじゃないですか。特に男の子にとって、父親は人生を賭けて乗り越え、勝たなければならない最大のライバルともいえる存在だと思うので、そのことを意識しながらお芝居しました。
【船越】南部が健たちと格闘するシーンがあるのですが、このアクションシーンを観るだけでも映画館に足を運ぶ価値はあると思います。今、マーベルやDCコミックの実写映画が人気を博していますが、それらを凌駕して余りある、アニメーションだとは思えない迫力のあるアクションシーンをご覧いただけると思います。
【関】俳優さんによる生身のアクションをモーションキャプチャーして作り上げているので、ものすごくリアリティーがありますし、実写ではなかなかできない、アニメーションならではの様式美もあってすごく楽しい。劇場の大画面で見届けてほしいです。
――デザインもかっこいいですよね。
【関】でもコスチュームのデザイン自体はオリジナルとあまり変わっていないんですよ。だけど新しくてより格好良く見える。とてもすてきにリファインされたスタイルだと思います。しかも、アクションシーンでめっちゃくちゃ映えるんですよ。4人のヒーローを象徴するマークが胸のあたりについているんですが、異なる作品のヒーローなのに統一感もあって、闇夜に発光する胸のマークがまたかっこいいんです。
【船越】『Infini-T Force』は、コスチュームもキャラクターもアップデートされているけれど、オールドファンのノスタルジーに水を差すこともないんですよね。リメイクものってどうしてもオリジナルと比べたり、違いに戸惑ったりするじゃないですか、でも『Infini-T Force』はそういう抵抗を感じることなく素直に入っていける作品になっているんじゃないかな。僕もオリジナルの南部博士を意識しましたし、旧作ファンのイメージとかけ離れた南部博士にはしたくない、と心がけました。
■タツノコプロ作品への思い
――タツノコプロ作品への思いをお聞かせください。
【船越】私は57歳なので、タツノコと一緒に育って、タツノコアニメをシャワーのように浴びて大きくなりました。タツノコプロの記念すべき第1作、当時まだ白黒アニメだった『宇宙エース』から『マッハGoGoGo』『おらぁグズラだど』『紅三四郎』『ハクション大魔王』『昆虫物語みなしごハッチ』『いなかっぺ大将』と枚挙にいとまがありません。幼稚園児の時に『宇宙エース』でアニメの入学式をして、中学生の時に『ガッチャマン』を観て卒業式を迎えた、というのがタツノコプロと僕の歴史です。
『新造人間キャシャーン』はリアルタイムではなくだいぶ大人になってから、深夜に再放送していたのを偶然観て、ハマりました。そうだ、そうだ、僕はタツノコアニメで育ったんだ、“タツノコの落とし子”なんだと、懐かしくもあり。『キャシャーン』は切ないところがあって、深いドラマが描かれていたことに気づいて。大人になってもこんなに楽しめるのか、と再確認した覚えがありますね。
【関】僕は、船越さんの卒業と入れ替わるように入学した感じです。『ガッチャマン』以降のタツノコ作品をよく観ていました。『ガッチャマン』といえば、頭に血がのぼってバードミサイルのスイッチを押そうとするジョーを、「待て、ジョー」と健が止めるくだりがちょいちょい出てきたんですが、その掛け合いをよく友達と真似して遊んでいましたね。科学忍法火の鳥もよく真似したなぁ。
――『劇場版Infini-T Force』には、話題のコンドルのジョー(CV:鈴木一真)が満を持して登場します。
【船越】『ガッチャマン』は小さい子も見ていたと思うけど、僕ら中高生が夢中になって観ていた印象がありますね。コンドルのジョーの女子人気がすごかった。今じゃ珍しいことでもなんでもないけど、主人公以外のサブキャラクターが人気になった先駆けはコンドルのジョーだったんじゃないかな。その後、『科学忍者隊ガッチャマンII』が放送されましたが、後半はジョーが主人公と言ってもいいくらい、彼の物語ばかり追いかけていたんですよ。
――昨年は日本でアニメが誕生してから100周年の節目でもありました。その歴史の中で、1970年代のアニメーション作品が、3DCGによって新たな息吹を吹き込まれ、新たな世代に伝える事ができるのは、素晴らしいことだと思います。今後に期待することは?
【関】日本でアニメが作り始められた頃から、たくさんのクリエイターの方たちがさまざまな創造力でたくさんの作品を作ってきたと思うんですが、当時の技術ではできなかったこともたくさんあったと思うんです。それが映像技術などの進歩により、アイデアを実現することができるようになってきた。人間の発想力・創造力は限界が無いと言われますが、それを表現するための技術もどんどんグレードアップしていくと思う。そこに何か人間のぬくもりみたいなものを声優として吹き込んでいけたらいいなと思っています。
【船越】アニメーションは、日本が世界に誇れる文化の一つ。手塚治虫さんや吉田竜夫さん(タツノコプロの創業者)らパイオニアたちの思い、作品に込められたヒューマニズムが連綿と受け継がれ、日本のアニメーションの特徴、魅力になっていると思うんです。日本のアニメーション作品が、海外のクリエイターにインスピレーションを与えているのは事実だし、個人的な印象として、既視感のあるハリウッド映画がけっこうあるんですよ。子どもの頃に観たアニメぽいな、って思うことが。それで、勝手に誇らしい気持ちになってね(笑)。今後も日本のアニメーションが世界をリードしていくことを期待しています。
■公式サイト
http://www.infini-tforce.com
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2018/03/01