日本のアニメーションの歴史に燦然と輝く不朽の名作『宇宙戦艦ヤマト』。現在、1978年に劇場公開された映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』をモチーフにした完全新作シリーズ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(全七章)が制作され、順次、劇場上映、Blu-ray&DVDでファンを楽しませている。10月14日には『第三章「純愛篇」』の劇場上映が3週間限定でスタート。上映を記念して、シリーズ構成を手掛ける福井晴敏氏(48)と主人公・古代進の声優・小野大輔(39)のスペシャル対談が実現した。
――福井さんにとっての“ファースト”『宇宙戦艦ヤマト』は?
【福井】小学4年生の夏休み、劇場公開されたテレビシリーズの総集編の『宇宙戦艦ヤマト』で、テレビで観ました。親戚の家で、夜、大人たちと一緒に観たんです。チャンネルはフジテレビだったことも覚えています(笑)。それまでは『宇宙戦艦ヤマト』というタイトルを聞いたことがあったくらいで、積極的に観たいとは思っていなかったんだけど、図らずも観ることになって、すっかり魅せられてしまいました。
その時、明確に言葉にしたわけではないのですが、アニメーションというのがもしかしたら、実写映画と肩を並べるような表現媒体になっていくんだろうな、というのを感じ取っていたんだと思います。僕らの世代はアニメやゲームの進化を見てきた世代ですが、まさに進化の瞬間を目の当たりにしたような鮮烈な印象を受けました。
【小野】僕は『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が公開された年に生まれたので、当時の熱をリアルタイムで知るわけではありませんが、旧作はどれも、今観てもまったく色あせない作品ばかりですし、若い世代が観ても揺さぶられるものがある。『宇宙戦艦ヤマト』には日本人の心の琴線に触れる何かがあるんですよね。それは『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』にも受け継がれていると思います。ところで、福井さんは小4の頃、将来、何になりたいと思っていましたか?
【福井】う〜ん、思い出せないな(笑)。日々、どうやったら勉強しないですむか、そんなことばかり考えている子どもでしたね。刹那的な生き方をしていたので、具体的な将来の夢はなかったんじゃないかな。まさに、残り少なくなった夏休み、宿題をどう片付けるか考えていた時に、『宇宙戦艦ヤマト』を観て、「人類とは何か」といったこと突きつけられ、びっくりしちゃったんだろうね(笑)。
【小野】なんだか、意外ですね。
【福井】実は、読書も大嫌いで、読書感想文も大の苦手だった。学校が指定する本はどれもつまらなく思えて、途中で読む気も失せる。ある時、自由に本を選んでいいと言われ、存在しない本を自分の中ででっち上げて、その感想を書いたことがあった。これで本を読む時間を外で遊ぶ時間に回せるって思ったんだよね。
【小野】逆に、すごいですね。原作と感想文、2つも創作したってことですよ。
【福井】ちょうど『宇宙戦艦ヤマト』を観た頃かな? つなげすぎかもしれないけど、『宇宙戦艦ヤマト』を観たことで、物語ることの面白さ、ものづくりのスイッチが入ったのかもしれない。わずか2時間のアニメでも、いろんなことが語れるんだな、という興味がわいたんだと思います。
――福井さんは今回の『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』のオファーは、どんなお気持ちで承諾されたんですか?
【福井】「ガンダム」をやって(『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』)、「ヤマト」もやるなんて、我ながら「節操がない」と思った(笑)。下手に手を出したらやけどする。だからこそ、やるなら勝算があってやったのだ、と一見してわかるレベルのものを創り出さないといけない。それでモチーフにする『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』を見直して、これならいけるんじゃないか、という勝算が自分の中で見えたので、引き受けました。
【小野】僕自身、いちアニメファンであり、ガンダム直撃世代でもあるので、『機動戦士ガンダムUC』を観ていました。たしかファーストガンダム(『機動戦士ガンダム』)は、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の翌年から放送が始まったんですよね。もちろん、リアルタイムでファーストガンダムを観ていたわけではないんですが、物心ついた頃にはガンダムが大人気で。自分のお小遣いで初めて借りたレンタルビデオはOVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(89年)、初めて観た映画は『機動戦士ガンダムF91』(91年)でしたから。
【福井】ガンダムファン的に優等生じゃないですか(笑)
【小野】そういう素地のある僕が観て、『機動戦士ガンダムUC』は本当に面白い作品でした。福井さんが目の前にいるから言うのではなく、純粋にそう思っていましたから、あの福井さんが『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を書かれると聞いて、理屈じゃない納得がありました。これは間違いなく、面白い作品になるだろうし、前のシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2199』とは違った『宇宙戦艦ヤマト』になるんだろうな、という期待感で胸が躍りました。福井さんがおっしゃっていた勝算というのは?
【福井】旧作の頃と今では、反転してしまっていることが多々あるじゃないですか。旧作が公開された当時、映画が大ヒットする一方で、軍国主義だった日本軍を想起させる「特攻賛美」はけしからん、といった批判がありました。今、どうでしょう。日本が右傾化していると言われたり、世界中で自爆テロのニュースが絶えなかったり。そういう中で、「特攻賛美」と言われた映画を作り直すなんて、どれほど至難の業か。まさにそこがつくり手として燃えたところです。旧作の時代背景と、いまの時代背景を照らし合わせて、変わったところを突いて、突いて、突きまくった先に突破口があるのではないか、と思いました。
結果的に大勢の人が観てヒットした作品というのは、その時代に生きる人たちがうすうす感じているものに対して、「そうそう、これ!」と思える何かが描かれていたり、せりふとして言ってくれていたりするものです。今の人たちは、何を考えているのか、それに向き合っていけば、きっと、いま、語るべき物語が書ける。『宇宙戦艦ヤマト』だから語れる。アニメーションという表現方法だから描ける。そう思いました。
――小野さんは、先々の展開を知らされずにアフレコに臨まれているそうですが、
【小野】そうですね、台本が届くたびに、そうくるか、とドキドキしています。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の古代は、さまざまな選択を迫られ、そのすべてに命がけで応じていく。僕も古代と同じ気持ちで、全力でお芝居をしたいと思っているので、あえて聞かなくてもいいと思っています。
【福井】僕としては小野さんが演じた『宇宙戦艦ヤマト2199』の古代進を観ているので、「こう演じてほしい」というより、「どういう古代になるのか示せ」といった気持ちでいます(笑)
【小野】ズォーダーみたいなことを言わないでくださいよ(笑)。とはいえ、本当に鍵となるシーンについては、古代のせりふにどのような思いが込められているのか、福井さんや監督の羽原(信義)さんとしっかり話し合って、演じています。第三章にも、そういうシーンがありました。
【福井】ヤマトに密航していた森雪が現れ、古代はどうするのか、というところですね。
【小野】古代が雪に「きみに艦内で会った時、ただただうれしかった」と言うシーンがあるのですが、そこがすごく好きです。アフレコしながら、作品のテーマが、理屈じゃなくて、感情でわかった瞬間でもありました。
【福井】第三章は、この作品全体の所信表明をしているところでもあって、ここから本筋に入っていきます。僕が言うのもなんですが、小野さんのファンで、まだ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を観ていない人がいたら、それは人生の大きな損失です(笑)。特にこの第三章は、役者としての小野さんの力をあてにして作りました。声の芝居に比重を置くというのは、アニメーション作りにおいてはリスクを伴うもの。でも、僕は大丈夫だと思ったので、スタッフの反対を押し切って、小野さんの芝居に賭けました。そして、勝ちました。
【小野】そう言っていただけるなんて、役者冥利に尽きます。第三章は、いろんな選択、いろんな決断を迫られる緊張感があり、かつドラマチックに展開していきます。演じながら、古代にすごく共感できましたし、観客の皆さんにもきっと抗いがたい魅力を感じていただけると思います。
――福井さんにとっての“ファースト”『宇宙戦艦ヤマト』は?
【福井】小学4年生の夏休み、劇場公開されたテレビシリーズの総集編の『宇宙戦艦ヤマト』で、テレビで観ました。親戚の家で、夜、大人たちと一緒に観たんです。チャンネルはフジテレビだったことも覚えています(笑)。それまでは『宇宙戦艦ヤマト』というタイトルを聞いたことがあったくらいで、積極的に観たいとは思っていなかったんだけど、図らずも観ることになって、すっかり魅せられてしまいました。
その時、明確に言葉にしたわけではないのですが、アニメーションというのがもしかしたら、実写映画と肩を並べるような表現媒体になっていくんだろうな、というのを感じ取っていたんだと思います。僕らの世代はアニメやゲームの進化を見てきた世代ですが、まさに進化の瞬間を目の当たりにしたような鮮烈な印象を受けました。
【小野】僕は『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が公開された年に生まれたので、当時の熱をリアルタイムで知るわけではありませんが、旧作はどれも、今観てもまったく色あせない作品ばかりですし、若い世代が観ても揺さぶられるものがある。『宇宙戦艦ヤマト』には日本人の心の琴線に触れる何かがあるんですよね。それは『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』にも受け継がれていると思います。ところで、福井さんは小4の頃、将来、何になりたいと思っていましたか?
【福井】う〜ん、思い出せないな(笑)。日々、どうやったら勉強しないですむか、そんなことばかり考えている子どもでしたね。刹那的な生き方をしていたので、具体的な将来の夢はなかったんじゃないかな。まさに、残り少なくなった夏休み、宿題をどう片付けるか考えていた時に、『宇宙戦艦ヤマト』を観て、「人類とは何か」といったこと突きつけられ、びっくりしちゃったんだろうね(笑)。
【小野】なんだか、意外ですね。
【福井】実は、読書も大嫌いで、読書感想文も大の苦手だった。学校が指定する本はどれもつまらなく思えて、途中で読む気も失せる。ある時、自由に本を選んでいいと言われ、存在しない本を自分の中ででっち上げて、その感想を書いたことがあった。これで本を読む時間を外で遊ぶ時間に回せるって思ったんだよね。
【小野】逆に、すごいですね。原作と感想文、2つも創作したってことですよ。
【福井】ちょうど『宇宙戦艦ヤマト』を観た頃かな? つなげすぎかもしれないけど、『宇宙戦艦ヤマト』を観たことで、物語ることの面白さ、ものづくりのスイッチが入ったのかもしれない。わずか2時間のアニメでも、いろんなことが語れるんだな、という興味がわいたんだと思います。
――福井さんは今回の『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』のオファーは、どんなお気持ちで承諾されたんですか?
【福井】「ガンダム」をやって(『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』)、「ヤマト」もやるなんて、我ながら「節操がない」と思った(笑)。下手に手を出したらやけどする。だからこそ、やるなら勝算があってやったのだ、と一見してわかるレベルのものを創り出さないといけない。それでモチーフにする『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』を見直して、これならいけるんじゃないか、という勝算が自分の中で見えたので、引き受けました。
【小野】僕自身、いちアニメファンであり、ガンダム直撃世代でもあるので、『機動戦士ガンダムUC』を観ていました。たしかファーストガンダム(『機動戦士ガンダム』)は、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の翌年から放送が始まったんですよね。もちろん、リアルタイムでファーストガンダムを観ていたわけではないんですが、物心ついた頃にはガンダムが大人気で。自分のお小遣いで初めて借りたレンタルビデオはOVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(89年)、初めて観た映画は『機動戦士ガンダムF91』(91年)でしたから。
【福井】ガンダムファン的に優等生じゃないですか(笑)
【小野】そういう素地のある僕が観て、『機動戦士ガンダムUC』は本当に面白い作品でした。福井さんが目の前にいるから言うのではなく、純粋にそう思っていましたから、あの福井さんが『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を書かれると聞いて、理屈じゃない納得がありました。これは間違いなく、面白い作品になるだろうし、前のシリーズ『宇宙戦艦ヤマト2199』とは違った『宇宙戦艦ヤマト』になるんだろうな、という期待感で胸が躍りました。福井さんがおっしゃっていた勝算というのは?
【福井】旧作の頃と今では、反転してしまっていることが多々あるじゃないですか。旧作が公開された当時、映画が大ヒットする一方で、軍国主義だった日本軍を想起させる「特攻賛美」はけしからん、といった批判がありました。今、どうでしょう。日本が右傾化していると言われたり、世界中で自爆テロのニュースが絶えなかったり。そういう中で、「特攻賛美」と言われた映画を作り直すなんて、どれほど至難の業か。まさにそこがつくり手として燃えたところです。旧作の時代背景と、いまの時代背景を照らし合わせて、変わったところを突いて、突いて、突きまくった先に突破口があるのではないか、と思いました。
結果的に大勢の人が観てヒットした作品というのは、その時代に生きる人たちがうすうす感じているものに対して、「そうそう、これ!」と思える何かが描かれていたり、せりふとして言ってくれていたりするものです。今の人たちは、何を考えているのか、それに向き合っていけば、きっと、いま、語るべき物語が書ける。『宇宙戦艦ヤマト』だから語れる。アニメーションという表現方法だから描ける。そう思いました。
――小野さんは、先々の展開を知らされずにアフレコに臨まれているそうですが、
【小野】そうですね、台本が届くたびに、そうくるか、とドキドキしています。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の古代は、さまざまな選択を迫られ、そのすべてに命がけで応じていく。僕も古代と同じ気持ちで、全力でお芝居をしたいと思っているので、あえて聞かなくてもいいと思っています。
【福井】僕としては小野さんが演じた『宇宙戦艦ヤマト2199』の古代進を観ているので、「こう演じてほしい」というより、「どういう古代になるのか示せ」といった気持ちでいます(笑)
【小野】ズォーダーみたいなことを言わないでくださいよ(笑)。とはいえ、本当に鍵となるシーンについては、古代のせりふにどのような思いが込められているのか、福井さんや監督の羽原(信義)さんとしっかり話し合って、演じています。第三章にも、そういうシーンがありました。
【福井】ヤマトに密航していた森雪が現れ、古代はどうするのか、というところですね。
【小野】古代が雪に「きみに艦内で会った時、ただただうれしかった」と言うシーンがあるのですが、そこがすごく好きです。アフレコしながら、作品のテーマが、理屈じゃなくて、感情でわかった瞬間でもありました。
【福井】第三章は、この作品全体の所信表明をしているところでもあって、ここから本筋に入っていきます。僕が言うのもなんですが、小野さんのファンで、まだ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を観ていない人がいたら、それは人生の大きな損失です(笑)。特にこの第三章は、役者としての小野さんの力をあてにして作りました。声の芝居に比重を置くというのは、アニメーション作りにおいてはリスクを伴うもの。でも、僕は大丈夫だと思ったので、スタッフの反対を押し切って、小野さんの芝居に賭けました。そして、勝ちました。
【小野】そう言っていただけるなんて、役者冥利に尽きます。第三章は、いろんな選択、いろんな決断を迫られる緊張感があり、かつドラマチックに展開していきます。演じながら、古代にすごく共感できましたし、観客の皆さんにもきっと抗いがたい魅力を感じていただけると思います。
コメントする・見る
2017/10/19