(初回仕様)ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ ブルーレイ&DVDセット (2枚組/ペーパープレミアム付) [Blu-ray]

世の中の理不尽な現実から抑圧されながらも、病弱な母親と慎ましい生活を送り、障害の苦しみを抱えながら孤独に困窮していた、これまでの自分を変える出来事があることから起こり、今まで知らずにいた事実に気づかされた彼は膨れ上がる妄想と、被害に湧き上がった怒りが衝動となって突き動かされ、上気した感情は恍惚とした興奮を覚え、【常軌を逸した狂気】の独演へとステップを踏んで、ステージ舞台の幕が上がる。前作『ジョーカー』(19年)で世間をアッと言わせ、貧困により社会から疎外された者達の怒りが、忽然と現れスポットライトを浴びて光り輝く代弁者【ジョーカー】として存在する彼を《偶像》へと押し上げ、社会と富裕層に対して不平の矛先を向け一気に爆発し、暴動の嵐へと発展してしまう。劇場公開されると、映画の作品内容を重ねるように、現実に暴力衝動を触発され起きた事件が世界で相継ぎ、社会問題となって大きな反響を呼んだ。続く本作『ジョーカー：フォリ・ア・ドゥ』(24年)では、悩めるゴッサムシティの闇が生んだ悪の伝道師のその後の様子が、どう描かれるか話題になっていた続編が、公開されると同時に賛否両論となり、犯罪事件に及ぶ社会的影響を与えた事から制作者トッド・フィリップス監督の前作とは違うアプローチとなった本作の物語と主人公アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)に対してあなたは何を想うだろうか？！…元は人の良い、都会の片隅に生きる大道芸人の道化師であった彼は、殺人罪に問われる精神疾患者としてアーカム州立病院内の独房に収容されている。施設収容所内で、収容者達からは世間を賑わせた負のカリスマ【ジョーカー】として一目置かれた存在で迎入れられていた。外は冷たい雨が降っていた或る日の‥施設内で、彼に強く惹かれ思いを寄せていた1人の女性患者リー(レディー・ガガ)との出会いに、暗く閉じこもった荒んだ心に燈し火を灯し、彼女や狂気に熱狂した者たちが望み求める、カリスマ性を持つピエロの面持ちを強く振るわせ、再び世間を揺さぶり混乱を招こうと躍り出る。《【狂気を孕んだ2人の愛の行く末は…？！】》冒頭のアニメーションといい、精神世界を歌う姿を捉えて表現したミュージカルといい、暗く重く冷たい‥鉄格子の扉に閉ざされた、狭く苦しい独房の張り詰めた空気に差し込む変調で、ヘヴィーなストーリーに均衡を図るバランスを保ち、法廷での危うい綱渡りの上を絶妙に渡り切る。【本篇未鑑賞であれば、以下は衝撃のネタバレ回避の為にも、読まず進まず触れずに立ち入らずで悪しからず！】母親想いの心優しいアーサーであった彼が、知られざる過去の隠されていた事実を知り、これまでずっと愛してきた母親を自ら殺めたことには、どうしても腑に落ちなかった部分であったが、本作で何度も母を思い返す度にママ、ママと今でも愛する母を笑顔で話す彼が法廷で、何故母親を殺害したか問われ、「全てをリセットしたかったから」と応えた表情と言葉に、前作に私が感じた哀しい戸惑いは、今作を持って釈然とし理解に及ぶことが出来ましたし、アーサーを納得する説得力を持って演じる事が出来るのはホアキン・フェニックスしか居ないと感服しました。裁判所の法廷では、同じアパートの住人女性や元同僚のゲイリーが質疑応答でそれぞれ被告人アーサー・フレックについて述べます。アーサー主体の視点から描かれていた前作からは妄想と現実の曖昧だった境界線がハッキリしていきます。特に、彼が目を覚ますことになる要因が、ゲイリーの証言でした。互いに優しい人柄で、思いやりを持って接していたゲイリーの涙ながらの訴えは、本来のアーサーの胸に突き刺さる様に届きます。然しながら、またしてもリーやアイコンの彼を求める信者ファンの前で、大胆不敵な振る舞いを見せ、我がもの顔のジョーカーで酔いしれたアーサーに対して、不服に映った看守達から自分達に絶対服従させようと、暴力で酷く虐待を受けていた中で、彼を慕い交流のあった若い収容者が抵抗して看守によって命を落としたことに、アーサーは心身共に打ちひしがれ、これまでの慢心して昂る気持ちに己を改める。彼は自分が世間で知られ、求められているカリスマ・ジョーカー像と今とでは、自身の心境がかけ離れた存在で在ることを思い知り自覚している。罪を認め一個人の人間に戻りたいと願うアーサーに、判決が下されるのを待つ裁判所内に信じられない光景が、まさにそこに突如騒然となる混乱が巻き起こり…《『ジョーカー』でリアルに迫る負のカタルシスに熱狂した観客が、あれこれ結末後を考察し知りうる作品と妄想を広げては繋げ(これまで制作されて来た【バットマン】関連の映画に登場するヴィラン、ジョーカーとは完全に別の独立した世界観で在りながら)、未だ興奮冷めやらぬファンの多くが、待ち望んだ展開に求めるジョーカー像に期待を寄せるハイライトシーンが裁判所で起こる、ある出来事がある。祭り上げられた虚像、ジョーカーと云う虚勢を張り生きることを、かなぐり脱ぎ捨て‥愛し愛される‥必要な存在と共になり幸せを心から願う一人の人間としてアーサーに待っていた運命の囁きとは…彼は虚像から解放され、愛する母親と仲慎ましく2人で生きてきた頃の心優しきアーサーへと、はたして戻っていったのでしょうか？！リー・クインゼルやジョーカーに感化された者達と同じ様に、あなたはアーサー・フレックを偶像のアイコン【ジョーカー】として祭り上げ、期待を寄せるも望まぬ結果に失望し、見放してはいないか。生身の人間として哀れにも、もがき苦しむ姿に向き合って何を感じただろうか。目の前に敷かれていた【悪】のカリスマとして生きる運命のカルマ的レールを歩む事を拒否した為に、(偶像崇拝者達によるガイア理論のイデアによって‥これまでは観念に護持されて来た)彼は役目を降りた事で必要が無くなり排除され、【ジョーカー】という存在はレーンが変更されても、代わりとなる者が現れ役割が果たされて行くのだろうか…収容施設はアーカム・アサイラムジョーカーを愛した女はハーレイ・“リー”・クインゼル地方検事補はハービー・デント前作『ジョーカー』に於いても貧富の格差が拡がる犯罪都市ゴッサムシティからトーマス・ウェイン市議会議員とその御子息、ブルース・ウェイン執事のアルフレッド・ペニーワース等…原作であるDCコミックスから有名な名称や人物が登場し、物語設定及び人物像がリアルに描かれ、これまで幾度も映像化されている作品に新鮮味を持って迫る衝撃は、社会に影響を与える問題作となった『ジョーカー』への製作者から差し出された返答が『ジョーカー：フォリ・ア・ドゥ』であり、冷淡な非常さと哀しさは前作以上にリアルな現実を突きつける。提示された対なる解答に…思わず魂を抜かれた様に、暫し茫然自失となる本作は、対なる傑作に値すると思える。最後の審判が下る公開裁判を見届ける覚悟を持って、傍聴席のあなたは被告に対して、どのような思いに至ったのか、傍観者として罪の意識は持たずとも自ら【判決を下す】答えを出す事になる。理不尽な不条理劇は、夢想する道化師のもがきから暴力による手段を掴ませて、目にしたくない現実の暗部を抹消すると気分が昂揚し、社会に対して弱者から成りたい自分へと小躍りして本当の笑みに溢れた自信と輝きに満ちた《ジョーカー》となり、世に蔓延る醜悪から希望の光を照らす先導者として浄化の裁きを降す運命は我に与えられた宿命なりけりと暴走していた男に対して謎の女リーを始め、狂乱、狂騒のパラノイアは群衆に伝播していく。孤独だった者が行き着く先に目覚め覚醒した“悪のカリスマ”は、狂気のロマンスに花を咲かせるつもりであったが…不敵な笑みを浮かべるジョーカーとしての意思表示を辞して、真実の愛を求めた結果は…欲しかったステータスを失い幻滅したリーは、アーサー自身に興味など無く、女の心移りに捨てられ嘘偽りの虚像に偶像としてカリスマ的存在へと祭り上げられた道化師に過ぎなかったと悟す男に、穏やかに過ぎていく日常など運命に見放されたかの様に、幻影となった【ジョーカー】を失望し憎しみを抱いた者に掠奪され嘲笑われ、崩れ落ちた身体が震え‥血の気が引いて視界が暗くなり‥急速に冷たくなって…意識が遠のき…１つの物語に幕が閉じる。【END】