「納車2年待ち」“新型ジムニー狂騒曲”の今 愛が深すぎる専門店で、人気のカスタムとは?
“あるべき姿”に戻った20年ぶりのフルモデルチェンジ
河野51年前に、尾上自動車という整備工場としてスタートしました。当時三菱ジープを故障車の引き上げ車両として使っているうちに四輪駆動車の実力と面白さに魅力され、そこからスズキジムニーを購入。ただ、当時のジムニーは、走破性も低く、当時の社長がニッパツ(=日本発条※バネのメーカー)にお願いし、何度も断られながらオリジナルのサスペンションを開発。それが好評だったことに手応えを得て、ジムニーに特化した会社に方向転換し、ジムニー専門店といういわゆるカスタムショップだけではなく、ジムニーパーツメーカーになると宣言して、今日があります。
経営的に大きなリスクを伴うなか、一つの車種しか取り扱わない“専門店”になることを英断した前社長。それほどまでに魅了されたジムニーの魅力はどんなところなのだろうか?
河野世界で唯一無二の超小型四輪駆動車であることにつきます。ラダーフレームにリジッドアクスル。660ccの小排気量。その性能がカタチとなって20年ぶりにモデルチェンジしたジムニーは、数年でモデルチェンジ繰り返す他社のSUVなどとは完全に別格です。ホンダのカブ、ヤマハのSR(共にバイク)、マツダのロードスターと並んで日本が世界に誇る、なくてはならない存在だと思います。
2018年、ジムニーはそれまでのデザインから大きくモデルチェンジ。丸みを帯びた現代の車とは一線を画すその無骨なデザインに河野氏は感動したという。
河野素晴らしいの一言でした。ジムニーの“あるべき姿”に戻りました。周りの反響もすごかったですし、これまで、ジムニーの存在を忘れていた人までも称賛の声でした。
デザインを生かしたライトカスタムが人気 なかには“ゴツい”改造も
河野新型の登場を長年待ち望んでたので、カスタムパーツ開発用に新型ジムニーを10台購入して着手しました。開発テーマは、ジムニーらしさを追求した『原点回帰』のイメージ。発売当初の50年近く前のカタログを振り返ると、ジムニーは、山の中を登坂し、道なき道をいく機動力があり、長年、4ナンバーの“はたらくクルマ”だったのです。そのイメージでホイールもスチールイメージのアルミホイール、鉄バンパーをイメージした前後バンパーやリアラダーなど、かつての四駆にすべてが回帰したイメージが浮かびました。
新型発売から1年半が経過し、さまざまなパーツやコンプリートカー(店舗オリジナルのカスタムを施してある車)も生まれるなか、ここまで納車されたユーザーには、どんなカスタムが人気なのだろうか?
河野ノーマルの状態でもカッコいいので、比較的ライトなカスタムの方が多いですね。鉄チン風のアルミホイールWILDBOAR SRが、雰囲気に合うのでタイヤとセットで交換される方や、フロントグリルを交換するだけでフェイスチェンジになるので印象ががらりと変わります。そしてパワーアップが期待できるマフラー、車高だけでなく性能アップのための6440サスペンションなど、カスタムそのものも楽しみながら遠方からでも来店される方が以前より増えました。また、JB74ベースにアピオ伝統の“しし狩りバンパー”を装着した往年の四駆ブームを彷彿させるカスタムもインパクトがあって人気ですね。今までは輸入車や大型のクルマに乗っていた人からも、『これで充分!』という等身大の心地よさを感想としていただくこともあります。
今後はどのようなパーツを開発していこうと考えているのだろうか?
河野ジムニーはロングライフデザインのクルマですので、ユーザーの方も長年愛用される方が多いです。一時的にインパクトあるカスタムは人目を引きますが、数年で飽きてしまいますので、個々のライフスタイルに寄り添うようなカスタムを提供したいと思います。
いまだに1年半待ちだが、その期間を“カスタム選び”に充てて楽しむユーザーも
河野注文しても今から1年から1年半というのがメーカー回答です。ブレない納期の遅さ(笑)。『待っている間にすぐ買えるようになるのでは?』と予測していたお客様も、この状況ではいつまでも買えないと諦める方もいます。でも考え方を変えれば、1年後の納車なんて楽しみが長く味わえる。実際に納車はまだ先だけど、ご夫婦でアルミホイールやグリルの色などを検討のために遊びにきてくださるお客様もいるので、待ち時間もエンターテインメントとして楽しんでいただけたら。
多くのジムニーを販売してきた同社だが、今後果たしていく役割はどのように考えているのだろうか?
河野クルマは本来もっと旅や冒険心を満たしてくれる夢の道具でした。その中でも特にジムニーは、道を選ばず、自由に走ることができる究極のクルマであることが色濃く残っています。海外ラリーから街角探訪まで『日常を旅する』楽しさを、クルマというハード面だけでなく、ライフスタイルや旅の提案、というかたちで1人でも多くの方に知っていただきたい。心地いい日常の中での「今」を味わうような。例えば音楽やアートのように。時代に流されることのない楽しさ、心地よさをお客様はもちろんスタッフも、なにより私自身が追求したいですね。