デーモン閣下が劇団☆新感線とコラボ 提供した劇中歌は24年で20曲以上「素顔が生かせる役があれば出たい」
世を忍ぶ仮の若かりし頃に俳優養成所にいたこともあった
デーモン閣下ハッハッハ、たしかに最近はそう呼ぶ者も少なくなったな。劇団との付き合いも長いが、古田新太君なんかは我輩が地球デビューした魔暦前14(1985)年に聖飢魔IIのミサに足を運んできてくれていたそうだ。19歳だったと言ってたな。我輩も池袋の西口公園テントで上演された『髑髏城の七人』の初演(90年)を観ている。当時は"関西の色物ヘヴィメタル劇団"なんて呼ばれておったが、いやいや、登場人物やストーリーの面白さもさることながら、音楽を効果的に使ってシーンを進めていくテンポ感やアクションの面白さ、勢い──。現在の新感線の規模がそのまま小さくなっただけで、その魅力や世界観はすでに確立されていたな。
──95年上演の『星の忍者〜Stranger in a Strqange Star』では、閣下が主演を務めておられます。またこの頃から、新感線に劇中歌を提供するようになったそうですね。
デーモン閣下もともと我輩は芝居にも興味があり、世を忍ぶ仮の若かりし頃に俳優養成所にいたこともあった。しかしこの悪魔の素顔で演じるとなるとなかなか制限があるというか、なかなかハマる役がないのだ。その点、新感線の世界観であれば素顔で出ていてもおかしくないからな。そんなわけで出演することになったのだが、たしかこのときは我輩が劇中で歌う歌をいくつかは書かせてほしいと言ったような気がする。それからかれこれ24年、これまでに20曲以上の劇中歌を提供してきた。その中から本CDでは、12曲を選りすぐっている。今や超一流となった劇団とコラボレーションして書き続けてきた中から厳選したわけだから、ある意味でベスト盤のようなものだな。
劇中歌には、自分の固定概念を打破するような曲ができてしまう面白さがある
デーモン閣下プロセスから思考からまったく異なるものがある。そもそも劇中歌というのは芝居のシーンのために作られる音楽であり、歌うのも役者であってほとんどが我輩ではない。すると自分が思っていた自分の固定概念を打破するような曲ができてしまう面白さがある。その最たる例が『いきる』(『修羅天魔〜髑髏城の七人 Season極』より)。さまざまな事情を抱えて争いに巻き込まれてしまった者たちが、それでも生き残ってもう一度会おうと誓い合う楽曲なのだが、悪魔としてはあり得ない歌詞だろう。歌詞中で自らのことを「人間だ」と言い切ってしまっているしな(笑)。
──悪魔なのに(笑)!
デーモン閣下まあ、もともと我輩が歌うことが前提ではないからこそ出てきた単語なわけで、自分でも「こんなのできちゃったよ☆」という新鮮な驚きがあった。だからセルフカヴァーというか、自分で歌ってみたらどうなるのだろうという好奇心みたいなものは常々あった。ただ劇中歌というのは、基本的にワンコーラスしか作らない。だから本CDを作成するにあたっては、過去に我輩のソロアルバムに収録された2曲を除き、ほとんどの楽曲について新たに2コーラス目以降を書き足したり、あるいは歌詞を書き直したりしている。
デーモン閣下まあ、当時は我輩も世を忍ぶ仮の年齢としては若かったからな。英語の文法が間違っていたりと、稚拙なところも多かった。そんな当時の自分にダメ出ししながら書き直す作業は面白くもあったな。ただ、基本的には新感線とのコラボレーションで生まれた楽曲群なので、たとえ歌詞を書き足すにしても、演目の世界観やそのシーンで描かれた物語から逸脱しないことには十分に留意したつもりである。
我輩の素顔が生かせるような役があればまた芝居にも出たい
デーモン閣下いのうえ氏たちによると、これまでも新感線ファンからは劇中歌をCD化してほしいというリクエストが多かったそうだ。しかし劇団としての活動もあるゆえに、なかなかその声に応えられないでいたと。そういう意味でもこのアルバムは喜ばれると思いますよ、とは言われたな。我輩としても自信を持って「聴きやがれ!」と言える1枚となったと自負している。
──最後に劇団☆新感線との関係性は今後も続くと思われますが、「こんなコラボレーションをしてみたい」と思っていることはありますか?
デーモン閣下また芝居に出してもらえたらありがたいという思いはあるな。ただ新感線の芝居は走り回ったり、殺陣をやったりと体力的になかなか厳しいものがあるから、なるべく動かない役で(笑)。『髑髏城の七人』だったら、贋鉄斎みたいな役とかな。いや、あの役の芝居は相当難しいと思うが。我輩の素顔が生かせるような役があったら、またぜひ呼んでほしい。