写真提供/フラットアースカンパニー・キャピタルヴィレッジ
45年の歌手人生での大きな転機 それがあったから今も歌い続けられる
細坪アルバムタイトルは『古き良き時代』という意味を込めて付けてたわけではないんです。『Old Time』とは、ある一点を指すわけではなく、ここまで歩んできた(人生の)道のりのこと。それが『Good Time』。もちろん、笑った、泣いた、悔しい思いをしたこともたくさんあって、それを含めて、『自分が歩いてきた道』があったから、今こうして笑っていられる。そんな思いの詰まったアルバムです。
45年間歩んできた歌手人生があるから今がある。細坪にはそう言い切れる理由があった。
細坪基佳
細坪歌手としてデビューして、それが仕事になってくると、当然のどに負担がかかってくる。若いころはそれを無理やり力でねじふせて、声を出していた時期もありました。声出なくても、リハーサルやれば大丈夫だったし、またそれで酒飲んで、大声出して盛り上がって(笑)。朝になって『声出ないなー』って思っても、またリハやって声出して…って生活を繰り返していて。でも、そのうちだんだん治りが遅くなっていくし、どうも自分の描いた歌い方と違うし。グループを離れソロになってみるとそれが顕著になってきて、のどを痛めて声が出なくなる時期があったんです、その時に初めてその後(歌手として活動)できなくなる可能性があると思ったんです。それで自分ののどに対して意識を持ったんです。『お前(のど)のおかげで俺は(歌手として)生きているんだ』って。それが、酒だタバコだ、夜更かしだって、何をやっているんだという話ですよ(笑)。活動始めて20年くらいたってからかな……。遅すぎますよね。
歌手として長く歌っていきたいという思いは、のどのケアだけではなく、自身の表現方法にも大きな変化をもたらした。
細坪のどへの意識が変わると同時に、歌声の表現や発声にもより意識がいくようになったんです。まず、周りから私のハイトーンを褒められる機会が多いんだけど、もっと深みを出すために、低音を磨くことにしたんです。例えばAメロってサビに向かうメロディーだから、低く歌って、サビでスコーンと突き抜ける曲が多い。それまでは、『自分の売りはハイトーンだから、サビでスコーンと掴めばいい。この辺(Aメロ)はどうでもいいや』って思いがどっかであったかもしれない。でもそのAメロを低音できちんと聴かせられると、サビで今まで以上に『おっ』と思わせることができる。世界が広がったんですね。そのことに気付いてからは、表現がより面白くなったんだよね。今まで歌ってきた歌も、違うアプローチで表現してみたら面白かったり。それまでトレーニングとかケア、研究的なことをやってこなかったのが、急にやり始めて歌ってみると違う世界が見えてきて、表現の幅を広がりましたね。より音楽にのめり込みました。
「あのとき、気付かなければ僕は今こうして歌っていなかったかもしれない」とまで言い切る大きな気付き。この変化こそ、今なおこうして活動を続けられる礎になっている。