女性バンドシーンの立役者、“媚びない”チャットモンチーが明かす解散の経緯と心境
このタイミングで“完結(解散)”することが私たちにとっていい決断
「簡単に言うと、チャットモンチーという名前での音楽活動をやりきったっていうことですね。3人の時代からずっと変身してきて、去年、“メカ(2人の演奏と打ち込みの音源のみのライブ)”のツアーを回っている最中に、この“メカ”が最終形態なんじゃないかっていう話を2人でして、完結を決めました」(橋本)
「それまでは迷路というか、どう続けていくかということばかりに目を向けていて。ツアー中に次の作品のことを決めなければいけないっていう状況だったから、ずっと悩んでいました。だから、えっちゃんからそう言われたときに、「その手があったのか」と思って。いまこのタイミングで完結することがチャットモンチーにとって、いい決断だと思いました」(福岡)
完結という名の解散宣言後に制作されたラストアルバム『誕生』は、サポートを迎えた形態でもなければ、2人のバンドサウンドでもない、全編打ち込み(メカ)スタイルによる作品となっている。
「最後まで挑戦したいという気持ちがありました。メカの形態でやるっていうコンセプトを決めてから作り始めたのですが、今回のアルバムはタイアップもないし、本当に2 人だけでやりたいようにやらせてもらったので、歌詞もサウンドもすごく自由度が上がって、幅が広がっています。自分たち主導で全部を決められたのはデビュー以来のこと。誰の目も気にせずに、いっぱい曲を作っていた頃を思い出しました」(福岡)
“完結(解散)”への不安も後悔もない「しばらく無職」
「最初に受け取った時は、懐かしく感じました。辞めてから6年間、一度も見ることがなかったテイストというか、私とえっちゃんにはないノスタルジックな感じがある。最後のメッセージも久美子らしいなと思って。私たち宛に言ってくれていることを、自分たちが歌っているので、久美子の意思が憑依している感じになっています」(福岡)
「まずはとても感動しました。チャットモンチーのことを歌っているから、すごく嬉しかったです。それに、久美子は元チャットモンチーで、私たちももうすぐ元チャットモンチーになるわけだから(笑)、元チャットモンチーの先輩がそう言うなら心配ないし、これでやっとみんな、元チャットモンチーになれるんだって想像したりしてます」(橋本)
完結後の話をする2人はとても晴れやかな笑顔を見せてくれた。それは、「久美子も辞めたことを後悔してないし、私たちも完結を決めたことに対して何も後悔していない」と福岡が言うように、2人とも完結発表後、一切後悔してないからだろう。
「チャットモンチーは完結するけど、またいろいろと始まっていくという意味もあるなと思って、タイトルを『誕生』にしました」(橋本)
では7月で完結して、その先に何が始まるのだろうか。
「チャットモンチーじゃない社会人人生の経験がないので、何かしら始まるんじゃないですかね。まだわかんないですが、不安はなくて、楽しみです」(福岡)
「チャットモンチーのラストアルバムが誕生して。CDは残っていくので、いろんな人がまた巡り巡って聴いてくれているような未来は見えていますが……自分自身はしばらく無職です(笑)。本当にわからないけど、いろんなこと差し置いても、また自分から発信したいと思える日が来たら…という感じで捉えています」(橋本)
(文/永堀アツオ 写真/鈴木かずなり)