ユーミン、椎名林檎、SHINeeなどヒット連発 老舗EMI Recordsを率いる若きミュージックマンの挑戦
SNS分析の専任の担当者を配置、成功事例をスタッフ間で共有
「邦楽レーベルのトップは制作畑、宣伝畑の人間が務めることが多かったと思いますが、音楽業界の形が変わっていくなかで、僕のようにデジタルを中心に音楽に携わってきた人間がタクトを振らせてもらえる時代になったんだなと」と語る岡田氏。最初に取り組んだのは、WEB媒体に重点を置いたプロモーション展開だ。その好例が4月11日にリリースされた松任谷由実のベストアルバム『ユーミンからの、恋のうた。』。同作は、広告費の使い方をWEBに比重を移し、4/23付で1位を獲得した。
「ユーミンのファンは40代以上が中心ですが、ECサイトでCDを購入する方の数が増えているというデータがあり、WEB上で導線を作るための広告にシフトチェンジしました。WEBでの施策の利点は、最新のデータをもとに、すぐにプロモーション戦略の方向を調整できること。リスナーの方々を中心に自社のデータやソーシャルで日々やりとりされる内容を分析する専任の担当者を置き、成功事例をスタッフ間で共有するなど、良い循環が生まれていると思います」(岡田氏)
4/30付のアルバムランキングではTOP3を独占
「各アーティストの担当が持っている制作、プロモーションのノウハウを他のアーティストに応用することを積極的に行っています。たとえば松任谷由実とMrs. GREEN APPLEの担当者が情報を交換することで、今後の取組みに繋がるヒントが得られたり、課題が見つかることもある。オープンイノベーションといいますか、各セクションの横の繋がりを促したことも、今年上半期の好成績に表れているのでは」(岡田氏)
基盤にあるのは“熱量とロジックのバランス”
「椎名林檎の場合は20周年イヤーというタイミングが大きかったと思います。トリビュートアルバム(5月23日発売『アダムとイブの林檎』)がデジタルチャートで1位を獲得した直後にサブスク解禁という流れを作れたことで、過去の曲を改めて聴きたいというニーズに応えられました。自分の作品はCDで聞いてほしいというアーティストもいますし、サブスクリプションの解禁についてはケース・バイ・ケース。さまざまな方法で過去のカタログを常に聴ける状態にしておきながら、新作への興味を持ってもらうことで、アーティストやその作品を広く知ってもらうことが我々の目標だと思っています」(岡田氏)
このほか、横須賀市と組んだ新人発掘オーディション「YOKOSUKA INNOVATION MUSIC AUDITION 2018」をスタートさせるなど、新しいプロジェクトにも意欲的。「音楽の聴き方が細分化され、国民的なヒットは出づらくなっていますが、WEB、SNSを中心に火はつけやすくなっている。それをどう広げていくかが課題でしょうね」という岡田氏。その基盤にあるのは“熱量とロジックのバランス”だと語る。
「“このアーティストをどうしても成功させたい”という熱量だけでもダメだし、データから得られるロジックだけでもダメ。その両方を持ちながら、さまざまなプランニングに結びつけていくことが大事だと思います。個人的には若い世代の人たちにもっと音楽の世界に入ってきてほしいと思っていて。“楽しそう”“やりがいがありそう”と感じてもらえる業界にしていきたいですね」(岡田氏)