BTSとTWICEから探る世界ヒットのカギ 世界へ発信するK-POPと国内に向くJ-POP
BTS(防弾少年団)のグローバル展開はPSYと共通しているところがある
古家 今年5月に『2017 ビルボード・ミュージック・アワード』で「トップ・ソーシャル・アーティスト」を受賞した時から流れが変わったと思います。世界展開という視点で考えた時に、コンテンツが1人歩きしたということです。何か特別な仕掛けをして結果が出たというよりも、彼らのファンがSNSを活用したことに尽きると思います。なぜなら、K-POPグループがたくさんいる中で、BTS以外を知らないという声を多く聞きました。そういう意味でもBTSは、PSYと共通しているところがあります。ジャスティン・ビーバーが発信源となり海外セレブたちが、PSYのMVに興味を持ち情報が広まっていった。PSYが何かを発信したのではなく、K-POPが世界戦略を進めたわけでもない。「面白いものは面白い。良いものは良い」というコンテンツそのものの良さをソーシャルメディアを通じてユーザーが広めていったわけです。その点は、BTSも同じだと思います。
――古家さんがその状況を感じたことはありますか?
古家 僕がBTSについてツイートすると、世界各国からコメントが殺到しました。韓流エンタメが不毛だった地にしっかりとアプローチできていると感じました。彼らが他と違うのは、K-POP人気の高い南米やヨーロッパでいち早くワールドツアーを行い、地道にファンを開拓したことで、その活動がSNSと融合して広がっていった。欧米も含めてしっかりと展開していると思いますね。
――そうした活動が、ファンを動かしたのでしょうか。
古家 ファンの熱量が高いというのもあります。その組織力が、人気に大きく左右したと思います。その結果が、『ビルボード・ミュージック・アワード』に繋がったのでしょう。同賞は、6年連続ジャスティン・ビーバーが受賞していましたが、そのジャスティンを抑え受賞したことで、世界的に注目を集めました。ワン・ダイレクションの活動休止以降、アイドル市場でその空いていた席に上手く座れたことが大きいです。アイドル不毛の音楽業界の中で、欧米的なサウンド、完璧なパフォーマンス、アジア人特有の若々しさ、それが上手くミックスされて、彼らの人気に繋がったのではないでしょうか。それはBTSだから可能にしたことで、他のK-POPグループが同様のことをしても厳しいと思います。
――彼らのファンである若い世代は、K-POPを通して欧米の音楽に触れている。一方で、日本のアーティストは、ドメスティックに向かっていっているようにも感じます。
古家 僕が教えている大学の生徒には、K-POPアイドルになりたいと言う学生が多くいます。その理由を聞くと、日本にいても世界を目指せないと言いますが、そこに、今の若い世代の想いが集約されている気がします。“
“第2次K-POPブーム”ではなくK-POPの人気ベースは変わらない
古家 TWICEファンの殆どは、K-POPに関心があるのではなく、可愛らしい容姿やファッションなど、彼女たち自身に魅力を感じていて、その中に偶然日本人が所属していた。だから、一番理想的な展開だと思います。K-POP ファンだけでは、限界がありますが、それ以外の人が、ファンになっているからこれだけの人気や驚くべきCDの売上に繋がったのでしょう。
――それは、少女時代やKARAが人気を得た2010年とは、違いがありますか?
古家 全く状況が違います。当時は、K-POPを知らない人たちが、K-POPのカッコ良さを知りファンになりました。最近日本のメディアは、“第2次K-POPブーム”として取り上げる傾向がありますが、K-POPの人気はすでに定着し、その人気のベースは変わらずあります。それとは別の次元で、TWICEの人気が生まれています。TWICEは、男性ファンも多く、同性と異性のファンの数が上手く重なりました。その点でBTSは、まだまだ圧倒的に女性ファンが多いと思います。
――BTSも男性ファンを獲得すれば、より伸びていくのでしょうか?
古家 若い世代にとってK-POPは、洋楽と同じような感覚で捉えています。彼らの音楽がより多くの人に届けば、男性ファンも自然と増えるでしょう。欧米での評価を日本の音楽関係者が、どのように発信していくかにかかっていると思います。