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伝統的なきものをサスティナブルに受け継いでいく…「持続性」をテーマに「Universal Kimono Award 2023」が艶やかに開催
地区大会を勝ち抜いた216名が美しいきもの姿を披露
3回目となる2023年のテーマは「持続性」。きもの市場は、1980年代の1兆8000億円をピークに現在は2700億円と6分の1にまで縮小。年々減少傾向にあるきもの市場の中で、きものがこれからも伝統工芸として持続していくために、コンテストを通して「日本文化のきものを見る機会を増やしてもっと身近に」「きものが持つ家族の想いやSDGsな特性を世界に広める」「きものの楽しみを変えていく」ことを掲げている。
きものの歴史は1200年以上。伝統とは変わらないことではなく、変わりながら引き継がれてきたもの。時代に合わせて変化してきたからこそ、単なる「伝統衣装」ではなく「着るもの」として生活の中に溶け込み、そしてそれは「文化」ともなった。この「文化」を一蔵はきもの業界のリーディングカンパニーの使命として、時代に合わせた変化を起こそうと同大会に熱意をかける。
今年も、全国各地の予選会を経て選ばれた方々が本大会に集結。「フォーマル部門」 「カジュアル部門」 「振袖部門」「mode部門」「伝統工芸部門」「ペア部門」の6部門でグランプリと準グランプリを選出。最後に、総合部門のグランプリと準グランプリ2位、3位が選ばれた。
特別審査委員長は、昨年に続いて高橋英樹、特別審査員は黒谷友香、ゆきぽよが務め、コーディネート、着こなし、ウォーキング、表現力、品格などを総合的に審査。会場は1200年前の「過去」と令和の「今」が交錯&融合する“美と品格が袖を触れ合う異空間”へと化した。
出場者の北澤訓代さん「職人さんが脈々と受け継いできた伝統を令和の今、私が着ていることに感動を覚えています」
帯には日本の著名な画家・田中一村の絵をモチーフにした柄が施されている。全体的に色の置き方がすらっと背が高く見えるよう工夫されており、カジュアル部門にふさわしくモダン色を強くしている。そのために強めの柄を髪のセットや髪かざりでやわらかい印象を塗布。これが調和を生み、ステージ上でも伝統とモダンが調和した独特の雰囲気を品ある笑顔で表現していた。
実は同きものには裏話があり、彼女はこれを3年前に着て出場する予定だったという。だが帯がカジュアルであったため、フォーマル部門で出場できなかったために断念。そんな時、滝沢氏の兄弟である樋熊哲也氏のふさわしい帯が見つかり、3年越し、満を持しての「兄弟コラボ」のきものでこの度、出場を果たした。
フォーマル部門ではわからかさ、しなやかさも重視される。齊藤さんは「長めの丈の優雅なきものの美しさをランウェイの上で表現できるか」を課題に、非常にエレガントなウォーキングを見せてくれた。
「生地のグラデーションが美しく、この伝統的な青い胡蝶蘭の刺繍を際立たせるために、なるべく他の色を排除しました。この胡蝶蘭は見えない部分にもあしらわれており、職人さんが脈々と受け継いできた伝統を令和の今、私が着ていることに感動を覚えています」
ランウェイ上ではすっと美しい姿勢で立ち振る舞いを見せた北澤さん。「これだけパワーのあるおきものを着るのですから、着られてしまうのではなく、着ている本人の強さも重要。世界中の衣類でこれほど生地にこだわり、強さも感じられるものはありません。それに負けないように歩きます」の言葉通り、数々の時代を生き抜いてきた“強さ”も感じさせる空気をまとっていた。
グランプリに輝いたのは川口実和さん「きものマジックを感じました」
世の中では「生」で見ないとわからないことがいくつかある。例えば「絵画」だ。画集や絵葉書、昨今ではネットでも歴史ある貴重な絵画を見ることはできるが、実はそこには「本質」や「魂」がない。実際に美術館に足を運び、自身の目でその絵画を見る。自然と足が止まる。そう。その「生」でしか表現できない色合いに目が離せなくなるのだ。
これは、きものでも言える。生地から始まり刺繍などの柄。その一本一本の糸は「生」で見るからこそ息づく伝統の「生」が映えるのであり、その貴重さが「魂」レベルで迫ってくる。
会場ではまるでコンサート会場のように、応援うちわを掲げている人々もおり、ステージを歩く参加者の名を叫び、場を盛り上げる。観覧者もまた、このきものの「生」の魅力を知っているのだろう。そして帯や小物、髪型、髪飾り、これらの組み合わせで無限の可能性がきものにあることを知っているのだろう。
日本の伝統文化であるきもの。昨今は、晴れ着としての役割だけでなく、時代や成長、体型の変化に応じて長く着続けていくことができるサスティナブルな衣服としても注目されつつある。このコンテストを通して、きものの持つ新たな魅力と可能性が可視化できたのではないだろうか。そしてその“時”を超える“強さ”がこれからも多くのファンを生んでいくのではないか。この記事を読む皆さんにもぜひ、きものというものに興味を持っていただき、そして実際に身に着けることで、その魅力に触れていただきたい。
(取材・文/衣輪晋一)
「Universal Kimono Award 2023 」
場所:横浜ロイヤルパークホテル
審査部門
@ フォーマル部門 (訪問着に袋帯等、改まった席に着用していくコーディネート)
A カジュアル部門 (小紋・紬に洒落袋帯・名古屋帯等、普段使いのコーディネート)
B 振袖部門 (振袖を着用した未婚女性の第一礼装にふさわしいコーディネート)
C mode部門 (帯の変わり結び・ブーツ着用・羽織物着用等、個性を出したmodeなコーディネート)
D 伝統工芸部門 (未来に残したい技を活かした伝産マークが付いたきものを着用してのコーディネート)
E ペア部門 (きものの種類を問わず、親子・姉妹・夫婦・友人等お2人ならではのコーディネート)