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SNS時代の音楽シーンを担う神山羊 新曲『色香水』にかけた想い
「青春を表現するのが最もリアリティがある」初めて自分自身と向き合って制作
【神山羊】コロナ禍で発信していく難しさなど音楽活動のハードルがどんどん高くなり、この先どうやって音楽を作っていけばいいんだろうと思う過程で作られた楽曲なんです。でもライブじゃなくてもこうして僕の音楽を届けられる。その奇跡を感じた時、だったら自分だけが逃げていてはダメなんじゃないかと思って。初めて自分自身と向き合って作ろうと思いました。
――1月期のアニメ『ホリミヤ』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマでもありますが、楽曲制作されたうえで一番こだわった点を教えてください。
【神山羊】一番のテーマは「青春」。僕にとっての「青春」とは過ぎ去ったもの。それを表現するのが最もリアリティがあるだろうと考えました。青春って渦中にいる時は気づけないこともあるし近すぎて見えないこともある。それはそれで美しいことなんですけど、人生のタイミングによって感じ方は違うものですよね。
――神山さんはどんな青春時代を送っていたのでしょう。
【神山羊】友達の男の子とゲームセンターへ行ったり、家に行ってゲームをしたり、あと花火をしたり。この時間は無限に続くんじゃないかと、なんでもない時間を湯水のように使っていましたね。当時はまったく気づきませんでしたが、今思うとそれもすごく尊い時間だったな。
YMO、山下達郎、小田和正…80年代歌謡曲からインスピレーション
【神山羊】昨年の2〜3月ぐらいのタイミングで日本の80年代の音楽にすぐハマったんですよ。自分もこういう表現をしてみたいなと思ったんです。聞いていたのはYMOさんや山下達郎さんや小田和正さん。あのあたりの質感にすごくドキドキしてしまって。まずは歌謡曲のメロディの美しさは圧倒的なんです。耳にした時に、どこかで引っかかる…耳に残るようにできているんですね。あと“言葉のカメラ”がすごく近い。このへん(うなじの辺り)から撮ってくるというか。僕の楽曲は割と俯瞰で撮るというのが持ち味だったのですが、『色香水』とカップリングの『生絲』はあえてめっちゃ近くしている。だからこれまでより生々しさもあり、そういった意味でも僕の中で大きな意味を持つ楽曲になりました。
――『色香水』というタイトルの由来は?
【神山羊】人生の記憶に残る要素で一番大きいのは“匂い”。視覚的なものって結構忘れちゃうんです。人の匂いや生活の匂い…僕はそこに対して“色”のイメージも一緒についてくるんです。そこかから出てきた言葉が『色香水』という造語でした。
――MVは22歳でカンヌデビューを飾った井樫彩監督が手がけています。タッグを組んだいきさつは?
【神山羊】今のティーン層を主役とした映像作品を作りたいと思っていたところ、井樫彩監督のMV作品が非常にリアル、かつ色彩の表現が豊かでお声がけさせていただいたんです。結果、とても素敵なMVに仕上がりました。どこを切り取ってもめちゃめちゃきれいなんですけど、表現として好きなのは、夜の学校が紫に見えるというところ。この人はやっぱり天才だなと改めて思いました。
――カップリングの『生絲』についても教えてください。
【神山羊】元々「生糸」はカイコの吐いた糸のことを指します。「糸」を「絲」にしたのは二本の糸のニュアンス。人それぞれが持つ糸の結びつきで生活や社会が成り立っている。自分自身が持っている糸と人が持つ糸を意識して結びつけたりほどいてやったりすることで、自分らしく生きることができるんじゃないか。感覚としては『色香水』よりも“カメラ”は近いですね。結果、自分の中の納得感はすごくて、何年たっても自分が愛せる曲を書けたという自負があります。
「僕がJ-POPをやるのは、音楽の重要性に気づいてもらうため」
【神山羊】「いいのか、こんな素敵な場所に立っていて」というビリビリするような感じを覚えているんですけど(笑)。その中で、今後メインのシーンで音楽を作っていく一人になるんだという宣言を絶対にしたいと思い、メジャーデビューを発表しました。自分のことのように泣いてくれるお客さんもいて、「僕がこの人たちにできることってなんだろう」と強く考えるようになりました。すごく無垢でピュアな状態で、だから「この時間がずっと続く」みたいな顔していると思います(笑)。
――2018年に初めて投稿した楽曲『YELLOW』が7500万再生突破され、ティーンを中心にTikTokで流行。昨今のネットカルチャーとの親和性と高い楽曲を生み出している印象ですが、ご自身の楽曲がSNSでさまざまな形でシェアされていくことについては?
【神山羊】純粋にうれしいです。あとは今のティーン層の「この曲好きだから聞いてみてよ」というSNSでのノリからシェアされていくスタイルが素晴らしいと思っていて。僕らの時代はもっとハードルが高かったかも、と。
――Tik Tokなどではユーザーとのコラボみたいな状況もありますよね。
【神山羊】もともとボーカロイドを使った楽曲を作っていた過去があり、そういうカルチャーだと二次創作も当たり前。自分の楽曲に、誰かが、自分ごとのように関わってくれる環境自体、僕は面白いと感じていますし、それがまた別の大きなうねりを生むようならハッピーなことだと思います。
――なるほど。初音ミク以前以後ではアーティストの形はどこか違う…?
【神山羊】かなり変わってきているかもしれないですね。あとネットカルチャーと音楽の親和性についてですが、ネットと音楽が結びついたことで、音楽がより人のそばにあり続ける状態が出てきたように思うんです。音楽は絶対に人の生活に必要で、でも音楽が持つ浸透力だけでは、音楽が本当に必要な人にしか伝わっていかない。そういう意味ではネットと融合して無自覚にあり続ける今の状態はすばらいいですね。僕がJ-POPをやるのは、音楽の重要性に気づいてもらうため。自分が作るものが音楽の必要性を届けるものであればいいなと思っています。
夢は海外ライブ「J-POPシンガーとしてアメリカに立ちたい」
【神山羊】一番は提供先のアーティストの奥にいる人…リスナーのことを考えます。その上で、自身のエッセンスとそのアーティストのエッセンスがたされ、最も美味しい状態でリスナーの方に届いたら最高かな。
――Spotifyが注目の新進気鋭国内アーティスト10組を決める「Early Noise2020」に選出されるなど、業界内でも注目度が高い神山さんですが、今後挑戦したいことは?
【神山羊】ライブ。しかも海外でライブがやりたいんですよ。Spotifyもそうなんですが、神山羊の楽曲を聞いてくださる方でアメリカの方が実はとても多くて、ならばJ-POPとしてアメリカの音楽シーンでライブがやれないかと。今はアメリカでもジャパンサブカルチャーに興味を持っている方も多い。J-POPシンガーとして、当たり前にアメリカのライブ会場に立てる存在に、僕がなれたらいいなと思っています。
――アメリカナイズされた音楽ではなくJ-POPで、というのがすごく面白いですね!
【神山羊】日本のカルチャーとして立つのが面白いと思うんです。J-POPって日本人にしかできない。そのJ-POPをインターネットがあることで海外の方も聞いてくださってる環境がある。そんな中、僕と同じ志を持つ方と一緒にフェスをやるとか、そうした一つのムーブメントが起こせたら、僕としてはうれしいですね。
(取材・文/衣輪晋一)
神山羊(Yoh Kamiyama)
叙情的なリリックと様々なジャンルを自在に行き来する卓越した音楽センス、アニメーション・実写を横断する映像表現で、ネットシーン、音楽界のみならずファッションやアート界からも注目を集める新時代のサウンドクリエイター。
オフィシャルWEBサイト
YouTube:Yoh Kamiyama
Twitter:@Yuki_Jouet
STAFFTwitter:e.w.e official / 神山羊Staff
Instagram:yoh_kamiyama
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