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現役のテレビマンが明かすTV業界の実状 頻発する“誤報問題”の要因とは
TV番組制作の作業はパソコン1台でも可能に?
つまり、番組本数の増加はCS・BS放送による多チャンネル化ですでに起きており、ネット番組の隆盛は、いわば多チャンネル化の次の段階。制作現場にとってそれは想定内だったようだ。
とはいえ、TV番組の制作数が増えた分、その受け皿が必要となるわけだが、それによって制作会社が増えたかと言えば、決してそうではないと千葉氏。
「番組制作では、以前は制作工程の一つひとつに時間が必要でした。例えばテロップひとつを入れるにしても写植専門の会社にお願いしたり。細かな作業を別会社で行うから、それらを束ねてひとつの作品にするのに時間がかかっていた」と千葉氏は振り返る。しかし極端にいえば、数人の手で1ヶ月かけていたものが、パソコン1台あればひとりの手により数日でできてしまうのだ。
「以前と比べて作り方が粗くなったとも言えますが、今の時代、大掛かりな体制による緻密さが求められる現場は減っている。最近、ディレクターがTVカメラ片手に取材をする番組をよく目にします。これはこうした撮影が醸し出す“リアルっぽさ”や“疑似体験”が視聴者に求められているという側面もありますが、予算的制約という実状もあります」
“部下をこき使う”だけのプロデューサーは生き残れない時代に
「誤報問題が話題ですが、それはチーフプロデューサーが多くの作品を抱える中で、番組のチェックが疎かになっているから」だと千葉氏は分析する。
「昔に比べて番組制作に多くの時間と人手をかけられません。以前は情報ひとつを拾うにしても、たくさんの人間が関わっていた。で、当時のチーフプロデューサーは踏ん反り返るだけでヒマだから、情報をチェックする時間はタップリあった(笑)。でも、今はひとつの作品に時間をかけられないから確認も疎かになる」。つまり、チェック側のマンパワーと時間が単純に足りていないのだ。
以前は、番組の制作工程の中でたくさんの人が関わり、自然とチェックされる機会が多かったため、映像に違和感や不審点があれば「あれ?」と誰かが気づいた。「これ、ちゃんと許可とったのか?」なんて言い出す人も必ずいたのだという。では、そうした少人数での制作体制を見直せるかと言えば、制作現場にも、TV局側にもその体力はないようだ。
地上波5局体制が崩壊!? TV業界は今後10年で劇的な変化が
「これは極論ですが、5局の地上波が4局になるとか。そんな時代の流れがいま進行していると思います。要は、このままスポンサーが減っていけば5局全部は持ちこたえられないかもしれない。プライムタイムのCMの内容を見ると、昔とその中身が全然違うことに気がつきます。自局の番宣も多いです。今後立ち行かなくなった局同士が合併、なんて可能性も無いとはいえない」と衝撃の発言も。
そうした時代の変化を見据え、千葉氏も次の一手を考えている。
「制作会社も、生き残るためには番組制作のチャンスを待っているだけの受け身ではだめ。新しい形を模索する必要がある」と力説。イベント運営が得意な千葉氏の会社では、自社で芸能人を呼んでイベントを開催。それをライブ番組や情報番組に仕上げ、TV局に「流して下さい」と持っていくことにも取り組んでいる。
「番組のスポンサー探しを僕らがやる、というギブ&テイクなやり方です。昔からのシンプルなものですが、こうやって自ら動くことで番組を成立させていく。各制作会社ごとに違う強みがあるはずなので、それを活かして違う収入源というのを確立していかないと、大手以外の中小制作会社が今後生き残っていくことは厳しいと思います」