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【最上もがインタビュー】ドラマや写真集も話題のアイドルの過去「でんぱ組.incのおかげで再生できた」

 6人組アイドルでんぱ組.incが、初ワンマンライブから5年でベストアルバムを発表。メンバー全員が漫画やゲームの“オタク”であり、従来の女子アイドルとはひと味違った活動で注目を集めてきた彼女たち。中でも最上もがは、ドラマ出演や写真集も話題となり、同性のファンも多い。そんな最上に、でんぱ組.incのこれまでの歩み、そして活躍著しい自身の心境の変化を聞いた。

最上もがが“アイドル”になるまで きっかけは家庭の事情

――でんぱ組.incのベストアルバム『WWDBEST 〜電波良好!〜』が12月21日に発売されました。実は、初めてじっくりと曲を聴かせていただいたんですが、皆さんすごく声が特徴的ですね。一人一人の声がはっきり聴き分けられる女性アイドルグループも珍しい。
最上もがぼくは、アイドルは歌声がすごく重要だと思っているんです。でんぱ組.incは、続けていく中でだんだんそれぞれのキャラクターが確立されていって、声の個性もどんどん出すようになった。例えばぼくの声は、割と落ち着いていてウィスパーっぽいんですけど、そのあとに、えいたそ(成瀬瑛美)ちゃんみたいな元気な声を続けることで、1曲の中でギャップを作ったりして。とはいえぼくは、今でも歌は上手くはないですけど。「上手くはないけれど、聴いていて耐えられる程度にはなった」と、この間、親に言われました(苦笑)。5年前、でんぱ組.incに入ったばかりの頃は、かなりひどかったと自分でも思います。

――もがさんは、10代の頃はゲームオタクの引きこもりで、アイドルに憧れた過去は一切ないんですよね?
最上もがアイドルは、生まれた時から輝いている人がなるものだと、ずっと思ってました。もともと全然詳しくなくて、この業界に入ってからいろんな人に、「きゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんに似てる!」と言われるようになり、初めてきゃりーちゃんの存在を知ったくらい(苦笑)。きゃりーちゃんとイベントで初めて会ったときは、向こうから「もがちゃんに似てるって言われるんです」と声をかけられて、そこから友達になりました。

――実際、スカウトされた時は、「アイドルをやってください」とは言われなかったんでしょう?
最上もがはい。当時ぼくは働いてもいなくて、とにかく人と関わり合いたくなかった。人混みが苦手で、電車もまともに乗れない。人に電話をかけることもできないから、病院の予約もできない。証明写真を撮るのも緊張したり、そのくらい社会性がなかったんです。でも、我が家がリアルに金銭的な危機に見舞われて、家計を助けるために働かなきゃ!”と、バイトを始めたんです。それが、でんぱ組.incが新レーベルを立ち上げるときの、コンベンションのどら焼き配りのバイト(笑)。当時のプロデューサーのもふくちゃんから、「やってみませんか」と声をかけていただいたんです。無理だとは思ったんですけど、「アイドルというよりオタク集団だから」と説得されて、2ヶ月後のワンマンライブまでに、他のメンバーと一緒にレッスンを受けることにしました。それが試用期間みたいな感じです。

最初は震えて声も出ず “独白コーナー”でメンバー間に絆が

――そのお試し期間を経て加入が決まり、2011年12月25日に初のワンマンライブに出演したんですね。歌やダンスは、やってみたら楽しかった?
最上もが目の前に起こるすべてのことが新しく、知らないことばかりで、緊張がすごかったです。お腹は痛くなるし、全身が緊張して震えちゃうから、笑顔も作れない。緊張しすぎて喉が詰まるせいで声も出ない。音程も取れない。少し余裕を持ってライブができるようになったのは、2年目ぐらいからです。

――余裕を持てるようになるきっかけは何かあったんですか?
最上もがメンバーの過去を歌った、「W.W.D」っていう曲を出したことですね。ヒャダインさんが、個人的なヒアリングは一切ないまま、ちゃんとぼくらの過去を投影させた曲を完成させてくれて。引きこもってネトゲやってたぼくのことも、いじめられてたメンバーのことも、ぼくらの本音の歌詞が詰め込まれていた。この曲を歌うことで、ぼく自身、初めてメンバーのことがすごくよく理解できました。“こんなに暗い自己紹介ソングを持つアイドルが、世間に受け入れられるんだろうか?”という戸惑いもありつつ、ツアーでは1人1人が過去と現在のことを話す、“独白コーナー”があったりして。メンバーが1人で20分ぐらい喋ってるだけなんですけど、それを聞いているうちに絆が深まりました。

――自分のことを“ぼく”と呼んだり、デビューから一貫して金髪のショートヘアを貫いたりと、今までになかったキャラクターですよね。
最上もがよく“設定っぽい”と言われますけど、でんぱ組.incは全員がセルフプロデュースなんです。ぼくが自分のことを“ぼく”と呼ぶようになったのは、ずっとネトゲで男役をやってたから。女の子だとバレるとバカにされるので、その時の名残というか延長です。金髪は、もともとうちの親がすごく教育熱心で、「絶対に髪なんか染めちゃダメ」と言われて育ったので、高校を卒業した途端、反抗心がむくむくと……(笑)。ショートヘアはもともとです。でんぱ組に入って、「こうしろ」と言われたことはないし、逆に、自分でも「これじゃなきゃ嫌」というこだわりがあるわけじゃない。

自分をさらけ出したら、共感してくれる人がぐっと増えた

――今回あらためて、これまでのミュージックビデオを拝見したんですが、ショーというかミュージカルというかおもちゃ箱というか、すごく賑やかな世界観が弾けていて。ビックリしたし、どれも面白かったです。
最上もがぼくは、小さい頃にモダンバレエを習ってはいたんですが、テンポの速いポップスに合わせたダンスは苦手でした。他のメンバーも、(古川)未鈴ちゃんとピンキー(藤咲彩音)ちゃん以外はダンス経験がなくて、お揃いの振り付けをやったらぐちゃぐちゃだったんです。それで打開策として、全員がバラバラなことをやろう、と(笑)。だから、振りもアドリブが多い。たとえば「サクラあっぱれーしょん」のミュージックビデオは、「原始時代に来たと思って、なんかやってみて!」というところから始まっています。振り写しの時間が、ワークショップみたいでした。でも、みんなが同じことをしてるわけじゃないから、何回見ても飽きないんだと思います。

――なるほど。
最上もが「サクラあっぱれーしょん」は、いろいろと思い出深い曲ですね。カップリングはメンバーそれぞれのソロ曲で、ぼくの「ニューロマンティック」はCHARAさんに作詞作曲していただきました。CHARAさんは、レコーティングにずっと立ち会ってくださって、「もがちゃんは、声の出し方が独特で魅力的。それは強みだから大事にしてほしい」とアドバイスをくれた。自分でも、“最上もがの声はこれなんだ!”と思えてから、喉を開けられるようになりました。

――じゃあ、今回のアルバムの中でターニングポイントになった曲は?
最上もが「W.W.D」と、「W.W.D II」の2曲ですね。どちらも自分のことをさらけ出しているので、ライブで歌っていても苦しくなります。「W.W.D」は過去のことを歌っていて、「W.W.D II」は曲をリリースした“現在”を歌っていて、より歌詞が生々しいというか……。でも、この曲が世の中に出た時、「私もだよ」「わかるよ」と共感してくれる人がぐっと増えたのが嬉しかったです。

――思い入れの強い曲を一曲あげるとしたら?
最上もがでんぱ組.incでは、落ちサビを誰が歌うかが、オーディションだったりするんですよ。ぼくは歌が下手なのでもともと歌のパートが少なかったんですけど、初めて落ちサビのパートをもらえたのが「ORANGE RIUM」。歌は下手だけど、失うものはないんだからって、とにかくレコーディングで一生懸命歌ったら、「ぐっと来たよ」と言ってもらえた。それが採用されたんです。未だにライブでもよく歌います。

――ミュージックビデオを見ていると、すごくライブを見たくなるんですが、もがちゃん、ライブは好きですか?
最上もがライブでは、戦ってます(苦笑)。ぼく、もともと深い呼吸が下手で、激しく体を動かすと、酸欠になりやすいんです。だから、ライブではどこで息をつくか、どこで水を飲むか、どこで呼吸を整えるのか、すごく考えるし、ずっと気が張ってますね。でも不思議なのは、必ず自分のためになる時間があること。どんなにヘコんでいても、ライブに出ると吹っ切れるし、浄化される。人生に大切ないろんなことに気付けるのがライブだと思います。準備段階からとにかくチームプレーなので、“人は利用しちゃいけない”“思いやりを忘れない”という二つのことは、肝に命じてます(笑)。

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