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家入レオ、気鋭のクリエイターたちと制作に挑んだ4thアルバム「意思表示の1枚になった」
気張らずにパーソナルな部分をもっと出していこうと思った
家入レオ 本当に楽しかったですね。音楽に対して自由になれたし、何よりもこの1枚を作ったことですごくラクになれたんです。
――「ラクになれた」というのは?
家入レオ 私も含めて、人は明るい部分と暗い部分を持っていると思うんですね。私の場合は17才でデビューして“思春期”というところで曲を作ってきたから、どうしても暗い部分にスポットが当たりがちでした。それは私にとってリアルなことだったんですけど、あるとき『友人とパンケーキを食べに行く』という話をしたら、スタジオから“へ〜!”っていう驚きの声が上がったことがあって、そのときに「私、ちょっとまずいところにいるのかも」って思ったんです。言葉でいくら「私もたまにははっちゃけたりしますよ」って言っても伝わらないというか、曲を通して表現しないと説得力に欠けるなって。そこから出来たのが、今回のアルバムに入っている「Party Girl」なんですよね。
――「Party Girl」には<っていうかマジメだと誤解してない?/テレビでは見せない 本当の私>という歌詞がありますね。そういう素の部分も歌にしていこうと意識していたんですか?
家入レオ 意識していたわけではないんですよ。明るい部分を押し出そうということではなくて、あまり考え過ぎないで、自分が思うままの音を鳴らして、思ったままの歌詞を書こうと思って…。「君がくれた夏」(2015年8月)をリリースした時期に環境が変わったんですよ。「君がくれた夏」に大きな反響があったのも嬉しかったし、ちょうどその頃にスタッフさんが入れ替わったんです。「君がくれた夏」の結果を踏まえて、お互いに「これからどうしていきたいか?」ということを話し合っていたんですけど、そのときはスタッフさんからの提案に対して「私のことを最初から知っているわけでもないのに、なんでそんなこと言われなくちゃいけないの?」って思ってしまったんですね。でも、お互い言いたいことを言って心の距離が縮まってきた頃に「アーティストの家入レオも大好きだけど、普段接している家入レオもすごく魅力的だよ」ということを言ってもらって、その言葉がすごく心に響いたんです。そこからですね、「気張らずに、もっとパーソナルな部分も出していこう」という気持ちになれたのは。いままでは自分の生活感が出ないように歌詞を書いてたんですけど、曲作りは自分のライフワークだったし、日常的なことももっと歌えるといいなって。それがアルバム全体に出てると思うんですけど、意識したというよりも、自然とこういうカタチになったっていう感じですね。
――曲作りのスタンスが変化することで、当然、楽曲の幅も広がりますからね。
家入レオ はい、すごく広がりましたね。あとは多保孝一さんといっしょに制作できたのもすごく大きかったです。(多保氏のプロデュースによる最初の楽曲)「Hello To The World」もすごく手応えがあったし、「僕たちの未来」の制作を通して、自分の意識や考え方がさらに変わりました。それまでは『自分が見たい景色を見るためにがんばる、そのためには何を犠牲にしてもいい』という感じだったんですけど、それよりも『みんなと一緒に、いつかそういう場所に行けたらいいな』という気持ちになってきて。だから『WE』というタイトルにしたんです。自分ひとりではなく、みんなと一緒に歩いていきたいという気持ちがありましたからね、このアルバムを作ってるときも。
“自分はひとりじゃない”って思えた瞬間が何度もあった
家入レオ そうですね。1stアルバム『LEO』のときは、もちろん当時のプロデューサーである西尾芳彦さんに支えてもらっていましたけど、ひとりで自問自答して作っていた感覚もすごくあって。ずっとファイティングポーズしてましたからね、当時は(笑)。今回は多保さんをはじめ、ミュージシャン、アレンジャー、エンジニアを含めて、みんなで作った1枚という感じがあります。制作していて“自分はひとりじゃない”って思えた瞬間も何度もあったし。
――それも含めて“大人になった”ということなのかも。
家入レオ そうだと思います。あと“東京に来てからの1stアルバム”という感じもありますね。今まではどこかで福岡を引きずっていたような気もするんですけど、いまはそうじゃない。いま自分が触れているもの……情報量も多いじゃないですか、東京って。そこで感じたものを自分の音楽に落とし込んでもいいんじゃないかなって思ったんです。
――新しい音楽も意識的にチェックしてるんですか?
家入レオ してますね。バンドでいうとThe fin.さん、D.A.N.さん、Galileo Galileiさんとか。「シティボーイなアイツ」は、Galileo Galileiとも一緒にやっていたPOP ETCのクリストファー・チュウにアレンジしてもらってるんですよ。あとはサカナクションさんのチームのみなさんにも参加していただいたり――ライブを観に行かせてもらって、すごく音が良かったので、お願いしたんです――「Party Girl」のシンセのアレンジは80KIDZの方に依頼しました。「恍惚」は「ドラムンベースをやりたい」というところから始まったんですけど、ベースの須藤優さん、ドラムの堀正輝さんが「やろうやろう!」と盛り上がって下さって、ベーシックを作ってもらったんです。そういう作り方も初めてだったんですよね。
――サウンドのバリエーションも一気に広がりましたね。
家入レオ はい。ずっと自分が書いた曲の領域をまもろうとしてたけど、21才で“あの人と一緒にやりたい”というお願いがある程度叶う環境があるのはとてもラッキーだし、だったら窓口を広げて、いろんな方のエッセンスを取り入れたほうが楽しいし、作品もどんどん面白くなるので。どんな人と組んでも自分はブレないっていう自信がついたんだと思いますね。前のアルバム(『20』)では作曲からも手を引いていたんですけど、今回はメロディを考えるのも楽しかったです。あらためて“全体の舵を取るのは自分だな”と思ったし、信頼できる制作スタッフとも出会えて……このアルバムを作って、本当に良かったです。
――ボーカルの表現もこれまで以上にカラフルですよね。「I Wish」のような優しい歌い方も新鮮でした。
家入レオ 今までとは違うメロディもかなりあるから、歌い方も自然と広がってきたと思いますね。「I Wish」はもともと多保さんのデモにあった曲なんですけど、最初に聴かせてもらったときにジョン・レノンの雰囲気を感じたんです。ピースフルなイメージもあったから、平和をテーマにした歌詞を書いてみようとしたんですけど、あまりにも大きなテーマだから“作詞家の方と共作するもいいな”と思って、jamさんにお願いして。今までにはなかった感じの曲になりましたね。