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木村拓哉インタビュー『“久利生方程式”にはまっていない女性という存在』

数々のドラマ、映画に出演してきた木村拓哉が演じた役柄のなかでも、間違いなくもっとも視聴者の印象に残っているキャラクターのひとりだろう、久利生公平。ドラマスタート時には社会に影響さえ及ぼした伝説の作品で、そのキャラクターを作りあげてきた木村が、自らの考える久利生像と最新映画への向き合い方を語ってくれた。

“男と女”以上の刺激し合える存在

――完成した映画をご覧になって、なにか発見はありましたか。
木村やっぱり、どう転んでも、あくまでも愛すべき群像劇でした。あと、あらためて、久利生にとって雨宮という存在は、男と女ではあるんだけど、どこかそれ以上の刺激し合えるものがあるんじゃないかなと。

――久利生と雨宮ならではの関係性というものがやっぱりあるのかなって。
木村『HERO』には、どこかリアルさを突き詰めていきたいというところがあった上で、「用意、スタート!」の本番が始まるんですよ。今回で言えば「治外法権」に向き合ったときに、どう話をもっていくか。どう対処するか。どう悩むか。いかに本気に、リアルにやっていくかは、僕らも現場でいろいろ考えながら演じています。でも、久利生と雨宮の、その男女の関係においては、まったくもってリアルじゃない。逆に、そのリアルじゃない部分で遊べているというか。

――リアルと、リアルじゃない部分の共存が、『HERO』の魅力だと思います。久利生と雨宮の関係は、その最たるものなのかもしれない。
木村恋愛というものが、彼らのなかの優先順位において、どれぐらいの位置にあるのかっていうのが本当に描かれていない話なので。だって普通、北川景子なみの女性が横にいたりとかしたら……。

――大変ですよね。
木村うん、恋愛感情を持って当たり前だと思うんだけど、それもないし。だから、相当感度の鈍い男なんじゃないかな。

――恋愛感度が。
木村恋愛感度低すぎでしょ。

――あれって、オレは恋愛には距離を置いてる的なポーズじゃないんですね。
木村(鈍い)フリではないんじゃないですか。だって、もしそれを演じているのだとしたら、演じているという部分をちゃんと観てくれる人たちに伝えるべきじゃないですか。久利生は演じてはいないんじゃないかな。天然で(恋愛感度が)低いんじゃないですかね。

久利生公平に向き合い、演じるということ

――ただ、検事としては相変わらず、感度が良くて。今回の大使館絡みの事件でも、やはりそうでした。
木村そこに存在したのがたまたま大使館、っていう。“たまたま”と正面切って言えるのが、この作品のスタンスだと思います。大使館には踏み込まない、という約束事で、国と国とのバランスが保てているわけじゃないですか。でも、そのバランスも、久利生的には無視している。「なんで?」っていう尺度で、彼は突っ込んでいく。久利生じゃなかったら、たぶん許されていないんじゃないですかね。いままで彼がずーっと培ってきたエピソードがあるから、「ですよね」になれる。急に、ダメージのデニムをはいた検察官が大使館のベル鳴らして、という話だと、たぶん無理があると思うんですけど。いままでみなさんがこの作品とコミュニケーションをとってくれているから、成立する話になっているんじゃないかな。

――その変わらない久利生を演じることは、木村さんにとってはどういうことなんでしょうか。
木村久利生公平のキャラクターがすごくしっかりしているので、ヘンな話、助かるというか。そのキャラクターと向き合う作業のときに、あまり悩む必要がないんです。自分も、観てくださった人たちと同じ時間、久利生と付き合ってきたので、「ここでどうする?」って言われると、「アイツだったらこうするでしょ」って答えられる。本当に、彼の“方程式”が変わっていないので。“久利生方程式”があるんですよ。向き合う相手が、中学生であろうと、「治外法権」であろうと、この方程式に当てはめれば全部、答えは出てくる。そこは不変。ただ、そこにまだはまってないのが、さっきから話に出ている、女性という存在(笑)。

――そこの計算式は見つからない。
木村どうなんですかね。計算式が変わった瞬間に、すんなりいけばいいんですけど。たぶん円周率並なんじゃないですか。どこまでいくの? っていう。

――割りきれないじゃないですか(笑)。
木村うん。じゃあもう、面倒くさいから「π」で表現しちゃおうよ、みたいな。そういうことになりかねないんじゃないのかなと。

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