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アイドルからの脱却、大島優子は篠原涼子になれるのか?
毒にも薬にもなり得る魅力が“女優”大島優子にはある
現在はドラマ『銭の戦争』(フジテレビ系)に出演中。自殺した父親の残した借金のためにすべてを失った主人公・白石富生(草なぎ剛)の恩師の娘・紺野未央役。どん底から復讐を企てる富生に反発しながら、徐々に惹かれていく役どころ。その演技に「意外とうまい」「見直した」といった声がネットに上がっている。アイドルグループ・AKB48の看板だっただけに、一般には女優イメージが薄かった反動もあるだろう。
だが、大島はAKB48に加入する以前は、子役として活動していた。『バージンロード』(フジテレビ系/1997年)に和久井映見が演じた主人公の幼少時代の役で出演していたり。AKB48のブレイク前にも個人でホラー映画『テケテケ』に主演し、ドラマ『弁護士 一之瀬凛子』(TBS系)などにも出演していた。
もともと演技の基盤があるうえに、国民的グループのセンターとして抜群のネームバリューを得て、AKB48在籍中から女優業も平行。卒業後もさっそく前述の2作品にキャスティングされて、客寄せ要員ではなくイチ女優として力があるところを見せた。
“AKB48の太陽”と言われていた大島優子は、たたずまいが明るい。場を華やかせる存在感がある。『紙の月』ではその明るさが主人公のダークサイドを照らし出した。『銭の戦争』では自分でも気づかぬうちに主人公への恋心が芽生えていくのが、大金をめぐる殺伐とした展開の救いになっている。物語のなかで自然にふるまいながら、いわば毒にも薬にもなり得る魅力が女優・大島優子にはある。AKB48時代のキャッチフレーズ“変幻自在のエンタテイナー”は伊達ではないといったところか。「選抜総選挙」の1位争いなど波乱万丈なAKB48時代に様々な感情を味わったことも、演技者として糧となっているだろう。
篠原涼子は、性急な脱アイドルを図らなかったことで現在の地位を確立
篠原は1990年にTPDのメンバーとしてデビュー(ちなみに、現在活動中のTPDは17年ぶりに名前を継いだ新グループ)。アイドル冬の時代にあって、TPDは本格派のパフォーマンスと「ダンスサミット」と名付けたノンストップライブで口コミから人気を広げ、日本武道館2Daysや横浜アリーナ公演も行った。ダンスサミットはライブハウス「原宿ルイード」を拠点に行われ、AKB48の常設劇場で公演を行うスタイルの源流とも言われる。
さらに篠原はソロ歌手として、小室哲哉プロデュースの「恋しさと せつなさと 心強さと」をTPD卒業前の94年に発売。220万枚の大ヒットとなった。また、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)に91年の番組スタートから6年に渡り出演。時にはかぶりものなどもしながら、ダウンタウンや今田耕司らを相手に体を張ってコントを繰り広げた。
ドラマにも脇役でコンスタントに出演していたが、2000年からはほぼ女優業に専念。2004年に『光とともに…』(日本テレビ系)で自閉症児の母親を演じて連ドラ初主演。その後、『anego[アネゴ]』(日本テレビ系)でのOLのリーダー、『アンフェア』(フジテレビ系)での女性刑事、『ハケンの品格』(フジテレビ系)でのデキる派遣社員など、さっそうとした女性役がハマり、ドラマのヒットと共に人気女優に。二児の母となってからも、13年の『ラスト・シンデレラ』(フジテレビ系)で年下男性とのコミカルなラブストーリーを演じ、平均15.2%の好視聴率を記録している。
こうして振り返ると、篠原は確かに脱アイドルした女優の際たる成功例ではあるが、過程は一朝一夕ではなかった。グループ卒業から主演級の役まで10年近くかかっている。その間、いろいろな脇役を通じて演技に深みを増し、徐々に同性から支持されるポジションにシフトチェンジ。時間をかけてアイドル時代と立ち位置を変え、市村正親との結婚も人気面のマイナス要因にならなかった。逆に言えば、性急な脱アイドルを図らなかったことで、TPD時代からのファンも彼女を見守り続けた。
脱アイドルは“変われるか”でなく、魅力を“加えられるか”がカギ
篠原もTPD時代から、今の大島のように、基本は明るいキャラクター。バラエティではその面が活かされていた。今も素は変わらないようではあるが、大人の女優としてのカッコ良さもいつの間にか確立していた。大島に女優としての評価の一方、「所詮はアイドル」との揶揄はある。だが、大島優子のアイドル性=太陽のような明るさを封じ込める必要はない。脱アイドルは“変われるか”でなく、魅力を“加えられるか”がカギになる。
(文:斉藤貴志)
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