ABCテレビ制作・テレビ朝日系で放送中のバラエティー『ポツンと一軒家』(毎週日曜 後7:58)の快進撃が続いている。以前、放送されていた番組の企画コーナーとして生まれ、特番化されてから視聴率は好調に推移。昨年10月にレギュラー化されてからは18週連続2ケタをキープして、15%以上も珍しくない。最高視聴率は関西19.1%(3月3日)、関東17.0%(3月10日)(3月24日現在、視聴率はビデオリサーチ調べ)。多くの人をひきつける番組はどのように生まれたのか。成功の秘密を探った。
『ポツンと一軒家』は、日本各地の人里離れた場所に、なぜだかポツンと存在する一軒家の実態を調査するドキュメントバラエティー。衛星写真を手がかりに、その地へと赴き、地元の方々からの情報を元に、どんな人物が、どんな理由で暮らしているのか、その人生に迫る。
一軒家がある場所は、普段はあまり行かない山林の中。どこか懐かしい里山の風景がもれなく広がっている。その風景に溶け込むような一軒家の住民は、憧れの田舎暮らしを実現させている家族だったり、先祖代々住み続けている人だったり、そこで暮らす理由はさまざまで、すべてに人生のドラマがある。不便そうではあるけれど、その生活ぶりを垣間見ると、ちょっと憧れる。都心と田舎の2つの生活=デュアルライフ(2拠点生活)を望む20〜30代が増えているというトレンドにもマッチ。一軒家を捜索する過程は、一緒に冒険ごっこをしているような楽しみもあって、どんな世代も楽しめる。
番組をヒットさせるためにどのような仕掛けを入れたのか。植田貴之チーフプロデューサー(ABCテレビ)を直撃したら、ヒットを狙った戦略といえるものなど特になく、「レギュラー化は考えていなかった」というのだ。「視聴率の数字を見て、毎回、びっくりする。年齢の高い人たちに多く支持されていると思います」。
植田プロデューサーは、『大改造!!劇的ビフォーアフター』(〜2016年11月)、『人生で大事なことは○○から学んだ』(17年1月〜9月)と日曜8時台の番組をずっと担当してきた。その厳しさは骨身にしみている。
『ポツンと一軒家』は、『人生で大事なことは○○から学んだ』内ではじまった一企画。「『ビフォーアフター』はある程度の数字を取っていましたが、『人生〇〇』はずっと厳しい状態で、事実上の打ち切り。放送枠も失うことになって(後番組はテレビ朝日制作の『ビートたけしのスポーツ大将』)、最後に何か爪痕を残そう、次につながるような企画を考えよう、と会議をしたんです。
その時、『山道を車で走っていて、なんでこんなところに?と思うような場所に家があるけど、どういう人が住んでいて、どうやって生活しているんだろうって、ずっと気になっていた』という話が出て。どんな映像が撮れるか、試しに行ってみよう、という軽い感じでした。ディレクターが撮ってきたものを会議室で見たんですけど、こんな山道歩いていくの? 大丈夫? 家あったー。『すいません』『はーい』。ほんまに住んでいる人おった!って、いま放送しているものとほぼほぼ同じような映像だったんですが、『これは面白いんじゃないか』と、その場にいた全員が思った。それで、『人生○○』の中で放送したんですけど、番組は予定どおり終了しました」。
■番組内容が一瞬でわかるタイトル
番組打ち切りという切羽詰まった状況で降って湧いたような企画だったが、しっかりと爪痕は残せたようで、すぐに『ポツンと一軒家』だけで特番をやることが決まる。放送日は、2017年10月22日、『第48回衆議院議員総選挙』の投開票日だった。「選挙特番の前の枠で、15.5%(関東地区)の高視聴率を取りました。それ以降、月1回くらいのペースで特番をやることになって。僕らはその特番を作るのに必死でレギュラー化は考えていなかったです」。
8回放送された特番も安定した数字をとり、1年で日曜午後8時台に返り咲くことに。「こうして番組として続いているから思えることかもしれないですけど、僕ら作り手側全員が素直な心で『面白い』と思ったことは、視聴者にも伝わる、ということ。僕らが何をすべきかということもわかってくる。誠実に『面白い』と思ったことをやっていくしかない、ってこと」。
番組タイトルも視聴者の心を巧みにつかんだ。「そんなにあれこれ悩まずに、自然とついたんですよね、『ポツンと一軒家』って。もう、衛星写真を見たそのままの印象というか。これほど番組内容を表せるタイトルはほかにない」。
「これなら視聴率がとれる」なんて確信はなかったが、面白い番組にするために心がけていることはある。一軒家探しのレポーターにタレントを使わないのもその一つだ。
「一軒家の情報を地元の人たちから教えてもらう際、タレントが相手だとどこかよそゆきな感じになってしまって、本音というか、素の表情が出てこないと思うんです。ディレクターが相手なら、同じ目線で話ができる。ディレクターの多くは『ビフォーアフター』を経験しているので、一般の人との接し方に慣れているというもあります」。
実際、ロケが空振りに終わることも珍しくないそう。結果、オンエアに至るVTRにも予定調和にいかない緊張感がディレクターのひとり言からも伝わってきて、逆に引き込まれてしまうのだ。
「日本全国にポツンと建っている一軒家はけっこうあるんですよ。空き家、廃屋がすごく多いんですが…。ただ、一軒家に住んでいる人に出会えたら、そこには100%ドラマがある。一軒家の住人にとっては普通の生活でも、そういう環境にいない多くの視聴者にとっては新鮮で、そういう人生もすてきだな、という発見や感動がある。そういう感情を共有したくて、必死に一軒家を探しています」。
MCは『人生○○』に引き続き、所ジョージと林修が務めているが、2人のコメントもいいスパイスになっている。「一軒家の住人の生活ぶりやこれまでの人生について、所さんが敏感に反応して自分の意見を語ってくれるので、視聴者も感動するポイントを見逃さない。林先生は道中に出てくる地理的、歴史的な事柄について、自分の持てる知識を最大限に出してくれる。藤原純友を祀っている神社を守っている女性を紹介した時は、藤原純友が何たるかを全部説明してくれました(笑)」。
「できる限り長く続けたい」という植田チーフプロデューサー。「『ポツンと』って、ひとりぼっちで寂しいイメージがありますけど、この番組が浸透することで、そのイメージが変わるかもしれないですからね」。
■3月31日の放送は、午後6時30分から2時間半スペシャル
ゲストは藤井フミヤと市川紗椰。今回の収録を通して、藤井は「どこのポツンと一軒家を訪ねてもそのお宅ならではの物語がある。感動しましたし、本当に学びも多かった」。市川も「住んでらっしゃるみなさんが、覚悟と責任を持って生きている姿が印象的でしたね」と、コメント。林が「そうした部分も含めてただ素直にお伝えするのがこの番組なんですよね」と、改めて番組の魅力を語ると、所も大きくうなずいていた。
『ポツンと一軒家』は、日本各地の人里離れた場所に、なぜだかポツンと存在する一軒家の実態を調査するドキュメントバラエティー。衛星写真を手がかりに、その地へと赴き、地元の方々からの情報を元に、どんな人物が、どんな理由で暮らしているのか、その人生に迫る。
一軒家がある場所は、普段はあまり行かない山林の中。どこか懐かしい里山の風景がもれなく広がっている。その風景に溶け込むような一軒家の住民は、憧れの田舎暮らしを実現させている家族だったり、先祖代々住み続けている人だったり、そこで暮らす理由はさまざまで、すべてに人生のドラマがある。不便そうではあるけれど、その生活ぶりを垣間見ると、ちょっと憧れる。都心と田舎の2つの生活=デュアルライフ(2拠点生活)を望む20〜30代が増えているというトレンドにもマッチ。一軒家を捜索する過程は、一緒に冒険ごっこをしているような楽しみもあって、どんな世代も楽しめる。
番組をヒットさせるためにどのような仕掛けを入れたのか。植田貴之チーフプロデューサー(ABCテレビ)を直撃したら、ヒットを狙った戦略といえるものなど特になく、「レギュラー化は考えていなかった」というのだ。「視聴率の数字を見て、毎回、びっくりする。年齢の高い人たちに多く支持されていると思います」。
植田プロデューサーは、『大改造!!劇的ビフォーアフター』(〜2016年11月)、『人生で大事なことは○○から学んだ』(17年1月〜9月)と日曜8時台の番組をずっと担当してきた。その厳しさは骨身にしみている。
『ポツンと一軒家』は、『人生で大事なことは○○から学んだ』内ではじまった一企画。「『ビフォーアフター』はある程度の数字を取っていましたが、『人生〇〇』はずっと厳しい状態で、事実上の打ち切り。放送枠も失うことになって(後番組はテレビ朝日制作の『ビートたけしのスポーツ大将』)、最後に何か爪痕を残そう、次につながるような企画を考えよう、と会議をしたんです。
その時、『山道を車で走っていて、なんでこんなところに?と思うような場所に家があるけど、どういう人が住んでいて、どうやって生活しているんだろうって、ずっと気になっていた』という話が出て。どんな映像が撮れるか、試しに行ってみよう、という軽い感じでした。ディレクターが撮ってきたものを会議室で見たんですけど、こんな山道歩いていくの? 大丈夫? 家あったー。『すいません』『はーい』。ほんまに住んでいる人おった!って、いま放送しているものとほぼほぼ同じような映像だったんですが、『これは面白いんじゃないか』と、その場にいた全員が思った。それで、『人生○○』の中で放送したんですけど、番組は予定どおり終了しました」。
■番組内容が一瞬でわかるタイトル
番組打ち切りという切羽詰まった状況で降って湧いたような企画だったが、しっかりと爪痕は残せたようで、すぐに『ポツンと一軒家』だけで特番をやることが決まる。放送日は、2017年10月22日、『第48回衆議院議員総選挙』の投開票日だった。「選挙特番の前の枠で、15.5%(関東地区)の高視聴率を取りました。それ以降、月1回くらいのペースで特番をやることになって。僕らはその特番を作るのに必死でレギュラー化は考えていなかったです」。
8回放送された特番も安定した数字をとり、1年で日曜午後8時台に返り咲くことに。「こうして番組として続いているから思えることかもしれないですけど、僕ら作り手側全員が素直な心で『面白い』と思ったことは、視聴者にも伝わる、ということ。僕らが何をすべきかということもわかってくる。誠実に『面白い』と思ったことをやっていくしかない、ってこと」。
番組タイトルも視聴者の心を巧みにつかんだ。「そんなにあれこれ悩まずに、自然とついたんですよね、『ポツンと一軒家』って。もう、衛星写真を見たそのままの印象というか。これほど番組内容を表せるタイトルはほかにない」。
「これなら視聴率がとれる」なんて確信はなかったが、面白い番組にするために心がけていることはある。一軒家探しのレポーターにタレントを使わないのもその一つだ。
「一軒家の情報を地元の人たちから教えてもらう際、タレントが相手だとどこかよそゆきな感じになってしまって、本音というか、素の表情が出てこないと思うんです。ディレクターが相手なら、同じ目線で話ができる。ディレクターの多くは『ビフォーアフター』を経験しているので、一般の人との接し方に慣れているというもあります」。
実際、ロケが空振りに終わることも珍しくないそう。結果、オンエアに至るVTRにも予定調和にいかない緊張感がディレクターのひとり言からも伝わってきて、逆に引き込まれてしまうのだ。
「日本全国にポツンと建っている一軒家はけっこうあるんですよ。空き家、廃屋がすごく多いんですが…。ただ、一軒家に住んでいる人に出会えたら、そこには100%ドラマがある。一軒家の住人にとっては普通の生活でも、そういう環境にいない多くの視聴者にとっては新鮮で、そういう人生もすてきだな、という発見や感動がある。そういう感情を共有したくて、必死に一軒家を探しています」。
MCは『人生○○』に引き続き、所ジョージと林修が務めているが、2人のコメントもいいスパイスになっている。「一軒家の住人の生活ぶりやこれまでの人生について、所さんが敏感に反応して自分の意見を語ってくれるので、視聴者も感動するポイントを見逃さない。林先生は道中に出てくる地理的、歴史的な事柄について、自分の持てる知識を最大限に出してくれる。藤原純友を祀っている神社を守っている女性を紹介した時は、藤原純友が何たるかを全部説明してくれました(笑)」。
「できる限り長く続けたい」という植田チーフプロデューサー。「『ポツンと』って、ひとりぼっちで寂しいイメージがありますけど、この番組が浸透することで、そのイメージが変わるかもしれないですからね」。
■3月31日の放送は、午後6時30分から2時間半スペシャル
ゲストは藤井フミヤと市川紗椰。今回の収録を通して、藤井は「どこのポツンと一軒家を訪ねてもそのお宅ならではの物語がある。感動しましたし、本当に学びも多かった」。市川も「住んでらっしゃるみなさんが、覚悟と責任を持って生きている姿が印象的でしたね」と、コメント。林が「そうした部分も含めてただ素直にお伝えするのがこの番組なんですよね」と、改めて番組の魅力を語ると、所も大きくうなずいていた。
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2019/03/31