ドラマ&映画 カテゴリ
ORICON NEWS

ピエール瀧容疑者出演『麻雀放浪記2020』公開決定の意義 一様な自主規制に一石

 麻薬取締法違反(使用)容疑で12日に逮捕された、テクノユニット・電気グルーヴのピエール瀧(本名・瀧正則)容疑者(51)が出演している映画『麻雀放浪記2020』の公開に関する会見が20日、都内で行われ、再撮影などの対応を行わずに、予定通り4月5日にノーカットで公開すると発表した。東映代表取締役社長の多田憲之氏、同作のメガホンを取った白石和彌監督が出席。瀧容疑者の逮捕により、公開予定だった作品の差し替え、商品の回収など一様に“自主規制”が続く中、一石を投じる対応となった。

(左から)多田憲之氏、白石和彌監督 (C)ORICON NewS inc.

(左から)多田憲之氏、白石和彌監督 (C)ORICON NewS inc.

写真ページを見る

 瀧容疑者の逮捕は各方面に影響を与えており、出演中のNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』は、10日に放送された第10話の再放送(16日・後1:05〜)は瀧容疑者の出演シーンをカットして放送。「NHKオンデマンド」では、『いだてん』のほか連続テレビ小説『とと姉ちゃん』や『あまちゃん』、大河ドラマ『龍馬伝』のシリーズ全作品の配信を当面停止することを発表した。

 映画では、吹替え声優を務めたディズニー映画『アナと雪の女王』のオラフ役の声優交代が発表。5月公開予定の映画『居眠り磐音(いわね)』は、当該の出演箇所を撮り直し、差し替えた上で予定通り公開される。音楽活動では、15・16日にZepp Tokyoで開催予定だった公演が中止、CD・映像など商品の出荷停止と回収、およびデジタル配信が停止、また石野卓球が23日に出演予定だったイベント出演を中止している。

 この日の会見冒頭、多田氏は「ピエール瀧容疑者が逮捕されたことに関してましては、容疑が事実であれば、決して許されることではなく、大変な憤りを感じております。このことを鑑み、製作に携わった皆さま、および配給担当と多くの時間を割き、協議してまいりました」と報告。その上で、公開を判断した理由を「あってはならない罪を犯したひとりの出演者のために、作品を待ちわびているお客様に、すでに完成した作品を公開しないという選択肢は取らないという結論に至った」と明かした。

 映画というメディアが持つ特性にも触れ「ほとんどは劇場公開からスタートいたします。劇場での上映は有料であり、かつ鑑賞の意志を持ったお客様が来場し鑑賞するというクローズドなメディアでありますので、テレビ放映またはCM等とは性質が異なります。いろいろな方面から賛否両論のご意見があると存じますが、本作はノーカットで公開をいたします」と強調。公開にあたっての対策も講じるといい「劇場公開時にポスター、および上映前にテロップで、逮捕されたピエール瀧容疑者が出演していることを明示いたします」とした。

 多田氏は「いろんな事件があって、かなり公開が中止、延期、編集し直す状態がある中で、東映として、個人としてちょっと行き過ぎだなという印象は持っていました。みんなでスタッフが総力を挙げて作ったものをボツにしていいのかということに対しては、甚だ疑問を持っていました。ところが、当事者になった時に、かなり私も悩みました。株式会社ということもあり、コンプライアンスという問題もあります。それでも、映画会社の責任として公開したいということを社員に伝えて、みなさんを説得しましょうという形になりました」と社内で議論があったと語った。

 一方の白石監督は「作り手としての意見ですけど、基本的に作品には罪はないという姿勢でいいとは思います。ですが、罪がどういう質で、どういった映画のテーマで、罪を犯したものがどういうポジションにいるのかといういろんな状況があるとは思いますが、その辺の議論がなく、一様に社会の流れで決まっているかのようにフタをしてしまうようなことは良くないのではないかと。そこは作品それぞれで、上映できないというのがあくまで特例であってほしい」と明かした。

 すでに購入されたチケットに対して、東映側は「不愉快だと思われるのであれば、払い戻しにも対応します」と説明。多田氏が「製作委員会のみなさまには、劇場公開することにご理解をいただけましたが、まだ議論は続いています」と話した通り、今回の決断によってすべてが解決したことにはならないだろう。しかし、容疑者の段階から出演作品を公開しない、差し替える、過去作も回収して、そのタレントがあたかも存在していなかったようにする昨今の風潮に、待ったをかける判断となったことは確かだ。

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索