今年ヒットした映画(洋画)に共通するもの。それは、音楽だ。2018年公開洋画興行収入ランキングの1位の『ジュラシック・ワールド2 炎の王国』(81億円)はシリーズものの別格として、2位に躍り出たのは、世界的ロックバンド・クイーンの知られざる真実を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』(公開中)。3位はヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』(約52億円)。全米で『グレイテスト・ショーマン』『ボヘミアン・ラプソディ』のサウンドトラックを超える全米3週連続1位という記録を打ち立てた『アリー/ スター誕生』も、21日から日本で公開され、注目を集めている。
『アリー/ スター誕生』の監督・主演を務めるブラッドリー・クーパーは、「音楽は、3分、いや3分以下で、人の人生を変えられるくらい、力を持っていると思う」と語る。本作で、監督デビューを飾ることになった彼は、子どもの頃から映画が大好きで、俳優として20年のキャリアを積み、クリント・イーストウッド監督などから多くを学び、映画作りにおける音楽の重要性をよくわかっていた。
「たった一つの音からはじまるんだ。音自体が独特の存在であって、澄んだ音は美しいとか、誰もが不快に感じる音とか、音がリズムに乗って聴こえてきたら心地いいとか、人類共通のものがある」。だから、音楽には言葉の壁を越えて世界中の人を魅了する力があると。
『スター誕生』は、1937年に初公開され、1954年、1976年にもリメイクされた不朽の名作。今回、監督を任されたクーパーのモチベーションは「かねてから僕は“愛”に関する物語を作りたかった。どんな人でも感情移入できる気がするからです。恋愛そのものにせよ、失恋にせよ、その高揚感にせよ。恋というのは、人が一番生きている実感を味わうものなんです。それに加えてこの映画には音楽、それも歌がある。僕は歌と恋、このふたつを一つの物語にしたいと思った。音楽的な魅力と、映画的な魅力の両方を兼ね備えた作品になれば最強だと思ったんです」。
そこで、大活躍したのが、アーティストとしてもパフォーマーとしても比類なき才能を持つレディー・ガガだ。
歌手を夢見みながら、ウェイトレスとして働くアリー(ガガ)が、国民的人気を誇るミュージシャン、ジャクソン(クーパー)と出会い、歌の才能を見いだされ、一気にスターダムを駆け上がっていく、ある種のシンデレラストーリー。
かつてニューヨークのクラブでダンサーをしていて、そこから才能を見いだされた、ガガの半生そのものを見るようなストーリーで、彼女も自身を投影したかのような役どころを体当たりで熱演している。
ガガは劇中のほとんどの曲を手がけ、メイン楽曲の「シャロウ 〜『アリー/スター誕生』愛のうた」は、『第61回グラミー賞』で主要2部門を含む4部門にノミネート。音楽方面でも高い評価を受けている。『第76回ゴールデン・グローブ賞』でも作品賞、主演女優賞、主演男優賞、監督賞、主題歌賞の5部門にノミネートされている。
■生のボーカルの純粋さには何か特別なものがある
監督をしながらジャクソン役で主演もしたクーパーは、撮影に備えて、ギターとピアノのレッスンに、ボイストレーニングも受け、長年スポットライトを浴び続けてきた“大スター”になりきった。「歌うのは簡単じゃないね。大勢の人たちの前で歌うのは特にね。最初は1ヴァースを歌っただけで息切れしちゃって。6ヶ月間、週に5日間を歌のレッスンに費やしました。もちろん、僕自身ではなく、ジャクソンとして歌えるようにです」。
さらに、音楽面でこだわったのは、歌の“生収録”だ。クーパーとガガは早い段階から劇中の全パフォーマンスを生収録することを決めていたという。先に収録しておき、演技中は口パクをするという方法はとらなかった。「生のボーカルの純粋さには何か特別なものがあるんですよね。歌うことには何か、とても正直なものがある。まったく隠せないんですよ。それぞれのパフォーマンスの真実を捉えるには、生収録というやり方しかなかった」。
撮影チームや音響チームの仕事ぶりもすばらしく、生収録は実行されていく。クーパーは、音楽映画にありがちな、観客側の視点によるワイドショットを一切なくし、すべてステージ上のジャクソンとアリ―の視点で撮影することを求めた。それにより、映画の観客一人ひとりが、大観衆の前で歌っているジャクソンやアリ―の気分になれるのだ。それは極めて映画的で、ものすごいカタルシスがある。
「#ガガ泣き」と宣伝されているガガの圧巻のパフォーマンスは理屈抜きでエモーショナル。音楽のコンサートだったら「アンコール!」の大合唱が起きるところだが、映画はそれができない。だからもう1回、映画を観たいと思う。「Let it go〜ありのままで〜」が聴きたくて何度も『アナと雪の女王』を観に行ってしまったように。魅力的な歌声の曲は中毒性があって、何度聴いても飽きることがない、というのも音楽の真実だ。映画もサウンドトラックも大ヒットするというのは、つまりそういうことなのだろう。
曲を聴くだけならば、ミュージックビデオで十分? いや、短い動画に慣れた今、カタルシスを得て本当に気持ちよくなるには、2時間半くらいの時間が必要なのかもしれない。
『アリー/ スター誕生』の監督・主演を務めるブラッドリー・クーパーは、「音楽は、3分、いや3分以下で、人の人生を変えられるくらい、力を持っていると思う」と語る。本作で、監督デビューを飾ることになった彼は、子どもの頃から映画が大好きで、俳優として20年のキャリアを積み、クリント・イーストウッド監督などから多くを学び、映画作りにおける音楽の重要性をよくわかっていた。
「たった一つの音からはじまるんだ。音自体が独特の存在であって、澄んだ音は美しいとか、誰もが不快に感じる音とか、音がリズムに乗って聴こえてきたら心地いいとか、人類共通のものがある」。だから、音楽には言葉の壁を越えて世界中の人を魅了する力があると。
『スター誕生』は、1937年に初公開され、1954年、1976年にもリメイクされた不朽の名作。今回、監督を任されたクーパーのモチベーションは「かねてから僕は“愛”に関する物語を作りたかった。どんな人でも感情移入できる気がするからです。恋愛そのものにせよ、失恋にせよ、その高揚感にせよ。恋というのは、人が一番生きている実感を味わうものなんです。それに加えてこの映画には音楽、それも歌がある。僕は歌と恋、このふたつを一つの物語にしたいと思った。音楽的な魅力と、映画的な魅力の両方を兼ね備えた作品になれば最強だと思ったんです」。
そこで、大活躍したのが、アーティストとしてもパフォーマーとしても比類なき才能を持つレディー・ガガだ。
歌手を夢見みながら、ウェイトレスとして働くアリー(ガガ)が、国民的人気を誇るミュージシャン、ジャクソン(クーパー)と出会い、歌の才能を見いだされ、一気にスターダムを駆け上がっていく、ある種のシンデレラストーリー。
かつてニューヨークのクラブでダンサーをしていて、そこから才能を見いだされた、ガガの半生そのものを見るようなストーリーで、彼女も自身を投影したかのような役どころを体当たりで熱演している。
ガガは劇中のほとんどの曲を手がけ、メイン楽曲の「シャロウ 〜『アリー/スター誕生』愛のうた」は、『第61回グラミー賞』で主要2部門を含む4部門にノミネート。音楽方面でも高い評価を受けている。『第76回ゴールデン・グローブ賞』でも作品賞、主演女優賞、主演男優賞、監督賞、主題歌賞の5部門にノミネートされている。
■生のボーカルの純粋さには何か特別なものがある
監督をしながらジャクソン役で主演もしたクーパーは、撮影に備えて、ギターとピアノのレッスンに、ボイストレーニングも受け、長年スポットライトを浴び続けてきた“大スター”になりきった。「歌うのは簡単じゃないね。大勢の人たちの前で歌うのは特にね。最初は1ヴァースを歌っただけで息切れしちゃって。6ヶ月間、週に5日間を歌のレッスンに費やしました。もちろん、僕自身ではなく、ジャクソンとして歌えるようにです」。
さらに、音楽面でこだわったのは、歌の“生収録”だ。クーパーとガガは早い段階から劇中の全パフォーマンスを生収録することを決めていたという。先に収録しておき、演技中は口パクをするという方法はとらなかった。「生のボーカルの純粋さには何か特別なものがあるんですよね。歌うことには何か、とても正直なものがある。まったく隠せないんですよ。それぞれのパフォーマンスの真実を捉えるには、生収録というやり方しかなかった」。
撮影チームや音響チームの仕事ぶりもすばらしく、生収録は実行されていく。クーパーは、音楽映画にありがちな、観客側の視点によるワイドショットを一切なくし、すべてステージ上のジャクソンとアリ―の視点で撮影することを求めた。それにより、映画の観客一人ひとりが、大観衆の前で歌っているジャクソンやアリ―の気分になれるのだ。それは極めて映画的で、ものすごいカタルシスがある。
「#ガガ泣き」と宣伝されているガガの圧巻のパフォーマンスは理屈抜きでエモーショナル。音楽のコンサートだったら「アンコール!」の大合唱が起きるところだが、映画はそれができない。だからもう1回、映画を観たいと思う。「Let it go〜ありのままで〜」が聴きたくて何度も『アナと雪の女王』を観に行ってしまったように。魅力的な歌声の曲は中毒性があって、何度聴いても飽きることがない、というのも音楽の真実だ。映画もサウンドトラックも大ヒットするというのは、つまりそういうことなのだろう。
曲を聴くだけならば、ミュージックビデオで十分? いや、短い動画に慣れた今、カタルシスを得て本当に気持ちよくなるには、2時間半くらいの時間が必要なのかもしれない。
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2018/12/23