三島有紀子監督作『幼な子われらに生まれ』で浅野忠信演じる田中の義理の娘・薫を演じ、スクリーンデビューを飾った女優・南沙良(16)。演技初経験のなか、監督、スタッフらによる5回にも及ぶオーディションで役を得ると、義父に対する微妙な思いを繊細な演技で表現した。次作『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』でも吃音に悩み、対人関係がうまくいかない少女を熱演。同作で報知映画賞・新人賞を受賞するなど、映画関係者の間では“演技ができる”新進女優として高い評価を得た。そんな南が待望のドラマ初出演を果たすのが、第30回ヤングシナリオ大賞・大賞受賞作品を映像化した『ココア』だ。
本作で南は、複雑な家庭環境に育ち、クラスメイトからいじめを受け孤立している女子高生・黒崎灯(くろさきあかり)を演じる。物語のスタートでは、ストリートミュージシャンに軽口を叩くなど、これまで南が演じてきた役柄とは明らかに違う佇まいを見せるが、話が進むにつれ大きな闇の部分が顔をのぞかせる、一筋縄ではいかない女の子だ。
南は「物語序盤の小悪魔な感じと、一皮剥いた本質の灯ちゃんとのギャップは大切にしたいと思っていました」と役へのアプローチ方法を語ると「監督と何度もリハーサルをしながら、徐々に役をつかんでいきました」と手ごわいキャラクターだったことを明かす。
これまでの作品でも、心の奥底に闇を抱えている繊細な少女を演じることが多かった南だが、自身との共通点を探し、共感しながら役を取り込み、手のうちに入れていく。『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』でも、吃音という特徴を持つ少女を演じただけに、一元的なキャラクターになってしまいがちなところを、劣等感や疎外感といった負の印象だけではなく、現状を打破するんだという前に進むプラスの感情も織り交ぜ、多面的に表現した。
しっかりと役を組み立てていきつつも、一方で『志乃ちゃん〜』の劇中では、鼻水が氷柱のように垂れ落ちるシーンがアップで映されるなど、カメラに映る姿はリアリティに満ち溢れており迫力満点だ。この点に関して本人は以前のインタビューで「まったく気になっていなかった」と話していたが、カメラが回ると完全に役柄に憑依するという一面も持つ。
度胸満点の演技を見せる南だが「オーディション会場に入るときが一番緊張する」と話すと、舞台挨拶等でお客さんの前に立つことは「生きた心地がしない」ほど苦手だという。『ココア』もオーディションで勝ち取った役だったが「今回が一番(緊張が)ひどかった」とポツリ。なんでも控室の張り詰めた感じが半端なく、さらに大きな会場でのオーディションだったため、審査する人の視線が南に集中しているように感じられ「まずい」と思ったという。
それでもカメラの前に立ち、セリフを口にすると、そんな緊張感は吹き飛ぶという。堂々とした演技はすがすがしさすら感じる。根っからの女優体質なのかもしれない。本作では、売れないギタリスト雄介と交流を深めていく。そのギタリストを演じているのが、黒猫チェルシーのボーカルであり、俳優としても活躍する渡辺大知だ。
「渡辺さんの出演する作品は観ていたので、すごく緊張しました。でも現場ではとても気さくに話しかけてくださいましたし、私のなかで灯という女の子が消化できないで『どうしよう』と思っていたとき、渡辺さんと対峙することで助けられたんです。本当にそこに雄介がいるようでした」。
さらに音楽が好きだという南は「渡辺さんの生歌を聴くことができて、とてもしびれましたし感動しました。歌だけで物語が完成しそうだと思うぐらいでした」と感激したもようだ。
本作のプロデューサーは「主演は年齢関係なく現場の雰囲気を作り、作品を引っ張っていくもの」と語ると、出口夏希、永瀬莉子と共にトリプル主演を務めた南もその役割を存分に果たしていたと太鼓判を押していた。
2019年もすでに映画出演が決まっている南。「いろいろな出会いがあるといいなと」と未来に思いを馳せると「モノづくりに対して、一つ一つ丁寧に向き合っていきたいです」と目を輝かせながら語っていた。(取材・文・撮影:磯部正和)
本作で南は、複雑な家庭環境に育ち、クラスメイトからいじめを受け孤立している女子高生・黒崎灯(くろさきあかり)を演じる。物語のスタートでは、ストリートミュージシャンに軽口を叩くなど、これまで南が演じてきた役柄とは明らかに違う佇まいを見せるが、話が進むにつれ大きな闇の部分が顔をのぞかせる、一筋縄ではいかない女の子だ。
南は「物語序盤の小悪魔な感じと、一皮剥いた本質の灯ちゃんとのギャップは大切にしたいと思っていました」と役へのアプローチ方法を語ると「監督と何度もリハーサルをしながら、徐々に役をつかんでいきました」と手ごわいキャラクターだったことを明かす。
これまでの作品でも、心の奥底に闇を抱えている繊細な少女を演じることが多かった南だが、自身との共通点を探し、共感しながら役を取り込み、手のうちに入れていく。『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』でも、吃音という特徴を持つ少女を演じただけに、一元的なキャラクターになってしまいがちなところを、劣等感や疎外感といった負の印象だけではなく、現状を打破するんだという前に進むプラスの感情も織り交ぜ、多面的に表現した。
しっかりと役を組み立てていきつつも、一方で『志乃ちゃん〜』の劇中では、鼻水が氷柱のように垂れ落ちるシーンがアップで映されるなど、カメラに映る姿はリアリティに満ち溢れており迫力満点だ。この点に関して本人は以前のインタビューで「まったく気になっていなかった」と話していたが、カメラが回ると完全に役柄に憑依するという一面も持つ。
度胸満点の演技を見せる南だが「オーディション会場に入るときが一番緊張する」と話すと、舞台挨拶等でお客さんの前に立つことは「生きた心地がしない」ほど苦手だという。『ココア』もオーディションで勝ち取った役だったが「今回が一番(緊張が)ひどかった」とポツリ。なんでも控室の張り詰めた感じが半端なく、さらに大きな会場でのオーディションだったため、審査する人の視線が南に集中しているように感じられ「まずい」と思ったという。
それでもカメラの前に立ち、セリフを口にすると、そんな緊張感は吹き飛ぶという。堂々とした演技はすがすがしさすら感じる。根っからの女優体質なのかもしれない。本作では、売れないギタリスト雄介と交流を深めていく。そのギタリストを演じているのが、黒猫チェルシーのボーカルであり、俳優としても活躍する渡辺大知だ。
「渡辺さんの出演する作品は観ていたので、すごく緊張しました。でも現場ではとても気さくに話しかけてくださいましたし、私のなかで灯という女の子が消化できないで『どうしよう』と思っていたとき、渡辺さんと対峙することで助けられたんです。本当にそこに雄介がいるようでした」。
さらに音楽が好きだという南は「渡辺さんの生歌を聴くことができて、とてもしびれましたし感動しました。歌だけで物語が完成しそうだと思うぐらいでした」と感激したもようだ。
本作のプロデューサーは「主演は年齢関係なく現場の雰囲気を作り、作品を引っ張っていくもの」と語ると、出口夏希、永瀬莉子と共にトリプル主演を務めた南もその役割を存分に果たしていたと太鼓判を押していた。
2019年もすでに映画出演が決まっている南。「いろいろな出会いがあるといいなと」と未来に思いを馳せると「モノづくりに対して、一つ一つ丁寧に向き合っていきたいです」と目を輝かせながら語っていた。(取材・文・撮影:磯部正和)
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2018/12/23