4歳で芸能活動を開始し、24歳を迎えた今年、デビュー20周年イヤーに突入した俳優・須賀健太。ドラマ『人にやさしく』(2002年/フジテレビ系)や、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)などに出演して活躍を重ねた須賀だが、子役ならではの挫折も味わったという。現在、ドラマ『江戸前の旬』(毎週土曜 BSテレ東)で主演を務めるなど、幅広い役柄をこなす実力派俳優となった彼。着実に実績を積みつつある須賀が、浮き沈みもあった20年の俳優人生を振り返った。
■好青年からサイコパスまで、役柄広げ「固定されたイメージを壊す」
『江戸前の旬』(BSテレビ東京/放送中)で須賀が演じるのは、銀座にある江戸前の老舗寿司屋・柳寿司の三男坊。渡辺裕之演じる父・鱒之介のもと三代目を目指し、厳しい修行に勤しむ青年だ。「一人暮らしをしたのも最近で、それまでは皿を洗ったこともないような人間だったので、お寿司の握り方はもちろん、包丁の使い方など、一から反復練習をしました」と、役作りには余念がなかった。
本作では、未熟ながらも実直に寿司に向き合い、夢や希望にひた向きな青年という、彼の持つパブリックイメージに近い役柄を演じている須賀。だが近年は、映画『シマウマ』(2016年)で演じた拷問が大好きなサイコパスや、『ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-』(同年)の残忍で凶暴な中国人、さらに『スイートプールサイド』(2014年)では、コンプレックスが偏愛に昇華されていく一筋縄ではいかない青年など、非常に幅広い役柄を演じることが多かった。
こうした俳優活動について須賀は「固定されたイメージを壊したいと思っていた」と胸の内を明かす。幼少期から子役として活躍していたことが、自身の大きな枷になっていたという。
■当初はプロ意識皆無、小5で受賞したアカデミー新人賞で影響力を実感
須賀と言えば、2002年放送の連続ドラマ『人にやさしく』(フジテレビ系)で、香取慎吾、松岡充、加藤浩次が住む家にやってきた捨て子・明として大きな注目を集めると、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどでも印象に残る演技を披露。人気子役として大活躍していたが、当初は芸能の世界への思いはそれほど強くなかった。
「最初の現場がNHKのドラマだったのですが、出番は3秒ぐらいだったんです。それでもオンエアされたときは、家族みんなで大騒ぎして観た記憶があります。もともと、母親もステージママ的な感じではなく、社会科見学のノリでした。NHKに行ったときも、隣のスタジオで『おかあさんといっしょ』(現NHK Eテレ)の収録があって、ひろみちお兄さん(佐藤弘道)のサインをもらいにいったぐらい。プロ意識なんてまったくありませんでした(笑)」。
そんななか、少しずつだが“演じる”ことの楽しさも感じるようになった。大きな転機となったのが、初主演を務めた映画『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』(2006年)だ。
「撮影は小学校5年生ぐらいのときだったのですが、この作品で、日本アカデミー賞・新人俳優賞(2007年)をいただいたんです。それまでは、僕が作品に出演すると、家族をはじめ周りの人が喜んでくれるのが嬉しかったのですが、この賞をもらって、自分が知らないところでたくさんの人が作品を観てくれているんだと感じることができて『すごい仕事なんだな』と思うようになりました。そこからは、できれば俳優業を続けていきたいという思いが強くなっていったんです」。
しかし、須賀の思いとは裏腹に、高校生ぐらいになると、俳優としての仕事が徐々に減ってしまった。そこには多くの子役がぶち当たる壁があるというのだ。
「高校時代は、やりたいと思ってもあまり仕事がなかったですね。結構フラストレーションが溜まっていた時期でした。“子役あるある”なのですが、中〜高校生のころは、俳優を辞める人が多い。実際僕も、将来どんな仕事に就きたいのだろうかと、改めて自分の人生を見つめ直しました。そのとき、俳優以外の仕事がまったく思い浮かばなかったんです。仕事がない辛さはありましたが、俳優以外にもっと自分が打ち込めるなにかをみつけられる自信もなく、この世界でやっていきたいと、改めて決心した時期ですね」。
特に須賀の場合、人気子役としての認知度が高く、その知名度が逆に役柄の幅を狭めた。本人は「どんな役でもやりたい」という思いがあっても、オファーする側が、躊躇することが多かった。こうした現状を打破するために、須賀は「とにかく役柄の幅を広げよう」とがむしゃらに俳優業に向き合う一方、しっかりと学生時代を過ごし、視聴者に近い感性も磨いた。本人も「この時期の経験は、いまに生きている」と語っている。
その結果、10代後半から徐々に役柄の幅が広がり、好青年から凶悪犯罪者まで様々なキャラクターを演じ、感情の引き出しをスムーズに表現できる魅力的な俳優へと進化を遂げていった。いろいろな役へのオファーが舞い込む現状に「理想的な流れになっているなと感じています」と笑顔を見せる。
■「いまの子役はお行儀がいい」、芝居では対等に向き合う
現在放送中の『江戸前の旬』では、須賀演じる旬の前に、毎回様々なゲストが登場する。ホスト役として、ゲストの感情の動きや機微をしっかり受け止める芝居は、非常にやりがいのある立ち位置のようで「とても新鮮な経験をさせてもらっています」と目を輝かせる。
また、本作では、田中幸太朗演じる兄の息子が登場する。旬とは甥っ子という間柄になるが、子役と芝居をする場面もある。
「僕らの時代とは違い、いまの子役さんはみんな本当にお行儀が良くて、すごく訓練されていますよね。僕なんて現場抜け出して遊びにいったりしていましたから(笑)。でも、僕は高校生ぐらいまで『子役』とか『子役上がり』と呼ばれるのがすごく嫌だったので、お芝居で接するときは、子役ではなく俳優さんとして対峙しています。もちろんカットがかかれば子どもなので、可愛がっていますが、お芝居に入れば対等です」。
さらに、子役を取り巻く環境も、いまと昔では大きく変わっているという。「僕らのころは、少し扱いが雑だったかも(笑)。そういう最後の世代だと思います。(鈴木)福くんや(加藤)清史郎くんとかは、また見え方も違っていると思いますよ」と苦笑いを浮かべていた。
様々なことがあった20年。最近では、現場でも年下が増え「健太」と呼ばれることも少なくなった。それでも『人にやさしく』で共演した香取や加藤と会うと、「いまでも“お父さん”的な目線で、優しく見守ってくれているような気がする」という。人との出会いには恵まれた20年だった。
今後の目標については、「自分自身でもどんな未来が待っているのか想像できない」と明確には言及しなかったが、ライフワークとなっている舞台は続けていきたいと語気を強める。
「舞台を続けてこられて、俳優としての間口が広がっていったので、これからも出会いを大切に、どんなジャンルでもしっかりと適切な表現ができる俳優になっていきたいです」。
(文:磯部正和)
■好青年からサイコパスまで、役柄広げ「固定されたイメージを壊す」
『江戸前の旬』(BSテレビ東京/放送中)で須賀が演じるのは、銀座にある江戸前の老舗寿司屋・柳寿司の三男坊。渡辺裕之演じる父・鱒之介のもと三代目を目指し、厳しい修行に勤しむ青年だ。「一人暮らしをしたのも最近で、それまでは皿を洗ったこともないような人間だったので、お寿司の握り方はもちろん、包丁の使い方など、一から反復練習をしました」と、役作りには余念がなかった。
本作では、未熟ながらも実直に寿司に向き合い、夢や希望にひた向きな青年という、彼の持つパブリックイメージに近い役柄を演じている須賀。だが近年は、映画『シマウマ』(2016年)で演じた拷問が大好きなサイコパスや、『ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-』(同年)の残忍で凶暴な中国人、さらに『スイートプールサイド』(2014年)では、コンプレックスが偏愛に昇華されていく一筋縄ではいかない青年など、非常に幅広い役柄を演じることが多かった。
こうした俳優活動について須賀は「固定されたイメージを壊したいと思っていた」と胸の内を明かす。幼少期から子役として活躍していたことが、自身の大きな枷になっていたという。
■当初はプロ意識皆無、小5で受賞したアカデミー新人賞で影響力を実感
須賀と言えば、2002年放送の連続ドラマ『人にやさしく』(フジテレビ系)で、香取慎吾、松岡充、加藤浩次が住む家にやってきた捨て子・明として大きな注目を集めると、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどでも印象に残る演技を披露。人気子役として大活躍していたが、当初は芸能の世界への思いはそれほど強くなかった。
「最初の現場がNHKのドラマだったのですが、出番は3秒ぐらいだったんです。それでもオンエアされたときは、家族みんなで大騒ぎして観た記憶があります。もともと、母親もステージママ的な感じではなく、社会科見学のノリでした。NHKに行ったときも、隣のスタジオで『おかあさんといっしょ』(現NHK Eテレ)の収録があって、ひろみちお兄さん(佐藤弘道)のサインをもらいにいったぐらい。プロ意識なんてまったくありませんでした(笑)」。
そんななか、少しずつだが“演じる”ことの楽しさも感じるようになった。大きな転機となったのが、初主演を務めた映画『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』(2006年)だ。
「撮影は小学校5年生ぐらいのときだったのですが、この作品で、日本アカデミー賞・新人俳優賞(2007年)をいただいたんです。それまでは、僕が作品に出演すると、家族をはじめ周りの人が喜んでくれるのが嬉しかったのですが、この賞をもらって、自分が知らないところでたくさんの人が作品を観てくれているんだと感じることができて『すごい仕事なんだな』と思うようになりました。そこからは、できれば俳優業を続けていきたいという思いが強くなっていったんです」。
しかし、須賀の思いとは裏腹に、高校生ぐらいになると、俳優としての仕事が徐々に減ってしまった。そこには多くの子役がぶち当たる壁があるというのだ。
「高校時代は、やりたいと思ってもあまり仕事がなかったですね。結構フラストレーションが溜まっていた時期でした。“子役あるある”なのですが、中〜高校生のころは、俳優を辞める人が多い。実際僕も、将来どんな仕事に就きたいのだろうかと、改めて自分の人生を見つめ直しました。そのとき、俳優以外の仕事がまったく思い浮かばなかったんです。仕事がない辛さはありましたが、俳優以外にもっと自分が打ち込めるなにかをみつけられる自信もなく、この世界でやっていきたいと、改めて決心した時期ですね」。
特に須賀の場合、人気子役としての認知度が高く、その知名度が逆に役柄の幅を狭めた。本人は「どんな役でもやりたい」という思いがあっても、オファーする側が、躊躇することが多かった。こうした現状を打破するために、須賀は「とにかく役柄の幅を広げよう」とがむしゃらに俳優業に向き合う一方、しっかりと学生時代を過ごし、視聴者に近い感性も磨いた。本人も「この時期の経験は、いまに生きている」と語っている。
その結果、10代後半から徐々に役柄の幅が広がり、好青年から凶悪犯罪者まで様々なキャラクターを演じ、感情の引き出しをスムーズに表現できる魅力的な俳優へと進化を遂げていった。いろいろな役へのオファーが舞い込む現状に「理想的な流れになっているなと感じています」と笑顔を見せる。
■「いまの子役はお行儀がいい」、芝居では対等に向き合う
現在放送中の『江戸前の旬』では、須賀演じる旬の前に、毎回様々なゲストが登場する。ホスト役として、ゲストの感情の動きや機微をしっかり受け止める芝居は、非常にやりがいのある立ち位置のようで「とても新鮮な経験をさせてもらっています」と目を輝かせる。
また、本作では、田中幸太朗演じる兄の息子が登場する。旬とは甥っ子という間柄になるが、子役と芝居をする場面もある。
「僕らの時代とは違い、いまの子役さんはみんな本当にお行儀が良くて、すごく訓練されていますよね。僕なんて現場抜け出して遊びにいったりしていましたから(笑)。でも、僕は高校生ぐらいまで『子役』とか『子役上がり』と呼ばれるのがすごく嫌だったので、お芝居で接するときは、子役ではなく俳優さんとして対峙しています。もちろんカットがかかれば子どもなので、可愛がっていますが、お芝居に入れば対等です」。
さらに、子役を取り巻く環境も、いまと昔では大きく変わっているという。「僕らのころは、少し扱いが雑だったかも(笑)。そういう最後の世代だと思います。(鈴木)福くんや(加藤)清史郎くんとかは、また見え方も違っていると思いますよ」と苦笑いを浮かべていた。
様々なことがあった20年。最近では、現場でも年下が増え「健太」と呼ばれることも少なくなった。それでも『人にやさしく』で共演した香取や加藤と会うと、「いまでも“お父さん”的な目線で、優しく見守ってくれているような気がする」という。人との出会いには恵まれた20年だった。
今後の目標については、「自分自身でもどんな未来が待っているのか想像できない」と明確には言及しなかったが、ライフワークとなっている舞台は続けていきたいと語気を強める。
「舞台を続けてこられて、俳優としての間口が広がっていったので、これからも出会いを大切に、どんなジャンルでもしっかりと適切な表現ができる俳優になっていきたいです」。
(文:磯部正和)
コメントする・見る
2018/11/03