『トイ・ストーリー』(1995年)にはじまるピクサー・アニメーション・スタジオの長編20作目『インクレディブル・ファミリー』が8月1日より公開される。2004年に公開され、アカデミー賞2部門(長編アニメーション映画章、音響編集賞)を受賞した『Mr.インクレディブル』の続編になるが、物語は前作の直後から再開する。そこには作品の根幹をなす深い理由があった!? 米サンフランシスコにあるピクサーの本拠地で、ブラッド・バード監督とプロデューサーのニコール・グリンドル氏を直撃した。
「インクレディブル」シリーズは、怪力の持ち主のパパ=ボブこと“Mr.インクレディブル”。伸縮自在のボディを誇るママ=ヘレンこと“イラスティガール”。体を透明にしたり、鉄壁のバリアを作り出す長女ヴァイオレット。超高速スピードで走ることができる長男ダッシュ。無限の可能性を秘めた末っ子の赤ちゃん、ジャック・ジャック。この5人の愛すべきヒーロー家族を中心とした物語。
■ヒーロー家族は「僕自身のいろんな側面を投影したもの」
――前作から14年経っていますが、このことをどのように考えていましたか?
【ブラッド・バード監督】いやあ。それはただ人生というほかない。2本の作品の間隔がこんなに空くなんて。僕はいつでも(2作目を)やるつもりだった。映画をつくっていて最も楽しいと感じられたのは、1作目の『Mr.インクレディブル』なんだ。だから、また戻りたいと思っていた。でも、これは計画されていたわけじゃなかったんだ。たまたまこうなっただけなんだよ。
――ずっとあなたの心には『インクレディブル2』の構想があったということですか?
【バード監督】ああ、もちろんだよ。ボブたち家族のことは、僕自身の家族と同じくらいよく知っている。彼らをどんな状況に置いても、彼らがどのように反応するかがわかる。僕が彼らに何かをやらせているというより、彼らが言っていることを僕が聞いているみたいなんだ。
――自らが生み出したキャラクターがいつも心の中にあるというのは、普通のことなんですか?
【バード監督】もちろん。インクレディブル一家のことが大好きだし、彼らは僕自身のいろんな側面が投影されたキャラクターでもあるんだ。それは、スタッフ一人ひとりにとっても同じことが言えると思う。
【ニコール・グリンドル】ピクサーのスタッフは、本当にインクレディブル一家のことが大好きなの。1作目の時からここにいて、1作目の仕事をした人もたくさんいる。彼らは、観客が2作目を観たかったのと同じくらい、2作目が作られることを切望していたわ。1作目の後に入ってきたアーティストの中には、ティーンエージャーの頃、1作目を劇場で観て、アニメーターやアーティストになろうと思った人も多い。彼らも、2作目を作ると聞いて興奮していたわ。なぜなら、観客として大好きだった映画だったからよ。ブラッドがインクレディブル一家のことを大切に思っているのと同じように、スタッフもキャラクターのことを大切に思っているの。スタッフのみんなが、インクレディブル一家のことを良く知っていると感じているんです。
■家族それぞれのスーパーパワーには理由がある
――悪と戦い、人々を守ってきたヒーローたちが、その驚異的なパワーゆえに非難され、その活動が禁じられてしまった、というのが「インクレディブル」シリーズの世界。今作では、ヒーロー界のスターだったボブとその家族のもとに、復活をかけたミッションが舞い込みますが、そのミッションを任されたのは、建物などを破壊する恐れのないヘレンでした。ボブはやせ我慢してショックを隠し、ヘレンの留守中、慣れない家事・育児に悪戦苦闘する姿が描かれます。
【ニコール】前作のパブリシティをやっていた14年前、ブラッドがすでにヘレンとボブの役割を入れ替えるというアイデアを持っていたことに触れておくべきでしょうね。
【バード監督】そうだね。役割を入れ替えることで、1作目では前面に出てこなかった2人の別の側面を見せられると思ったんだ。ボブには家族の面倒を見るという役割も十分に果たせると思ったし、ヘレンにはヒーローとしての高いプロ意識があった。それは、1作目の最初のシーンを見返してもらえればわかる。ヘレンは「なぜ私が家庭に落ち着くなんてことがあるの? 私は今、絶好調なのよ」と言っていたんだ。今作で、彼女のそういう一面を再び描くことができてよかったよ。
――物語は前作の1、2時間後から始まっているんですよね?
【バード監督】むしろ 30秒後くらいだね(笑)。
――そういう大胆な始まり方にしたのはなぜですか?
【バード監督】答えはまさにそれだと思うよ。大胆なんだ。そして、僕らは大胆な映画を作りたいんだよ。
――それだけですか?
【バード監督】そういうことだよ。人々は、とても事実に即した、直線状の時間の感覚を持っている。僕は、しばしば役立たずのインターネットで、人々が、僕らがキャラクターに年取らせるだろうと考えているのを見たよ。「ダッシュは20代中頃になっているだろう」とかね。僕にとって、もし彼らが持っているスーパーパワーは、彼らの人生におけるある特定の時点のものでなければならなかった。ティーンエージャーたちは、不安定で、(批判などに対して)自己防衛過剰になりがちだ。そして、ヴァイオレットのスーパーパワーはそういうことを反映している。ティーンエージャーでなければならないんだ。10歳の子どもは、エネルギーの塊。だから、ダッシュの(パワーは)スピードなんだ。僕があの年齢の頃、ほかのみんなが僕よりもゆっくり動いているように感じたのを覚えている。赤ちゃんには未知の可能性がある。何のパワーもないかもしれないし、あらゆるパワーを持っているかもしれない。それが、ジャック・ジャックのパワーを表しているんだ。
そのすべてが、オリジナルのアイデアで、僕が興味を持ったことなんだ。パワーが家族における役割や、人生の段階について語っているんだ。もし彼らに年を取らせたら、彼らはただのスーパーパワー(を持った人)たちで、世界にはそういう映画がほかにもたくさんあり過ぎるからね。
■ブラッド・バード
1957年、米モンタナ州生まれ。11歳頃からアニメーション作品を制作。14歳でウォルト・ディズニー・スタジオに注目され、“アニメ界の神童”と謳われる。カリフォルニア芸術大学で学びディズニーに入社、『きつねと猟犬』(81年)にアニメーターとして携わった後に退職。テレビシリーズ『ザ・シンプソンズ』(89〜98年)などに関わった後、『アイアン・ジャイアント』(99年)で監督デビュー。作品はアニー賞9部門を独占する高評価を得た。
旧友ジョン・ラセターの誘いで監督・脚本を手掛けた『Mr.インクレディブル』および『レミーのおいしいレストラン』(07年)がアカデミー賞長編アニメーション映画賞を受賞。その後も『カールおじさんの空飛ぶ家』(09年)、『トイ・ストーリー3』(10年)、『インサイド・ヘッド』(15年)などのクリエティブ面に携わる。『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(11年)、『トゥモローランド』(15年※脚本・製作も)などの実写作品でも監督の才能を発揮。前作に続き、本作でもエドナ・モードの声を演じている。
「インクレディブル」シリーズは、怪力の持ち主のパパ=ボブこと“Mr.インクレディブル”。伸縮自在のボディを誇るママ=ヘレンこと“イラスティガール”。体を透明にしたり、鉄壁のバリアを作り出す長女ヴァイオレット。超高速スピードで走ることができる長男ダッシュ。無限の可能性を秘めた末っ子の赤ちゃん、ジャック・ジャック。この5人の愛すべきヒーロー家族を中心とした物語。
■ヒーロー家族は「僕自身のいろんな側面を投影したもの」
――前作から14年経っていますが、このことをどのように考えていましたか?
【ブラッド・バード監督】いやあ。それはただ人生というほかない。2本の作品の間隔がこんなに空くなんて。僕はいつでも(2作目を)やるつもりだった。映画をつくっていて最も楽しいと感じられたのは、1作目の『Mr.インクレディブル』なんだ。だから、また戻りたいと思っていた。でも、これは計画されていたわけじゃなかったんだ。たまたまこうなっただけなんだよ。
――ずっとあなたの心には『インクレディブル2』の構想があったということですか?
【バード監督】ああ、もちろんだよ。ボブたち家族のことは、僕自身の家族と同じくらいよく知っている。彼らをどんな状況に置いても、彼らがどのように反応するかがわかる。僕が彼らに何かをやらせているというより、彼らが言っていることを僕が聞いているみたいなんだ。
――自らが生み出したキャラクターがいつも心の中にあるというのは、普通のことなんですか?
【バード監督】もちろん。インクレディブル一家のことが大好きだし、彼らは僕自身のいろんな側面が投影されたキャラクターでもあるんだ。それは、スタッフ一人ひとりにとっても同じことが言えると思う。
【ニコール・グリンドル】ピクサーのスタッフは、本当にインクレディブル一家のことが大好きなの。1作目の時からここにいて、1作目の仕事をした人もたくさんいる。彼らは、観客が2作目を観たかったのと同じくらい、2作目が作られることを切望していたわ。1作目の後に入ってきたアーティストの中には、ティーンエージャーの頃、1作目を劇場で観て、アニメーターやアーティストになろうと思った人も多い。彼らも、2作目を作ると聞いて興奮していたわ。なぜなら、観客として大好きだった映画だったからよ。ブラッドがインクレディブル一家のことを大切に思っているのと同じように、スタッフもキャラクターのことを大切に思っているの。スタッフのみんなが、インクレディブル一家のことを良く知っていると感じているんです。
■家族それぞれのスーパーパワーには理由がある
――悪と戦い、人々を守ってきたヒーローたちが、その驚異的なパワーゆえに非難され、その活動が禁じられてしまった、というのが「インクレディブル」シリーズの世界。今作では、ヒーロー界のスターだったボブとその家族のもとに、復活をかけたミッションが舞い込みますが、そのミッションを任されたのは、建物などを破壊する恐れのないヘレンでした。ボブはやせ我慢してショックを隠し、ヘレンの留守中、慣れない家事・育児に悪戦苦闘する姿が描かれます。
【ニコール】前作のパブリシティをやっていた14年前、ブラッドがすでにヘレンとボブの役割を入れ替えるというアイデアを持っていたことに触れておくべきでしょうね。
【バード監督】そうだね。役割を入れ替えることで、1作目では前面に出てこなかった2人の別の側面を見せられると思ったんだ。ボブには家族の面倒を見るという役割も十分に果たせると思ったし、ヘレンにはヒーローとしての高いプロ意識があった。それは、1作目の最初のシーンを見返してもらえればわかる。ヘレンは「なぜ私が家庭に落ち着くなんてことがあるの? 私は今、絶好調なのよ」と言っていたんだ。今作で、彼女のそういう一面を再び描くことができてよかったよ。
――物語は前作の1、2時間後から始まっているんですよね?
【バード監督】むしろ 30秒後くらいだね(笑)。
――そういう大胆な始まり方にしたのはなぜですか?
【バード監督】答えはまさにそれだと思うよ。大胆なんだ。そして、僕らは大胆な映画を作りたいんだよ。
――それだけですか?
【バード監督】そういうことだよ。人々は、とても事実に即した、直線状の時間の感覚を持っている。僕は、しばしば役立たずのインターネットで、人々が、僕らがキャラクターに年取らせるだろうと考えているのを見たよ。「ダッシュは20代中頃になっているだろう」とかね。僕にとって、もし彼らが持っているスーパーパワーは、彼らの人生におけるある特定の時点のものでなければならなかった。ティーンエージャーたちは、不安定で、(批判などに対して)自己防衛過剰になりがちだ。そして、ヴァイオレットのスーパーパワーはそういうことを反映している。ティーンエージャーでなければならないんだ。10歳の子どもは、エネルギーの塊。だから、ダッシュの(パワーは)スピードなんだ。僕があの年齢の頃、ほかのみんなが僕よりもゆっくり動いているように感じたのを覚えている。赤ちゃんには未知の可能性がある。何のパワーもないかもしれないし、あらゆるパワーを持っているかもしれない。それが、ジャック・ジャックのパワーを表しているんだ。
そのすべてが、オリジナルのアイデアで、僕が興味を持ったことなんだ。パワーが家族における役割や、人生の段階について語っているんだ。もし彼らに年を取らせたら、彼らはただのスーパーパワー(を持った人)たちで、世界にはそういう映画がほかにもたくさんあり過ぎるからね。
■ブラッド・バード
1957年、米モンタナ州生まれ。11歳頃からアニメーション作品を制作。14歳でウォルト・ディズニー・スタジオに注目され、“アニメ界の神童”と謳われる。カリフォルニア芸術大学で学びディズニーに入社、『きつねと猟犬』(81年)にアニメーターとして携わった後に退職。テレビシリーズ『ザ・シンプソンズ』(89〜98年)などに関わった後、『アイアン・ジャイアント』(99年)で監督デビュー。作品はアニー賞9部門を独占する高評価を得た。
旧友ジョン・ラセターの誘いで監督・脚本を手掛けた『Mr.インクレディブル』および『レミーのおいしいレストラン』(07年)がアカデミー賞長編アニメーション映画賞を受賞。その後も『カールおじさんの空飛ぶ家』(09年)、『トイ・ストーリー3』(10年)、『インサイド・ヘッド』(15年)などのクリエティブ面に携わる。『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(11年)、『トゥモローランド』(15年※脚本・製作も)などの実写作品でも監督の才能を発揮。前作に続き、本作でもエドナ・モードの声を演じている。
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2018/07/24