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つんく♂、伸びるアイドルは「こだわりのない子」 生き様が「ファンの心をつかむ」

 つんく♂モーニング娘。のプロデュースをスタートさせてから20年を迎えた。ORICON NEWSでは文字を打ち込む形式でインタビューを敢行。前編でモー娘。への思いを語ったつんくが、後編では自身の思い描く理想のアイドル像について語った。今もプロデューサーとしてらつ腕を振るうつんく♂が求めるものとは。ロングインタビューで、プロデュース業への思いが垣間見えた。

伸びるアイドルの秘訣を語ったプロデューサーのつんく♂ (C)ORICON NewS inc.

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■近大、ラストアイドル、代々木アニメーション学院 多岐にわたるプロデュース

 つんく♂は2014年から母校の近畿大学で入学式のプロデュースをしている。「普通、考えられないことをやっていいですよって言われている。そういうふうな運営委員で、ありがたい」と話す。15年には声帯を摘出したことを入学式で発表した。「今思えば、僕が声帯をとったことを、あそこで発表する意味はなんやったろうなって。なんてことをしてくれるんだよって怒られても仕方ない。でも、学生たちにポジティブな気持ちを与えてくれてありがとうとも言われた」と振り返り、「本(『だから、生きる。』)にも書いたけど、精神的にすごく落ち込んでいた。アーティストとしてのエナジーというか魂を抜かれたような気にもなった。でも、あそこで公表して前向きになれた」と運営の担当者に感謝した。今年については「去年、長いなって思った部分を削ぎ落とす。生徒からすると入学式とか卒業式は長いだけで『はよ終わらへんかな』って思う。スピード感を大事にしたい」とテーマを語っていた。

 秋元康氏、小室哲哉HKT48指原莉乃らと代々木アニメーション学院のプロデューサーにも就任。つんく♂は「代々木アニメーション学院の子たちは、めっちゃ明るい子もいるし、オタク気質な子もいる。いろんなタイプがいて、すごく面白い。でも、みんな専門家の卵だから、僕の知らないこともいっぱい知ってる。リスペクトする部分も多くて、接するのがすごく楽しい」という。「これから『つんく♂メソッド』といって僕のボーカルの考え方とか、プロデュースのやり方をいくつかの先生を通じてやってもらう。『つんく♂メソッド』の授業を受けて、育っていく子たちが近い将来、プロの世界で活躍するかもしれない。すごく楽しみですね」と期待した。

■アイドルの現状は「20年前と似ている」 ラストアイドルで感じるもの

 現在は、秋元康氏らと共にテレビ朝日系オーディション番組『ラストアイドル』(毎週土曜 深0:05)から誕生したアイドルグループ「ラストアイドル」ファミリーを手がけている。番組から誕生したグループ・Love Cocchiをプロデュースしており「11月か12月に秋元さんからLINEが来て『こういうのやるから、つんく♂やらない?』って。そんな無茶ぶりから始まった。僕らが秋元さんにプロデュースされているんですよ(笑)。そこは楽しむしかないなって感じ」と笑顔になりつつ「音楽を作れる場所があるのは、非常にうれしいこと。思いの外、メンバーも素直だった。幸いなことに、その前のシングルが1枚しかなかったから、そこまで自分たちの軸みたいなのが構築されていなかった。なかなかピュアな感じで仕上がったんじゃないか」と手応えを語った。

 20年前と今で違うところを聞くと、つんく♂だからこそ分かる反応があった。「今は20年前とちょっと似ている。80年代後半から90年代半ばのバンドブームがあって、世の中からアイドルがあまりいなくなる。アイドルは大ヒットしないと食えないイメージがあったから長続きしないんですね。アイドル=かっこ悪いになって、やりたい子も減ってくるんですよ。そういう時期があって、小室さんの時代がやってきた。アーティストみたいなアイドルになった。そこでカッコいいガールズグループができた。モーニング娘。をやるときは混沌としてアイドルっていうものがなくなっていた」と20年前の状況を分析した。

 時計の針が進み、今はというと「モーニング娘。があってAKB48グループやももいろクローバーZがいて、アイドル戦国時代なんて言われた時期も過ぎ去った。『猫も杓子もアイドル時代』になった。そうなると出る方も何が正しいのか、わからなくなる。20年前と同じように『今からアイドルするの?』って時代になった」と相似点を教えてくれた。「そんな時代が来ている中で『ラストアイドル』。秋元さんも、そういう意味も含めて企画名を考えたんだと思う」と結んだ。

■現在は米・ハワイに移住 遠く離れた地で日本の芸能界に思うこと

 移住して気づいたのは日本のテレビの力だ。「テレビの視聴率が下がったとか、ネットが基準になったとか言うけど、やっぱりブームを作っているのは日本は断然、テレビ。やっぱり、どこかに有名なレストランがオープンするとか、朝や昼のワイドショーでパッと取り扱えば、次の日から長蛇の行列ができる」と説明。広いアメリカではできないことだ。そして「日本のキー局はだいたい同じニュースをやる。春になれば桜のことをやって、夏になったら海が解禁とかね。逆に言えば、だいたいどこも同じことを、ちゃんとやってくれるから安心できる」。

 ただ、日本のエンターテインメント界のウィークポイントについては「やはり英語に弱い点(僕も同じく)。音楽を作るにしても、日本語がベースだと、なかなか世界で勝負出来ない」と持論。「クールジャパンとかインバウンドとかよく聞くけど世界水準のCOOLや外国人にとっての便利な日本となるために、どうあるべきか」と海外暮らしの中から得た感想を述べた。英語教育の必要性に関しては「勉強と思うと子供にとっても高いハードルになるが、音楽やエンタメ性の高い遊びを通じてならもっと自然に身につけるのではないだろうか」と話した。

 また、2015年に発売された『だから、生きる。』(新潮社)が文庫化される。「前回、読んでもらえてなかった人とかは読みやすい手のひらサイズになるから、ぜひ手にとってもらいたい」と呼びかけた。文庫では小説家の朝井リョウ氏が解説を書いている。「けっこう、気持ちのいいことを書いてくれた。僕のことを僕以上に分析してくれている。的確ですね。彼は『つんく♂さんの見ている世界は変わっている』と言うけど、僕から見たら朝井リョウの見ている世界も変わっていて、すごい」と驚いていた。

■アイドルとは「こだわりのなさ」が大事 体現したのは石川梨華

 アイドルを育てるときの視点はどこに置くのかも聞いてみた。つんく♂は「とにかく、こだわりのない子。これが一番伸びる」ときっぱり。それを一番、体現していたのが石川梨華だという。「なんでもやりますって意識があった。3歳、4歳のときからフィギュアスケートをやっている子が『今日の氷の状態がこうだから、この靴』っていうようなこだわりは大事と思う。しかし、今までなんの経験もない子が『今日の髪型じゃ歌えない』っていうのは違うやろって話」と力説。

 そして「その時に与えられた試練をなんとか、こなそうとする。そうなると成長するんです」とも。「5キロ走を走らせようとして『私、短距離選手なんで』って言ってると心臓も大きくならないし、走り方も覚えない。運動オンチで『短距離か長距離か分からないけど、やってみます』って言って、たとえ3キロで走れなくなって倒れたとしても、そいつは成長している。アイドルだから、そういう生き様がファンの心をつかんでいく。石川なんて、全然歌はヘタやったけどカントリー娘。で助っ人をやってタンポポに入って『ザ☆ピ〜ス!』でセンター行くまでは、たかだか1年ぐらいやけど違う人ぐらい成長した」と実体験を交えながら“アイドル”とは、を語った。

 「自分の枠を決めてないっていうのは、とても大事。ハロー!プロジェクトの子、近大の子、代アニの子を見ても、すごく思いますね」。自身も同じだったという。「僕もこだわりがあったけどシャ乱Qが売れる前に一回、捨てた。その後にモーニング娘。に出会って、もう一回こだわりを捨てた。そして声を失って、もう一回、再スタート。自分の過去に引っ張られない生き方をしなければいけない。そういう気持ちになってますね」。最後は「まだ模索中だけど、未来に楽しいことが待ってるという気持ちは捨てない」とまだ見ぬ未来への希望に目を輝かせた。

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  • 伸びるアイドルの秘訣を語ったプロデューサーのつんく♂ (C)ORICON NewS inc.
  • 『だから、生きる。』の書影
  • 伸びるアイドルの秘訣を語ったプロデューサーのつんく♂ (C)ORICON NewS inc.
  • つんく♂=つんく♂インタビュー (C)ORICON NewS inc.
  • つんく♂=つんく♂インタビュー (C)ORICON NewS inc.
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