俳優の山田孝之が「カンヌ国際映画祭で賞をとること」を目的に、その映画製作の過程を追ったドキュメンタリードラマが1月期にテレビ東京系で放送され、その最終回で山田が主演する全く別の映画がカンヌ映画祭に“正式応募”するという、ひょうたんから駒みたいな話が、話題を呼んでいる。それほどまでに、カンヌ映画祭はすごいのか? 同映画祭のコンペティション部門の常連で、2度のパルムドール大賞(最高賞)に輝く、ベルギー出身のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督が来日した際、ズバリ聞いてみた。
ジャン=ピエール・ダルデンヌ氏(65)が兄、リュック・ダルデンヌ氏(63)が弟。1970年代から兄弟でドキュメンタリー作品を製作しはじめ、86年に初の長編劇映画『ファルシュ』を監督し、カンヌ映画祭に出品。長編劇映画3作目の『イゴールの約束』(96年)でカヌ映画祭国際芸術映画評論連盟賞をはじめ、多くの賞を獲得し世界中で絶賛されるようになる。
続く『ロゼッタ』(99年)でカンヌ映画祭パルムドール大賞と主演女優賞(エミリー・ドゥケンヌ)を受賞。『息子のまなざし』(2002年)でも主演男優賞(オリヴィエ・グルメ)とエキュメニック賞特別賞をW受賞。05年、『ある子供』で、カンヌ映画祭史上5組目(フランシス・F・コッポラ、ビレ・アウグスト、エミール・クストリッツァ、今村昌平に続く)となる2度目のパルムドール大賞受賞者となった(後にミヒャエル・ハネケ、ケン・ローチが2度目の受賞を果たしている)。
『ロルナの祈り』(08年)では脚本賞、『少年と自転車』(11年)ではグランプリを受賞。さらに、『サンドラの週末』(14年)、最新作の『午後8時の訪問者』(16年)と、7作連続でカンヌ映画祭コンペティション部門に選出されるという快挙を成し遂げている。
応募は誰にでもできるが、コンペティション部門に選出されるのはかなりの狭き門。ダルデンヌ兄弟がいかにカンヌに愛されているか、を知ってもらうためにカンヌ映画祭での受賞歴を書き連ねたのだが、常に上質な映画を作っているからこそ。そんなダルデンヌ兄弟にとってカンヌ映画祭とは?
「やはりカンヌは少し特別だとは思う。カンヌ映画祭がなかったら、僕らの映画が例えば日本に配給されることもなかっただろうし、自分たちの映画が世界中の人たちが観ることもなかっただろうね。そういう意味では、作品を発表する場として、とてもありがたい場だと思っている。逆に、カンヌに出して酷評されるくらいなら、出さなかったほうがいいといえるかもね。ただ、カンヌの審査員の評価がすべてではないからね」(ジャン=ピエール氏)。
カンヌの常連であることを自慢するような2人ではないことは察しがついていたが、カンヌで評価されることと、世界中で興行収入を得ることは全く別ものであると、至極当然の答え。さらに、「世界中の人に観てもらうためにカンヌで賞をとれるような映画をつくるには?」と聞くと、笑いながら子どもを諭すように話してくれた。
「まず、皆に観てもらえる映画を撮ろうという考えはやめたほうがいい。謙虚に、自分が撮りたいものを撮っていくことから始めてください。もちろん観客のことを考えて作るべきだけど、いきなり世界中の人に観てもらおうと思うのは危険です(笑)」(リュック氏)
「一番大切なのは、これが自分のやり方なんだ、というのを見つけること。もちろん、一度見つけたやり方に固執することはない、どんどん変えていっていいんだけど、ほかの人にはきっとできないであろう、自分らしいやり方を見つけることだね。そこから映画監督の仕事がはじまるんだ」(ジャン=ピエール氏)
日本でようやく公開される最新作『午後8時の訪問者』は、ダルデンヌ兄弟が長い年月をかけて培ってきた自分たちらしさの最新形態ともいえる作品。主人公の若き女医ジェニーは、診療時間をとっくに過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに応じなかった。翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が発見される。その少女が、午後8時にドアホンを押していた人物だったことを知ったジェニーは「あの時、ドアを開けていれば、彼女を救えたのではないか」と、罪悪感から少女の身元を探り始める、というストーリー。4月8日より、東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開される。
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
ジャン=ピエール・ダルデンヌ氏(65)が兄、リュック・ダルデンヌ氏(63)が弟。1970年代から兄弟でドキュメンタリー作品を製作しはじめ、86年に初の長編劇映画『ファルシュ』を監督し、カンヌ映画祭に出品。長編劇映画3作目の『イゴールの約束』(96年)でカヌ映画祭国際芸術映画評論連盟賞をはじめ、多くの賞を獲得し世界中で絶賛されるようになる。
続く『ロゼッタ』(99年)でカンヌ映画祭パルムドール大賞と主演女優賞(エミリー・ドゥケンヌ)を受賞。『息子のまなざし』(2002年)でも主演男優賞(オリヴィエ・グルメ)とエキュメニック賞特別賞をW受賞。05年、『ある子供』で、カンヌ映画祭史上5組目(フランシス・F・コッポラ、ビレ・アウグスト、エミール・クストリッツァ、今村昌平に続く)となる2度目のパルムドール大賞受賞者となった(後にミヒャエル・ハネケ、ケン・ローチが2度目の受賞を果たしている)。
『ロルナの祈り』(08年)では脚本賞、『少年と自転車』(11年)ではグランプリを受賞。さらに、『サンドラの週末』(14年)、最新作の『午後8時の訪問者』(16年)と、7作連続でカンヌ映画祭コンペティション部門に選出されるという快挙を成し遂げている。
応募は誰にでもできるが、コンペティション部門に選出されるのはかなりの狭き門。ダルデンヌ兄弟がいかにカンヌに愛されているか、を知ってもらうためにカンヌ映画祭での受賞歴を書き連ねたのだが、常に上質な映画を作っているからこそ。そんなダルデンヌ兄弟にとってカンヌ映画祭とは?
「やはりカンヌは少し特別だとは思う。カンヌ映画祭がなかったら、僕らの映画が例えば日本に配給されることもなかっただろうし、自分たちの映画が世界中の人たちが観ることもなかっただろうね。そういう意味では、作品を発表する場として、とてもありがたい場だと思っている。逆に、カンヌに出して酷評されるくらいなら、出さなかったほうがいいといえるかもね。ただ、カンヌの審査員の評価がすべてではないからね」(ジャン=ピエール氏)。
カンヌの常連であることを自慢するような2人ではないことは察しがついていたが、カンヌで評価されることと、世界中で興行収入を得ることは全く別ものであると、至極当然の答え。さらに、「世界中の人に観てもらうためにカンヌで賞をとれるような映画をつくるには?」と聞くと、笑いながら子どもを諭すように話してくれた。
「まず、皆に観てもらえる映画を撮ろうという考えはやめたほうがいい。謙虚に、自分が撮りたいものを撮っていくことから始めてください。もちろん観客のことを考えて作るべきだけど、いきなり世界中の人に観てもらおうと思うのは危険です(笑)」(リュック氏)
「一番大切なのは、これが自分のやり方なんだ、というのを見つけること。もちろん、一度見つけたやり方に固執することはない、どんどん変えていっていいんだけど、ほかの人にはきっとできないであろう、自分らしいやり方を見つけることだね。そこから映画監督の仕事がはじまるんだ」(ジャン=ピエール氏)
日本でようやく公開される最新作『午後8時の訪問者』は、ダルデンヌ兄弟が長い年月をかけて培ってきた自分たちらしさの最新形態ともいえる作品。主人公の若き女医ジェニーは、診療時間をとっくに過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに応じなかった。翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が発見される。その少女が、午後8時にドアホンを押していた人物だったことを知ったジェニーは「あの時、ドアを開けていれば、彼女を救えたのではないか」と、罪悪感から少女の身元を探り始める、というストーリー。4月8日より、東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開される。
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2017/04/04