フジテレビCS放送が主催する、高校生を対象とした脚本コンテスト「ドラマ甲子園」で、初代大賞を受賞した現役音大生の新作『十九歳』がこのたびドラマ化。監督の高野舞氏に今作の魅力を聞いた。
◆若き才能とプロの監督のタッグで化学反応に期待
CS放送「フジテレビONE/TWO/NEXT」が主催する、高校生を対象とした脚本コンテスト「ドラマ甲子園」は、14年より毎年開催され、大賞作品は本人の演出で映像化、フジテレビTWOほかで放送されるのが恒例となっている。
その初代大賞受賞者で、現在は音楽大学生である青山ななみ氏が新たに書き下ろした脚本『十九歳』を、フジテレビの高野舞監督が映像化し、CS放送(10分版・全5話:3月27日〜31日 23時20分〜/ロング版:4月21日 23時〜)と地上波(4月5日 25時25分〜)で放送される。
これまでドラマ『昼顔』や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』など、同局の看板ともいえる作品を手がけてきた高野氏だが、CSドラマを手がけるのは本作が初めて。
「幅広い層を狙う地上波と比べて、CSはよりパーソナルな視点が必要とされる。自分にとっても新たな挑戦になると思いました」(監督 高野舞氏)
また「ドラマ甲子園」の選考委員で、今作をプロデュースする鹿内植氏は、両者の相性を次のように語る。
「青山さんの脚本の特徴は、フランス映画や純文学のような手触り。この感性を生かすには、細やかな心象描写に長けた高野監督が適任だと思いオファーしました。また今回は地上波放送も決まっていたので、フレッシュさに加え完成度も必要だったこと、プロの監督と組むことで、新たな化学反応に期待したところもあります」
その思惑通り、高野氏も主人公の少女のイメージや映像の質感などが脚本から即座に浮かんだという。主演は今回が初主演となる女優・岸井ゆきのが務めた。
「岸井さんの魅力は大人びた少女特有の色っぽさ。この脚本の主人公にも重なります。青山さんもこのキャスティングやロケ地となった田舎の風情など、イメージそのままだと喜んでくれました。また今作では、蝶の標本やヒガンバナ、小さなピアスといった赤いキーアイテムが象徴的に登場するのですが、スタッフと共に色彩の描き方にはとてもこだわり
ました」(高野氏/ 以下同)
◆同賞出身者の次なるステージとして将来的には恒例の枠に
物語は19歳の美大生が主人公。奔放な母親に苛立ちを感じているが、かつて母親が恋心を抱いた男性に惹かれてしまう。キャストの繊細な芝居や主人公のモノローグ、広い画角で叙情的な世界が展開し、セリフは極めて少ない。
「伝えたいのは状況説明ではなく感情。それが青山ワールドの最大の魅力。ただし、伝わらなければ意味がない。難しい作業ですが、その点に向けて青山さんとは熟考を重ねました」
なお「ドラマ甲子園」大賞作の『十七歳』では自ら演出しドラマ化したため、青山氏にとっては実質的に今作が初めてのプロ監督とのタッグ。さぞ緊張していたのではないかと考えてしまうが、そんな様子はまったくなかったと高野氏。
「彼女はすでに独立したクリエイターですね。相手がプロだからといって、自分の信念を簡単に曲げることもない。仕事をしていてとても刺激的でした」
今年で4回目となる「ドラマ甲子園」だが、出身者の新作をドラマ化するのは、今回が初の試みとなる。
「出身者とはコンテスト後も連絡を取り合っています。また賞を逃した方からも、今後の創作のために「自分の脚本への意見や感想を聞かせてください」とメールが来ることも。『十九歳』は特別枠の放送ですが、みなさんとても意欲的なので、将来的には恒例の枠にしていきたいですね」(鹿内氏)
フジテレビの脚本コンテストといえば「ヤングシナリオ大賞」が老舗だが、「ドラマ甲子園」はさらに若い才能が芽吹く場。受賞から数年後に社会に出る彼らが、映像界でどのような活躍をしてくれるか、楽しみにしたい。
(文:児玉澄子)
(コンフィデンス 17年3月27日号掲載)
◆若き才能とプロの監督のタッグで化学反応に期待
CS放送「フジテレビONE/TWO/NEXT」が主催する、高校生を対象とした脚本コンテスト「ドラマ甲子園」は、14年より毎年開催され、大賞作品は本人の演出で映像化、フジテレビTWOほかで放送されるのが恒例となっている。
その初代大賞受賞者で、現在は音楽大学生である青山ななみ氏が新たに書き下ろした脚本『十九歳』を、フジテレビの高野舞監督が映像化し、CS放送(10分版・全5話:3月27日〜31日 23時20分〜/ロング版:4月21日 23時〜)と地上波(4月5日 25時25分〜)で放送される。
これまでドラマ『昼顔』や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』など、同局の看板ともいえる作品を手がけてきた高野氏だが、CSドラマを手がけるのは本作が初めて。
「幅広い層を狙う地上波と比べて、CSはよりパーソナルな視点が必要とされる。自分にとっても新たな挑戦になると思いました」(監督 高野舞氏)
また「ドラマ甲子園」の選考委員で、今作をプロデュースする鹿内植氏は、両者の相性を次のように語る。
「青山さんの脚本の特徴は、フランス映画や純文学のような手触り。この感性を生かすには、細やかな心象描写に長けた高野監督が適任だと思いオファーしました。また今回は地上波放送も決まっていたので、フレッシュさに加え完成度も必要だったこと、プロの監督と組むことで、新たな化学反応に期待したところもあります」
その思惑通り、高野氏も主人公の少女のイメージや映像の質感などが脚本から即座に浮かんだという。主演は今回が初主演となる女優・岸井ゆきのが務めた。
「岸井さんの魅力は大人びた少女特有の色っぽさ。この脚本の主人公にも重なります。青山さんもこのキャスティングやロケ地となった田舎の風情など、イメージそのままだと喜んでくれました。また今作では、蝶の標本やヒガンバナ、小さなピアスといった赤いキーアイテムが象徴的に登場するのですが、スタッフと共に色彩の描き方にはとてもこだわり
ました」(高野氏/ 以下同)
◆同賞出身者の次なるステージとして将来的には恒例の枠に
物語は19歳の美大生が主人公。奔放な母親に苛立ちを感じているが、かつて母親が恋心を抱いた男性に惹かれてしまう。キャストの繊細な芝居や主人公のモノローグ、広い画角で叙情的な世界が展開し、セリフは極めて少ない。
「伝えたいのは状況説明ではなく感情。それが青山ワールドの最大の魅力。ただし、伝わらなければ意味がない。難しい作業ですが、その点に向けて青山さんとは熟考を重ねました」
なお「ドラマ甲子園」大賞作の『十七歳』では自ら演出しドラマ化したため、青山氏にとっては実質的に今作が初めてのプロ監督とのタッグ。さぞ緊張していたのではないかと考えてしまうが、そんな様子はまったくなかったと高野氏。
「彼女はすでに独立したクリエイターですね。相手がプロだからといって、自分の信念を簡単に曲げることもない。仕事をしていてとても刺激的でした」
今年で4回目となる「ドラマ甲子園」だが、出身者の新作をドラマ化するのは、今回が初の試みとなる。
「出身者とはコンテスト後も連絡を取り合っています。また賞を逃した方からも、今後の創作のために「自分の脚本への意見や感想を聞かせてください」とメールが来ることも。『十九歳』は特別枠の放送ですが、みなさんとても意欲的なので、将来的には恒例の枠にしていきたいですね」(鹿内氏)
フジテレビの脚本コンテストといえば「ヤングシナリオ大賞」が老舗だが、「ドラマ甲子園」はさらに若い才能が芽吹く場。受賞から数年後に社会に出る彼らが、映像界でどのような活躍をしてくれるか、楽しみにしたい。
(文:児玉澄子)
(コンフィデンス 17年3月27日号掲載)
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2017/03/29