「どうぞ! きょうは、わざわざ来ていただいてすみません。歯医者の予定が入っていたもので(笑)」 そう恐縮しながら自宅へと迎え入れてくれたのは、今年6月に突如、芸人から「おもしろ絵本作家」に転身することを表明したお笑いコンビ・キングコングの西野亮廣(36)。4冊目となる絵本『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)を21日に上梓し、その話を聞こうとしたところ自宅兼アトリエへと招待された。
■戦略的な絵本作家転身 肩書き変われど冷めない“笑い”への情熱
都内某所。2011年から住み始め、この5年間で生み出した作品数は170点程度に達した。手狭になり「作品は主に会社に置かせてもらっています」と、ちゃっかりしている。時間がある時は朝から晩まで作業場にこもり、0.03ミリのボールペンに全神経を集中させながら作品と向き合う。繊細なタッチで描かれる絵が西野作品の魅力のひとつだが、最新作にかけた時間は4年半。さらに自身初の試みとして、イラストレーターやクリエイターなど総勢35人体制による“完全分業制”を実現させた。参加クリエイターのギャラは、クラウドファンディングによって調達した。
「映画だったら、監督さん、音響さん、役者さん…というように、いろんな方がいらっしゃって、それぞれの得意分野を持ち寄って、ひとつの作品を作る。でも、絵本はなぜか一人か二人くらいでやっている。だけど、絵を描くにしても、空を描く仕事と、船を描く仕事と、キャラクター描く仕事と背景の色を描くこととって微妙に業務内容が違っていて、そういうプロの人たちを集めて映画みたいにひとつの作品を作ったら、面白いものになるんじゃないかと思いました」
躍動感を表現するために“動きのプロ”としてアニメーターを雇うほどの徹底ぶりで、リアルな世界観を追求していった。ここまで大がかりな体制を組むのであれば、漫画やアニメといった他ジャンルへの挑戦に舵を切るという選択肢も考えられるが、表現のフィールドはあくまで“絵本”にこだわる。その理由は、西野らしく実に明快だ。
「伝えやすいというのもあるのですが、映画とかになると、ハリウッドとかディズニーとかは、何百億というお金をかけることができる。だから、無制限のところで戦っちゃうと、あんまり勝ち目がないなと思って。絵本であれば、お金をかけようと思っても、たかが知れているので、世界中の人たちがフラットに才能で戦えると思って『これはイケる』と」。その言葉の裏には“芸人活動”への熱い思いも隠されている。
「僕の最終的な目標は“お笑いライブ”なのですが、人を呼びたいという時に一番簡単に増やせる方法は、親子で来てもらうってことだと思います。家族で来てもらうってなったら、絵本だけは持っておこうと。そうすることで、独演会をやる場所の広さも増えてきていますし、ありがたいことに子供連れのお客さんも増えてきているので、絵本は大切にしたいですね」
■博多大吉の男気と東野幸治の愛ある悪意
絵本業で勝負を始めたことに対する、先輩芸人たちの反応はさまざま。2012年に『オルゴールワールド』を出版した際には、これまで交流のなかった9歳上の先輩・博多大吉(45)から突如「大吉です」との書き出しでメールが届いたのだという。「その時までは全く面識なかったんですけど、吉本の社員さんからアドレスを聞かれて、その後に大吉さんがすごく長文の感想を送ってくださった。そこから、飲みに連れて行ってもらうようになりましたね」
2013年に米ニューヨークで絵本原画展『Akihiro Nishino Solo Art Exhibition』を開催した際にもクラウドファンディングで支援者を募ったが、大吉の“男気あふれる”行動に陰ながら支えられていたのだという。
「オリジナルの絵を30万円で売るっていうやつを出したんですけど、正直自分の絵が30万で売れるとは思ってなかった。だけど、大吉さんが『西野の絵を30万円で買えるタイミングはないから、僕はいま買う』と言ってくださって。だから、日本で最初に僕の絵を買って支援してくださったのは大吉さんです。凄くカッコいいですよね。一緒に飲んでいる時は、本当にろくでもない、腹黒い人なんですけど(笑)」
さらに支援者は広がりをみせる。ダイノジの大谷ノブ彦(44)、品川庄司の品川祐(44)、ロザンの菅広文(39)ら所属事務所の先輩から、浅草キッドの水道橋博士(54)、マキタスポーツ(46)といった他事務所の先輩芸人たちからも強力なバックアップを受けた。「西野を批判することがイケてるみたいな風潮があって四面楚歌みたいな感じだったんですけど、そういった先輩方が『何言ってんの、アイツ面白いよ』ということを言ってくださったので、先輩方との出会いでは本当に救われていますね」。
好意的な意見もさることながら、尖った言動を面白がって“イジる”先輩たちも多い。その代表格が、東野幸治(49)だ。
「東野さんは、ただの悪者です。『魔法のコンパス』という本をご覧になった時に『あっ、これはイジれる』って思ったみたいで…。純粋に、表も裏もリバーシブルで黒いんですよ。この間、食事にも行ったんですけど、ずっとネチネチとイジられていました。表の面を裏返してみても黒だから、まるで不思議なオセロですよ(笑)上手いこと隠して、こっちがカリスマとしてやっているのに、そこをイジってくるから…。東野さんと『ゴッドタン』の皆さんは、ただただ黒い人たちです(笑)」。そんな悪意の笑いが全面に表れていたのが、10月20日深夜に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)での、東野持ち込み企画「スゴいんだぞ!西野さん」だ。
著書での発言を引用する形で、東野、大吉から“愛のあるイジり”の集中砲火を受けた西野は「自分の意志でしゃべってない…」と制御不能に。「ホンマに恥ずかしいイジられ方をされていますから。ただただ恥ずかしいです」と苦笑いで収録を振り返った。
多くの敵とファンと支援者に支えられる西野。いまの目標は「お笑いライブは絶対やりたい。キングコングとしても、単独のやつもやりたいですね。あとは…ハロウィンをもらっちゃうみたいな」とニヤリ。「ジャパニーズハロウィンのルールがまだ決まってないので、例えばクリスマスでいうところのサンタクロースもいないし、山下達郎の『クリスマスイブ』みたいな曲もない。そこで…」。まっすぐな後押しと愛のあるイジりを受けながら、これからも西野は走り続ける。
■戦略的な絵本作家転身 肩書き変われど冷めない“笑い”への情熱
都内某所。2011年から住み始め、この5年間で生み出した作品数は170点程度に達した。手狭になり「作品は主に会社に置かせてもらっています」と、ちゃっかりしている。時間がある時は朝から晩まで作業場にこもり、0.03ミリのボールペンに全神経を集中させながら作品と向き合う。繊細なタッチで描かれる絵が西野作品の魅力のひとつだが、最新作にかけた時間は4年半。さらに自身初の試みとして、イラストレーターやクリエイターなど総勢35人体制による“完全分業制”を実現させた。参加クリエイターのギャラは、クラウドファンディングによって調達した。
「映画だったら、監督さん、音響さん、役者さん…というように、いろんな方がいらっしゃって、それぞれの得意分野を持ち寄って、ひとつの作品を作る。でも、絵本はなぜか一人か二人くらいでやっている。だけど、絵を描くにしても、空を描く仕事と、船を描く仕事と、キャラクター描く仕事と背景の色を描くこととって微妙に業務内容が違っていて、そういうプロの人たちを集めて映画みたいにひとつの作品を作ったら、面白いものになるんじゃないかと思いました」
躍動感を表現するために“動きのプロ”としてアニメーターを雇うほどの徹底ぶりで、リアルな世界観を追求していった。ここまで大がかりな体制を組むのであれば、漫画やアニメといった他ジャンルへの挑戦に舵を切るという選択肢も考えられるが、表現のフィールドはあくまで“絵本”にこだわる。その理由は、西野らしく実に明快だ。
「伝えやすいというのもあるのですが、映画とかになると、ハリウッドとかディズニーとかは、何百億というお金をかけることができる。だから、無制限のところで戦っちゃうと、あんまり勝ち目がないなと思って。絵本であれば、お金をかけようと思っても、たかが知れているので、世界中の人たちがフラットに才能で戦えると思って『これはイケる』と」。その言葉の裏には“芸人活動”への熱い思いも隠されている。
「僕の最終的な目標は“お笑いライブ”なのですが、人を呼びたいという時に一番簡単に増やせる方法は、親子で来てもらうってことだと思います。家族で来てもらうってなったら、絵本だけは持っておこうと。そうすることで、独演会をやる場所の広さも増えてきていますし、ありがたいことに子供連れのお客さんも増えてきているので、絵本は大切にしたいですね」
■博多大吉の男気と東野幸治の愛ある悪意
絵本業で勝負を始めたことに対する、先輩芸人たちの反応はさまざま。2012年に『オルゴールワールド』を出版した際には、これまで交流のなかった9歳上の先輩・博多大吉(45)から突如「大吉です」との書き出しでメールが届いたのだという。「その時までは全く面識なかったんですけど、吉本の社員さんからアドレスを聞かれて、その後に大吉さんがすごく長文の感想を送ってくださった。そこから、飲みに連れて行ってもらうようになりましたね」
2013年に米ニューヨークで絵本原画展『Akihiro Nishino Solo Art Exhibition』を開催した際にもクラウドファンディングで支援者を募ったが、大吉の“男気あふれる”行動に陰ながら支えられていたのだという。
「オリジナルの絵を30万円で売るっていうやつを出したんですけど、正直自分の絵が30万で売れるとは思ってなかった。だけど、大吉さんが『西野の絵を30万円で買えるタイミングはないから、僕はいま買う』と言ってくださって。だから、日本で最初に僕の絵を買って支援してくださったのは大吉さんです。凄くカッコいいですよね。一緒に飲んでいる時は、本当にろくでもない、腹黒い人なんですけど(笑)」
さらに支援者は広がりをみせる。ダイノジの大谷ノブ彦(44)、品川庄司の品川祐(44)、ロザンの菅広文(39)ら所属事務所の先輩から、浅草キッドの水道橋博士(54)、マキタスポーツ(46)といった他事務所の先輩芸人たちからも強力なバックアップを受けた。「西野を批判することがイケてるみたいな風潮があって四面楚歌みたいな感じだったんですけど、そういった先輩方が『何言ってんの、アイツ面白いよ』ということを言ってくださったので、先輩方との出会いでは本当に救われていますね」。
好意的な意見もさることながら、尖った言動を面白がって“イジる”先輩たちも多い。その代表格が、東野幸治(49)だ。
「東野さんは、ただの悪者です。『魔法のコンパス』という本をご覧になった時に『あっ、これはイジれる』って思ったみたいで…。純粋に、表も裏もリバーシブルで黒いんですよ。この間、食事にも行ったんですけど、ずっとネチネチとイジられていました。表の面を裏返してみても黒だから、まるで不思議なオセロですよ(笑)上手いこと隠して、こっちがカリスマとしてやっているのに、そこをイジってくるから…。東野さんと『ゴッドタン』の皆さんは、ただただ黒い人たちです(笑)」。そんな悪意の笑いが全面に表れていたのが、10月20日深夜に放送された『アメトーーク!』(テレビ朝日系)での、東野持ち込み企画「スゴいんだぞ!西野さん」だ。
著書での発言を引用する形で、東野、大吉から“愛のあるイジり”の集中砲火を受けた西野は「自分の意志でしゃべってない…」と制御不能に。「ホンマに恥ずかしいイジられ方をされていますから。ただただ恥ずかしいです」と苦笑いで収録を振り返った。
多くの敵とファンと支援者に支えられる西野。いまの目標は「お笑いライブは絶対やりたい。キングコングとしても、単独のやつもやりたいですね。あとは…ハロウィンをもらっちゃうみたいな」とニヤリ。「ジャパニーズハロウィンのルールがまだ決まってないので、例えばクリスマスでいうところのサンタクロースもいないし、山下達郎の『クリスマスイブ』みたいな曲もない。そこで…」。まっすぐな後押しと愛のあるイジりを受けながら、これからも西野は走り続ける。
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2016/10/23