イラストレーター、漫画家、エッセイストなど多彩な創作活動でおなじみのクリエイター・みうらじゅんと、脚本家であり俳優、映画監督としても活躍する宮藤官九郎。サブカル層から圧倒的な支持を受けるふたりに、どこか同じニオイを発するお互いのクリエイティブワークについて聞いた。大真面目に世の中の“難題”を語り合った共同著書『みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議』についても語る。
◆ジャンルはあるけれどカテゴリはないコンプレックスを感じる(みうら)
――お互いをどんなクリエイターだと思っていますか?
【みうらじゅん】 そんなこと聞かれるとめちゃくちゃはずかしいね(笑)。
【宮藤官九郎】 広い意味で先輩……ですね。先輩はたくさんいるんですけど、迷ったときにみうらさんだったらこんなときどうするかなって考えることがよくあります。これやるかな、こういうことすんのかなとか。みうらさんは、僕にとっての“正しい判断”をしているような気がするから。そういう人はほかにあまりいないです。
【みうらじゅん】 それは俺も思います。宮藤さんがやっていることは、映画とか演劇とか、ジャンルはあるけれど、カテゴリはないんじゃないかな。がっちりどこかにハマれないコンプレックスを感じる。こういう自分と似たような人ってどうすんのかなってつい思うよね。
――『世界全体会議』では、おふたりで真剣にエロ?下ネタ?を語り合っていますが、エロがクリエイティブ活動のパワーになっているのでしょうか?
【宮藤官九郎】 いや、僕は全然そうじゃない。エロはギャグですね。
【みうらじゅん】 そう。ギャグですね。エロって世の中的にはいやらしいことだけじゃないですか。でもエロには、そのいやらしいなかに笑いがあるんですよ。
【宮藤官九郎】 じゃなかったらやらないですよね。興味を引くという意味でいえば、パワーはあります。でも笑えないエロはキツイ(笑)。
【みうらじゅん】 フィニッシュが射精っていうのはつまらないですからね。やったことを自慢しているようでは笑ってもらえませんから。
【宮藤官九郎】 誰とやったあとでも虚しいですし、ひとりでも、奥さんとのあとも同じ。あの虚しさは、気持ちの持ち方の問題じゃないんだな。
――エロ=クリエイティブなのかと思っていました。
【みうらじゅん】 実はそんないやらしくないですよ、ふたりとも(笑)。世の中には本当にいやらしい人っているじゃないですか。そういう人は、メディアであっけらかんとエロの話なんてしないですよ。俺らはエロにまつわる些末なことが気になっちゃうんです。
【宮藤官九郎】 おもしろの宝庫ですからね(笑)。
【みうらじゅん】 エロで食っているわけじゃないけれど(笑)。最初はみんな童貞だったのに、どうしてあの感覚を忘れちゃうんだろうね。今日だってここ来る前に神田までエロ本買いに行ったんですよ。また1万円くらい使った。働いてお金もらっているんだから、エロ本買ったって別にいいじゃんって思うんですけどね、まだなんか後ろめたいんですよね、後ろメタファーが(笑)。買ったらそそくさと帰る感じが自分でもおかしくって。
【宮藤官九郎】 僕は映画の宣伝でバラエティに出過ぎたんで、今はダメですね。街を歩いていると、今まで気がついても知らないふりをしてくれてた人にも、そうじゃなくて知ってくれた人にも「あっ!」って声をかけられます。ほとぼりさめるまで、あと1ヶ月くらいはおとなしくしてます。
【みうらじゅん】 ゴールデンタイムのテレビに出るとまわりの目が変わるよね。『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)には何度出させてもらっても平気なのに(笑)。芸能人に入っちゃう自分がいやでしょ? 俺なんて向いてないんで、声かけられるとドキドキしますよ。
――『世界全体会議』で一番盛り上がった話題は?
【宮藤官九郎】 盛り上がったかは置いておいて、何回か話し合ったのはクンニが必要かどうか。前にも話していたんですけど、答えが出ていなかったので。
【みうらじゅん】 年をとるとクンニの重要性がわかってくるんです。「死ぬまでセックス!」って、それは無理だから。若いころは思わなかったけど、クンニってこれから絶対、流行りますから(笑)。
【宮藤官九郎】 この話が出るのはだいたい丑三つ時ですよね。
◆“完全みうらさん作品”が観てみたい(宮藤)
――みうらさんは宮藤さんのどういうところを評価していますか?
【みうらじゅん】 センスが似ていて全然ちがうことをする人っていますよね。宮藤さんの演劇も見せてもらいました。俺、演劇って昔からすごく苦手で。でも、思ってた演劇と宮藤さんのは違ってた。宮藤さんの頭のなかをのぞかせてもらった感じでとてもおもしろかったです。
――宮藤さんはみうらさんにこれからやってほしいことはありますか?
【みうらじゅん】 そんなものないでしょ(笑)。
【宮藤官九郎】 今のままでいてもらえたらなって。あと、みうらさん原作の映画化作品がたくさんあって、田口トモロヲさん、安齋肇さんが監督をしてきたから、今度はご自分が監督で撮ってほしいですね。
【みうらじゅん】 えっ、宮藤さんが撮ってくれるんじゃなくて(笑)。昔、『お笑い虎の穴』(1995年)っていう映画の原作・監督をやったことがあるんですよ。でも、ズボラ屋が出てきて、時間ばかりかかってなかなか完成しなくて……。安齋さんが助監督で、絶えず「みうらくんこれでいいいの?」って聞いてくるんだけど「おっけー!」って。適当になっちゃうんですよね。ふつう撮影現場ってじっくりやるじゃないですか。俺は何事も早く終わればいいなって思っているから、向いてないです(笑)。
【宮藤官九郎】 安齋さんもそういうタイプじゃなかったでしたっけ。
【みうらじゅん】 いや、実はゆっくりタイプですよ。それに、映画は監督ひとりで作るものじゃないから。俺はロンリープレイ専門なんで。
【宮藤官九郎】 僕はみうらさんの監督作って興味ありますけどね。トモロヲさんが撮った作品とか限りなく近いんでしょうけれど、“完全みうらさん作品”が観てみたいんですよね。
――と言われていますが。
【みうらじゅん】 宮藤さんの名前をまだ知らないころに、トモロヲさんから「宮藤くんっていうすごい脚本家がいるから」って言われて。俺の漫画原作を映画『アイデン&ティティ』(2003年)で宮藤さんが脚本を書いてくれたと聞いて、本編を観させてもらったんだけど、当然ですけど自分の原作にない台詞がたくさんあって、それがすっごいおもしろくて。そのとき思ったことは、映画を観てから漫画描けばよかったなと(笑)。映画ってすげえってそのとき実感したんです。こんなに変わって広がるんだって。それまで俺は映画のおもしろさが脚本にあるなんて思ってもいなかったから、それに気づかせてくれた人なんですよ、宮藤さんは。
――宮藤さんも脚本を書かれたときのことを覚えていますか?
【宮藤官九郎】 僕も原作ものの仕事のなかでは一番好きな作品ですね。映画をやる前から原作の漫画も読んでいましたし。
【みうらじゅん】 トモロヲさんは「原作を変えちゃっているところあるけどいい? でも、すごいからまかせておいてよ」って言ってたの。俺は、他人の力を借りることがそれまで一度もなかったから感動しました。宮藤さんは新しい映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』でも監督と脚本やってるでしょ。いやぁ、そりゃおもしろいに決まってますよ。
◆ジャンルはあるけれどカテゴリはないコンプレックスを感じる(みうら)
――お互いをどんなクリエイターだと思っていますか?
【みうらじゅん】 そんなこと聞かれるとめちゃくちゃはずかしいね(笑)。
【宮藤官九郎】 広い意味で先輩……ですね。先輩はたくさんいるんですけど、迷ったときにみうらさんだったらこんなときどうするかなって考えることがよくあります。これやるかな、こういうことすんのかなとか。みうらさんは、僕にとっての“正しい判断”をしているような気がするから。そういう人はほかにあまりいないです。
【みうらじゅん】 それは俺も思います。宮藤さんがやっていることは、映画とか演劇とか、ジャンルはあるけれど、カテゴリはないんじゃないかな。がっちりどこかにハマれないコンプレックスを感じる。こういう自分と似たような人ってどうすんのかなってつい思うよね。
――『世界全体会議』では、おふたりで真剣にエロ?下ネタ?を語り合っていますが、エロがクリエイティブ活動のパワーになっているのでしょうか?
【宮藤官九郎】 いや、僕は全然そうじゃない。エロはギャグですね。
【みうらじゅん】 そう。ギャグですね。エロって世の中的にはいやらしいことだけじゃないですか。でもエロには、そのいやらしいなかに笑いがあるんですよ。
【宮藤官九郎】 じゃなかったらやらないですよね。興味を引くという意味でいえば、パワーはあります。でも笑えないエロはキツイ(笑)。
【みうらじゅん】 フィニッシュが射精っていうのはつまらないですからね。やったことを自慢しているようでは笑ってもらえませんから。
【宮藤官九郎】 誰とやったあとでも虚しいですし、ひとりでも、奥さんとのあとも同じ。あの虚しさは、気持ちの持ち方の問題じゃないんだな。
――エロ=クリエイティブなのかと思っていました。
【みうらじゅん】 実はそんないやらしくないですよ、ふたりとも(笑)。世の中には本当にいやらしい人っているじゃないですか。そういう人は、メディアであっけらかんとエロの話なんてしないですよ。俺らはエロにまつわる些末なことが気になっちゃうんです。
【宮藤官九郎】 おもしろの宝庫ですからね(笑)。
【みうらじゅん】 エロで食っているわけじゃないけれど(笑)。最初はみんな童貞だったのに、どうしてあの感覚を忘れちゃうんだろうね。今日だってここ来る前に神田までエロ本買いに行ったんですよ。また1万円くらい使った。働いてお金もらっているんだから、エロ本買ったって別にいいじゃんって思うんですけどね、まだなんか後ろめたいんですよね、後ろメタファーが(笑)。買ったらそそくさと帰る感じが自分でもおかしくって。
【宮藤官九郎】 僕は映画の宣伝でバラエティに出過ぎたんで、今はダメですね。街を歩いていると、今まで気がついても知らないふりをしてくれてた人にも、そうじゃなくて知ってくれた人にも「あっ!」って声をかけられます。ほとぼりさめるまで、あと1ヶ月くらいはおとなしくしてます。
【みうらじゅん】 ゴールデンタイムのテレビに出るとまわりの目が変わるよね。『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)には何度出させてもらっても平気なのに(笑)。芸能人に入っちゃう自分がいやでしょ? 俺なんて向いてないんで、声かけられるとドキドキしますよ。
――『世界全体会議』で一番盛り上がった話題は?
【宮藤官九郎】 盛り上がったかは置いておいて、何回か話し合ったのはクンニが必要かどうか。前にも話していたんですけど、答えが出ていなかったので。
【みうらじゅん】 年をとるとクンニの重要性がわかってくるんです。「死ぬまでセックス!」って、それは無理だから。若いころは思わなかったけど、クンニってこれから絶対、流行りますから(笑)。
【宮藤官九郎】 この話が出るのはだいたい丑三つ時ですよね。
◆“完全みうらさん作品”が観てみたい(宮藤)
――みうらさんは宮藤さんのどういうところを評価していますか?
【みうらじゅん】 センスが似ていて全然ちがうことをする人っていますよね。宮藤さんの演劇も見せてもらいました。俺、演劇って昔からすごく苦手で。でも、思ってた演劇と宮藤さんのは違ってた。宮藤さんの頭のなかをのぞかせてもらった感じでとてもおもしろかったです。
――宮藤さんはみうらさんにこれからやってほしいことはありますか?
【みうらじゅん】 そんなものないでしょ(笑)。
【宮藤官九郎】 今のままでいてもらえたらなって。あと、みうらさん原作の映画化作品がたくさんあって、田口トモロヲさん、安齋肇さんが監督をしてきたから、今度はご自分が監督で撮ってほしいですね。
【みうらじゅん】 えっ、宮藤さんが撮ってくれるんじゃなくて(笑)。昔、『お笑い虎の穴』(1995年)っていう映画の原作・監督をやったことがあるんですよ。でも、ズボラ屋が出てきて、時間ばかりかかってなかなか完成しなくて……。安齋さんが助監督で、絶えず「みうらくんこれでいいいの?」って聞いてくるんだけど「おっけー!」って。適当になっちゃうんですよね。ふつう撮影現場ってじっくりやるじゃないですか。俺は何事も早く終わればいいなって思っているから、向いてないです(笑)。
【宮藤官九郎】 安齋さんもそういうタイプじゃなかったでしたっけ。
【みうらじゅん】 いや、実はゆっくりタイプですよ。それに、映画は監督ひとりで作るものじゃないから。俺はロンリープレイ専門なんで。
【宮藤官九郎】 僕はみうらさんの監督作って興味ありますけどね。トモロヲさんが撮った作品とか限りなく近いんでしょうけれど、“完全みうらさん作品”が観てみたいんですよね。
――と言われていますが。
【みうらじゅん】 宮藤さんの名前をまだ知らないころに、トモロヲさんから「宮藤くんっていうすごい脚本家がいるから」って言われて。俺の漫画原作を映画『アイデン&ティティ』(2003年)で宮藤さんが脚本を書いてくれたと聞いて、本編を観させてもらったんだけど、当然ですけど自分の原作にない台詞がたくさんあって、それがすっごいおもしろくて。そのとき思ったことは、映画を観てから漫画描けばよかったなと(笑)。映画ってすげえってそのとき実感したんです。こんなに変わって広がるんだって。それまで俺は映画のおもしろさが脚本にあるなんて思ってもいなかったから、それに気づかせてくれた人なんですよ、宮藤さんは。
――宮藤さんも脚本を書かれたときのことを覚えていますか?
【宮藤官九郎】 僕も原作ものの仕事のなかでは一番好きな作品ですね。映画をやる前から原作の漫画も読んでいましたし。
【みうらじゅん】 トモロヲさんは「原作を変えちゃっているところあるけどいい? でも、すごいからまかせておいてよ」って言ってたの。俺は、他人の力を借りることがそれまで一度もなかったから感動しました。宮藤さんは新しい映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』でも監督と脚本やってるでしょ。いやぁ、そりゃおもしろいに決まってますよ。
コメントする・見る
2016/08/19