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若者にも楽曲が浸透……スピッツに再評価の声

 ロックバンド・スピッツの人気曲「渚」がSUBARU『フォレスター』のCMに使用され話題になっている。同曲は1996年9月に発売された、スピッツにとっては初めて“初登場1位”を獲得した記念すべきナンバー。このセレクトにネット上では、「スバルのCMソングのチョイス素敵すぎ」といった反響が寄せられている。20年前の彼らの楽曲の起用には、CMターゲットである30〜40代のファミリー層に“刺さる”という要素が大きかったと思われるが、そうしたミドルエイジのファン層からの好反応はもちろん、今回のCMを通して改めてスピッツの作品に触れた若い世代にもその魅力が浸透しているようだ。

自己最高売上を更新したスピッツのライブBlu-ray Disc『THE GREAT JAMBOREE 2014“FESTIVARENA”日本武道館(Blu-ray)』

自己最高売上を更新したスピッツのライブBlu-ray Disc『THE GREAT JAMBOREE 2014“FESTIVARENA”日本武道館(Blu-ray)』

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Mr.Childrenと共に人気を二分した90年代を代表する“国民的バンド”

 「渚」は、1996年9月に発売され、記念すべき初めての初登場1位を獲得した作品で、過去には江崎グリコ『ポッキー坂恋物語』のCFにも起用された。現在はSUBARU『フォレスター』CMソングに起用され、約20年の月日を越えても決して色あせることのない楽曲ということを証明している。その一方では、1月1日に発売されたライブBlu-ray『THE GREAT JAMBOREE 2014“FESTIVARENA”日本武道館』が初週に1.1万枚を売り上げ、1/11付週間総合BDランキングで2位に初登場した。これは2015年7/13付で最高位5位、初週売上9047枚を記録した『JAMBOREE 3“小さな生き物”』をともに上回り、自己最高を更新する結果となるなど、ここにきてスピッツへの再評価が高まる動きが出てきている。

 スピッツは草野マサムネ、田村明浩らを中心に1987年に結成され、これまでに一度もメンバーチェンジを行うことなく今日まで活動を続けている。初期にはパンク的なアプローチを見せてもいたが、やがてメロディ志向へと移行、ユニークな視点と文学的センスに溢れた草野の歌詞と相まって、メジャーデビュー4年目の1995年に「ロビンソン」でブレイク。ほぼ同時期にメジャーデビューを果たし、前年に「innocent world」のヒットで注目を集めていたMr.Childrenと比較されながらも両者ともに“国民的バンド”への道を駆け上ってきた。

◆若い世代のアーティストがリスペクト、ジャンル問わずその影響力は広範囲に渡る

 しかしながら、スピッツはこれまで必ずしもメディア露出に対して積極的なスタンスを取ってきたわけではない。ライブを中心に着実にファンを拡大してきたアーティストなのだ。そうした下地が結成から30年に及ぼうかという今もなお、スピッツの強固なバックボーンとなっている。とはいえ、多くのファンが、彼らが表舞台に出てくることを望んでいるのも確かだ。2015年以降に発表されたアイテムは、前出のライブ映像作品2本と昨年4月に配信限定で発表されたシングル「雪風」のみ。アルバムアーティストであることを考えると、このリリース量が格別少ないというわけでもなさそうだが、「渚」のCMタイアップへの反応は彼らの作品を渇望している表れと言ってもいい。

 また、昨年末に発売された『JUST LIKE HONEY〜「ハチミツ」20th Anniversary Tribute〜』(発売20周年を迎えたスピッツ6枚目のアルバム『ハチミツ』のトリビュート・アルバム)に、赤い公園ASIAN KUNG-FU GENERATIONindigo la End9mm Parabellum Bullet鬼龍院翔ゴールデンボンバー)、クリープハイプなどの多彩な顔ぶれが参加していることも、スピッツが若い世代のアーティストにリスペクトされ、その影響力が広範囲にわたっていることを示していると考えられるだろう。スピッツの“華”と“毒”、リリカルで柔らかな部分とパンキッシュでとがった部分が絶妙に混ざり合った彼らの音楽は、いろいろなサウンドに携わるミュージシャンにも刺激を与え続けているということだ。

 サカナクションSEKAI NO OWARIゲスの極み乙女。といった実力と“アク”の強さが支持を集めている近年のバンドブームにあって、昨年大きな飛躍を遂げたback numberの例に見られるように、王道を行く“歌もの”路線のバンドが逆に衝撃をもってその存在を際立たせるような状況も生まれつつある。スピッツの再評価の高まりは、彼らの本質である“歌もの”の凄さを見せつけるのに絶好のフィールドが構築されているとも言えるだろう。

(文:田井裕規)

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