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低迷続く“Jホラー”が復活の兆し ブーム再来なるか?

 『リング』シリーズ、『呪怨』シリーズなどに代表される日本発のホラー映画、いわゆるJ(ジャパニーズ)ホラーが世界で高い評価を得てきたのは周知の事実。しかしここ数年、Jホラーが低迷している。昨年の9月、1998年公開の『リング』『らせん』、2003年公開の『呪怨』などを手掛けた製作会社「オズ」が倒産、ホラー映画自体も主演女優がアイドルばかりになり、内容的な話題作・ヒット作を生み出せないでいる。しかし1月30日には『残穢(ざんえ)−住んではいけない部屋―』が全国公開され、6月18日には『クリーピー』の公開も控えているが、予告編などの前評判も上々で、ここにきて久しぶりにJホラー復活の兆しが見え始めているという。

映画『残穢(ざんえ)−住んではいけない部屋―』の中村義洋監督と主演を務める竹内結子(C)ORICON NewS inc.

映画『残穢(ざんえ)−住んではいけない部屋―』の中村義洋監督と主演を務める竹内結子(C)ORICON NewS inc.

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◆日本独自の“恐怖”が定評のJホラー

 『リング』シリーズは1998年、『リング』の続編『らせん』との同時上映後、2012年の『貞子3D』に至るまで計5作が公開され、アメリカで2作、韓国で1作がリメイクされた。また2003年公開の『呪怨』シリーズは、昨年公開の『呪怨−ザ・ファイナル』まで計6作、こちらもハリウッド版で計3作がリメイクされている(うち1作は劇場未公開)。

 ここまでJホラーが海外で高い評価を得てヒットしたのも、『13日の金曜日』のジェイソンや『エルム街の悪夢』のフレディのように、殺人鬼や悪魔との対決といったわかりやすい構図のホラーではなく、日本独特のジワジワと心理的に迫ってくる怖さ、何気ない日常の世界に潜んでいる恐怖が受け入れられたからだと言われている。しかも『リング』では「貞子」、『呪怨』では「伽椰子と俊雄」の母子というスーパーキャラを産み出したことも成功の大きな要因だ。これらのキャラは映画の世界を飛び出し、パチンコ台になったりプロ野球の始球式をするなど、いまだに大活躍しているのである。

 今でもキャラクターとしては人気が高いのに、なぜ倒産という憂き目にあってしまったのか?「ただ、キャラクタービジネスの版権料は原作者にいきます。ハリウッド版リメイク化権料は、『呪怨』の場合はもともと原作のビデオ作品を発売していた東映ビデオにいき、莫大な利益を上げたと聞いています。我々製作会社には何の恩恵もありません。結局、製作会社はヒット作を出し続けて、配給会社から発注を請け負うしかない。ホラーブームも下火になり、決して大手とは言えないオズさんが倒産するのも無理はないでしょう」(映画製作会社スタッフ)

◆アイドル主演作品が続き、ホラーファンが遠のく

 先の「オズ」倒産とリンクするように、ここ数年目立った作品もないJホラーは、今やアイドルの主演作品だらけになってしまった。筆頭はやはりAKB系で、2013年公開の『クロユリ団地』は前田敦子、14年公開の『青鬼』は入山杏奈、15年公開の『劇場霊』は島崎遥香といった具合で、その他の作品もAKB系アイドルの主演は多数ある。

 『クロユリ団地』は興行収入が10億円を超えるヒットとなったが、前出の製作会社のスタッフは「若いアイドルが悲鳴を上げるシーンを見たさに来るお客さんも多いですし、昔からアイドルの登竜門がホラーやミステリー映画というのは定番。安易ですが2匹目のドジョウを狙うのもしょうがないでしょう。でも結局は、お客さんがアイドルファン中心になってしまい、本当のホラーファンの足が劇場から遠のいてしまった…というのが現実かもしれません」と現状を危惧する。

◆名監督が挑む“恐怖”の表現に期待高まる

 その点、1月30日に公開される『残穢』は、予告編を見る限りはかつての『呪怨』を彷彿とさせる本格派。いかにも日本的な住宅(今作はマンション)を舞台にし、日本特有の“土地”や“家”にまつわる怨念をテーマにした恐怖を演出している。キャストも主人公の竹内結子をはじめ、佐々木蔵之介橋本愛滝藤賢一坂口健太郎といった実力派を配していて期待が持てる。また、6月公開の『クリーピー』も、これまた郊外の住宅街を舞台にして、奇妙な“お隣さん”がもたらす恐怖を描いており、キャストも先の竹内のほか、西島秀俊香川照之東出昌大といった濃いメンツ。

 『残穢』は人気ホラー作家・小野不由美作品の初映画化で、『クリーピー』は大学で教鞭をとる前川裕氏の本格的な小説家デビューとなる同名作品が原作。両作とも、『リング』『呪怨』と続く一連のJホラーが持ち合わせていた派手なエンターテインメント性とは趣を異にし、どちらかと言えば知的で文学的な作品に仕上がっているように思われる。とは言え、「何だかわからないけど、あの薄暗い“家”が怖い」といったJホラー特有の雰囲気は醸し出しており、これまでのJホラーファンを満喫させる要素は十分にありそうである。この2作あたりから、ジャパニーズホラーの新たな“逆襲”が始まるのかもしれない。

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