大みそか恒例の『第66回NHK紅白歌合戦』が、いよいよ間近に迫ってきた。司会者、出演者、当日はどんなサプライズがあるのか? 毎年話題となる今年の『紅白』は、いったいどういうものになるのか? 同番組のチーフ・プロデューサーであるNHK・柴崎哲也氏が語った。
◆名だたるアニメが総登場、『紅白』でなければ絶対にできないこと
――まず、「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」という、今年のテーマについておうかがいしたいのですが。
【柴崎】 今年は戦後70年、日本の放送90年という節目の年で、さらに5年後には東京五輪が控えています。アーティストのみなさんもそこに向けて、どうメッセージや文化を発信していくか、意識的になってきているなと感じているところです。もちろん海外から注目される機会が、今後はより増えていくだろうと思います。だからこそ「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」というテーマを考えました。アーティストのみなさんが考える「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」とは何なのか? そういうものが、楽しく表現されればいいなと思っています。日本人らしさ、日本人で良かったという想い、さらに『紅白』ってやっぱりいいよねというような、様々なメッセージを出演者のみなさんと創りだし、発信していければと思っています。
――具体的な日本文化の何かを掲げたコーナーも作られるのでしょうか?
【柴崎】 単純に日本の伝統文化の素晴らしさを伝えることも大事ですが、日本の放送90年ということを考えたとき、アニメも日本が誇る文化のひとつだということで、“アニメ紅白”を行います。『ちびまる子ちゃん』や『妖怪ウォッチ』、それこそ日本のテレビアニメの先駆けといえる『鉄腕アトム』や、僕のような世代が親しんだ『巨人の星』や『ヤッターマン』。もっと若い方には『ポケットモンスター』などから、名だたるアニメが総登場します。これは、『紅白』でなければ絶対にできないことだと自負しています。このプレゼンターを、黒柳徹子さんにやっていただく予定です。
――アニメ紅白のプレゼンターを務める黒柳徹子さんは、テレビ界の生き字引のような方。その黒柳さんは総合司会も務められるわけですが。
【柴崎】 戦後70年、放送90年を意識して番組を組み立てようとして、その柱というか、シンボルになる存在が必要だと考えたとき、黒柳さんの名前が浮かびました。NHK専属女優第1号であり、当時史上最年少で『紅白』の司会、しかも4年連続で『紅白』の紅組司会を務められた経歴があります。黒柳さんが初めて『紅白』の司会をやられたのが57年前で、そのとき最後に歌っていたのが美空ひばりさんだったそうです。まさしくテレビ界のレジェンド。そんな方が、今年の『紅白』でどんな言葉を発せられるのか、とても楽しみにしています。
――視聴者としては、『徹子の部屋』で見せるような、自由な振る舞いにも期待していまいますが。
【柴崎】 それは私も期待しています(笑)。我らがイノッチ(井ノ原快彦さん)と綾瀬はるかさん、有働由美子アナがおりますので、バックアップは万全です。ぞんぶんに黒柳さんらしさを炸裂させてほしいです。
◆生放送で年に1回、66年もやっている『紅白』は、極めてテレビ的なコンテンツ
――昨年はバナナマンさんの副音声も話題になりましたね。今年もバナナマンさんが務めますが、テレビとスマホを両方見ながら楽しめますね。
【柴崎】 『紅白』には今年で66回目という伝統があります。なかにはお堅いイメージや、ある種の予定調和感を持たれている方がいらっしゃると思います。そういうイメージを払拭して、『紅白』をもっと自由に楽しんでほしいという気持ちで、その入り口をバナナマンのおふたりに作っていただく感覚です。副音声という手段で、暴れてほしい、楽しませてほしいと思っています。生放送で年に1回、66年もやっている『紅白』は、極めてテレビ的なコンテンツです。今のテレビというメディアでできることは、すべてやっていこうという考えです。
――今年はインスタグラムを採り入れるなど、SNSやスマホ文化も採り入れていますが、若者世代への訴求力も考えていますか?
【柴崎】 SNSやスマホのほうが、若者世代にとってはテレビより身近になっていますよね。副音声も含めて、そういうところをきっかけにしてリアルタイムで観て欲しいのが正直なところです。そのための入り口を、たくさん設けているという感じでしょうね。
――あと、小林幸子さんの『紅白』復帰も話題ですが。
【柴崎】 テーマが「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」ですから、『紅白』の風物詩といえば小林さんとおっしゃる方も非常に多いですよね。ある種の定番感や安心感がありながら、久々に帰って来ていったいどう進化していのるかというところでは、私たちも楽しみにしています。最近の彼女はインターネットのフィールドでの活躍がめざましく、「千本桜」という選曲や演出は、そういうところを加味したものになると思います。
◆国民的な“何か”がなかったからこそ「ザッツ、紅白!」というキーワードが必要
――ここ数年、『妖怪ウォッチ』や『アナ雪』、『あまちゃん』といった、音楽を巻き込んだ国民的ムーヴメントがあり、『紅白』でもそれらを採り入れていましたが、2015年はそういった国民的な何かがなかったように思います。そういう点では、出演アーティストの選定は難しかったのでは?
【柴崎】 そうですね。だからこそ「ザッツ、紅白!」というキーワードが必要でした。『紅白』らしいパフォーマンス、キャスティングや演出、ストーリーを出していくしかないと考えました。そこで実績に加味して、私たちがやろうとしている演出にフィットすると言うか、それを体現できる方々に出ていただきたいと思いました。
――今年の音楽シーンはどのように映りましたか?
【柴崎】 今年に始まったことではありませんが、すごく細分化が進んでいると思いました。特に若い世代は、ソフトを買うというよりは共有するといった音楽の楽しみ方が主流になっていて。世代ごとに、それぞれで音楽の楽しみ方が全く異なっています。一方では、フェスやライブの隆盛も感じました。刻一刻と変化している音楽シーンの中で、年に1回という特別な音楽番組、あらゆる世代に訴求するテレビ番組をどう創るのか? そう簡単に正解が見つかるとは思っていませんが、その答えに極限まで迫りたいと思って『紅白』をやっています。
(文:榑林史章)
【プロフィール】
柴崎哲也(しばざき てつや)
NHK制作局 第2制作センター エンターテインメント番組部 チーフ・プロデューサー
1968年生まれ。
1992年、NHK入局。
エンターテインメント番組部、大阪放送局制作部などを経て、『ポップジャム』や『ミュージック・ポートレイト』、『夢音楽館』などの番組を担当。現在は、『SONGS』の制作に携わる。
◆名だたるアニメが総登場、『紅白』でなければ絶対にできないこと
――まず、「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」という、今年のテーマについておうかがいしたいのですが。
【柴崎】 今年は戦後70年、日本の放送90年という節目の年で、さらに5年後には東京五輪が控えています。アーティストのみなさんもそこに向けて、どうメッセージや文化を発信していくか、意識的になってきているなと感じているところです。もちろん海外から注目される機会が、今後はより増えていくだろうと思います。だからこそ「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」というテーマを考えました。アーティストのみなさんが考える「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」とは何なのか? そういうものが、楽しく表現されればいいなと思っています。日本人らしさ、日本人で良かったという想い、さらに『紅白』ってやっぱりいいよねというような、様々なメッセージを出演者のみなさんと創りだし、発信していければと思っています。
――具体的な日本文化の何かを掲げたコーナーも作られるのでしょうか?
【柴崎】 単純に日本の伝統文化の素晴らしさを伝えることも大事ですが、日本の放送90年ということを考えたとき、アニメも日本が誇る文化のひとつだということで、“アニメ紅白”を行います。『ちびまる子ちゃん』や『妖怪ウォッチ』、それこそ日本のテレビアニメの先駆けといえる『鉄腕アトム』や、僕のような世代が親しんだ『巨人の星』や『ヤッターマン』。もっと若い方には『ポケットモンスター』などから、名だたるアニメが総登場します。これは、『紅白』でなければ絶対にできないことだと自負しています。このプレゼンターを、黒柳徹子さんにやっていただく予定です。
――アニメ紅白のプレゼンターを務める黒柳徹子さんは、テレビ界の生き字引のような方。その黒柳さんは総合司会も務められるわけですが。
【柴崎】 戦後70年、放送90年を意識して番組を組み立てようとして、その柱というか、シンボルになる存在が必要だと考えたとき、黒柳さんの名前が浮かびました。NHK専属女優第1号であり、当時史上最年少で『紅白』の司会、しかも4年連続で『紅白』の紅組司会を務められた経歴があります。黒柳さんが初めて『紅白』の司会をやられたのが57年前で、そのとき最後に歌っていたのが美空ひばりさんだったそうです。まさしくテレビ界のレジェンド。そんな方が、今年の『紅白』でどんな言葉を発せられるのか、とても楽しみにしています。
――視聴者としては、『徹子の部屋』で見せるような、自由な振る舞いにも期待していまいますが。
【柴崎】 それは私も期待しています(笑)。我らがイノッチ(井ノ原快彦さん)と綾瀬はるかさん、有働由美子アナがおりますので、バックアップは万全です。ぞんぶんに黒柳さんらしさを炸裂させてほしいです。
◆生放送で年に1回、66年もやっている『紅白』は、極めてテレビ的なコンテンツ
――昨年はバナナマンさんの副音声も話題になりましたね。今年もバナナマンさんが務めますが、テレビとスマホを両方見ながら楽しめますね。
【柴崎】 『紅白』には今年で66回目という伝統があります。なかにはお堅いイメージや、ある種の予定調和感を持たれている方がいらっしゃると思います。そういうイメージを払拭して、『紅白』をもっと自由に楽しんでほしいという気持ちで、その入り口をバナナマンのおふたりに作っていただく感覚です。副音声という手段で、暴れてほしい、楽しませてほしいと思っています。生放送で年に1回、66年もやっている『紅白』は、極めてテレビ的なコンテンツです。今のテレビというメディアでできることは、すべてやっていこうという考えです。
――今年はインスタグラムを採り入れるなど、SNSやスマホ文化も採り入れていますが、若者世代への訴求力も考えていますか?
【柴崎】 SNSやスマホのほうが、若者世代にとってはテレビより身近になっていますよね。副音声も含めて、そういうところをきっかけにしてリアルタイムで観て欲しいのが正直なところです。そのための入り口を、たくさん設けているという感じでしょうね。
――あと、小林幸子さんの『紅白』復帰も話題ですが。
【柴崎】 テーマが「ザッツ、日本! ザッツ、紅白!」ですから、『紅白』の風物詩といえば小林さんとおっしゃる方も非常に多いですよね。ある種の定番感や安心感がありながら、久々に帰って来ていったいどう進化していのるかというところでは、私たちも楽しみにしています。最近の彼女はインターネットのフィールドでの活躍がめざましく、「千本桜」という選曲や演出は、そういうところを加味したものになると思います。
◆国民的な“何か”がなかったからこそ「ザッツ、紅白!」というキーワードが必要
――ここ数年、『妖怪ウォッチ』や『アナ雪』、『あまちゃん』といった、音楽を巻き込んだ国民的ムーヴメントがあり、『紅白』でもそれらを採り入れていましたが、2015年はそういった国民的な何かがなかったように思います。そういう点では、出演アーティストの選定は難しかったのでは?
【柴崎】 そうですね。だからこそ「ザッツ、紅白!」というキーワードが必要でした。『紅白』らしいパフォーマンス、キャスティングや演出、ストーリーを出していくしかないと考えました。そこで実績に加味して、私たちがやろうとしている演出にフィットすると言うか、それを体現できる方々に出ていただきたいと思いました。
――今年の音楽シーンはどのように映りましたか?
【柴崎】 今年に始まったことではありませんが、すごく細分化が進んでいると思いました。特に若い世代は、ソフトを買うというよりは共有するといった音楽の楽しみ方が主流になっていて。世代ごとに、それぞれで音楽の楽しみ方が全く異なっています。一方では、フェスやライブの隆盛も感じました。刻一刻と変化している音楽シーンの中で、年に1回という特別な音楽番組、あらゆる世代に訴求するテレビ番組をどう創るのか? そう簡単に正解が見つかるとは思っていませんが、その答えに極限まで迫りたいと思って『紅白』をやっています。
(文:榑林史章)
【プロフィール】
柴崎哲也(しばざき てつや)
NHK制作局 第2制作センター エンターテインメント番組部 チーフ・プロデューサー
1968年生まれ。
1992年、NHK入局。
エンターテインメント番組部、大阪放送局制作部などを経て、『ポップジャム』や『ミュージック・ポートレイト』、『夢音楽館』などの番組を担当。現在は、『SONGS』の制作に携わる。
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2015/12/28