『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』(日本テレビ系)の「朝までハシゴの旅」や、ジャニーズタレントがメインの『〜突撃!はじめましてバラエティ〜 イチゲンさん』(テレビ東京系)、マツコ・デラックス“のみ”がレギュラーの『夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日系)といった“夜のお散歩番組”とでもいうべき番組がやたら増えている。そしてその多くが、「お酒を飲んで一般人と楽しくトークする」といったパターンが中心であり、今や“酒飲み番組”という新しいジャンルができつつあるようなのだ。なぜ今、酒飲み番組が増えているのだろうか?
■「新橋駅前のサラリーマン」パターンの応用編
こうした酒飲み番組のルーツと言えば、間違いなく『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS/毎週月曜日21時〜)になるだろう。放送開始から13年目を迎える長寿番組であり、若い女性ファンも多く、今や“新・月9”とも一部でささやかれる存在。ナビゲーターの吉田類は予想以上にダラしなく、行く店も下町などの気取り感ゼロのリアルな居酒屋で、余計なウンチクは語らないし偉ぶりもしない。「ここのオススメは何?」と隣の常連に気さくに話しかけては乾杯し、最後に一句読みながら(吉田は一応詩人・俳人でもある)、「あと2、3軒冒険して帰ります」的なキメ台詞を吐いて夜の街に消えていく……。ただの呑兵衛がただ楽しそうに呑んでいるだけの番組なのだが、そのユルさが同じ酒好きにはたまらないらしいのだ。
冒頭にあげた番組なども基本は同じで、酔っている一般人とのユルいコミュニケーションが中心。実はコレ、昔からテレビでは定番の“新橋駅前で酔っぱらいサラリーマンにコメントをとる”パターンの応用編とも言え、いわゆる“素人イジリ”の系譜に入るだけに、人材=ネタの宝庫だとも言える。「朝までハシゴの旅」では、カワイイ系の女子がそうしたオジサンたちと絡んで、打ち解けたりする意外性がウリで、モデル・佐藤栞里を人気タレントにのし上げた(現在は『笑ってコラえて!』のサブMCに昇格)。『イチゲンさん』も同様だが、散歩する人間がジャニーズのアイドルというギャップが最大の特徴だし、『夜の巷〜』では、マツコ・デラックスの想像を上回る酒豪ぶり(休日に350ml缶ビールを20本飲む)などが披露されたりする。
■コスト削減の内情の表れ? 飽和状態の感も
酔った人間だからこそできる行動とコメントは、はたから見ていても何となく許せるものだし、実際に面白い。芸能人が酔っぱらいの一般人に絡まれても、あるいは自らが酔っぱらっていても、その芸能人の素顔に触れたような気がして親近感も湧く。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)の「本音でハシゴ酒」などはその最たるもので、あまり酒を飲むイメージのないダウンタウンだが、悩みを持った芸能人などと酔っぱらいながら本音でトーク。ダウンタウンの思わぬコンビ愛なども垣間見られたりして、微笑ましいのだ。
ただこの酒飲み番組、最近ではあまりに増えすぎて飽和状態の感もある。そもそもは故・地井武男さんの『ちい散歩』(テレビ朝日系、現在は高田純次の『じゅん散歩』)で火が付いた“散歩系番組”の設定を夜にしたものとも言え、制作費削減の昨今にしてみれば、スタジオ代などのコストもかからず、酒が絡むぶんハジケたりもするので、各局が企画するのも当然だろう。いわば酒飲み番組の隆盛は、今のテレビ業界の不況ぶりを表わしているとも言えるのだ。
先の元祖・酒飲み番組『酒場放浪記』が人気になった際には、各BS局がこぞって類似番組を制作放映したが、今では居酒屋探訪家・太田和彦の一連の居酒屋番組が残るのみ(居酒屋紀行シリーズは酒場放浪記より前に開始)。おそらくこれら地上波の酒飲み番組もBS同様、今後は淘汰の段階に入っていくと思われる。果たしてどの番組がマスト化していくのか、と一杯やりながら見るのも、冬の夜長の一興かもしれない。
(文/五目舎)
■「新橋駅前のサラリーマン」パターンの応用編
こうした酒飲み番組のルーツと言えば、間違いなく『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS/毎週月曜日21時〜)になるだろう。放送開始から13年目を迎える長寿番組であり、若い女性ファンも多く、今や“新・月9”とも一部でささやかれる存在。ナビゲーターの吉田類は予想以上にダラしなく、行く店も下町などの気取り感ゼロのリアルな居酒屋で、余計なウンチクは語らないし偉ぶりもしない。「ここのオススメは何?」と隣の常連に気さくに話しかけては乾杯し、最後に一句読みながら(吉田は一応詩人・俳人でもある)、「あと2、3軒冒険して帰ります」的なキメ台詞を吐いて夜の街に消えていく……。ただの呑兵衛がただ楽しそうに呑んでいるだけの番組なのだが、そのユルさが同じ酒好きにはたまらないらしいのだ。
冒頭にあげた番組なども基本は同じで、酔っている一般人とのユルいコミュニケーションが中心。実はコレ、昔からテレビでは定番の“新橋駅前で酔っぱらいサラリーマンにコメントをとる”パターンの応用編とも言え、いわゆる“素人イジリ”の系譜に入るだけに、人材=ネタの宝庫だとも言える。「朝までハシゴの旅」では、カワイイ系の女子がそうしたオジサンたちと絡んで、打ち解けたりする意外性がウリで、モデル・佐藤栞里を人気タレントにのし上げた(現在は『笑ってコラえて!』のサブMCに昇格)。『イチゲンさん』も同様だが、散歩する人間がジャニーズのアイドルというギャップが最大の特徴だし、『夜の巷〜』では、マツコ・デラックスの想像を上回る酒豪ぶり(休日に350ml缶ビールを20本飲む)などが披露されたりする。
■コスト削減の内情の表れ? 飽和状態の感も
酔った人間だからこそできる行動とコメントは、はたから見ていても何となく許せるものだし、実際に面白い。芸能人が酔っぱらいの一般人に絡まれても、あるいは自らが酔っぱらっていても、その芸能人の素顔に触れたような気がして親近感も湧く。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)の「本音でハシゴ酒」などはその最たるもので、あまり酒を飲むイメージのないダウンタウンだが、悩みを持った芸能人などと酔っぱらいながら本音でトーク。ダウンタウンの思わぬコンビ愛なども垣間見られたりして、微笑ましいのだ。
ただこの酒飲み番組、最近ではあまりに増えすぎて飽和状態の感もある。そもそもは故・地井武男さんの『ちい散歩』(テレビ朝日系、現在は高田純次の『じゅん散歩』)で火が付いた“散歩系番組”の設定を夜にしたものとも言え、制作費削減の昨今にしてみれば、スタジオ代などのコストもかからず、酒が絡むぶんハジケたりもするので、各局が企画するのも当然だろう。いわば酒飲み番組の隆盛は、今のテレビ業界の不況ぶりを表わしているとも言えるのだ。
先の元祖・酒飲み番組『酒場放浪記』が人気になった際には、各BS局がこぞって類似番組を制作放映したが、今では居酒屋探訪家・太田和彦の一連の居酒屋番組が残るのみ(居酒屋紀行シリーズは酒場放浪記より前に開始)。おそらくこれら地上波の酒飲み番組もBS同様、今後は淘汰の段階に入っていくと思われる。果たしてどの番組がマスト化していくのか、と一杯やりながら見るのも、冬の夜長の一興かもしれない。
(文/五目舎)
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2015/12/01