『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS系)、『爆報!THEフライデー』(同系)、『私の何がイケないの?』(同系)、『解決!ナイナイアンサー』(日本テレビ系)、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)など、各局の人気バラエティ番組に共通しているキーワードが、芸能人たちの“不幸ネタ”“栄光時代の暴露ネタ”“過去の失敗ネタ”だ。各番組ともそこそこの視聴率を獲得し、そこそこに続いている番組だが、『しくじり先生』にいたっては最近のバラエティの中でも視聴率が高く、最も勢いのある番組で、バラエティ番組の新しいフォーマットを作ったと言っても過言ではないだろう。昔から“不幸ネタ”をウリにした番組はいろいろあったが、ここにきて番組内容や演出、出演者の表現の仕方などに変化が起きているようだ。昔と今の“不幸ネタ”番組の違いについて、改めて検証してみたい。
◆芸能人の不幸ネタは、かつてはワイドショーの専売特許だった
そもそも、こうした芸能人たちの“ザンゲ”的な告白ネタは、かつてはワイドショーの専売特許で、昼過ぎの時間帯に主婦がお茶をすすりながら観るものだった。芸能人たちも、芸能レポーターたちにしつこく追っかけ回され、根負けして仕方なく口を開くといったパターンで、視聴者も「この女優さんも変な青年実業家と結婚したばかりにこんな借金背負っちゃって、大変よねえ」「調子乗りすぎたせいで世間に叩かれちゃったけど、自業自得よね」などと、のんびり“人の不幸は蜜の味”を味わっていた。
一方、ゴールデンタイムでの不幸ネタとなると、一般人が曇りガラス越しに、声質を変えて人生相談をするようなものが多かった。古くは、故・桂小金治さん司会で放送されていた『それは秘密です!!』(日本テレビ系 1975〜87年)などの超人気企画「ご対面コーナー」があり、高視聴率を記録。人(一般人)の不幸・悲劇をネタにするスタイルは、現在の“芸能人不幸ネタ番組”にも通じるものがある。その後ワイドショーの過激化が進むと同番組も終了したが、芸能人の不幸ネタは相変わらず朝、昼、夕方のワイドショーのゴシップ止まりで、ゴールデンタイムの番組で取り扱われることはほとんどなかった。
そんな状況を一変させるのが、2001年からスタートした『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS系)内の企画「金スマ波瀾万丈」だった。これは『いつみても波瀾万丈』(日本テレビ系)のパロディ的要素もあったが、本家の日曜午前中の放送に対して、金スマは金曜の21時とゴールデンタイムでの放送。ゲストは細木数子や綾戸智恵、森山良子、杉田かおるといった女性たちが中心だが、ときにはオネエ系も出演し、高視聴率を上げた。一般には知られていない芸能人の苦悩などをドキュメンタリー的に紹介して反響を呼び、過去にはX JAPANのTOSHIや元・オセロの中島知子など、“洗脳スキャンダル”で世を騒がせた有名人が登場することもあった。ちなみに、盗作騒動の作曲家・佐村河内守氏も騒動以前に出演している。やがて、スキャンダルを起こして活動を自粛している芸能人が、“復活は金スマで”というのがフォーマットにさえなったのである。
◆視聴者からの同情も得られ、芸能人自らが率先して不幸自慢をする風潮に
しかし“金スマスタイル”はあくまでもドキュメントタッチで、共演者も視聴者もときどき涙する……といったもの。そこに、ただのザンゲや告白だけに留まらず、本人自らが不幸話を“自虐ネタ”にして、さらに“笑い”にまで昇華させる番組として登場したのが『しくじり先生』だ。「過去のおごりからきた転落を自ら笑い飛ばし、そこで得た教訓を後進に伝える+笑い」というコンセプトで、お笑いではパンクブーブー、オリエンタルラジオ、鈴木拓(ドランクドラゴン)、スポーツ界からは元木大介、獣神サンダーライガー、池谷幸雄、浅田舞、そして前園真聖。その他、ダイアモンド☆ユカイ、新垣隆、堀江貴文、佐藤仁美など、“再ブレイクスター”を数多く輩出。野球の“野村再生工場”ならぬ“芸能人再養成所”と言っても過言ではない番組なのだ。
たしかに、番組制作費をなかなかかけられない昨今、こうしたトーク+再現VTR中心の低予算で、しかも視聴率もそこそこ取れる企画となれば、制作側も願ったり叶ったりだろう。芸能人のほうも、あえて自分の不幸や恥部をさらけ出すことで視聴者からの同情も得られ、場合によっては好感度も上がる。過去の失敗が逆に再起へと繋がるのだ。今では、かつてならスキャンダルになるようなネタでも、芸能人自らが率先して不幸自慢をする風潮すら見られるようになった。
ただ、この自虐・不幸ネタをウリにする芸能人ももはや飽和気味。さらには笑いや同情を取るつもりが、ただ痛々しいだけだったり、いまだ見栄や言い訳が混在した中途半端な形だったり、調子に乗りすぎてたりすると、元・オセロ中島やビッグダディの元嫁のように、「まだ反省してないのか?」などと反感を買い、さらなるバッシングを受けることもある。やはり謙虚に、しかもバラエティの“笑い”としてしっかり昇華させることが重要であり、そのあたりのサジ加減やタレントのトーク、制作側の演出など、実はかなり高度なスキルが要求されるのも事実だ。そうした意味では、前園真聖やオリエンタルラジオはかなり成功した例で、彼らは今でも“再・調子に乗る”こともなく、再ブレイク芸能人のお手本にもなっている。
昔も今も、こうした“不幸ネタ”をウリにした番組は絶えないわけだが、時代とともにその内容や表現のアプローチは変わっていかざるを得ない。しかしいつの時代であっても、芸能人は等身大のありのままの自分で勝負するしかなく、バラエティ番組は視聴者を楽しませることが本義・基本であることは変わらないと思われる。
(文:五目舎)
◆芸能人の不幸ネタは、かつてはワイドショーの専売特許だった
そもそも、こうした芸能人たちの“ザンゲ”的な告白ネタは、かつてはワイドショーの専売特許で、昼過ぎの時間帯に主婦がお茶をすすりながら観るものだった。芸能人たちも、芸能レポーターたちにしつこく追っかけ回され、根負けして仕方なく口を開くといったパターンで、視聴者も「この女優さんも変な青年実業家と結婚したばかりにこんな借金背負っちゃって、大変よねえ」「調子乗りすぎたせいで世間に叩かれちゃったけど、自業自得よね」などと、のんびり“人の不幸は蜜の味”を味わっていた。
一方、ゴールデンタイムでの不幸ネタとなると、一般人が曇りガラス越しに、声質を変えて人生相談をするようなものが多かった。古くは、故・桂小金治さん司会で放送されていた『それは秘密です!!』(日本テレビ系 1975〜87年)などの超人気企画「ご対面コーナー」があり、高視聴率を記録。人(一般人)の不幸・悲劇をネタにするスタイルは、現在の“芸能人不幸ネタ番組”にも通じるものがある。その後ワイドショーの過激化が進むと同番組も終了したが、芸能人の不幸ネタは相変わらず朝、昼、夕方のワイドショーのゴシップ止まりで、ゴールデンタイムの番組で取り扱われることはほとんどなかった。
そんな状況を一変させるのが、2001年からスタートした『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS系)内の企画「金スマ波瀾万丈」だった。これは『いつみても波瀾万丈』(日本テレビ系)のパロディ的要素もあったが、本家の日曜午前中の放送に対して、金スマは金曜の21時とゴールデンタイムでの放送。ゲストは細木数子や綾戸智恵、森山良子、杉田かおるといった女性たちが中心だが、ときにはオネエ系も出演し、高視聴率を上げた。一般には知られていない芸能人の苦悩などをドキュメンタリー的に紹介して反響を呼び、過去にはX JAPANのTOSHIや元・オセロの中島知子など、“洗脳スキャンダル”で世を騒がせた有名人が登場することもあった。ちなみに、盗作騒動の作曲家・佐村河内守氏も騒動以前に出演している。やがて、スキャンダルを起こして活動を自粛している芸能人が、“復活は金スマで”というのがフォーマットにさえなったのである。
◆視聴者からの同情も得られ、芸能人自らが率先して不幸自慢をする風潮に
しかし“金スマスタイル”はあくまでもドキュメントタッチで、共演者も視聴者もときどき涙する……といったもの。そこに、ただのザンゲや告白だけに留まらず、本人自らが不幸話を“自虐ネタ”にして、さらに“笑い”にまで昇華させる番組として登場したのが『しくじり先生』だ。「過去のおごりからきた転落を自ら笑い飛ばし、そこで得た教訓を後進に伝える+笑い」というコンセプトで、お笑いではパンクブーブー、オリエンタルラジオ、鈴木拓(ドランクドラゴン)、スポーツ界からは元木大介、獣神サンダーライガー、池谷幸雄、浅田舞、そして前園真聖。その他、ダイアモンド☆ユカイ、新垣隆、堀江貴文、佐藤仁美など、“再ブレイクスター”を数多く輩出。野球の“野村再生工場”ならぬ“芸能人再養成所”と言っても過言ではない番組なのだ。
たしかに、番組制作費をなかなかかけられない昨今、こうしたトーク+再現VTR中心の低予算で、しかも視聴率もそこそこ取れる企画となれば、制作側も願ったり叶ったりだろう。芸能人のほうも、あえて自分の不幸や恥部をさらけ出すことで視聴者からの同情も得られ、場合によっては好感度も上がる。過去の失敗が逆に再起へと繋がるのだ。今では、かつてならスキャンダルになるようなネタでも、芸能人自らが率先して不幸自慢をする風潮すら見られるようになった。
ただ、この自虐・不幸ネタをウリにする芸能人ももはや飽和気味。さらには笑いや同情を取るつもりが、ただ痛々しいだけだったり、いまだ見栄や言い訳が混在した中途半端な形だったり、調子に乗りすぎてたりすると、元・オセロ中島やビッグダディの元嫁のように、「まだ反省してないのか?」などと反感を買い、さらなるバッシングを受けることもある。やはり謙虚に、しかもバラエティの“笑い”としてしっかり昇華させることが重要であり、そのあたりのサジ加減やタレントのトーク、制作側の演出など、実はかなり高度なスキルが要求されるのも事実だ。そうした意味では、前園真聖やオリエンタルラジオはかなり成功した例で、彼らは今でも“再・調子に乗る”こともなく、再ブレイク芸能人のお手本にもなっている。
昔も今も、こうした“不幸ネタ”をウリにした番組は絶えないわけだが、時代とともにその内容や表現のアプローチは変わっていかざるを得ない。しかしいつの時代であっても、芸能人は等身大のありのままの自分で勝負するしかなく、バラエティ番組は視聴者を楽しませることが本義・基本であることは変わらないと思われる。
(文:五目舎)
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2015/11/17