今年5月に公開された押井守監督の映画『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』のディレクターズカット版(以下、DC版)が今月10日より劇場公開された。押井監督が全カット責任編集を行って仕上げたのはこのDC版で、5月に公開されたバージョンは一部をカットして90分強に収めたものだった。なぜ、半年も経たないうちに、DC版を公開することになったのか。トータルで50分、押井監督が激白した。
――DC版の上映時間は約2時間で、5月の公開時より27分も長いですね。
「5月の公開時、90分にしてほしいという話が上の方から下りてきて、何で90分にしなきゃいけないのか、理由は結局、よくわからなかったんだけども(笑)。DC版を年内に公開することを条件にカットすることを許した。90分版とDC版、どちらが好きかは最終的にお客さんが選ぶこと。公開版でカットされていた部分が、単純に画がチープだったから切ったとか、そういうことでは全くないので。どちらも自信あります」。
――自分の作品にハサミを入れられたら、やはり面白くないですよね。
「葛藤があったとすれば、自分がそういう立場にいることを久しく忘れていたってことだよね。調子に乗っていた(笑)。まさか、自分の作ったものにハサミを入れるやつがいるとは。いるわけないと思っていたけど、そういう人間がいて当然なんだよ。人の金で作っているんだから。そういうことを久しく忘れていたことに衝撃を受けた。30年以上、監督の仕事をやってきて、何かあるたびに大げんかして、それで干されたりもしたけど、致命的なダメージは負っていないからいまがある。思い通りにならないことはいままでも何度もあったし、これからもあるんでしょうね」。
――『劇場版ニルスのふしぎな旅』(1982年)のように、携わった作品が劇場公開されずにお蔵入りになったこともありました。翌83年公開の『うる星やつら オンリー・ユー』で劇場監督デビューしてから30年以上経ちますが、辞めようと思ったことはありましたか?
「映画ほど面白い仕事はないと思っているし、これまでに辞めようと思ったことは1回もなかった。でも、風が吹かなかったことは3回くらいあった気がする。自分で世の中をなんとかする才能はない。風は起こせない。風まかせだから凪(な)ぐ時もある。そういう時はね、どうにもならない。逆風でもいいから風さえ吹いていれば、なんとかなるんだけど。実際、逆風を受けて船を前進させる方法もある。映画監督って世間の都合で生かされている最たるものだと思うから。風を起こせると思ったら大間違い。逆に言うといつか必ず風は吹く。それまで酒飲んで待てるかどうか。自分の能力を自分で信じるしかない。自分を信じるためにどうしたらいいか。私の場合は言いたいことをいう。言いたいことを言うと必ず痛い目にあう。しっぺ返しにどう持ちこたえるかで自分の信念を試してきたんだと思う」
――ファンに対して思うことは?
「好きな人は90分版もDC版も両方観てくれると思った。『パトレイバー』のファンは昔から義理堅くて、使命感すら持っている。自分たちが支えなければ、ほかに誰が観るって(笑)。5月の公開時もよく観に来てくれたし、熱心にグッズも買ってくれた。そこから察するに観たい人は観るんだよ、きっと。世界には2種類の人間しかいないの。ロボットが出てくる映画を観たい人間と観たいと思わない人間の2種類(笑)」。
――宮崎駿の映画は100人が1回は見る。押井守の映画は1人が100回は見る、という言葉があるそうですね。
「僕が何をやっても許してくれて、映画作ったら観てくれて、本を出したら買って読んでくれて、いろんな関連商品も買ってくれる、そういう人が世の中に1000人くらいいて、その顔ぶれはほとんど変わっていないことがわかっている。なんで1000人かというと、メルマガの読者が1000人で、一番売れなかった作品(DVD)が1000本だった。一番売れなかった作品を買ってくれた1000本分のお客さんがいまだに応援してくれているんだと思う。彼ら一人ひとりが僕の応援団であり、周りにすすめたりしてくれるエージェントでもある。本当にいつもありがとう、これからもよろしくね(笑)」
『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦 ディレクターズカット版』は10日より上映中。Blu-ray&DVDは11月3日発売。
――DC版の上映時間は約2時間で、5月の公開時より27分も長いですね。
「5月の公開時、90分にしてほしいという話が上の方から下りてきて、何で90分にしなきゃいけないのか、理由は結局、よくわからなかったんだけども(笑)。DC版を年内に公開することを条件にカットすることを許した。90分版とDC版、どちらが好きかは最終的にお客さんが選ぶこと。公開版でカットされていた部分が、単純に画がチープだったから切ったとか、そういうことでは全くないので。どちらも自信あります」。
――自分の作品にハサミを入れられたら、やはり面白くないですよね。
「葛藤があったとすれば、自分がそういう立場にいることを久しく忘れていたってことだよね。調子に乗っていた(笑)。まさか、自分の作ったものにハサミを入れるやつがいるとは。いるわけないと思っていたけど、そういう人間がいて当然なんだよ。人の金で作っているんだから。そういうことを久しく忘れていたことに衝撃を受けた。30年以上、監督の仕事をやってきて、何かあるたびに大げんかして、それで干されたりもしたけど、致命的なダメージは負っていないからいまがある。思い通りにならないことはいままでも何度もあったし、これからもあるんでしょうね」。
――『劇場版ニルスのふしぎな旅』(1982年)のように、携わった作品が劇場公開されずにお蔵入りになったこともありました。翌83年公開の『うる星やつら オンリー・ユー』で劇場監督デビューしてから30年以上経ちますが、辞めようと思ったことはありましたか?
「映画ほど面白い仕事はないと思っているし、これまでに辞めようと思ったことは1回もなかった。でも、風が吹かなかったことは3回くらいあった気がする。自分で世の中をなんとかする才能はない。風は起こせない。風まかせだから凪(な)ぐ時もある。そういう時はね、どうにもならない。逆風でもいいから風さえ吹いていれば、なんとかなるんだけど。実際、逆風を受けて船を前進させる方法もある。映画監督って世間の都合で生かされている最たるものだと思うから。風を起こせると思ったら大間違い。逆に言うといつか必ず風は吹く。それまで酒飲んで待てるかどうか。自分の能力を自分で信じるしかない。自分を信じるためにどうしたらいいか。私の場合は言いたいことをいう。言いたいことを言うと必ず痛い目にあう。しっぺ返しにどう持ちこたえるかで自分の信念を試してきたんだと思う」
――ファンに対して思うことは?
「好きな人は90分版もDC版も両方観てくれると思った。『パトレイバー』のファンは昔から義理堅くて、使命感すら持っている。自分たちが支えなければ、ほかに誰が観るって(笑)。5月の公開時もよく観に来てくれたし、熱心にグッズも買ってくれた。そこから察するに観たい人は観るんだよ、きっと。世界には2種類の人間しかいないの。ロボットが出てくる映画を観たい人間と観たいと思わない人間の2種類(笑)」。
――宮崎駿の映画は100人が1回は見る。押井守の映画は1人が100回は見る、という言葉があるそうですね。
「僕が何をやっても許してくれて、映画作ったら観てくれて、本を出したら買って読んでくれて、いろんな関連商品も買ってくれる、そういう人が世の中に1000人くらいいて、その顔ぶれはほとんど変わっていないことがわかっている。なんで1000人かというと、メルマガの読者が1000人で、一番売れなかった作品(DVD)が1000本だった。一番売れなかった作品を買ってくれた1000本分のお客さんがいまだに応援してくれているんだと思う。彼ら一人ひとりが僕の応援団であり、周りにすすめたりしてくれるエージェントでもある。本当にいつもありがとう、これからもよろしくね(笑)」
『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦 ディレクターズカット版』は10日より上映中。Blu-ray&DVDは11月3日発売。
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2015/10/20