視聴率がコンスタントに20%を越えて好調のNHK朝の連続テレビ小説『まれ』。土屋太鳳が演じるヒロイン・津村希の同級生5人組のひとり・寺岡みのりを門脇麦が演じている。郵便局員の娘で地元の能登を愛し、無邪気でほんわかしているが芯はしっかり者という役柄だ。
◆R18指定映画『愛の渦』で見せた覚悟
門脇は2011年に女優デビューした22歳。昨年から映画『愛の渦』『シャンティデイズ 365日、幸せな呼吸』やドラマ『セーラー服と宇宙人』(日本テレビ系)など主演級での出演が相次いでいる。最初に注目を高めたのは一昨年、コミカルに踊るエーザイ『チョコラBB』CMだった。さらに東京ガス『ガスの仮面』CMでは、12年間習っていたバレエを披露して話題に。そうしたなかで女子高が舞台の映画『スクールガール・コンプレックス‐放送部篇‐』に初主演など、いわゆるアイドル女優路線を行くものと思われた。
ところが、マンションの一室での乱交パーティを描いたR18指定の『愛の渦』で演じたのは、“地味で真面目そうだが誰よりも性欲が強い女子大生”という役。バストトップも見せた全裸でのセックスシーンに挑んだ。
この映画は劇団『ポツドール』を主宰する三浦大輔が、岸田國士戯曲賞を受賞した自身の舞台を監督として映像化したもの。芝居に対する厳しさで知られる三浦が、オーディションで「彼女と心中するつもりで撮ると決めた」と門脇を選んだ。2次審査の時点で彼女ひとりしか呼ばず、バスタオルを取って裸になるシーンを演じさせて、事実上、脱ぐ覚悟の確認だけして最終決定したようだ。門脇は「撮影になると、女の子だからギリギリまで恥ずかしかったけど、『やるぞ!』という気持ちのほうが強かった」と語っている。
◆ヌードが偉いワケではない だが覚悟や気概が見えてくる
若手時代に作品でヌードになった女優としては、2期前の朝ドラ『花子とアン』でヒロインを演じた吉高由里子が知られる。芥川賞小説を映画化した『蛇にピアス』でのこと。公開当時20歳の彼女の初主演映画だった。衣裳合わせの際、監督を務めた演劇界の巨匠・蜷川幸雄に「裸を見ないで撮れるんですか?」と、更衣室で自ら裸身を見せたという。
『まれ』で希の母親役の常盤貴子も、初のメインキャストだったドラマ『悪魔のKISS』(フジテレビ系)で、風俗嬢を演じてヌードになっている。希の同級生の母親役の鈴木砂羽も、主演デビュー映画『愛の新世界』のSMクラブで働く役でヌードを見せた。真木よう子、池脇千鶴、鈴木杏ら演技力が評価される女優も、ヌードになった作品がある。遡れば関根(高橋)恵子、桃井かおり、多岐川裕美、夏目雅子といった大女優もそう。最近の若手女優では、門脇のような例は少ないが。
こうした女優のヌードとなれば、男性が単純に「見たい」と思うのは当然で、脱いだ作品は“お宝”扱いされる。ただ、たとえば『愛の渦』も単なるエロではなく、性欲という人間の本能がむき出しになる様が描かれていて、門脇が演じたおとなしそうな女子大生がセックスで大胆に乱れる姿は重要だった。彼女自身も物静かなイメージがあるが、三浦の演技指導に応えるため、ひとりでカラオケボックスに行って喘ぎ声の練習もしたという。
逆に、今年公開されたR15指定の映画『さよなら歌舞伎町』はラブホテルを舞台にした群像劇で、ヌードを見せた女優もいたが、準主役格だった前田敦子は音楽プロデューサーに枕営業をする役ながら、毛布にくるまった描写があっただけ。ストーリー展開のなかで不自然さは否めなった。
決して脱げばいいというわけではないが、裸のシーンがあっても役への気持ちが先立つ。いち女性としての恥じらいより役をリアルに見せる覚悟が勝つ。そうした精神性を持つのが本物の女優とは言えるだろう。ただそこは、本人の意志に関わらず、様々な事情に左右されることが多いものでもあるのだが。
◆『まれ』でどんな存在感を見せるか
門脇は、脱いでいない他の作品でも同じ熱量の女優魂を感じられる。『愛の渦』が公開された昨年度は、ヨコハマ映画祭の最優秀新人賞などを受賞。同世代の女優にない独自の足場を築いた。吉高らもヌードになったことが評価こそされ、マイナスイメージにはまったくなっていない。
門脇といえば、最近では同い年の俳優・太賀との交際が報じられ、事務所も認めたことも話題になった。昨年、小泉今日子原作のドラマ『戦う女』(CSフジテレビNEXT/今年4月にフジテレビでも放送)に出演した際も、本編後のトークコーナーで「パンツを一緒に買いに行く」などと恋人の存在をほのめかしていた。やはりアイドル売りはせず、女優として作品で勝負する方針だったのだろう。
『まれ』では現在、主人公の友だち役では東京志向の強い蔵本一子(清水富美加)の出番が多いが、門脇の演じるみのりにスポットが当たる展開もこの先あるはず。若手屈指の演技派同士の土屋との絡みは見ものだ。
最近の朝ドラでは『あまちゃん』から有村架純や松岡茉優、『ごちそうさん』から高畑充希など脇役女優もブレイクに繋げている。今どき珍しくヌードも厭わなかった門脇にも、知名度が上がればますます様々なオファーが寄せられることは間違いない。まずは『まれ』でどんな存在感を見せてくれるか注目したい。
(文:斉藤貴志)
◆R18指定映画『愛の渦』で見せた覚悟
門脇は2011年に女優デビューした22歳。昨年から映画『愛の渦』『シャンティデイズ 365日、幸せな呼吸』やドラマ『セーラー服と宇宙人』(日本テレビ系)など主演級での出演が相次いでいる。最初に注目を高めたのは一昨年、コミカルに踊るエーザイ『チョコラBB』CMだった。さらに東京ガス『ガスの仮面』CMでは、12年間習っていたバレエを披露して話題に。そうしたなかで女子高が舞台の映画『スクールガール・コンプレックス‐放送部篇‐』に初主演など、いわゆるアイドル女優路線を行くものと思われた。
ところが、マンションの一室での乱交パーティを描いたR18指定の『愛の渦』で演じたのは、“地味で真面目そうだが誰よりも性欲が強い女子大生”という役。バストトップも見せた全裸でのセックスシーンに挑んだ。
この映画は劇団『ポツドール』を主宰する三浦大輔が、岸田國士戯曲賞を受賞した自身の舞台を監督として映像化したもの。芝居に対する厳しさで知られる三浦が、オーディションで「彼女と心中するつもりで撮ると決めた」と門脇を選んだ。2次審査の時点で彼女ひとりしか呼ばず、バスタオルを取って裸になるシーンを演じさせて、事実上、脱ぐ覚悟の確認だけして最終決定したようだ。門脇は「撮影になると、女の子だからギリギリまで恥ずかしかったけど、『やるぞ!』という気持ちのほうが強かった」と語っている。
◆ヌードが偉いワケではない だが覚悟や気概が見えてくる
若手時代に作品でヌードになった女優としては、2期前の朝ドラ『花子とアン』でヒロインを演じた吉高由里子が知られる。芥川賞小説を映画化した『蛇にピアス』でのこと。公開当時20歳の彼女の初主演映画だった。衣裳合わせの際、監督を務めた演劇界の巨匠・蜷川幸雄に「裸を見ないで撮れるんですか?」と、更衣室で自ら裸身を見せたという。
『まれ』で希の母親役の常盤貴子も、初のメインキャストだったドラマ『悪魔のKISS』(フジテレビ系)で、風俗嬢を演じてヌードになっている。希の同級生の母親役の鈴木砂羽も、主演デビュー映画『愛の新世界』のSMクラブで働く役でヌードを見せた。真木よう子、池脇千鶴、鈴木杏ら演技力が評価される女優も、ヌードになった作品がある。遡れば関根(高橋)恵子、桃井かおり、多岐川裕美、夏目雅子といった大女優もそう。最近の若手女優では、門脇のような例は少ないが。
こうした女優のヌードとなれば、男性が単純に「見たい」と思うのは当然で、脱いだ作品は“お宝”扱いされる。ただ、たとえば『愛の渦』も単なるエロではなく、性欲という人間の本能がむき出しになる様が描かれていて、門脇が演じたおとなしそうな女子大生がセックスで大胆に乱れる姿は重要だった。彼女自身も物静かなイメージがあるが、三浦の演技指導に応えるため、ひとりでカラオケボックスに行って喘ぎ声の練習もしたという。
逆に、今年公開されたR15指定の映画『さよなら歌舞伎町』はラブホテルを舞台にした群像劇で、ヌードを見せた女優もいたが、準主役格だった前田敦子は音楽プロデューサーに枕営業をする役ながら、毛布にくるまった描写があっただけ。ストーリー展開のなかで不自然さは否めなった。
決して脱げばいいというわけではないが、裸のシーンがあっても役への気持ちが先立つ。いち女性としての恥じらいより役をリアルに見せる覚悟が勝つ。そうした精神性を持つのが本物の女優とは言えるだろう。ただそこは、本人の意志に関わらず、様々な事情に左右されることが多いものでもあるのだが。
◆『まれ』でどんな存在感を見せるか
門脇は、脱いでいない他の作品でも同じ熱量の女優魂を感じられる。『愛の渦』が公開された昨年度は、ヨコハマ映画祭の最優秀新人賞などを受賞。同世代の女優にない独自の足場を築いた。吉高らもヌードになったことが評価こそされ、マイナスイメージにはまったくなっていない。
門脇といえば、最近では同い年の俳優・太賀との交際が報じられ、事務所も認めたことも話題になった。昨年、小泉今日子原作のドラマ『戦う女』(CSフジテレビNEXT/今年4月にフジテレビでも放送)に出演した際も、本編後のトークコーナーで「パンツを一緒に買いに行く」などと恋人の存在をほのめかしていた。やはりアイドル売りはせず、女優として作品で勝負する方針だったのだろう。
『まれ』では現在、主人公の友だち役では東京志向の強い蔵本一子(清水富美加)の出番が多いが、門脇の演じるみのりにスポットが当たる展開もこの先あるはず。若手屈指の演技派同士の土屋との絡みは見ものだ。
最近の朝ドラでは『あまちゃん』から有村架純や松岡茉優、『ごちそうさん』から高畑充希など脇役女優もブレイクに繋げている。今どき珍しくヌードも厭わなかった門脇にも、知名度が上がればますます様々なオファーが寄せられることは間違いない。まずは『まれ』でどんな存在感を見せてくれるか注目したい。
(文:斉藤貴志)
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2015/04/26