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年間映画興行ランキング『アニメがTOP3を独占!ダイナミックな“観客動向”の変化とメガヒット時代の終焉』
多岐にわたるヒット傾向を見せたアニメ作品
その顕著な例が、アニメ興行の充実ぶりである。アニメ全般のことではない。当然、個々の作品をあたれば、いい結果ばかりではないからだ。ただ、総体的な意味において、明らかにアニメは集客力を増している。それは、データがはっきりと物語っていることだ。
2013年、邦画と洋画を合わせた作品別の興収では、『風立ちぬ』『モンスターズ・ユニバーシティ』『ONE PIECE FILM Z』が、TOP3を占めた。邦画だけをみても、上位4位までがアニメである。実写作品では、『真夏の方程式』や『そして父になる』などが30億円台の前半で推移したが、アニメのこの“位置取り”に、驚かない人はいまい。アニメが、映画興行の最前線、否、中枢部に出てきたのは、間違いのない事実なのである。
かつても、アニメの強い時代はあった。では、その時代と何が違うかといえば、ヒットのバリエーションが明らかに増えたことである。スタジオジブリの宮崎駿監督の新作が登場し、『ドラえもん』『名探偵コナン』『ポケモン』などの定番アニメが並ぶのには、誰も驚かない。だが2013年は、これらに『ONE PIECE』と『DRAGON BALL』の大ヒットが加わった。ピクサーやディズニーのCGアニメも、当然ながらこの列に並ぶ。
さらに、20億円近くまで数字を伸ばした『魔法少女まどかマギカ』や『銀魂』なども登場した。これらの成績から、アニメの興行が作品ジャンル、客層の広さなどを含めて、実に多岐にわたるヒット傾向を見せたのがわかるだろう。そこから、観客の嗜好性、関心の所在の変化を読み解くことができる。このダイナミックな“観客動向”の変化にこそ、現在の映画と興行のありようを揺さぶるような極めて重要な意味があると考えられる。
そのアニメの中枢に位置するスタジオジブリの宮崎駿監督が、『風立ちぬ』の公開中に引退宣言をしたことも、先の嗜好性、関心の所在の変化を背後に置いてみると、実に象徴的な出来事だったと言えはしないか。それは、いち映画監督の決意表明を超えて、邦画全般にとっても、一筋縄ではいかない変化をもたらすことになるからである。それは単純に言えば、メガヒットの時代の終焉を意味する。
アニメの隆盛と逆行する邦画実写の興行結果
そのメガヒットなき時代の傾向は、とくに邦画の成績にすでに表れているのだ。『真夏の方程式』は、『ガリレオ』シリーズの前作を大きく下回った。これを象徴的に、テレビ局主体の実写作品は全体的に成績を落としている。それはまるで、アニメの隆盛と逆行するような興行結果だったとも言える。本来なら、実写作品、アニメが並び立つような興行が成立してもいいのだが、映画興行というのは何らかのバランスを取ろうとするのだろうか。相乗効果的に動員が伸びていくことが、なかなか実現しないのである。
そうしたこととも関連しなくはないと思うが、単館系興行のほうを振り返っても、ヒットが少なかったと言わざるをえない。邦画では、『凶悪』や『地獄でなぜ悪い』などがシネコンメインの単館系という今日的な興行の場で、ある程度の成功をみたことは特筆していい。洋画は、『クロワッサンで朝食を』や『ハンナ・アーレント』など、シネスイッチ銀座や岩波ホールで好成績の作品も登場した。だが、全体の活性化にほど遠い推移だった。
『凶悪』や『地獄でなぜ悪い』でいえば、本来ミニシアターで公開されてしかるべき作品が、シネコンメインになるとますますミニシアターから話題作が減ってしまうことも考えたい。さらに翻って、シネコンメインの単館系作品は、果たして本当にその興行の力が発揮できているかといえば、かなり疑問な点も残る。作品にふさわしい公開の形もまた、一筋縄ではいかない。
くどくなるが、全く映画興行は一筋縄ではいかなくなった。今回、観客動向の変化を見据えて、こうした言い方をあえて多用しているわけだが、その意には、プラス面も加味したつもりだ。映画界は、この変化をどう観客増につなげるかを、真剣に考えるときに来たからである。アニメへの関心の増大は、実写作品とのバランスを本当に崩すものなのか。否、そうではない。邦画、洋画、実写、アニメ云々を超えた映画への関心の広がりが、そこからは期待できないか。
そのような諸々を、ひとつの閉じられた枠に押し込めることなく、映画との可能性の問題として把握し、実践を伴う方法論を考えてみる。こういう時代にボヤボヤしていたら、取り残されるのは、ひっきょう、映画を送り出す側ということになりかねないのである。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)
2013年 年間映画興行ランキングTOP10
《文化通信調べ》※公開中の作品の興行収入は12月15日時点での最終見込み数字
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